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第二話 兄弟②

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ふと目が覚めると、遥斗がいないことに驚いて遥は飛び起きた。彼が寝ていた布団がまだ暖かいことを確認すると寝室の扉を開け廊下に出た。すると、リビングルームの方で音がしたため向かった。
「……兄」
キッチンを除くと、そこには料理を作る遥斗の姿があった。彼は遥に気づくと振り向き、ゆっくりと口を動かして「おはよう」と言った。
持っていた包丁を置くと、傍にきて遥の手を取り、手のひらに口をつけた。
「ご飯にするから顔洗っておいで」
遥斗の口が動いた。彼のとってはただの会話の手段であるが遥にとっては心臓の動きが速くなる行動であった。それを知られこの行動をやめられるのが怖かった。
彼が自分を弟としてしか見てない事は知っている。
冷水で顔を洗い、気持ちを引き締めた。
自分の気持ちを一生隠し通すつもりはなかった。アピールして頃合いを見て告白しようと思っていたが全く脈を感じない。負け試合はしたくなかった。
小さく息を吐くと、鏡の中の自分を見た。遥斗の好みは分からないが自分の顔が整っている方だと自覚はしている。しかし、生まれた瞬間から一緒にいて同性である遥斗には通用しない。そもそも、兄弟であるから多少は似ている。
「……兄弟」
遥はつぶやきながら自分の仕事をしない耳に触れた。
その時、背後で気配を感じた。振り返ると眉を寄せた遥斗が立っていた。彼の形の良い口は、「さっさとご飯を食べろ」と言っているようだ。普段はゆっくりと口を動かすが今は早かった。
彼は腕にしている時計を見せてきた。遥は目を細めてみると、出発時間十五分前であった。
「あ……、ごめん」
慌てて、リビングルームに戻ると食事をすませ寝室へ行った。着替え終わり、リビングルームに戻るとキッチンにお弁当が置いてあった。遥はそれを鞄に入れて玄関を出ると、周囲を見た。
「……さき行った」悲しげな声を上げると、エレベーターへ乗り駐車場へ行った。
駐車場に着くとすぐに、遥斗の車に駆け寄った。
「……先行くなって」
文句を言いながら助手席に乗り込む遥を運転席にいた遥斗は確認すると、すぐにアクセルを踏んだ。しばらく走った所で遥は横目で運転する遥斗を見た。黙って運転する彼の姿はとてもかっこいい。運転する時だけかけているサングラスはよく似合い、それを見るだけで気持ちが高揚した。
そんな楽しい時間もあっという間にすぎ、大学の門で車は止まった。
「気を付けて」
遥斗はゆっくりと口を動かしてから手も動かした。口だけでも彼の言いたいことは理解できるが手も付けてくれる事に感謝した。
遥斗の赤い車を見送った後、ゆっくりと正門に向かった。多くの学生が楽しそうに話しながら登校していたが遥は特に気にせずに足を進めた。正門を入ってしばらくすると、視界に女子生徒が入ってきた。
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