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48.招かれざる客

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「へーっ。 河原の彼氏も、カッコいいな」

「でしょー? まあ、あきらくん程ではないけど」


河原の彼氏も、カッコいい人だった。

嬉しそうに笑う河原を見て、オレはまた少しほっとした。


河原も紺野も、幸せそうで良かったな・・・・


みんなでいろいろ食べて飲んで、盛り上がっているけど。

オレは少しあきらのことが気にかかっていた。


もう、親父さんたちと飲んでる頃だよな・・・・・

抜けてくるって言ってたけど、大丈夫なのかな・・・・


「レイキ。 あきらが居なくて寂しいのか?」


思わずスマホをいじっていたオレに、亮介が声をかける。


「い、いや、ちげーよ。 そんなんじゃない」


オレは慌てて、テーブルの上にスマホを置いた。


せっかくみんなで楽しんでるのに、これじゃダメだな。


「相変わらず、仲良いんだねー」

「ね、うらやましいよね」

「な、に言ってんだよ。 みんなだって彼氏いて、楽しそうじゃん」



♪~

その時、オレのスマホが鳴った。

LINEの音。


「お、彼氏からじゃねーの?」

亮介が茶化して言う。

オレは亮介を睨んでから、でも少し期待をしてスマホを見た。


「・・・・あ・・・・」



相手は、桜庭さん、だった。


・・・・・急に、何、だろ・・・・・・・



「あきら、なんだって?」


・・・・・桜庭さんの名前を見ただけで、オレの胸は苦しくなる。


LINEを開くこともできないで固まるオレに、亮介が声をかけるけど、オレは答えることができない。



「レイキ?」

「坂本くん、どうしたの?」


オレは何とかカオを上げて、へらって、笑った。



「あ、いや。 あきらじゃなかった」


「なんだ、そっか」

「そうよね。 流石にまだ、抜けられないよねー」



みんながまた話し出すのを聞きながら、オレはスマホに視線を落とした。



・・・・・桜庭さん・・・・ 何なんだろう・・・・・・



小さく息を吐いてから、オレは桜庭さんからのメッセージを開いた。



「え・・・・・・!?」



そこには、想像もしていなかった写真が添付されていた。



『突然あきらくんに会えるなんて、超ラッキー♡』


そのメッセージとともに添付されていたのは、



あきらと桜庭さんが、仲良さそうに並んで写ってる写真。



『私のお父さんとあきらくんのお父さん、知り合いだったみたい!
一緒に食事することになって、今食べてます♡』




あきらと、桜庭さん、今、一緒にいる・・・・・?


しかも、あきらのお父さんと桜庭さんのお父さんって、知り合いだったんだ・・・・・・




写真のあきらは、笑顔を浮かべてて。



オレは胸が苦しくなって、ぎゅって、手で服を握りしめた。




「・・・・レイキくん?」


うつむくオレに、紺野が声をかけてくれる。


「レイキくん、大丈夫?」



ダメだ。


これじゃまた、みんなに心配をかける。



オレはカオを上げて、へらって笑った。



「ああ、大丈夫。 なんでもねーよ」


オレはスマホをマナーモードにして、ポケットに突っ込んだ。



・・・・桜庭さんにはなんて返信したらいいかわからないし。

あきらから、オレたちも飲んでるって聞いてるだろうし、スルーしてもいいだろう。



それからも、みんなでいろんな話をして盛り上がった。


小山さんも亮介と一緒に、大学でもテニスを続けているらしい。


オレとあきら、あと修吾もテニスをしていることを話したら、今度久しぶりに、みんなでテニスしたいなって話にもなった。



みんなで話してる間に、スマホがバイブするのを感じたけど、オレは見ることをしなかった。


また桜庭さんからのLINEかもしれないし、もしあきらだったら、オレに繋がらなかったら亮介に連絡するだろうし。





みんないい感じに酔っ払ってきたころ、


「お、あきらー!」

「あ、あきらくん! おかえりー」

店に入ってきたあきらに、亮介と河原が気付いた。


オレも店の入り口の方を振り返る。









「え・・・・ なん、で・・・・・」




思わず、口から言葉がこぼれた。





「遅くなって、ゴメンな。 あと」


あきらはバツが悪そうに、自分の後ろを振り返る。


「初めまして。 桜庭柚葉です。 あきらくんの、大学の同級生です」


あきらの後ろから、にこやかな笑顔を浮かべた、桜庭さんが出てきた。

ペコって頭を下げて、みんなに挨拶をする。



「あ、ど、どうも。 初めまして」


亮介が動揺して、立ち上がって頭を下げる。


・・・・・亮介のカオが、心なしか赤い。

桜庭さんが美人だから、緊張してるのかな・・・・・



女のコたちは、お互いにちらって目配せしてた。



「今日オレの親父と飲んでたのが、柚葉の・・・・彼女のお父さんで。 オレの親父と、大学の同級生だったんだってさ。
で、その場に柚葉も来てて。

オレが抜けるって言ったら、一緒に来たいって言い出して、聞かなくてさ・・・・・」


あきらはため息交じりに言いながら、オレの方をちらって見た。



・・・・申し訳なさそうな、表情。



「・・・・柚葉も、混ぜてもらってもいいか?」



小山さんと河原は、にこって笑った。


「・・・・どうぞ」


でも、2人とも、目が笑ってない。



「ありがとう」


桜庭さんはそんな2人の様子を気にもしてない感じだ。


「でもさ、柚葉、アウェーな感じだろ。 無理するなよ」


「全然。 アウェーじゃないよ。 坂本くんもいるし。 ね?」


桜庭さんは、オレの腕に触れながら、小さく首を傾げてきた。



・・・・・かわいい、仕草だよ、な・・・・・


どうすればかわいく見えて、男が喜ぶか・・・・・ わかってんだろうな・・・・・




「坂本くんは、桜庭さん・・・のこと、知ってるの?」

河原がオレに聞いてくる。


「ああ・・・・・ あきらの同級生たちと、大学のオレの友達と、みんなで一緒に旅行も行ったし・・・・」


みんな、驚いたようなカオでオレを見た。


「そうなの?」


「・・・・ああ・・・・・」



「じゃあ、お邪魔しまーす」


桜庭さんは、オレの隣に座ってきた。


「あきらくんも、座って?」


そう言って、自分の隣にあきらを座らせる。



桜庭さんの両側に、あきらとオレが座る形になった。



「じ、じゃあ2人とも、飲み物なんにする?」

亮介が気を利かせて、あきらと桜庭さんの飲み物を聞いてくれる。


小山さんと河原は、少し鋭い視線で桜庭さんのことを見ていた。



・・・・・亮介が、少し桜庭さんにデレてるのを怒ってるのかな・・・・・



「坂本くん、さっきLINEしたんだけど、気付かなかった?」

桜庭さんが、オレにカオを寄せて小声で聞いてくる。

「あ、ああ・・・ 写真、見たよ。 しゃべってたから、返信してなくて、ゴメン」

「ううん、いいよ。 その後は、見てない?」


・・・・やっぱ、その後のバイブって、桜庭さんからのLINEだったんだな・・・・


「また送ってくれてたのか? ゴメン、気付かなかった」

「そうよね。 飲んでる時にゴメンね」

「いや・・・」



「今日、あきらくんが高校の同級生と飲んでたって言ってたから、彼女もいるんじゃないかなーって思って」


彼・・・・女・・・・・


すって、心に水をかけられたみたいに、冷たく感じた。




・・・・・そっか・・・・・・


桜庭さん、それであきらについてきたんだ・・・・・


彼女を見るために・・・・・・




「はい、じゃあ乾杯しようか」

あきらと桜庭さんの飲み物が来た。

亮介の言葉に合わせて、オレたちはもう一回乾杯をする。


「かんぱーい!」

「桜庭さん、よろしく!」

「こちらこそー!」



桜庭さんは美人だけど人当たりはいいから、雰囲気良くしゃべれた。


一通り自己紹介をした後、



「あきらくんの彼女って、河原さん?」



ストレートに、桜庭さんが聞いてきた。


一瞬、その場のみんなが凍り付く。



「え、私?」


河原はどう反応したらいいのか、迷ってるみたいだ。

あきらのカオを、見てる。


「高校の頃仲良かった人たちと飲んでるって聞いたし・・・・ 女のコもいるから、彼女がこの中にいるのかなー、って思って」


『どうなの?』って、あきらを見る桜庭さん。



あきらは何て答えるんだろう・・・・・


じっとあきらを見ていると、目が、あった。



あきらは小さくため息をつきながら、


「河原は違うよ」


「じゃあ、紺野さん? 小山さんは、清水くんとつき合ってるって言ってたし・・・・・」


「紺野も、違う」


「じゃ、彼女、来てないんだ?」


「んー・・・・ まあ・・・・」


「でも、みんな同じ高校なんでしょ?」



・・・・・確かに、桜庭さんからしたら、不思議に思うかも。

高校で仲良かった仲間で飲み会。 そこに、あきらの彼女がいないって・・・・



「わ、私!」


河原が、ガタってイスをならして立ち上がった。


「私、あきらくんの、彼女!」



か、河原!?


困ってるあきらを、見かねたのかな・・・・・



河原はあきらのそばに行くと、その腕を取った。



「なんだー。 やっぱり、河原さんだったのね。 あきらくん、なんで隠すのー?」

「いや・・・・」


河原はオレを見て、少し苦笑した。


「河原さん、キレイだし、とってもお似合いの彼女ね」


桜庭さんは微笑んで言ったけど、その瞳は笑ってなかった。



「あきらくん、こっち、来て」

河原はあきらを立たせると、自分の席の隣に引っ張って行って、座らせた。



2人は寄り添うように座って、はたから見たら、すごく仲良い恋人同士に見えた。



「でもあきらくん、なんで隠そうとしてたの?」

「あきら、あんまり人に言いたがらないんだよ。 大事だから、秘密にしときたいのかもな」

亮介があきらをフォローする。



あきらと河原のことを桜庭さんはいろいろ聞きたがったけど、あきらは『人に教えるようなことじゃないから』って、あまり質問には答えなかった。


それからは、和やかな雰囲気でみんなで飲んでしゃべった。




河原があきらにくっついて座ってても、河原があきらのことを好きだったころに感じた、胸が苦しい感じは特になかった。


河原にも彼氏がいるってさっき聞いたし、なにより、オレたちのためにあきらの恋人役をかって出てくれたんだもんな・・・・・



河原には、すげー感謝だけど。


桜庭さんは、あきらの『彼女』をみて、どう思ったんだろう・・・・


今日の仲良い雰囲気の2人をみて、諦めてくれないかな・・・・・・




あきらと河原、そして桜庭さんを見て、オレはそんなことを考えていた。



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