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第二十三話 星遥③
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「待っててくれたのか?」
遥が声を掛けると新宮は目を細めて頷いた。彼女は神妙な顔をしながら、靴に履き替えた。
通学路を歩き、しばらくすると新宮に肩を叩かれた。
「お前、耳が聞こえないこと黙って過ごすきか?」
「うん」
彼女の質問に即答した。
ここ今日一日過ごしたが会話は成立していた。ただ、音量さえ気をつければいいだけで問題はないと思っていた。
「そーか」新宮は顎を掴み考え込んだ。
次の瞬間、新宮が視界から消えた。
驚いて当たりを見回していると背中から衝撃をくらいよろけてその場に座り込んだ。
「な、なにすんだよ」新宮は顔を近づけると、大きく口をあけた「スキだらけなんだよ」
新宮は人差し指を立てると、自分の唇を指さした。
「お前は見ている奴の言葉が分かるだけ。視界外からの音が聞こえてない事を意識してない」
「……でも、大丈夫だった」
「たまたま」新宮の真剣な瞳に、遥の眉を下げた情けない顔が映った。「廊下で教師や女子に挨拶されていたよ。まぁ、それは無視してもいいが今のように攻撃を食らったら?」
「……そんな、攻撃なんて」
「お前、話しかけた奴の言葉無視してんだよ。それでカッとなる奴はごまんといる」
「……」新宮の言葉は正論すぎて何も言えなかった。「どうすればいい?」
「私に聞くなよ。星自身のことでしょ」
強い口調で言われると、何も言えなくなった。
彼女の意見は正しい。
背中に触れ、蹴られた痛みを感じると一気に不安が襲ってきた。
「そんな顔しない。決めたら助けるよ。どーしたい?」
両手で頬を挟まれた。唇が突き出すと「変な顔」と新宮は笑った。
彼女の優しさに心が暖かくなった。
「耳の事は知られたくない。そこからダイナミクスが知られたら……」
遥が不安な声でそう言うと、「うーん」と唸りながら新宮は顎を掴み考えた。そして、鞄から携帯を取り出した。
「……なにそれ?」
彼女はいつもスマートフォンを使用していのに、携帯を取り出した事に驚いた。
新宮は人差し指を自分の口の前に立てると電話を始めた。受話器と手で口元が隠れて誰と何を話しているのか分からない。
不安になったが、彼女が電話を終えるまで待った。
「よし、決まった」
電話を終えた新宮に手を掴まれた。
色々聞きたかったが彼女はそれを許さず、遥の手をひいて走った。
「……え、ちょっ……」
新宮の速さについていくのはキツかった。以前は遥の方が速かった。
一年くらい家に閉じこもり、読唇術と手話の取得に集中して身体を動かしていない。
追い抜かされた事に悔しさを感じ、足に力を込めた。
遥が声を掛けると新宮は目を細めて頷いた。彼女は神妙な顔をしながら、靴に履き替えた。
通学路を歩き、しばらくすると新宮に肩を叩かれた。
「お前、耳が聞こえないこと黙って過ごすきか?」
「うん」
彼女の質問に即答した。
ここ今日一日過ごしたが会話は成立していた。ただ、音量さえ気をつければいいだけで問題はないと思っていた。
「そーか」新宮は顎を掴み考え込んだ。
次の瞬間、新宮が視界から消えた。
驚いて当たりを見回していると背中から衝撃をくらいよろけてその場に座り込んだ。
「な、なにすんだよ」新宮は顔を近づけると、大きく口をあけた「スキだらけなんだよ」
新宮は人差し指を立てると、自分の唇を指さした。
「お前は見ている奴の言葉が分かるだけ。視界外からの音が聞こえてない事を意識してない」
「……でも、大丈夫だった」
「たまたま」新宮の真剣な瞳に、遥の眉を下げた情けない顔が映った。「廊下で教師や女子に挨拶されていたよ。まぁ、それは無視してもいいが今のように攻撃を食らったら?」
「……そんな、攻撃なんて」
「お前、話しかけた奴の言葉無視してんだよ。それでカッとなる奴はごまんといる」
「……」新宮の言葉は正論すぎて何も言えなかった。「どうすればいい?」
「私に聞くなよ。星自身のことでしょ」
強い口調で言われると、何も言えなくなった。
彼女の意見は正しい。
背中に触れ、蹴られた痛みを感じると一気に不安が襲ってきた。
「そんな顔しない。決めたら助けるよ。どーしたい?」
両手で頬を挟まれた。唇が突き出すと「変な顔」と新宮は笑った。
彼女の優しさに心が暖かくなった。
「耳の事は知られたくない。そこからダイナミクスが知られたら……」
遥が不安な声でそう言うと、「うーん」と唸りながら新宮は顎を掴み考えた。そして、鞄から携帯を取り出した。
「……なにそれ?」
彼女はいつもスマートフォンを使用していのに、携帯を取り出した事に驚いた。
新宮は人差し指を自分の口の前に立てると電話を始めた。受話器と手で口元が隠れて誰と何を話しているのか分からない。
不安になったが、彼女が電話を終えるまで待った。
「よし、決まった」
電話を終えた新宮に手を掴まれた。
色々聞きたかったが彼女はそれを許さず、遥の手をひいて走った。
「……え、ちょっ……」
新宮の速さについていくのはキツかった。以前は遥の方が速かった。
一年くらい家に閉じこもり、読唇術と手話の取得に集中して身体を動かしていない。
追い抜かされた事に悔しさを感じ、足に力を込めた。
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