上 下
125 / 131

124限目 攻略対象者の処理

しおりを挟む
 レイラはまゆらの様子を心配して声をかけると、「大丈夫です」と笑顔を見せた。彼女はゆっくりと深呼吸をすると部屋にある時計を見た。

「そろそろ夕食の時間ですね」
「そうですわね」

 レイラはまゆらの態度を不思議に思いながらも夕食に向かった。
 タエコが作る料理はとても美味しく、まゆらに対する違和感も忘れて料理を楽しんだ。まゆらも笑顔で食べていたのでレイラは安心した。

 食事が終わると、まゆらはレイラと別れて自室に入った。
 そして、大きなため息をついた。

「なんでだー。中村彩香と阿倍野相馬をくっけたじゃないのか。ふたりでイチャイチャしててよ」

 まゆらはイライラしながら、ドカンと椅子に腰掛けた。そして、マイク付きのヘットフォンをつけるとパソコンを開き、ネット電話をかけるとすぐに相手がでた。

「リョウさん?」
『なんですか?』
「中村彩香と阿倍野相馬と付き合ったのですよね」
『そうですね。その瞬間見ていないですか?』

 まゆらは彩香の後を追っていた相馬を誘導して、彩香と2人きりにした時の彼らの会話を思い出した。

「阿倍野相馬は中村彩香の犬になると言っていました」 
『犬?』

 リョウの驚く声がした。

「関係はいいです。仲良くなればレイラさんに近づかないと思ったのに……」
『友だちくらい、いいのではないですか?』

 まゆらは歯をガタガタと震わせ、手を握りしめた。

「ダメ。ダメです。言いましたよね? 中村彩香に何かあれば阿倍野相馬がそれを恨み、レイラさんを学園と大道寺化から追放するのですよ」
『その話は何度も聞きました。えっと前作の記憶で、レイラさんが中村さんをいじめ学園から追い出すのですよね? 更に彼女が自殺して阿倍野君がレイラさんを恨むと』
「信じていないのですか?」
『ウソだとは思っていません』

 まゆらはため息をついて、唇をかんだ。

「まぁいいです。中村彩香がいるかぎり阿倍野相馬は私に惚れないと思うし」
『その自信が私にはわかりません』
「彼は攻略対象だから、私に惚れるのです」
『攻略対象、それに私も入ってるですよね』
「そう。でも豊川亜理紗とくっついたからもう私には興味ないですよね?」
『亜理紗の可愛さを教えてもらいと付き合えた事は感謝してますが、初めから貴女にそういった興味はありませんよ』
「最初は亜理紗様のことイヤな顔してた癖に。まぁいいです。これでリョウさんと阿倍野相馬はクリアですから」

 まゆらはニヤリと笑い、指を二本折り曲げた。

『その、コマのような扱いなんとかなりません?』
「後は、横山大晴ですね」
『聞いてませんね』

 ヘットフォンからため息が聞こえたが自分の世界に入ってしまったまゆらには聞こえなかった。

「それと、忘れるところでした。二階堂春様です」
『え? 二階堂さんもその、対象なんですか? 彼女は横山君が好きみたいですよ』

 まゆらは「横山、二階堂」とつぶやき、リョウに返事をしなかった。すると、リョウのため息が聞こえた。

「レイラさんが横山君をこの段階で黒服落ちさせたのは良かったです。これであの性格が助長されることはないですね」

 まゆらは現状をパソコンに打ち込み確認していった。

『独り言なら切りますよ』
「何言ってるのですか。このままじゃレイラさんひどい目にあうですよ。協力するって言いましたよね?」
『そうですが……』

 リョウのため息の聞こえたがまゆらは気にしない。

「横山大晴と二階堂春を誰かとくっつけなくては。阿倍野相馬は想い人がいるから楽で良かったですし、リョウさんは自主的に動いてくれるので助かりました」
『だから、コマじゃないですって。貴女が妹を助ける為に動いていなければ家から追い出しているところです』

 低い声で言うリョウに、まゆらはニヤリと笑った。

「それを聞いて安心しました。私に惚れないでくださいね」
『だから、その自信がよく分かりません。阿倍野君に横山君、それに二階堂さんに私の全員に好かれるって。好みも性格も違う人間ですよ』

 リョウがあり得ないという態度をすると「それがゲームなんです」とまゆらは言った。

 まゆらは彼に何度も説明しても、どこか馬鹿にしているようでイライラしていた。それから少しリョウと話をすると通信を切った。

 まゆらはパソコンを打ち込みながら、今の関係を表にしてみた。

「……さっき、春は大晴に惚れてるっていたよね。振られて仲違いしてないのか? 春は両刀だけど大晴は…
 …。いや、でも、彼がいいなら春とくっついてもらってもいいな」

 独り言を言いながら、まゆらはパソコンに打ち込んでいった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

処理中です...