【R18】僕だけの大切な弟。誰にもわたすつもりはない。〜DomSubユニバース〜

黒夜須(くろやす)

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第十四話 後悔と反省③

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ひな子は窓の外を見た。学校から徒歩で通える自宅はとっくに過ぎていた。彼女は小さく息を吐いて自分の手を見た。神田を殴ったことで少し手が赤くなっていた。
感情的になってしまった自分を恥じた。衝動的な行動は良い結果を生み出すことが少ない。
「着きました」
母に連れてこられたのは父が経営する病院であった。そこで、精密検査を受けたが特に問題となることはなかった。
「ひな子、なんともないようで良かった」
結果を聞いた後、待合室にいると父が現れた。まだ、太陽が沈んでいないのに彼は白衣ではなくスーツを着ていた。
「帰ろう。母さんはもう先に帰ったのだろう」
「うん。仕事は?」
「娘が暴行されてのんきに仕事している親はいないよ」
父は優しく笑っていたが目の奥が鋭く光った様に見えた。それを見た瞬間ゾクリと背筋が寒くなった。
「……あの、神田の家とはどういう関係?」
「神田君?」父は首を傾げて、手で顎に触れた。「あ~、ただの後輩だよ」
「……後輩」
「そ、僕よりあとから来ただけの人間」まるでどうでもいい様に言った。そして、彼は何か思いつた様に目を開くとじっとひな子を見た。「今回の件は幸運だったよ」
暴行事件がおこったのに幸運と言う父にひな子は首を傾げた。
「君が、女であった事。神田君の息子君が君より体格がいい事。そして、なにより息子君が君に手を上げた」
「私も彼を殴りしました」
小さな声で言うと父はニヤリと嫌な笑いを浮かべた。
「息子君は男で君は女だ。そして、息子君より小さい」ゆっくりと口を動かしながら腰を曲げて、座っているひな子の顔を覗き込むと人指を立てた。「更に彼は中学受験するんだって?」
父はすっと立ち上がると「いいねぇ」と言って顎の手をあて微笑んだ。その顔は悪魔の様に見えた。
父が何を考えているか分からないが嫌な予感しかしなかったが、神田がどうなろうとひな子にとってどうでもいい話であった。だが、星がSubであることを知っているが気になった。
この事件は星の兄、遥斗がストーカー被害にあい弟が巻き込まれたという事になっている。私も事件に関与してない事になりダイナミクス関連については公になっていない。
「あの、星は?」今までと脈絡のない言葉に、父は目を大きくした。「お父さんはダイナミクスについて研究しているんだよね? あの時、私や星が運び込まれたのはこの病院だし」
「そうだね」
父はニヤリ笑った。それはまるで面白い物を見つけた子どものようであった。
「彼、あれからもここに通院してるんだよね?」
「うーん」父親は顎に手を当てて、自分の頬を潰すように抑えた。「言えないよねぇ。守秘義務があるんだ。特にダイナミクス関連は厳しいだよぇ」
性質を考えれば、厳しく管理されているのはよく分かる。ならば、なぜ神田の母が知っていたのか疑問感じた。
しばらく星とあっておらず彼が現状はよくわからない。
唇を抑えて考えていると父が「そうだ」と言う声を上げたので彼の方を見上げた。
「ダイナミクス関連の研究に興味あるなら、神田君に聞くといいよ。彼はよく講義を開いているからね」
「え、神田の父? 後輩って言ってなかった?」
「そう、後輩だよ」ニコニコとする父は何やら考えがあるようだが、それが読み取れない。「そうだ。お腹は大丈夫? 明日も受診するといいよ」
父はひな子の腹部を指さしている。相変わらず笑顔の父は全く心配している様子はない。実際、腹部は痛くないし検査結果も問題はない。
楽しそうに見下ろす父をじっと見返した。
「……何時?」
父はスマートフォンを取り出すと素早く操作した。
「10時くらいかな。学校は休んだら? その方が色々と都合がいいんじゃん?」
「……都合」
父の見ている未来がひな子には見えなかった。
経験の差。
能力の差。
遥か上にいる父を尊敬すると同時に力のない自分に腹立たしさを感じた。
「あはは、その顔いいねぇ」
「……」
彼に返す言葉は何もない。力のない自分が今なにを言っても負け犬の遠吠えだ。
父と自宅に帰宅すると、家の前に見たこともない高級そうな車が止まっていた。それを見て運転席にいた父は楽しそうに笑った。
車を自宅の敷地内にあるにある駐車場に止めると高級車の近くに人影が見えた。その人影がゆっくりと近づいていた。父は人が良さそうな顔を作ると車から降りた。ひな子もそれに続いた。
「藪遅くの申し訳ございません」
頭を下げたのは大きな腹をした髪の薄い男性であったのその後ろに昼間、大きな顔をしていた女性と子どもがいた。彼らは今、真っ青な顔をして下を向いている。
「やぁ、神田君どうしました?」
「このたびは愚息が大変も申し訳ございません」男性は靴に頭がつくのではないかと言うほど下げていた。「お嬢様の腹部を蹴ったようでお怪我はございませんでしたか?」
「検査結果は問題ないみたいだけどねぇ」
そう言いながらちらりと父はひな子を見た。どうしていいか分からなかったが、腹部を抑えて辛そうな顔をしてみた。
「そうですが」男性は頭を上げると、風呂敷に入った包みを渡した。「つまらない物ですがどうぞ」
男性が差し出した物を父は細い目で見てから「どうする?」とひな子に声掛けた。
ひな子はじっと包みを見て受け取る意味を考えた。
「いりません」一言いうと、頭を下げて家の中に入った。それを見た父も彼らに軽く手を振ると、笑顔にまま家の中に入り玄関の扉を閉めた。
「ねぇ、なんで受け取らなかったの?」靴を脱ぎながら父は聞いた。
「なんとなく」
「そう、じゃこの件はひな子に任せるよ。僕からは何もしない」靴を脱ぎ終わった父はゆっくりとひな子の横を通りながら「僕の力が必要なら言って」と言うと二階へ上がった。ひな子は彼の姿が言えなくなるまで階段を見上げていた。
食事と入浴を済ませると、自室のベッドに転がった。部屋中に様々な分野の参考書が乱雑におかれどれも読み込んでいるため折り目がついていた。
「何が正解だろ」
天井を見ながら今後も行動を考えた。
父は昔からひな子に何も強制はしない代わりに、明確な助言もない。調べて分かることは書籍名を一言言うだけだ。
「今回は大分ヒントくれたかな」と考えながら布団をかぶった。
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