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63.1週間ー3 あきらSIDE

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約束通り、駿兄が父さんと話をしてる。

『報告だけだから、たいして時間はかからないよ』

言ってた通り、そう時間がたたないうちに、オレの部屋のドアがノックされた。


「晃。 終わったぞ」

ドアを開けて、駿兄がカオをのぞかせる。

オレは浅く腰かけていたベッドから立ち上がった。


緊張してるのが、自分でもわかる。

駿兄はそんなオレの肩を叩いた。



オレは父さんの部屋のドアをノックした。

「入るよ」

声をかけて、ドアを開ける。 父さんは、机の上の書類の整理をしていた。

入ってきたオレを見ると、表情を緩める。

「晃、バイトはどうだ? 忙しいか?」

「ああ・・・まあ、そこそこ」


切り出し方に迷ってオレが所在無さげに立ってると、

「駿が結婚の話とはな」

少しうれしそうな声色。

「遼に比べて、駿は少しふらふらしてる感じだったが・・・ まあ、良かったな」

「ああ・・・そうだな」

父さんはオレを見て、

「で、晃は? なにか話があるんだろう。
・・・2人そろって、珍しいな」


オレはぐって、拳を握りしめた。


「・・・父さん。
・・・柚葉との、ことなんだけど」

「ああ、桜庭の娘さんな。 つき合ってるんだろう?」

当然のように、そう、言われて。


・・・やっぱ、そう思ってるんだな・・・

あの場で柚葉本人と桜庭先生を前に、『そんな気はない』なんて言えなくて、言葉を濁して終わったからな・・・


「いや、つき合って、ない」

オレの言葉に、父さんは意外だという表情。

「そうなのか? 娘さん・・柚葉さんは、お前のこと好きだろう。
お前も、そうなんじゃないのか?」


オレは首を振った。


「オレ・・・・ 好きな人、いるんだ・・・

もうずっと、その人とつき合ってる」


「・・・そうなのか・・・
そのことは、柚葉さんは・・・?」

「・・知ってる。 オレにつき合ってる人がいることは」

「・・・そう、か」


父さんは、小さくため息をついた。

「・・・晃、悪かったな。
お前につき合ってる人がいることは、知らなかった」

「いや・・・いいんだ。 オレが言ってなかったんだし。

・・・だからさ、柚葉とつき合うとか、結婚・・・とか、そういうのは出来ないから。
桜庭先生にも、そう・・・伝えてもらえるかな・・・」

「ああ、言っておくよ」

父さんはうなずいて、そして少し笑った。


「長くつき合ってる人がいるんだな。 どんな人なんだ?」


オレはうつむいて息を吐くと、もう一度、ぐって拳を握りしめた。


カオを上げて、父さんを見る。



「レイキ・・・だよ」



・・・父さんは、少し、固まった。


「は・・・? 『レイキ』・・って」


「今一緒に住んでる・・・レイキ、だよ」


「玲紀くん・・・か・・? 中高の、同級生の」


「・・・ああ」


父さんはオレから顔を背け、手を額に当てた。


「・・・お前は・・・玲紀くんと、つき合ってる・・・のか? 長いこと?」



・・・・胸が、苦しい。



「・・・ああ・・・高校の頃から、つき合ってる」


父さんはため息をついて、オレに背を向けた。


「・・・すまんな。 偏見などは持ってない・・・つもりだったが・・・
息子のこととなると・・・・違うもんだな」


「・・・父さん! 黙ってて、ゴメン!
でもオレ、本気で好きなんだ、レイキのこと」


・・・分かってほしくて。 気持ちを、伝えたくて。


「これからもずっと、レイキと一緒にいたいって、思ってる。
・・・もうレイキはオレのこと好きじゃないかもしれないけど・・・でも、オレはレイキが好きなんだ。
だから」


「晃」


父さんが、オレの言葉を遮る。


「お前の気持ちは・・・分かった。
お前の人生なんだし、お前の気持ちなんだから、許さないなどと言うつもりはない。
ただ・・・ 少し、時間をくれるか」


・・・・そう、だよな・・・・


「・・・分かった」


オレは父さんの部屋を出た。

父さんは、オレに背を向けたままだった。




次の日から、父さんは出張だった。

母さんには・・・オレからは話してない。

たぶん、父さんが話したみたいで、でも母さんはオレにはなにも訊いてこない。


オレは悶々としながらバイトをこなし・・・



3日後。


少し早めに仕事を切り上げた父さんと母さん、そしてオレは、ダイニングテーブルに向かい合って座った。


「母さんには、父さんから話した」

「・・・ああ」

オレはうつむいて、ダイニングテーブルを見つめる。


「晃」

母さんの、優しい声。

「そんなに不安がらないでいいのよ」

そう言われて、オレは視線を上げた。


・・・父さんも母さんも、優しい表情、だ。


「晃、つらかっただろう。 話してくれて、ありがとう」

「晃の気持ちが大切だから。 お父さんもお母さんも、晃には好きに生きて欲しいと思ってるわよ」


・・・・・分かって・・・・くれた・・・・!


思わず、涙がにじんでしまう。


「・・・ありがとう・・・」


うつむいて目をこすってると、母さんが立ってオレに近づき、抱きしめてきた。


「お父さんはびっくりしたみたいだけど・・・お母さんは、もしかしたらって、思ってたわよ」

「え・・・そう、なの、か・・・?」

「玲紀くん、よく泊まりに来てたでしょ。 仲の良い、晃たちを見てたから」


そっ・・・・か・・・・・


「父さんも・・・母さんも・・・ありがとう・・・・」

「今度また、玲紀くんを連れておいで」

オレは少し口角を持ち上げた。

「これからも、もしつき合ってくれるんだったら・・・・ そのうち、連れてくるよ」


よかった・・・・ 分かってくれた・・・・


レイキに、話しに行こう。

・・・もう、ダメかもしれないけど・・・・


早く、レイキに、会いたい。







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