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42.朝風呂

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「ん・・・・・」

いつの間にか、寝てたみたいだ・・・・


目を開けると、カーテンの間から明るい光が漏れている。



体を起こそうとして、後ろから抱きしめられていることに気づいた。


振り返ると、マコトだった。




マコト・・・・ ずっと、オレのこと、抱きしめてくれてたんだ・・・・・




『・・・・・好きな人が泣いてんのに、放っとけるわけ、ないだろ』

昨日の、マコトの言葉。


『好きな人』

オレのことを、そう言っていた。




オレがマコトを見つめていると、マコトが目を開けた。



「あ・・・ レイキ・・・・・」


何度か瞬きをして、オレを見る。


「・・・・・眠れたか?」


オレはこくんと頷いた。


「あの・・・・ ありがとな・・・・・・」



マコトは口角を持ち上げる。

手を伸ばして、オレの目元に触れた。


「目、腫れてる」



・・・・いっぱい、泣いたもんな・・・・・



「大丈夫か?」



・・・・・分からない・・・・・


今はまだ、なにも考えたくないな・・・・・・



返事が出来なくて黙ってると、マコトは体を起こしてベッドから出た。

冷蔵庫から、ペットボトルの水を持って来てくれる。


「・・・ありがと」

オレはそれを受け取って飲むと、もう一度蓋を閉めて、目元に当てた。



部屋を見ると、あと2つのベッドに、周防くんとユージがそれぞれ眠ってた。



「レイキ。 風呂、入らないか?」

明るい声で、マコトが言った。


「風呂?」

「ん。 朝風呂、気持ちいいぜ?」


時計を見ると、まだ早い時間。

みんな遅くまで飲んでたんだろうし、まだ起きないだろう。


「・・・・ん。 行く」

オレが頷くと、マコトは笑ってオレの頭をぽんぽんって撫でた。

「よし。 行こう」








マコトと一緒に、大浴場に来る。


・・・・・・マコトは昨日、はっきりとオレのことを『好きな人』って言ってたわけだし。

一緒の入るのもどうかとは思ったけど。


落ち込んでるオレを気遣って誘ってくれたんだろうし、オレも、風呂に入ってさっぱりしたかったから。



朝だから、そんなに人も多くない。


広い露天風呂を、オレとマコトはほぼ貸切状態で使った。



「今日も天気いいな」

「・・・うん」

「海、キレイに見える。 今日はなにするんだろうな」

「・・・・うん」

「また、海で泳ぐのかな。 それとも、どっか行って遊ぶとか」

「・・・・うん」

「ユージたちが、何か計画立ててるんだろうけど」

「・・・・うん」


マコトはオレを見て苦笑する。


「レイキ、『うん』しか言ってない」

「あ。 ・・・・ゴメン」

「いいぜ。 大丈夫」



昨日風呂に入った時と違って、マコトはオレに近づこうとはしない。


オレと、なるべく距離を置いてくれてる。



「・・・・マコト。 眼鏡、曇ってる」

「ああ」

マコトは眼鏡を手で拭いて、もう一度かけ直す。

「風呂入ると、曇るもんな。 不便だけど、かけてないと、景色も見えないし」

「コンタクトとか、しねーの?」

「前したことあるけど、合わなくて。 眼鏡の方が、楽だから」

「眼鏡外したら、全然見えねーの?」

「結構、視力悪い」

そう言って、眼鏡を外すマコト。


・・・・・眼鏡を外すと、また少し、印象が違う。

キレイな目元が、よく見えて。

それはそれで、カッコいい。


「オレのカオ、見える?」

マコトは少し目を細める。

「んー。 ちょっと、厳しい」

オレは少し近づいた。

「これくらいは?」

「まだ、ぼやけてる」



マコトが、オレの腕を掴んで、ぐいって引き寄せた。


距離が一気に近くなって。



「これくらいじゃないと、はっきり見えない」


キレイなマコトのカオが近くにあって、焦る。


「そ、そーなんだ。 ホント、結構悪いな」


慌てて離れようとすると、マコトはすぐ腕を放してくれた。



眼鏡をかけ直して、口角を持ち上げる。


「・・・レイキ、無防備すぎ」


「え?」


「なんでもない」



マコトはまた、視線を海の方に移した。


「・・・・・レイキ」


「・・・・ん?」


「・・・・つらかったら、言えよ? 泣いていいから」



マコトの言葉で、じわって胸にあたたかさが広がってく。



「・・・・・・ん。 ・・・ありがと」








部屋に戻っても、2人ともまだ起きてなくて。


あまり眠れなかったところに風呂に入ったから、体があったまって眠気が襲ってきた。


・・・・・朝ご飯とかも食べたくないし、もう一回寝ちゃおうかな・・・・


ご飯食べに行ったら、あきらと、桜庭さん・・・・にも、会うだろうし・・・・



「レイキ、寝てたら? 飯行くとき、起こすからさ」

「・・・・オレ、飯いらねー・・・・ 起こさなくて、いいや」

「・・・・わかった」


オレはベッドに横になった。


マコトはベッドに腰掛けて、オレの頭を撫でてくれる。


「・・・・おやすみ、レイキ」




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