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第二十九話 星遥⑨
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――気配だけで相手の位置を知り戦うことを覚えたのに。
遥は地面に顔をつけて反省していた。
背中に激痛がはしり内臓が圧迫された。脂肪に踏まれたのだとすぐに分かったが身体が動かず、対処することができなかった。
どんどん背中が重くなってきた。
マズいと思った時、全身に電撃が走ったかと思うと一気に背中が軽くなった。それと同時に身体が動くようになった。
慌てて起き上がると、脂肪が壁に激突していた。
「新宮」
「お前、何やってんの?」
新宮は上げた足を下しながら眉を寄せて遥を睨みつけた。
「手紙に書いてあって」
「あ?」新宮はいつも以上に口が悪くなり機嫌も最悪のようであった。「バカか。どう考えても罠だろ」
「でも、兄に手紙を知られて」
「は?なに?村上雪菜の心配でもしたの?」
「へ? 村上……?」聞いたことがあるような名前であったが顔が思い浮かばず首を傾げると新宮はため息をついた。「そうじゃなくて、以前、新宮が言っていた『兄の本性』が分かるかもって思って」
新宮は更に眉を寄せた。
「前、手紙をたくさんくれた女の子が何人か引っ越ししたじゃん。それ兄と関係あるかなとか」
「そもそも……」
新宮が何か言いかけたところで、言葉が止まった。
坊主頭をした長身の男が、新宮の口と胴体を手事押さえつけていた。彼女の鳩尾を殴り意識を失わせえると抱えと脂肪を蹴り飛ばした。
「うぅ……」
脂肪はうなり声をあげながら頭を押さえて起き上がった。
「何、簡単にのされてんだよ。それでもDomか」
「……すいません」
そう言いながら、脂肪は長身から投げられた新宮を受け取った。
「それ、多分switchだ。しかも面もいい上玉だ。高く売れる。大切にしろよ」
長身の言葉に、脂肪は「はい」と返事をすると宝のように新宮を抱き上げた去った。
「さてと、あの雑魚かぁ」長身はニヤニヤと笑いながら、近づいてきた。
遥は慌てて目をつぶると、長身の気配を負った。しかし、その瞬間に足を蹴られ地面に倒れた。起き上がろうとしたが、背中や頭を踏みつけられた。
「うぅ……」
何度も踏まれて激痛が走ったが声を上げるのを我慢した。
口の中が切れたらしく血の味が広がった。
――クソッ。
遥は自分が情けなかった。周囲の人間に勝てるようになったからと奢っていた。
バカな誘いにのってやられて新宮までも巻き込んでしまった。これでは小学生のあの時から全く進歩がない。今回は警察が来ていない分、分が悪い。
遥は地面に顔をつけて反省していた。
背中に激痛がはしり内臓が圧迫された。脂肪に踏まれたのだとすぐに分かったが身体が動かず、対処することができなかった。
どんどん背中が重くなってきた。
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慌てて起き上がると、脂肪が壁に激突していた。
「新宮」
「お前、何やってんの?」
新宮は上げた足を下しながら眉を寄せて遥を睨みつけた。
「手紙に書いてあって」
「あ?」新宮はいつも以上に口が悪くなり機嫌も最悪のようであった。「バカか。どう考えても罠だろ」
「でも、兄に手紙を知られて」
「は?なに?村上雪菜の心配でもしたの?」
「へ? 村上……?」聞いたことがあるような名前であったが顔が思い浮かばず首を傾げると新宮はため息をついた。「そうじゃなくて、以前、新宮が言っていた『兄の本性』が分かるかもって思って」
新宮は更に眉を寄せた。
「前、手紙をたくさんくれた女の子が何人か引っ越ししたじゃん。それ兄と関係あるかなとか」
「そもそも……」
新宮が何か言いかけたところで、言葉が止まった。
坊主頭をした長身の男が、新宮の口と胴体を手事押さえつけていた。彼女の鳩尾を殴り意識を失わせえると抱えと脂肪を蹴り飛ばした。
「うぅ……」
脂肪はうなり声をあげながら頭を押さえて起き上がった。
「何、簡単にのされてんだよ。それでもDomか」
「……すいません」
そう言いながら、脂肪は長身から投げられた新宮を受け取った。
「それ、多分switchだ。しかも面もいい上玉だ。高く売れる。大切にしろよ」
長身の言葉に、脂肪は「はい」と返事をすると宝のように新宮を抱き上げた去った。
「さてと、あの雑魚かぁ」長身はニヤニヤと笑いながら、近づいてきた。
遥は慌てて目をつぶると、長身の気配を負った。しかし、その瞬間に足を蹴られ地面に倒れた。起き上がろうとしたが、背中や頭を踏みつけられた。
「うぅ……」
何度も踏まれて激痛が走ったが声を上げるのを我慢した。
口の中が切れたらしく血の味が広がった。
――クソッ。
遥は自分が情けなかった。周囲の人間に勝てるようになったからと奢っていた。
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