【R18】僕だけの大切な弟。誰にもわたすつもりはない。〜DomSubユニバース〜

黒夜須(くろやす)

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第四十一話 星遥斗⑧

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長袖が暑いと感じる季節になった頃、市川からメールが届いた。
『依頼の件:氏名 早川渚(ハヤカワナギサ) 年齢45歳 無職・前科なし・住所不定』
ダイナミクスを聞いたが不明と回答がきた。
検査は義務だが記録が極秘扱いになっているため検査の有無の確認が困難なっている。そのため実質任意検査になっている。
「うーん」
メールを見ながら遥斗はうなり声を上げ、カレンダーを見た。カレンダーには登校日と掛かれていた。通信制の高校であるが年に4回ほど登校しなくてはいけない日があった。
「面倒くさい」
ため息をつきながら、遥斗は携帯をジーパンのポケットにしまい自室を出て一階に降りると台所に入った。
朝食の準備をしていると、遥が降りてきた。
「おはよう。すぐできるよ」
「うん」
遥は眠そうな声を出すと、台所を出て行った。しばらくすると、身なりを整えて戻ってきた。
「遥……?」
「うん?」席に座った遥が首を傾げた。
「体調大丈夫?」
いつもより顔色が悪い気がした。Subの匂いはいつもと変わらないが心配になった。
「平気だって」
「今日は休んだ方がいいよ」
「大丈夫」
遥はきっぱりと言うと、朝食を口の中に押し込みリビングルームを出て行った。
心配になった遥斗は、片付けもそこそこにして玄関へ行った。
「遥、体調悪いでしょ」
遥斗がいつもより強い口調で言ったが、遥は「大丈夫」の一点張りであった。
「大丈夫じゃないでしょ」いつも素直な遥がこの日は強情になり、遥斗は苛立ち大きな声を出した。「ダメだって、今日は家でゆっくりしなさい」
しかし、遥は思いっきり睨みつけると大きな声で「嫌だ」と言って、遥斗の横を通ろうした。
彼の腕を掴まえた。
「何すんだよ。離せよ」
大暴れをして、遥斗の手にかみついた。
「――ッ」
容赦なくかまれ、彼の歯が手に食い込んだが離すつもりはなかった。しかし、遥は目を大きくして突然口を離した。遥斗の手から出血していた。
傷を見て眉を下げる遥が可愛らしく、怪我の心配をしてくれるのが嬉しかった。
「今日は休みなさい」優しい言葉を使ったが突然、遥が「痛い」と言い出した。
「え?」
「手、痛いよ。そんなに強く掴んだら」
彼の手を強く掴みすぎたとすぐに反省して離すとそのすきに、遥は家を出て行ってしまった。
元気よく走り去る遥を見て、もしかしたら自分の思い過ごしかと反省した。
「匂いも変わらないし大丈夫かな」そう言いながら、遥を怒らせたことを後悔した。「過保護かな」
幼い頃から見ているから遥を赤ちゃん扱いしすぎたかと思った。
小さく息を吐くと、自室に行き出かける準備をしていると携帯にメールがきた。市川からであった。
『依頼の件:早川渚の動向、現在県外。一週間以上星遥に接近なし。本日で依頼期限。継続しますか?』
「ふーん」遥斗は携帯を見て考えた。
彼女の気配を感じたのは一度のみであり、市川によるとそれから二回ほど接近しているが直接の接触はない。
「動いて事を大きくする必要はないか」朝の遥の顔を思い出してため息をついた。「あんまり干渉するものよくないよねぇ」
遥の成長を喜ばないといけないと思いながら、市川に『終了』とメールを送ると鞄を背負った。

学校での作業全て終わると予定していたよりも遅い時間の電車になってしまった。
「遥の迎えに送れるじゃん」ため息をつきながら、夕焼け空を窓から見た。「もしかして、毎日の迎えもウザいって思われていたらどうしよう」
朝の遥の顔を思い出すたびに不安になった。反抗期と言うものは育児書で読んだが、うまく対応できなかった。
「知識だけじゃダメだね」
最寄り駅に着いたのは遥が自宅に到着している時間であった。
「カギは渡してあるから入れると思うけど」
彼とどうやって仲直りするかを考えていると、足取りが重くなった。
「嫌われていたらどうしよう」と考えているうちに自宅の前まで来た。あたりは薄暗くなり始めているのに、家の電気はついていなかった。
「え?」遥斗は首を傾げた。「もしかして待っているとか?」
遥斗は慌てて、いつも待ち合わせをする場所まで走った。
「ごめん」待っているなんて思いもしなかったため、焦った。「まだいるかな?」
不安と心配で頭がいっぱいになった。
いつもの待ち合わせ場所まで来ると、遥斗の表情は硬直した。
「……遥のランドセル?」
辺りを見回すが、誰もいなかった。
更に、靴までも発見すると遥斗の顔は真っ青になった。今までの自分の行動を全て後悔した。
遥は携帯を取り出すと電話をした。ワンコールで市川につながると遥斗は「早川渚を殺す。後始末頼みます」と告げ切った。
怒りで頭に血が上っているはずなのに冷静に早川渚を殺す手段を考えている自分がいた。
遥斗はゆっくりとあたりを見回し周囲の地形を思い浮かべた。
「遥を連れ込むとしたら、あの公園かな」
あたりをつけると、地面を蹴り素早く公園の中に入った。すると公園の奥の方で奇声が聞こえた。
声の方へ行くと女が新宮の顔を蹴り「大人に勝てるわけ、ないでしょ」と叫んでいる。更の奥には遥が血を流して倒れていた。特に耳からの出血が多かった。
頭の中でプツンと何かが切れた。
女を睨みつけると、痙攣起こし倒れた。怒りでGlare(グレア)の制御ができなかった。
「ごめんね。遅くなったね」と意識のあった新宮に優しく声を掛けた。
「星さん……?」地面に座り込んでいる新宮が見上げた。
彼女に待つように伝えると、遥斗は地面に突っ伏している女をふんづけた。
「なにするの?」
文句を言う女の髪を引っ張り、顔を上げさせ、更に強いGlare(グレア)を浴びせた。女は全身を震わせて、悲鳴を上げた。
「きゃー」
「お前、誰モノに手を出してんだ」
「キャー、やめ、ご、ごめんなさい」女の必死に謝った。
「謝れなって言ってないよ」遥斗は地面に落ちていた血だらけの枝を見つけた。「なに?これで遥の耳を刺したの?」
遥斗は枝を拾うとそれをじっと見た。
「違う」女は真っ青な顔をして首を大きく振った。「私は、やって……」
否定する女の言葉を聞かず、耳に枝を思いっきり刺した。女の耳から出血した。
「キャー」
逃げようとする女の髪をひっぱり更に強いGlare(グレア)をあびせた。
「ごめ、なさい。やめてぇぇ」
動けず泣き叫ぶ声を無視してズサズザ何度も抜き差しした。そのたびに周りに血が飛び散った。
耳が真っ赤に染まりぐちゃぐちゃになった。
「あぁ……」
女の声が出なくなり、血と涙、涎、汗で顔がぐちゃぐちゃなっていった。
「まだ、片耳ある」
遥斗はもう片方の耳も何度も刺した。
女の視点が合わなくなった。
「うぎゃー」叫びながら必死に謝った。「ごめんなさい。遥君が、可愛くて、可愛くて私は、Domなのだから遥君にコマンドが効果あった時は運命か……うぁ~」
女の『可愛い』と言う言葉に気持ち悪さを感じた。
こんな奴の目に遥が映っていたのだと思うと虫唾が走った。
「汚い目で遥を見るな」
遥斗は耳から枝を抜くと、彼女の目に刺したが女が瞳をつぶったのでうまいいかなった。
「よけるな」
遥は女の髪をひっぱり仰向けにした。強引に引っ張ったため髪がごっそりと抜けた。
「汚い」
髪を捨てると、目を無理やり開けた。
女は逃げようとしたがGlare(グレア)の効果があり動くことができない。
「あぁ……」
叫ぼうとしたが、声がかすれて出なかった。
遥斗はしっかりと狙いを定めると、眼球に枝をさした。
目に刺さると引き抜いた。
血が噴き出した。
何度も何度も刺して両目をつぶした。
女は血だらけになり、人相が分からなくなっていた。
叫ぶこともできなくなった女は地面をのたうち回ったが全く気分が晴れなった。

その時。

パトカーのサイレンが聞こえた。
遥斗はその音で遥の事を思い出した。
立ち上がり持っていた枝を騒いでいる女の方へ投げ遥のもとへ駆け寄った。
「ごめん。君たちを先に手当すべきだったね。頭に血が上った」 
倒れて動かない遥。
血だらけの新宮。
自分の無力差を考えの甘さを感じた。
救急隊員が来ると遥を担架に乗せた。新宮のことは他の救急隊員に任せ遥斗は遥と共に救急車で病院に向かった。
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