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十八刑
しおりを挟む——そして、見学日当日。
見学期間は10日間。
一先ず、私が目を付けている指導員は3人。見学の時間帯は昼休みか放課後が主になり、指導員の都合によって見学できない場合も考えられる。1日1人単位で見学に行く予定ではあるものの、もしも期待が外れてしまった場合も考えると決してゆっくりとはしていられない。
最初に見学に行ったのは、ロイの本命 ジェームズ・サリ指導員。今年で齢58歳。二代前の死刑執行人……つまり私のお爺様の時の死刑執行補佐官という経歴を持っている為、より専門性の高い講義をウリに、死刑執行人希望の生徒からは絶大な人気を誇っている。
「我がクラスでは、現場実習にて本物の死刑執行人から直接話を聞き、事例分析を元に講義を行っていきます。かくゆう私自身も元死刑執行補佐官でしたので、死刑執行人着任に向けた本格的な指導が売りとなっております」
卒業生の実績も悪くはない。目が高いロイが気に入る訳なだけある。それに、早期の段階で本格的な死刑執行人指導をするクラスは彼のクラスくらいだろう。元補佐官であったからこそできる授業カリキュラムの組み方と言っても過言ではない。
次に見学に行ったのが、ソブチェル・ダートフ指導員。40歳。通称 死刑執行人マニアオタク。
「吾輩のクラスでは、他クラスに比べて現場実習に赴く時間を大幅に削減しております。というのも、執行現場をまだ見る事が出来ない今の君達の時期、処刑場に行っても意味がない。はっきり言って時間の無駄。初回授業で処刑場内を見学できたのなら、首切り現場の見学までこの教室で死刑執行人の歴史や事例研究、道具説明などを講義し、事前学習に徹底します」
彼はジェームズのように補佐官などの経歴は無いものの、死刑執行人に関する机上の専門知識はジェームズ以上と言われている。
本人が補佐官にならなかったのは、噂では血を見ると立ったまま気絶するからという本当なのか嘘なのか分からない理由らしい。
しかし夢を諦めきれず、実践経験は積み上げず死刑執行人について研究していると、いつの間にかマニアオタクという変なあだ名を付けられていたという話だ。
比べればそこまで差はない。元補佐官という伯があってジェームズの方が良い印象があるものの、どちらに入ってもハズレと言うのは無さそうだ。
そして、いよいよ問題のクラスの見学だ。
「問題のヴァージットのクラスは……」
「本当に行くのか? ラルフ」
「別にロイは無理に付き合わなくてもいんだよー」
というか、元々ハイノと二人で見学に行こうって言ってたのに、しれっと付いてきてるな。ハイノの事をまだゴミだ何だと言っていたくせに、私と彼が仲良いから何となく仲間外れにされる感覚が癪に触るのだろうなぁ。
「ハイノも気が乗らないなら私一人で行くよ」
「偶には自分の選択外の物に目を向けておくのもいいだろう! それに、噂のロクデナシ指導員をこの目で一眼見ておきたい興味もある! この見学期間が好機だ!」
「嫌じゃないならいいんだけど、本人の目の前でロクデナシとか絶対言わないでね」
ヴァージットの教室は、彼のクラスに生徒がいない為、指導員の部屋が並ぶ旧校舎3階の奥。指導員の部屋の中で最も狭い部屋だ。
部屋の灯りが付いていた為、早速ノックをしてみるも中から音沙汰がない。試しにドアノブを捻ってみると、鍵はかかっていなかった。
「失礼しまー……」
「な、な!?」
「むむむ!!?」
部屋の中を覗いた3人は、あまりの規格外さにその場で固まった。
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