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第四十七話 星遥斗⑭
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作家しての仕事も軌道のり、いくつかの小説は映像化された。研究の方は契約延長しているため続けていたが以前ほど頻繁ではない。
金銭的に余裕が出たためマンションを購入した。
『オトウサマ』に住むよう言われた家には辛い思い出が多すぎる。
遥が高校に入学すると同時に引っ越した。
新築の広いマンションに遥は単純に大喜びした。
遥の発作もなくなったこともあり、引っ越しをきっかけに別部屋にしようと考えたが彼に否定された。
泣かれると弱い。
本当は少し離れる時間が欲しかった。
遥の事を嫌いになったわけでない。
以前よりもずっと好意的な感情がある。
見下ろされる身長になり、新宮の特訓の成果もあり筋肉質のいい男になった。
だから困っている。
なんとも言えない、言葉では表現できない気持ちに包まれる。
彼は以前より更に多くの手紙をもらってくるようになった。ソレに興味ないようでそこらに放置してあるため全て内容と差出人を確認するとやぶって捨てた。
帰宅すると、マンション前に遥と同じ制服をきた女がいた。
「あれ? 君は遥の友だち」
声を掛けると真っ赤な顔をして頷いた。
小柄で髪を巻いた女は化粧をしていた。
女であることを前面に出している。
「そうなんだ。でも、遥まだ帰ってきてないんだよ。良かったらそこでお茶しない」
近くの喫茶店を指さすと彼女は頷いた。
数時間、話すとすぐに彼女は心を開いた。
「本当に君可愛いね。遥にはもったいないなぁ」
「そんなぁことないです」
まんざらでもない顔をして頬に手をやる。
「本当だよ」満面の笑みを彼女に向けた。「遥がうらやましいな。アイツまだそういうの興味ないみたいだし、良かったら僕と遊ばない?」
すぐに連絡を交換ができた。
何度かデートして、優しく抱いてやると彼女は遥のことを忘れた。
「あのさ」
彼女を喫茶店に呼び出した。
「……」
彼女は何かを悟ったようで黙っている。緊張からか下を向いてテーブルに置かれた紅茶に手をつけない。
「ごめん。僕、別に好きな人が……」
「いや、いや」
泣き崩れる彼女を横目に、その場を去った。
数日して、マンションの前で知った顔が言い争っていた。
「お願いだから、合わせて」
先日別れた女が泣いている。
「ダメって、別れたんだろ。ストーカーかよ」
遥が一括していた。
遥斗は慌てて、二人のもとへ走った。
「どうしたの?」買い物をしてきたアピールをしながら遥に話し掛けた。「あれ、君は……」
「遥斗さん」
女が抱き着いたその瞬間寒気がして、吹き飛ばしたかったが我慢した。彼女の肩に両手を置いてそっと、体を離した。
「どうしたんだい?」
「私、やっぱり別れたくないの」
泣きじゃくる彼女の頭を撫ぜながら「ごめんね」と誤った。遥はそれを見て呆れた顔をしている。
見込みがないと彼女は悟ったようで、走り去っていった。
「兄」彼女が見えなくなると、遥は遥斗の顔をのぞき込んで話し掛けてきた。「俺の高校の子ばかり付き合うのやめろよ」
「なんで? 可愛いじゃん」
「しかも、俺に手紙くれた子もいんだろ」
「ひがみかい?」
遥は膨れてそれ以上何も言わなくなった。
彼のその嫉妬心が自分に向けばいいという思いを心の奥にしまった。
エレベーターに乗ると遥の手をとり、口をつけて『彼女ほしいの?』と唇を動かした。
「べつに」
照れたように、手を振りほどくとエレベーターから降りてしまった。遥斗は微笑みながら、彼の後を追って部屋に入った。
食材を台所に置くと、手を洗い料理を始めた。
「俺もやるよ」
「ああ」
遥は腕まくりをすると、食材の確認を始めた。
中学に行って少したったあたりから遥は積極的家事を行うようになった。
「なぁ、俺らのオヤジって今何してんの?」
唐突な質問だった。
遥はまっすぐな瞳で遥斗を見てきた。
「知らない。離婚してから時間が経ちすぎている。なんで?会いたい?」遥斗はゆっくり口を動かして伝えた。
「別に、今まで気にしたことなかっただけど、学校のやつに聞かれてさ」
「誰?」
「神田」
その名前を聞いた瞬間、遥斗は眉を寄せた。それを見て遥は首を傾げ「知っているの?」と聞いてきた。
遥斗はゆっくりと首を振った。
「そっか。そいつさ、小学校一緒だっただけど中学受験したんだ。で、そこでうまくいかなくて高校受験して俺と同じクラスなんだよ」
遥斗は以前、新宮が神田真人ともめた話を思い出した。彼は神田医師の息子であることを考えたら、高校が同じなことが偶然とは思えなかった。
「なんか、新宮が好きらしくてめっちゃアプローチしてくんだって。新宮がめちゃくちゃキレてた」
遥の話に頷くと、料理の続きをするように促した。彼は頷いて手を動かした。
顔を見るか手を使わないと会話ができない遥は料理に入ると無言になる。
そんな静かな調理も遥斗は楽しかった。
金銭的に余裕が出たためマンションを購入した。
『オトウサマ』に住むよう言われた家には辛い思い出が多すぎる。
遥が高校に入学すると同時に引っ越した。
新築の広いマンションに遥は単純に大喜びした。
遥の発作もなくなったこともあり、引っ越しをきっかけに別部屋にしようと考えたが彼に否定された。
泣かれると弱い。
本当は少し離れる時間が欲しかった。
遥の事を嫌いになったわけでない。
以前よりもずっと好意的な感情がある。
見下ろされる身長になり、新宮の特訓の成果もあり筋肉質のいい男になった。
だから困っている。
なんとも言えない、言葉では表現できない気持ちに包まれる。
彼は以前より更に多くの手紙をもらってくるようになった。ソレに興味ないようでそこらに放置してあるため全て内容と差出人を確認するとやぶって捨てた。
帰宅すると、マンション前に遥と同じ制服をきた女がいた。
「あれ? 君は遥の友だち」
声を掛けると真っ赤な顔をして頷いた。
小柄で髪を巻いた女は化粧をしていた。
女であることを前面に出している。
「そうなんだ。でも、遥まだ帰ってきてないんだよ。良かったらそこでお茶しない」
近くの喫茶店を指さすと彼女は頷いた。
数時間、話すとすぐに彼女は心を開いた。
「本当に君可愛いね。遥にはもったいないなぁ」
「そんなぁことないです」
まんざらでもない顔をして頬に手をやる。
「本当だよ」満面の笑みを彼女に向けた。「遥がうらやましいな。アイツまだそういうの興味ないみたいだし、良かったら僕と遊ばない?」
すぐに連絡を交換ができた。
何度かデートして、優しく抱いてやると彼女は遥のことを忘れた。
「あのさ」
彼女を喫茶店に呼び出した。
「……」
彼女は何かを悟ったようで黙っている。緊張からか下を向いてテーブルに置かれた紅茶に手をつけない。
「ごめん。僕、別に好きな人が……」
「いや、いや」
泣き崩れる彼女を横目に、その場を去った。
数日して、マンションの前で知った顔が言い争っていた。
「お願いだから、合わせて」
先日別れた女が泣いている。
「ダメって、別れたんだろ。ストーカーかよ」
遥が一括していた。
遥斗は慌てて、二人のもとへ走った。
「どうしたの?」買い物をしてきたアピールをしながら遥に話し掛けた。「あれ、君は……」
「遥斗さん」
女が抱き着いたその瞬間寒気がして、吹き飛ばしたかったが我慢した。彼女の肩に両手を置いてそっと、体を離した。
「どうしたんだい?」
「私、やっぱり別れたくないの」
泣きじゃくる彼女の頭を撫ぜながら「ごめんね」と誤った。遥はそれを見て呆れた顔をしている。
見込みがないと彼女は悟ったようで、走り去っていった。
「兄」彼女が見えなくなると、遥は遥斗の顔をのぞき込んで話し掛けてきた。「俺の高校の子ばかり付き合うのやめろよ」
「なんで? 可愛いじゃん」
「しかも、俺に手紙くれた子もいんだろ」
「ひがみかい?」
遥は膨れてそれ以上何も言わなくなった。
彼のその嫉妬心が自分に向けばいいという思いを心の奥にしまった。
エレベーターに乗ると遥の手をとり、口をつけて『彼女ほしいの?』と唇を動かした。
「べつに」
照れたように、手を振りほどくとエレベーターから降りてしまった。遥斗は微笑みながら、彼の後を追って部屋に入った。
食材を台所に置くと、手を洗い料理を始めた。
「俺もやるよ」
「ああ」
遥は腕まくりをすると、食材の確認を始めた。
中学に行って少したったあたりから遥は積極的家事を行うようになった。
「なぁ、俺らのオヤジって今何してんの?」
唐突な質問だった。
遥はまっすぐな瞳で遥斗を見てきた。
「知らない。離婚してから時間が経ちすぎている。なんで?会いたい?」遥斗はゆっくり口を動かして伝えた。
「別に、今まで気にしたことなかっただけど、学校のやつに聞かれてさ」
「誰?」
「神田」
その名前を聞いた瞬間、遥斗は眉を寄せた。それを見て遥は首を傾げ「知っているの?」と聞いてきた。
遥斗はゆっくりと首を振った。
「そっか。そいつさ、小学校一緒だっただけど中学受験したんだ。で、そこでうまくいかなくて高校受験して俺と同じクラスなんだよ」
遥斗は以前、新宮が神田真人ともめた話を思い出した。彼は神田医師の息子であることを考えたら、高校が同じなことが偶然とは思えなかった。
「なんか、新宮が好きらしくてめっちゃアプローチしてくんだって。新宮がめちゃくちゃキレてた」
遥の話に頷くと、料理の続きをするように促した。彼は頷いて手を動かした。
顔を見るか手を使わないと会話ができない遥は料理に入ると無言になる。
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