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68.※ 君の笑顔が大好きで
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鏡の前で、髪をセットする。
ワックスをつけて前髪を少し上げて。 幼く見えないように。
あきらが洗濯をしに、洗面所に入ってきた。
「あ、あきら、髪、どうかな?」
あきらはオレを見て、口角を持ち上げた。
「イイと思う」
「幼く見えない?」
「ああ、かわいい」
そう言って、オレの腰に手を回して、引き寄せる。
「いや、かわいいんじゃダメなんだって」
「レイキはかわいいから」
ちゅって、頬にキスをされる。
「あきらっ」
オレはデキる大人に見られたいんだってば。
・・・見た目だけそうやっても、意味ないのはわかってるけど、『かわいい』は、社会人にはいらないだろ。
あきらは少し笑って、
「うそうそ。 ・・・いつもより、大人っぽく見える」
「・・・ほんと?」
「ああ。 いつもと違うレイキ・・・イイな」
唇に、キス。
「ん・・っ」
舌が、絡めとられる。
気持ちイイ、けど・・・ 今はまずい。
「んっ・・ぁ、きらっ」
ぐって肩を押して、自分から離させる。
「だめ、だって」
軽くにらむけど、あきらは口角を持ち上げて、オレの首筋に触れる。
「・・・っ」
思わず、ぴくんって、反応してしまう。
まだボタンを留め切っていないオレのシャツの首元から、あきらはネックレスのチェーンを引っ張り出した。
チェーンには、指輪が通されてる。
あきらはその指輪を口元に持っていき、ちゅって口づけた。
自分に触れられたわけじゃないのに、ぞくってしてしまう。
オレはあきらの左手をつかんで、自分の口元に引き寄せた。
その薬指の指輪に、そっと口づける。
オレたちはお互いを見つめて、もう一度、キスをした。
指輪は、ずっと一緒にいる印として、一緒に買ったものだ。
いわゆる・・・結婚指輪として。
普段はオレも左手の薬指に着けてたけど、今日からはネックレスに通して、服の下に着けておくことにした。
左手の薬指に着けたいとは思うけど、社会的には独り身のオレがそんなのをつけていて、色々詮索されるのも嫌だなと思ったから。
・・・しばらくして、仕事にも慣れたら、いいのかもしれないけど。
「・・・レイキ、今日から社会人だな」
あきらはオレのネックレスを服の下に入れて、シャツのボタンを留めてくれる。
「・・・すげー、緊張、する」
今日は、入社式。
大学を卒業したオレは、医療機器メーカーに就職した。
「大丈夫だよ。 レイキなら」
うれしいことを言ってくれる。
あきらはオレのネクタイも締めてくれた。
・・・医療機器メーカーを選んだのは、やっぱり、あきらの仕事に少しでも関わりたいと思ったから。
同じ現場で働くことはできなくても、病院のこと、医療のこと、あきらのいる世界を、少しでも理解したくて。
それに・・・人を救うということに関われるのが、とてもすごいことだと思ったから。
「あきらも、今年は病院に出るんだよな」
「ああ」
あきらは5年生になった。
今はまだ春休みだけど、これからは病院に出る実習も多くなる。
そしたら、あきらも指輪はネックレスにして身に着けると言っていた。
「はい、できたよ」
ネクタイを締めてくれて、オレの肩をぽんって叩いた。
「レイキ、頑張ってきて?」
あきらの柔らかい微笑みに、オレも自然と笑顔になる。
「今日は、レイキの好きなケーキ、買っとくからな」
「やった!」
これから、オレは社会人として新しい生活が始まる。
でも、これからも、ずっとあきらとは一緒にいる。
そのことに、不安を感じることは無くなった。
環境が変化して、生活が変わっても、オレたちはずっと一緒にいる。
玄関まで見送ってくれたあきらに、オレはぎゅって抱き着いた。
「あきら・・・好き」
あきらもオレを抱きしめてくれる。
「オレも、好きだよ、レイキ」
「ずっと、一緒だよな?」
「ああ、ずっと、一緒」
ぎゅって抱き着いたままあきらを充電して、
「よしっ、じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
あきらは笑顔で見送ってくれた。
大好きなあきらの笑顔。
これからも、ずっとずっと、そばで笑ってて欲しい。
「レイキ!」
閉まりかけた玄関のドアを開けて、あきらがカオをのぞかせる。
「レイキ・・・ これからもずっと、オレのそばで笑っててくれよな」
あきらの言葉に、笑顔があふれる。
「オレも同じこと考えてた。 あきらも、ずっと、オレのそばで笑ってて欲しい」
オレの言葉に、あきらもまた笑顔になった。
きっとこれから、いろんなことがあると思う。
つらいこととか、悲しいこととかも、あるだろう。
それでも、あきらがいてくれたら、なんだって乗り越えられる気がする。
大好きなあきらと一緒にいて、大好きな笑顔をオレに見せてくれたら。
「行ってきます!」
オレは手を振って、新しい生活に踏み出した。
Fin.
ワックスをつけて前髪を少し上げて。 幼く見えないように。
あきらが洗濯をしに、洗面所に入ってきた。
「あ、あきら、髪、どうかな?」
あきらはオレを見て、口角を持ち上げた。
「イイと思う」
「幼く見えない?」
「ああ、かわいい」
そう言って、オレの腰に手を回して、引き寄せる。
「いや、かわいいんじゃダメなんだって」
「レイキはかわいいから」
ちゅって、頬にキスをされる。
「あきらっ」
オレはデキる大人に見られたいんだってば。
・・・見た目だけそうやっても、意味ないのはわかってるけど、『かわいい』は、社会人にはいらないだろ。
あきらは少し笑って、
「うそうそ。 ・・・いつもより、大人っぽく見える」
「・・・ほんと?」
「ああ。 いつもと違うレイキ・・・イイな」
唇に、キス。
「ん・・っ」
舌が、絡めとられる。
気持ちイイ、けど・・・ 今はまずい。
「んっ・・ぁ、きらっ」
ぐって肩を押して、自分から離させる。
「だめ、だって」
軽くにらむけど、あきらは口角を持ち上げて、オレの首筋に触れる。
「・・・っ」
思わず、ぴくんって、反応してしまう。
まだボタンを留め切っていないオレのシャツの首元から、あきらはネックレスのチェーンを引っ張り出した。
チェーンには、指輪が通されてる。
あきらはその指輪を口元に持っていき、ちゅって口づけた。
自分に触れられたわけじゃないのに、ぞくってしてしまう。
オレはあきらの左手をつかんで、自分の口元に引き寄せた。
その薬指の指輪に、そっと口づける。
オレたちはお互いを見つめて、もう一度、キスをした。
指輪は、ずっと一緒にいる印として、一緒に買ったものだ。
いわゆる・・・結婚指輪として。
普段はオレも左手の薬指に着けてたけど、今日からはネックレスに通して、服の下に着けておくことにした。
左手の薬指に着けたいとは思うけど、社会的には独り身のオレがそんなのをつけていて、色々詮索されるのも嫌だなと思ったから。
・・・しばらくして、仕事にも慣れたら、いいのかもしれないけど。
「・・・レイキ、今日から社会人だな」
あきらはオレのネックレスを服の下に入れて、シャツのボタンを留めてくれる。
「・・・すげー、緊張、する」
今日は、入社式。
大学を卒業したオレは、医療機器メーカーに就職した。
「大丈夫だよ。 レイキなら」
うれしいことを言ってくれる。
あきらはオレのネクタイも締めてくれた。
・・・医療機器メーカーを選んだのは、やっぱり、あきらの仕事に少しでも関わりたいと思ったから。
同じ現場で働くことはできなくても、病院のこと、医療のこと、あきらのいる世界を、少しでも理解したくて。
それに・・・人を救うということに関われるのが、とてもすごいことだと思ったから。
「あきらも、今年は病院に出るんだよな」
「ああ」
あきらは5年生になった。
今はまだ春休みだけど、これからは病院に出る実習も多くなる。
そしたら、あきらも指輪はネックレスにして身に着けると言っていた。
「はい、できたよ」
ネクタイを締めてくれて、オレの肩をぽんって叩いた。
「レイキ、頑張ってきて?」
あきらの柔らかい微笑みに、オレも自然と笑顔になる。
「今日は、レイキの好きなケーキ、買っとくからな」
「やった!」
これから、オレは社会人として新しい生活が始まる。
でも、これからも、ずっとあきらとは一緒にいる。
そのことに、不安を感じることは無くなった。
環境が変化して、生活が変わっても、オレたちはずっと一緒にいる。
玄関まで見送ってくれたあきらに、オレはぎゅって抱き着いた。
「あきら・・・好き」
あきらもオレを抱きしめてくれる。
「オレも、好きだよ、レイキ」
「ずっと、一緒だよな?」
「ああ、ずっと、一緒」
ぎゅって抱き着いたままあきらを充電して、
「よしっ、じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
あきらは笑顔で見送ってくれた。
大好きなあきらの笑顔。
これからも、ずっとずっと、そばで笑ってて欲しい。
「レイキ!」
閉まりかけた玄関のドアを開けて、あきらがカオをのぞかせる。
「レイキ・・・ これからもずっと、オレのそばで笑っててくれよな」
あきらの言葉に、笑顔があふれる。
「オレも同じこと考えてた。 あきらも、ずっと、オレのそばで笑ってて欲しい」
オレの言葉に、あきらもまた笑顔になった。
きっとこれから、いろんなことがあると思う。
つらいこととか、悲しいこととかも、あるだろう。
それでも、あきらがいてくれたら、なんだって乗り越えられる気がする。
大好きなあきらと一緒にいて、大好きな笑顔をオレに見せてくれたら。
「行ってきます!」
オレは手を振って、新しい生活に踏み出した。
Fin.
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