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第五話 新宮ひな子②

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星兄弟とは長い付き合いだ。二人とも平常時は冗談が言える関係であるが、どちらかが危機的状況になると狂気とかす。
「一緒に帰ろう」
小学校時代、いつも星と一緒に帰宅していた。
ダイナミクスの自覚症状がでるのが十三歳以降であるため検査も十三歳前後となる。つまり小学校時代はそんなの関係なしに平和過ごしている子どもが多い。
「いいよ」
ひな子が答えると、星は嬉しそうに笑った。感情が素直に表に現れるため表情がくるくると変わりその愛らしさからクラスでも人気があった。勿論、顔が整っていることもある。
星とは途中の十字路でわかれる。
「兄」
彼の兄である星遥斗の姿を見つけると、星は嬉しそうに駆け寄った。
「おかえり」
優しく星に声をかけながら、彼はひな子の方をみた。
「新宮さん。いつも遥の世話をありがとうね」
「俺が世話してんだ」
頬を膨らます星に星遥斗は「はいはい」と言いながら頭をなぜた。それから彼は鞄からちいさな包を出してひな子の所に来た。
「新宮さん、これ」
「ありがとうございます」ひな子は突然渡された包に驚きながらも受け取った。
「今日、お菓子作ったんだ。良かったらどうぞ」
お菓子と言う言葉にひな子の心は踊った。星遥斗の手料理を何度も食べた事があるがどれも絶品であった。
「なにそれ、俺のは?」
星は不満そうに星遥斗の服を引っ張った。彼は笑いながらそれを見て「家にあるよ」と言った。
「そっか」星は満足そうな顔をするとひな子の方を向いた。「新宮、大切に食べろよ」
「言われなくても味わって食べるよ」
包を抱きかかえると星遥斗は照れたように頭をかいた。
「あ~、そんなに凄いもんじゃないし口に合わなかったら捨てていいよ」
「ありえない」
ひな子と星は同時に、星遥斗を見て断言した。鼻息を荒くて強く主張する二人に彼は嬉しそうに笑った。
「またうちにおいで。今度は遥にも手伝わせてご馳走するから」
「俺もかよー」
眉を曲げて口を尖らせる星に彼は「世話になっているでしよ」と言った。すると直ぐに星は「世話してるのは俺」と主張する。
「星の料理も楽しみにしてるよ」
微笑むと星は「そーかよ」とぶっきらぼうに言うと手を降って、足を進めた。それを見た星遥斗は笑顔でひな子に手をふり挨拶をすると星の後を追った。
ひな子に向けた笑顔の目が笑っていないことくらいはすぐに気づいた。
「……」手にした菓子の袋を開けた。『手作り』と言っていたが、個装された袋にはコンビニのマークがついていた。更に白紙の手紙。
明確な意味は不明だが好意的な物ではないことは確かだ。
「宣戦布告だよね」
毎回であるが、これ以上の星遥斗からこれ以上のアクションはない。
「星遥斗に何かしたかな?」
彼に敵視される理由はここ当たりがない。
「面倒くさい」
ひな子はコンビニの袋を開けるとクッキーを口に入れた。
「相変わらず、マズい」
市販が菓子を食したことがなかったひな子だが、あまりのマズさに菓子に何か細工されている可能性は考えていた。だからこそ食べたのだ。
「負けないよ」意味不明な攻撃に屈するなんてありえなかった。
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