イケメンのオレにカレシができました! 気持ちイイからまあいっか

mii

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41.好きなのかもしれない 桐谷side

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この日、オレは朝から体調があまり良くなかった。

咳はないものの、喉が痛くて声はかれ気味。

熱は・・・朝家を出る時はなかったが、少し上がって来てるかもしれない。


「桐谷くん・・・大丈夫?」

一緒にクラス委員をしている女子は、心配そうにマスクをしてるオレを見た。

「ああ・・・大丈夫」

言葉ではそう言うものの笑う余裕もないオレに、ますます心配そうな表情になった。

「なにかあったら呼んでね。 女子の方、なるべく早く終わらせるから」

「ありがとう」


高1の冬。

来月、学校全体のスポーツ大会がある。

クラス対抗で全員がなにかの競技に出るから、それを今から決めるんだ。

普段だったら、こんな体調ならもう一人のクラス委員の彼女に任せればいいんだけど・・・

競技が男女別だから、男女別々の場所で話し合いをすることにしていた。


「じゃあ、女子は空き教室に移動してー」

クラス委員の彼女に誘導されて、女子たちは教室を出ていく。

残された男子たちは、いつも通り騒がしい。オレはそんな男子たちを背に、黒板に競技の種目と出場人数を書いていく。


「じゃあっ・・・・」

『じゃあ、誰がどの競技に出るか、決めていきます』

そう言おうと思ったのに、声がかすれてほとんど出なかった。

ざわついてる男子たちは、オレの異変には気づかない。

「か・・・」

『各競技、希望を取ります』

言いたいのに、声が出ない。


どうしよう、これじゃ進められない。

まだ女子も競技決め始めたばかりだろうから、クラス委員の彼女には頼めない。

オレの友達は静かな奴が多いから、前に立って司会を頼むのは難しいだろう。


オレは喉に手を当てた。

朝より痛みがひどくなってきてる。

あー・・・ 頭痛までしてきた。

どうしよう・・・・ 教卓を叩いて大きな音を出して、注目を集めるか・・・?


「おーい、みんな、静かにしろよ」


その時、教室に響き渡った声。

声がした方を見ると、星野が立ち上がっていた。

みんなの注目を浴びながら、星野は前に向かって歩いてくる。


・・・カッコいいな・・・・

のどや頭の痛みも忘れて、星野に見入ってしまう。


星野は前まで来るとオレの隣に立って、顔を覗き込んできた。

「・・・・っ」

元々カッコいいって思っていた顔を近づけられて、オレは思わず体を引く。

その綺麗な顔は、心配そうな表情になっていた。


「桐谷・・・体調、悪いのか?」

「ぇ・・・・・」

「いや、なんかキツそうだし。 もしかして、声も出ねーのかなって」


気づいて・・・・た・・・・?


カッコよくて明るくて、女子にもすごいモテてて、そんな星野に憧れに似た感情を抱いてはいたけど、実際にはほとんど話したこともなくて。

それなのに、オレが体調悪いって、気づいてくれたのか・・・・・?


ぎゅって、胸が締め付けられるような感覚がした。


「桐谷?」

星野のことを見つめたままなにも言わないオレに、星野は首を傾げた。


「こぇ・・が、でなく、て」

なんとかかすれた声で告げると、星野はにこって笑った。 ぱって周りが明るくなるような、キラキラした笑顔。

「じゃあ、オレが代わりにしゃべるよ。 書いてある人数の通りに、誰が出るか決めたらいいんだよな?」


こんなに近い距離で星野の笑顔を見たことなんてないし、なによりそれはオレに向けられたもので。

心臓の音が、耳の奥で聞こえるほど、ばくばくいっている。


オレがうなずくのを見て、星野はみんなの方に向き直った。

「桐谷、体調悪いみたいだから、代わりにオレが進めるな。競技ごとに希望を取ってくから、出たい奴は手ぇ挙げろよー。
・・・じゃまず、バスケ!」

「はいっっ!!」

元気よく手を挙げたのは、高井。それから、中間も。 ほかにあと2人、手を挙げていた。

星野に進行は任せて、オレは決まった出場者の名前を書いていくこととする。

「じゃあとりあえず4人と・・・ オレもバスケ出たいなぁ・・・」

ぼそって呟く星野。 バスケ、好きなんだ? それとも、高井たちが出るからか?

「瑞樹ー、一緒出ようぜ!」

高井に誘われて、星野は大きくうなずいた。 そしてオレを振り返って、

「オレもバスケ出る! 名前、書いといて」

また、あの笑顔。 キラキラって、周りが輝くような。


カッコいい・・・だけじゃなくて、かわいい、な・・・・


星野と仲の良い中間も高井も、女子にはすごく人気がある。

特に中間は星野より背も高いし、イケメンだし、言葉も・・・女子を扱うのに慣れてる感じだ。 オレは星野の方がイケメンだと思うけど。


星野のおかげで他の競技もどんどん決まっていく。

「あれ、桐谷はどうするんだ?」

決まった人の名前を書いていくオレを、星野が振り返る。

「オレは・・・」

やっぱり声がかすれてて、

「ん?」

オレの話を聞くために、星野はオレに顔を近づけてきた。


ち、かっ・・・・

綺麗な顔が至近距離にあって、思わず焦ってしまう。

しかもその至近距離で、ちらって視線をオレの方に向けるから・・・

なぜかわからないけど、ぎゅって心臓が掴まれたみたいに感じた。


「桐谷?」

声をかけられてハッとして、

「オレは・・・余ったところでいい」

かすれた小さい声で、なんとか答えた。

「でもそれじゃ、桐谷が楽しくないじゃん。 好きな競技に出た方がいいと思うぜ?」


やばい・・・ なんで星野のこと、こんなにかわいいって思ってしまうんだろう。


「別にスポーツ得意じゃないし・・・」

オレの言葉に星野が笑う。

「オレだって、別に得意じゃねーよ。 和真がバスケに出るから、楽しそーだなって思っただけだし。
桐谷も、バスケにしたら?」

星野はそう言いながらバスケのところを見て、

「あー・・・バスケ、5人だったな。 もう埋まってるか・・・」


「なあなあ」

その時、立ち上がってオレたちに声をかけてきた男子がいた。

「オレバスケにしてたんだけどさ、まだ空きがあるんならバドに変えてもいいか?」

確かに、バドはまだ空きがある。

星野はパって笑顔になって、

「おっけー。じゃあバドに変更な」

そのキラキラした笑顔のままオレを振り返った。

「桐谷、一緒にバスケやろうぜ」


またその笑顔に見入ってしまって、

オレはなにも考えずにうなずいていた。


「ほかにバスケやりたい奴いないなら、桐谷入れるけどいいかー?」

他にバスケをやりたいという人もいなかったので、オレはそのままバスケに出ることになってしまった。

「桐谷、よろしくな」

星野の笑顔にどきどきしてる自分に、戸惑っていた。



全部の競技の振り分けが無事に終わった。

星野のおかげで助かった・・・・

「星野、ありがとう」

かすれた声でお礼を言うと、星野はまた笑った。

「いいって。 でも桐谷、体調悪いのに大変だな。 無理するなよ」


気遣ってくれる気持ちが嬉しくて、星野の笑顔を見てたら、気分が高揚して・・・なんだか、体が熱くなるような気がした。


星野の笑顔が曇る。

「桐谷、体調悪くなってないか?」

「え?」

「なんか、カオ、赤い」

そう言うとオレの方に手を伸ばしてくる。 驚いて体を引こうとするが、それより早く星野の手がオレの額に触れた。

思わず、びくって体が震える。


「あつっ」

星野は小さく声を上げて、心配そうな表情になる。

「熱あるじゃん!」


え、

体が熱くなる感じがしたのは・・・熱のせいか?


星野はオレの腕をがしって掴んだ。

「保健室、行こう」

「え、いや、」

そのまま引っ張って行かれそうになるが、星野を制する。

まだ、誰がどの競技に出るのかの記録をしてない。 黒板は次の授業のために消さないといけないから。

星野は教卓の上に置いていた、オレのノートに視線を向けた。

「和真、陽人!」

大きな声で、高井と中間を呼ぶ。

「出場者の名前、そのノートに書いといてくんねー? オレ、桐谷を保健室に連れて行くから」

星野が呼んだ2人は、オレたちに近づいてきた。

「りょーかい。 書いとくな」

「桐谷、大丈夫かよ?」

高井と中間にも心配そうな視線を向けられて、気恥しくなる。

「星野、大丈夫だ。ありがとう」

星野の手を放そうとするが、星野はそれを許さない。 ・・・そんな強く掴まなくても。

「保健室なら後で行くし、ノートも自分で書けるから」

痛む喉をこらえてなんとかそう告げるけど、星野はオレに鋭い視線を向ける。

「ノートくらい、和真書けるって。字は汚いけど」

「おい瑞樹」

突っ込む高井は無視される。

「保健室もそりゃひとりで行けるだろうけど、心配だし」


本当に心配そうな顔。

真っすぐに視線を向けられて、また心臓がうるさくなるのを感じた。


「わか・・った。 高井、ごめんけど、よろしく」

「おっけー」

もう名前を書き移し始めながら、高井は笑顔を向けてくれた。

「桐谷、お大事になー」


高井と中間に見送られて、星野に手を引かれながら保健室に向かう。


・・・星野に掴まれてるところが、熱い、気がする。

相変わらず心臓はうるさくて。


・・・そう言えば、さっき高井がオレに笑いかけたけど、なにも感じなかったな・・・

ちら、と、オレの手を引く星野の顔を盗み見る。


・・・星野に笑顔を向けられたら、あんなにどきどきしたのに。


オレの視線を感じたのか、星野がオレの方を見た。 思いがけず視線が合って、焦って顔を逸らす。

「桐谷さ、あんま無理すんなよ」

顔を背けたオレのことは気に留めてないみたいに話す星野。

「キツイ時は、周り頼れよな」


星野の優しさが嬉しくて。 思わず口元が緩むのを感じた。


「・・・・ありがとう」




「せんせーっ、熱があるから、休ませてー」

ガラガラって勢いよく保健室のドアを開けながら、星野が先生を大声で呼ぶ。

「それだけ元気があるのに。 ほんとに熱なの?」

呆れたような言い方で保健の先生はドアを振り返り、星野に連れられたオレを見た。

「ああ、君じゃないのね」


熱を測ると、38℃あった。 ・・・こんなに熱が出たのは久しぶりだな。

「しばらく休んでなさい」

言われてベッドに横になるオレを見て、星野はホッとした表情になった。

「ちゃんと寝てろよ」

「ああ・・・・ 本当に、ありがとう」


星野が笑顔になると、またパって周りが明るくなる気がした。


笑顔で手を振って、星野は保健室を出て行った。


「・・・・・はぁ」

思わず、ため息をつき、布団を引き上げて顔まで覆った。


・・・・星野のおかげで、無事に競技決めが終わって、良かった。

本当に助かったな・・・・


星野の笑顔を思い出すと、それだけで鼓動が早くなる。

熱があるせいなのか分からないけど、体が熱くなるもの感じて。



・・・・まるで、好きな相手が出来た時みたいな。



「え?」

自分のその思考に、思わず声が漏れた。

「・・・好き?」


オレ・・・星野のこと、好き、なのか?

憧れのような気持ちを持っていたのは確かだけど・・・


でも


顔を近づけられたらどきどきして

かわいいなって、感じて


一旦そう思ってしまったら、もう、想像が止まらなくなった。



『桐谷?』

オレの声を聴くために、顔を寄せてきた星野。


その頬に触れて、唇を・・・重ねる。


想像の中の星野の唇は、すごく柔らかくて。


『ん・・・・』

星野がオレの首に手を回してくる。


求められて、もっと深く、唇を重ねた。



「桐谷くん」


びくっっっ!


保健の先生は控えめな声で呼んでくれたけど、妄想の世界にふけっていたオレは、体を震わせるほどびっくりしてしまった。

「一応、お家の方に連絡しておいたからね」

「はい・・・ ありがとうございます・・・・」

失礼かな、とは思ったけど、自分がどんな顔をしてるかわからなくて、布団から顔を出すことが出来なかった。


カーテンを引く音がして、先生が離れていくのがわかった。


「はぁ・・・・」

また、ため息。


星野のこと、好きなのかもしれない・・・・・


でも、星野は男だし。

カッコよくて女子にすごくモテてるし

オレなんかが好きになっても・・・・


ぎゅって胸が苦しくなるのを感じた。


・・・・好きだからって、別になにもできないし、変わらない。

オレにもそのうち、他に好きな相手が出来るだろう。

それまで、この胸の苦しみに耐えればいいだけだ・・・・・・


胸の痛みを抱えるように、オレは体を丸くして、眠りについた。




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