私前世が視えるんですけど、彼は運命の人ですか?

mii

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2.恋愛相談

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「ユキー!」

HRが終わって、みんな帰り支度をしている時。

教室のざわめきの中でもよく通る声が、私の名前を呼んだ。


教室のドアを振り返ると、ショートボブの髪を揺らして、笑顔で私に手を振っている姿。

少し手を挙げて気づいていることを伝えると、カナは教室に入って、私の机に近づいてきた。


「ユキ、今日一緒に帰ろ?」

私は少し首を傾げる。

「カナ、部活は?」

カナはバスケ部に入ってる。 基本毎日練習があるから、一緒に帰れるのは試験前の部活が休みの期間くらいなんだけど・・・

「今日は体育館の点検だとかで、部活休みなんだ!」

納得したように私がうなずくと、カナは顔を近づけてきた。

「ちょっと、相談したいことがあるの!」

ひそひそ声。

そろそろ来る頃かなって思ってた私は、少し笑ってうなずいた。

「いいよー。 どこに寄る?」

鞄を肩に掛けながら言うと、

「ユキの好きなとこでいいよ! 相談に乗ってもらうんだし」

私は少し考えて、

「今日はクレープ、食べたいかなあ」

「うん! じゃあ行こ!」

笑顔のカナと学校を後にした。



お目当てのクレープ屋さんは、私たちが使う駅の近く。

だから同じ学校の子も結構いるんだけど・・・・

カナはきっとひそひそ声で話すから、大丈夫。


私とカナは、お客さんの列に並んだ。

このクレープ屋さんは人気で、いつもこうやって並ぶんだよね。

待っても食べたいくらい、おいしいから。

「ユキはどれにするー?」

「イチゴが食べたいなー。 カナは?」

「私もイチゴがいいー」


私、ユキ。 守崎 弓希(もりさき ゆき)。 高校1年生。

髪は背中くらいまで伸ばしていて、いつも緩くポニーテールにしてる。

運動が得意じゃない私は、料理クラブに所属してる。

活動は週に1回。 緩い部活だから、みんな好きなものを作って楽しんでる感じ。



カナは、中学の頃からの同級生。 永村 香奈(ながむら かな)

中学の頃からバスケをやってて、1年生だけどレギュラー入り出来そうって言ってた。

はじけるような笑顔で、明るくて、とってもかわいい。

ショートボブの髪は、明るいカナにぴったり。

高校でクラスは違ったけど、今もこうやって仲良くしてる。


私とカナは同じイチゴクリームのクレープを注文して、店内の席に座った。

予想通り、同じ学校の生徒がたくさん。

「やっぱり、イチゴクリーム、おいしいよね♡」

「うん、ココのだったら、毎日食べたい!」

2人でふふって笑って、クレープを堪能する。


しばらく食べ進めた頃、

「ね、ユキ。 また・・・視てもらっても、いい?」

ひそひそ声のカナに、私はうなずく。

「うん。 そろそろ来るかなって、思ってたから」

私の言葉に、カナはえっと息をのんだ。

「うそ。 わかってたの!?」

カナは予想通りの反応で、私は思わず笑ってしまう。

「カナを見てたら、普通にわかるよ。 最近よくウチのクラスに来るし・・・
佐々木くん、でしょ?」

カナの顔が一気に赤くなる。

佐々木くんは私と同じクラスで、男子バスケ部員。 彼もすごくバスケが上手で、1年生でレギュラー入りしてるって、前にカナが教えてくれた。

「うわーん、恥ずかしい! じゃあ、他の人にもバレてるってこと!?」

「うーん、分かる人は分かるかもね」

「そっかー・・・・ やばい、ほんと恥ずかしい」


佐々木くんは今ちょうど私の前の席で、プリントを配るときとかに、手を触れるのは簡単だったから。

1回じゃ難しいけど、何回か繰り返してたら、視えた。



視えた情景は・・・

病院らしき建物。

そこのベッドで横たわる、彼。

なかなか体を起こすこともできず、外に出るなんて難しくて。

その病室と、窓から見える景色が、彼の世界のすべて。

窓からは、子供たちが元気に遊ぶ声が聴こえてて。

彼はそこに加わって飛び跳ねて遊びたいって思ってた。

けどそれはかなわなくて・・・

病室から出ることはできないまま、彼は短い人生を終えた。



私はなるべく感情を入れないように、視えた情景を説明した。

カナを悲しませないようになるべく淡々と話したつもりだけど、感情豊かなカナは涙ぐんじゃった。

「佐々木くん・・・・そうだったんだ・・・」

「うん・・・次の時は、体を動かして、思いっきり遊びたいって思ってたみたい。 だから今、あんなにバスケに夢中で、上手なんだね」

カナは涙を指でぬぐいながら、

「うん、すごくバスケ上手なの! それに、その話からは想像つかないくらい、健康体だよね!」

「そうだね」

きっと、彼が強く強く願ったからなんだろうな。


『それで』と、カナが身を乗り出してくる。

「私との関係は、どうだった?」

私は少し眉を下げた。

「うーん・・・ 残念だけど・・・ カナの気配は、感じなかったなあ・・・」

カナは目を閉じて少し口を開けて、

「そっかー・・・」

残念そうにつぶやいた。


「カナ、そんなに関係がある人ばかりじゃないからね?」

私の言葉に、カナはにこって笑って、

「うん、そうだよね。 ユキ、ありがと」

私も口角を持ち上げて、

「それに、あくまで前世で関わりがないみたいっていうだけで・・・ 今うまくいくかどうかは、別だからね?
前世で関わりがなくても、うまくいってる人だって、たくさんいるんだから」

「うん、ユキ、そう言ってたよね」

こうやって、ちゃんと話をきいて受け入れてくれるのは、カナのとってもいいところだと思う。


「もしも関わりがあったなら、素敵だなって思っただけだから。
無くても、私はがんばるよーっ!」

カナははじけるような笑顔で、ガッツポーズをして見せた。

「うん、カナがんばって♡ カナはかわいいから、イケるよ」

「ありがとーっ! ユキに褒められたら、ほんとうれしい!」


女子同士って、ほんとに話が尽きない。

佐々木くんのこともだけど、ほかにもいろんな話をカナとして、楽しい時間を過ごした。



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