私前世が視えるんですけど、彼は運命の人ですか?

mii

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5.一緒に帰ろう

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教科書を貸してから、空野くんは私を見つけると笑いかけてくれるようになった。

廊下で見かけても、今までは私が目で追うだけだった。

・・・目で追ってるのは今もだけど・・・

でも空野くんが私に気づくと、にこって笑ってくれたり、ちょっと手を挙げてくれたり、反応してくれるようになって。

なんか、距離が縮まったみたいで、うれしい。



「ユキー。最近なんか、楽しそうだよね?」

カナがにやにやしながら私を見る。

今日は、お昼をカナと一緒に食べてる。

カナが私のクラスにお弁当を持ってきた。 隣の席の村山くんは学食に行くらしく、快く机を貸してくれた。

「ええー? そうかな?」

笑って言うけど、カナはごまかせないよなあ・・・

「私知ってるよ! ユキ、空野くんと仲良くなってるでしょ!」

カナが私をビシって指さす。

「今日見たよ! 廊下で、空野くんとしゃべってたの」

「しゃべってたって程じゃないよ。 『今日小テスト嫌だねー』って言ってただけだし」

「しゃべってるじゃん! 前は全然知り合いでもなかったんだし・・・ やっぱり、教科書貸してから?」

「そうだね。 あれから、見かけたら笑ってくれるようになったから」

空野くんの笑顔を思い出す。 ほんとにカッコいい。

カナは机に肘をつき、手に顎を乗せて、目を細めて私を見た。

「急に仲良くなってさ、イイ感じだよねー」

「そんなことないって。 ちょっと、話するくらいだから」

「ええー、でも、前は見てるだけだったんだし、すごい進歩じゃない?
これはもしかして、初彼、かもだよ?」

カナの言葉に、心臓が跳ねる。

「ちょ、っと、やめてよ! そんなわけないでしょ」

「いや、なくないって。
だいたい、ユキはモテるのに、中学の頃も全然彼氏作んなかったじゃん」

「そんな、モテてなんてないって」

告白は・・・2、3回はされたことはあるけど。

でも好きな人とかはいなかったし、自分が好きだと思ってない人と、つき合おうとは思わなかったから。

「モテてたよー? 告白されたのは・・・3回?くらいだっただろうけど、ユキのこと好きっていってる男子、結構多かったんだから」

カナは肘で私をつんつんつついてきた。

「あの頃は『好きな人はいないし、自分が好きと思ってない人とはつき合わない』って言ってたけど・・・
でもさ、今、空野くんに告白されたら、つき合うでしょ?」

「えっ」


空野くんと・・・つき合う、とか。

そんな・・・・


「な、ないない。 空野くんがそんなこと、ないでしょ」

慌てて否定するけど、カナは意地悪な表情になった。

「『空野くんが』そんなことない、ってことは、ユキ的にはアリってことじゃん?」

「ちがうってば。 もう、空野くんに失礼、だよ」

私は少し怒って、お弁当のソーセージをぱくって食べた。

カナは黙ったけど、ニヤニヤして私を見てるのが、カナの方を見なくてもわかる。


お弁当を食べ終わったころ、私の前の席の佐々木くんが戻ってきた。

「あ、佐々木ー!」

カナが佐々木くんに話しかける。 佐々木くんも、カナを振り返って笑顔になる。

2人は最近イイ感じなんだ。

同じバスケ部っていうのもあって、話も合うし、仲良くしてるみたい。

カナはお弁当箱を片付けて、佐々木くんの席の横に立って、楽しそうに話してる。

そんなカナを見て、私も自然と笑顔になる。



「あれ、村山、いない?」


ふいに響いた声。

私はびっくりして振り返った。


「そ、空野くん」


村山くんに用事があったのか、空野くんが村山くんの席に来ていた。

カナと一緒にお弁当を食べるために机をくっつけていたから、必然的に私との距離も近くなってて。


「ごめんね。 お弁当食べるのに借りてたから」

私は慌てて机を離そうとした。

「あ、いいよ、このままで」

そう言って、空野くんは村山くんの席に座った。


えっ、ち、近いよ・・・!

カナとだったら全然平気だけど、男子とこんな至近距離になることって、ないから・・・!


空野くんの方を見れなくて、私はいそいそとお弁当を片付ける。

「ね、守崎さん」

話しかけられるけど、やっぱり、空野くんの方は見れない・・・・!

「な、なに?」

返事をしないのはさすがに失礼だし、顔は見ないまま返事をする。


「今日、一緒に帰らない?」


えっ、

今、なんて・・・


まさかそんなこと言われるなんて。

私は返事もできずに前を見たまま固まってしまった。


「あっ、もしかして、予定あった? だったら、ごめん」

「ち、ちがうのっ」

慌てて否定しながら、私は空野くんの方を向いてしまった。


空野くんのキレイな瞳が、私を見てる・・・!

だめだぁ、また、固まっちゃうよ・・・!


空野くんはにこって笑って、

「今日から試験前で部活休みだからさ。 よかったら、と思って」

そ、そっか。 今日から試験前で部活は休みになるんだ。

「あ、試験前なんだから、勉強したいかな。 オレ、時間があるから寄り道できるじゃんとか思っちゃって」

空野くんが少し恥ずかしそうに言う。

「そんなに遅くならないようにするから・・・ どうかな?」


どうしよう・・・

すごく、うれしい。

恥ずかしくて、顔が赤くなってる気がする。


私はコクンってうなずいた。

空野くんがパって笑顔になる。

「よかった! じゃあ、HR終わったら、迎えに来るから」

そう言って、空野くんはさわやかに手を振って教室を出ていった。



呆然として、空野くんが行った方を見たままの私に、

「ユキーーーーー!!!」

カナががばって抱き着いてきた。

「ユキ、やったじゃん!」

「カナぁ・・・・」

今頃になって、心臓がバクバクいってる。


空野くんと、一緒に帰るんだ・・・・


「そ、うだ。 カナ、一緒に帰ろうって言ってたのに」

試験前の休みは、だいたいカナと一緒に帰ってる。

「なに言ってんの! 私より空野くんでしょ! 行ってきなよーー」

カナは満面の笑みを見せてくれた。


「守崎さん、空野のこと好きなの?」

ふいに佐々木くんに訊かれた。

ていうか、カナだけじゃなくて、佐々木くんにも見られてたし聞かれてたよね!?

恥ずかしすぎる・・・!

私はぶんぶんと首を振った。


「佐々木、ユキをいじっちゃダメ」

カナが助け船を出してくれる。

「ユキは空野くんと帰るから、私、一人だなー」

そう言って、カナは佐々木くんのことを見た。

佐々木くんは笑って、

「じゃあ、どっか寄って帰る?」

「やったー! 行く行く!」


カナ、すごーい。自然に佐々木くんのこと誘って。

カナは私にピースサインをした。


帰り・・・ 空野くんと一緒・・・・・

すっごい、どきどき、するなあ・・・・・




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