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36.陽人の気持ち
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オレと陽人は、和真に連れられて屋上を後にする。
「体育館の裏で、待ってもらってるから」
オレたちが体育館裏に行くと、あずみ先輩と永尾先輩がいた。
「星野くん・・・本当にごめん! すまなかった」
永尾先輩は勢いよく頭を下げる。
「そんな、大丈夫です」
オレは慌てて先輩の肩に触れた。
「ケガは大丈夫か? これからも病院に通ったりするのか?」
「異常なしと言われました。 これから通ったりとかも、特に何も」
「そっか・・・よかった・・・」
先輩は安心したようにため息をつき、もう一度頭を下げた。
「でも、本当に悪かった」
「もう大丈夫ですから。 それに・・・先輩と陽人がもめてたのって、あの写真のせい、なんですよね・・・? だったら、オレにも責任があるから・・・」
陽人がオレの肩に手を乗せた。
「瑞樹は悪くねーから。 悪いのは・・・オレだ」
「陽人・・・」
「永尾先輩は、オレがはっきりした態度を取らないから、怒ったんスよね?」
永尾先輩はきゅって眉根を寄せる。
「ああ・・・その上で、昨日またあんな写真が出回ってきて・・・ あずみがショック受けてたから・・・」
それまで黙って話を聞いていたあずみ先輩が、永尾先輩と陽人の間に割って入った。
「待って。 あの、星野くん・・・ケガさせてしまって、本当にごめんなさい」
あずみ先輩はオレに深々と頭を下げた。
「それから・・・隆くん、陽人くんも、なんか、ごめんね」
隆・・・は、永尾先輩の名前、だろうな。
ふわって微笑むあずみ先輩は、ほんとにキレイで。 でもその微笑みは、とても悲しそうだった。
「陽人くんが私のことなんとも思ってないのは分かってたの。 はっきり言わないのは、陽人くんの優しさだと思う。 でも陽人くんがはっきり言わないのをいいことに、私がしつこくしてたから・・・」
話しながら、その瞳には涙が浮かんできた。
「でももう、わかった・・から」
先輩が瞬きをすると、瞳にたまった涙が一筋、零れ落ちた。
先輩には申し訳ないけど、泣き顔も本当にキレイで。 オレは思わず見惚れてしまった。
「あずみ・・・!」
永尾先輩が、あずみ先輩の肩に手を伸ばす。
するとそれを遮るように、陽人があずみ先輩の肩に触れた。 そのまま掴んで、自分の胸に引き寄せる。
陽人は眉間にシワを寄せて、はーってため息をついた。
あずみ先輩は慌てたようにカオを上げた。
「ご、めんね、陽人くん。 泣いたりして、めんどくさいよね」
陽人から離れようとするあずみ先輩の背中に、陽人は手を回して抱きしめた。 後頭部にも手を回して、先輩のカオを自分の胸に押し付ける。
「・・・オレ、先輩のこと泣かせたくないって思ってました。 今もそう思ってますけど・・・・ 今はそれよりも、先輩の泣き顔を他の奴に見られたくない」
え、陽人、それって・・・・
陽人はオレと和真を振り返ってにらんだ。
「お前ら、見るな」
はあああ!?
「いや、心配してやってんのに、なんだよ、それ!?」
怒るオレの隣で、和真はくっくって笑い出した。
「陽人・・・お前、あずみ先輩のこと、すげー好きなんじゃん。 泣き顔見られたくないとか」
和真の言葉に、陽人はカオを赤くした。
・・・うっそ、まじ!?
陽人のこんなカオ、見たことねーし!
「陽人くん・・・!?」
あずみ先輩が陽人の腕の中でもがく。 陽人のカオを見上げると、
「先輩、見ないで」
陽人は恥ずかしそうに、あずみ先輩の目を自分の手で覆った。
まじかよ・・・・!
陽人、あずみ先輩のこと、好きだったんだ・・・・!
永尾先輩が大きなため息をつく。
「中間、お前さ・・・ あずみのこと好きなら、もっと大事にしてやれよ・・・」
陽人は永尾先輩にぺこって頭を下げた。
「すいません・・・迷惑かけて」
「もういいよ・・・・ あずみ、良かったな」
陽人はあずみ先輩を抱きしめていた手を解くと、先輩の両頬に触れてカオを覗き込んだ。
「先輩・・・ オレと、つき合ってくれますか?」
「えっ、え?」
あずみ先輩はあまりの展開に頭がついていってないみたいで、真っ赤なカオをしてる。
そんなカオも、すげーかわいい。
陽人はまたオレたちを振り返ってにらむと、
「あずみ先輩、ちょっと2人になりましょ。 先輩のかわいいカオ、みんなに見せたくないんで」
そう言って、先輩の手を取って、
「永尾先輩、いろいろすみませんでした。 瑞樹、和真も、ありがとな」
真っ赤なカオをしたあずみ先輩の手を引いて、行ってしまった。
陽人たちが行った方を見て、オレは呆然としてしまった。
「陽人・・・あずみ先輩のこと、好きだったんだな・・・」
和真はため息をつく。
「だろうとは思ってたけどなー。 ほんっと、手がかかる奴」
和真の言葉に、オレは驚いて振り返る。
「えっ、陽人が先輩のこと好きって、和真わかってたのか?」
「えー? だってさ、陽人、先輩のこと泣かせたくないって言ってたじゃん。 いつもだったら遊ぶだけ遊んで、面倒くさくなったら相手が泣いても全然無視の陽人が、あんなこと言ってたからさ。 あー、いつもの遊び相手とは違うんだろうなって、思ってた」
「まじかー・・・」
オレ、全然わかんなかった・・・・・
ほんと、人の気持ちとかわかんねーんだな、オレ・・・・・
「あずみ先輩の気持ちが重い、とか言ってたけど、あれもどう対応したらいいか分かんなかったんだろうな。 いつも軽くつき合ってるだけだったし、先輩みたいなマジメなタイプの人に真剣に想われて、自分も好きかもしれないって思って・・・ 混乱してたんじゃねーのかな」
・・・和真の洞察力が、すごい・・・
「まあ、陽人がそう言ってたわけじゃねーから、オレの思い込みかもしれないけど」
感心して見てると、へへって和真は照れたように笑った。
「迷惑かけてわるかったな。 ・・・ありがとう」
永尾先輩は、少し寂しそうに笑った。
・・・そうだよな。 先輩は、あずみ先輩のこと、好きなんだもんな・・・
「じゃあな」
永尾先輩は、オレたちに軽く手を振って、この場をあとにした。
「オレたちも戻るか」
「そうだな」
和真とふたり、教室に戻ることにする。
「・・・あのさ」
「ん?」
並んで歩いてると、和真が少し言いにくそうに口を開いた。
「瑞樹さ・・・ 桐谷と、その・・・ つき合ってる、とかなのか・・・・?」
・・・・そうだ・・・・
さっき桐谷とキスしてるとこ、和真に見られたんだった・・・・!
「あ・・・え、と」
どうしよう・・・
でも、陽人はもう知ってるわけだし、和真にだけ秘密にするってのも・・・・ ていうか、もう見られてるんだし、ごまかしたりできないし・・・・
小さくため息をついて、和真を見た。
「オレと桐谷・・・・ その・・・・ つき合ってんだ・・・・」
さすがに和真を直視できなくて、言葉の後半はうつむいてしまった。
「そー・・・っかあ・・・・・」
和真は片手でカオをおおう。
「そっかー・・・・ うん・・・」
自分を納得させるように、和真は何度も頷いた。
「和真・・・ 話して無くて、ごめんな・・・・」
「いや、いいよ。 言いにくいことだろうし・・・・ でも・・・ その、陽人は、知ってたんだよな・・・・?」
和真は少しだけ寂しそうな瞳で、オレを見た。
そう・・・・だよな・・・・
結果的に、和真にだけ秘密にしてしまったわけで・・・・
「陽人には・・・・ 前に、桐谷とキスしてるとこ見られてさ・・・・ それで・・・
でも、和真には話して無かったから・・・ ゴメン、な」
和真は少し微笑んだ。
「なんか、オレの方こそ、ゴメン。 なんで話してくんなかったんだろって、思っちまった。
でも・・・ そりゃー、言いにくいよな」
和真は手を伸ばして、オレの肩をぐって抱いてきた。
「でもさ! オレのこと、もっと信用しろって! 桐谷とつき合ってるからって、なんか変わるわけじゃねーだろ」
「・・・うん」
和真の言葉が、嬉しかった。
オレ自身はチャラいって思われてるし、周りにはなんて思われてもへーき。
そう思ってたけど。
・・・・陽人や和真がどう思うか・・・ それは気にしてたんだなって、改めて思った。
「桐谷のこと、大事にしろよー。 瑞樹、結構ワガママだからな」
「えっ、オレそんなワガママかな」
「ワガママっていうか、基本がモテるからさ。 相手から好かれて当然みたいなとこあるだろ、お前」
うっわ。 それ、性格悪くねー?
「和真ぁ・・・ オレのこと、そんな風に思ってたのかよ・・・」
軽く落ち込みながら言うと、和真は笑ってオレの肩を叩いた。
「あくまで恋愛において、だぜ? 女のコに対する態度! 別にオレたちに対してじゃなくて。
・・・だからさ」
和真はオレにカオを近づける。
「ちゃんと桐谷の話とか、聞いてやれよ? 瑞樹みたいにモテる奴とつき合ってるだけで、相手は結構不安に思うもんなんだからさ」
「そんなもんか?」
和真はあきれたように笑った。
「お前なー・・・ オレが、瑞樹の歴代の彼女からいっつも相談受けてたのなんて、知らねーだろ。 みーんな、『瑞樹に本当に好かれてるか分かんない』とか、『瑞樹がまた合コン行ってる』とか、オレにグチって来てたぜ?」
「まじかよ」
「でも、重くなったら瑞樹にすぐ捨てられそうだからって、みんなガマンしててさ・・・ ほんっと、女のコ泣かせるよなーって思ってた」
和真の話に、思わず眉間にシワを寄せてしまう。
「うわー・・・ オレ、サイテーだな・・・」
「今頃気づいたか?」
和真はいたずらっ子のような表情。
「サイテーってことはねーけど。 モテる奴には、そうじゃない奴の気持ちなんて、分かんねーんだろうなって思う。
瑞樹も、陽人も、さ」
「和真だって、モテんじゃん」
「オレなんか、お前らに比べたら全然だろ。 レベルが違う」
オレの肩を抱いてる和真のカオを至近距離で見ると、なんか胸がきゅってなった。
思わず、和真の首に腕を回して抱き着く。
「うぉっ、瑞樹?」
ぎゅううって、和真に抱き着く腕に力を入れる。
「和真・・・ こんなオレたちと仲良くしてくれて、ありがとな・・・・ 和真、すっげーいいヤツだな」
和真はオレの背中に手を回して、ぽんぽんって叩いた。
「お前ら2人とも、ちゃんとつき合う相手が出来て良かったな。
・・・瑞樹、桐谷と仲良くしろよ」
「うん・・・ ありがと、和真」
「体育館の裏で、待ってもらってるから」
オレたちが体育館裏に行くと、あずみ先輩と永尾先輩がいた。
「星野くん・・・本当にごめん! すまなかった」
永尾先輩は勢いよく頭を下げる。
「そんな、大丈夫です」
オレは慌てて先輩の肩に触れた。
「ケガは大丈夫か? これからも病院に通ったりするのか?」
「異常なしと言われました。 これから通ったりとかも、特に何も」
「そっか・・・よかった・・・」
先輩は安心したようにため息をつき、もう一度頭を下げた。
「でも、本当に悪かった」
「もう大丈夫ですから。 それに・・・先輩と陽人がもめてたのって、あの写真のせい、なんですよね・・・? だったら、オレにも責任があるから・・・」
陽人がオレの肩に手を乗せた。
「瑞樹は悪くねーから。 悪いのは・・・オレだ」
「陽人・・・」
「永尾先輩は、オレがはっきりした態度を取らないから、怒ったんスよね?」
永尾先輩はきゅって眉根を寄せる。
「ああ・・・その上で、昨日またあんな写真が出回ってきて・・・ あずみがショック受けてたから・・・」
それまで黙って話を聞いていたあずみ先輩が、永尾先輩と陽人の間に割って入った。
「待って。 あの、星野くん・・・ケガさせてしまって、本当にごめんなさい」
あずみ先輩はオレに深々と頭を下げた。
「それから・・・隆くん、陽人くんも、なんか、ごめんね」
隆・・・は、永尾先輩の名前、だろうな。
ふわって微笑むあずみ先輩は、ほんとにキレイで。 でもその微笑みは、とても悲しそうだった。
「陽人くんが私のことなんとも思ってないのは分かってたの。 はっきり言わないのは、陽人くんの優しさだと思う。 でも陽人くんがはっきり言わないのをいいことに、私がしつこくしてたから・・・」
話しながら、その瞳には涙が浮かんできた。
「でももう、わかった・・から」
先輩が瞬きをすると、瞳にたまった涙が一筋、零れ落ちた。
先輩には申し訳ないけど、泣き顔も本当にキレイで。 オレは思わず見惚れてしまった。
「あずみ・・・!」
永尾先輩が、あずみ先輩の肩に手を伸ばす。
するとそれを遮るように、陽人があずみ先輩の肩に触れた。 そのまま掴んで、自分の胸に引き寄せる。
陽人は眉間にシワを寄せて、はーってため息をついた。
あずみ先輩は慌てたようにカオを上げた。
「ご、めんね、陽人くん。 泣いたりして、めんどくさいよね」
陽人から離れようとするあずみ先輩の背中に、陽人は手を回して抱きしめた。 後頭部にも手を回して、先輩のカオを自分の胸に押し付ける。
「・・・オレ、先輩のこと泣かせたくないって思ってました。 今もそう思ってますけど・・・・ 今はそれよりも、先輩の泣き顔を他の奴に見られたくない」
え、陽人、それって・・・・
陽人はオレと和真を振り返ってにらんだ。
「お前ら、見るな」
はあああ!?
「いや、心配してやってんのに、なんだよ、それ!?」
怒るオレの隣で、和真はくっくって笑い出した。
「陽人・・・お前、あずみ先輩のこと、すげー好きなんじゃん。 泣き顔見られたくないとか」
和真の言葉に、陽人はカオを赤くした。
・・・うっそ、まじ!?
陽人のこんなカオ、見たことねーし!
「陽人くん・・・!?」
あずみ先輩が陽人の腕の中でもがく。 陽人のカオを見上げると、
「先輩、見ないで」
陽人は恥ずかしそうに、あずみ先輩の目を自分の手で覆った。
まじかよ・・・・!
陽人、あずみ先輩のこと、好きだったんだ・・・・!
永尾先輩が大きなため息をつく。
「中間、お前さ・・・ あずみのこと好きなら、もっと大事にしてやれよ・・・」
陽人は永尾先輩にぺこって頭を下げた。
「すいません・・・迷惑かけて」
「もういいよ・・・・ あずみ、良かったな」
陽人はあずみ先輩を抱きしめていた手を解くと、先輩の両頬に触れてカオを覗き込んだ。
「先輩・・・ オレと、つき合ってくれますか?」
「えっ、え?」
あずみ先輩はあまりの展開に頭がついていってないみたいで、真っ赤なカオをしてる。
そんなカオも、すげーかわいい。
陽人はまたオレたちを振り返ってにらむと、
「あずみ先輩、ちょっと2人になりましょ。 先輩のかわいいカオ、みんなに見せたくないんで」
そう言って、先輩の手を取って、
「永尾先輩、いろいろすみませんでした。 瑞樹、和真も、ありがとな」
真っ赤なカオをしたあずみ先輩の手を引いて、行ってしまった。
陽人たちが行った方を見て、オレは呆然としてしまった。
「陽人・・・あずみ先輩のこと、好きだったんだな・・・」
和真はため息をつく。
「だろうとは思ってたけどなー。 ほんっと、手がかかる奴」
和真の言葉に、オレは驚いて振り返る。
「えっ、陽人が先輩のこと好きって、和真わかってたのか?」
「えー? だってさ、陽人、先輩のこと泣かせたくないって言ってたじゃん。 いつもだったら遊ぶだけ遊んで、面倒くさくなったら相手が泣いても全然無視の陽人が、あんなこと言ってたからさ。 あー、いつもの遊び相手とは違うんだろうなって、思ってた」
「まじかー・・・」
オレ、全然わかんなかった・・・・・
ほんと、人の気持ちとかわかんねーんだな、オレ・・・・・
「あずみ先輩の気持ちが重い、とか言ってたけど、あれもどう対応したらいいか分かんなかったんだろうな。 いつも軽くつき合ってるだけだったし、先輩みたいなマジメなタイプの人に真剣に想われて、自分も好きかもしれないって思って・・・ 混乱してたんじゃねーのかな」
・・・和真の洞察力が、すごい・・・
「まあ、陽人がそう言ってたわけじゃねーから、オレの思い込みかもしれないけど」
感心して見てると、へへって和真は照れたように笑った。
「迷惑かけてわるかったな。 ・・・ありがとう」
永尾先輩は、少し寂しそうに笑った。
・・・そうだよな。 先輩は、あずみ先輩のこと、好きなんだもんな・・・
「じゃあな」
永尾先輩は、オレたちに軽く手を振って、この場をあとにした。
「オレたちも戻るか」
「そうだな」
和真とふたり、教室に戻ることにする。
「・・・あのさ」
「ん?」
並んで歩いてると、和真が少し言いにくそうに口を開いた。
「瑞樹さ・・・ 桐谷と、その・・・ つき合ってる、とかなのか・・・・?」
・・・・そうだ・・・・
さっき桐谷とキスしてるとこ、和真に見られたんだった・・・・!
「あ・・・え、と」
どうしよう・・・
でも、陽人はもう知ってるわけだし、和真にだけ秘密にするってのも・・・・ ていうか、もう見られてるんだし、ごまかしたりできないし・・・・
小さくため息をついて、和真を見た。
「オレと桐谷・・・・ その・・・・ つき合ってんだ・・・・」
さすがに和真を直視できなくて、言葉の後半はうつむいてしまった。
「そー・・・っかあ・・・・・」
和真は片手でカオをおおう。
「そっかー・・・・ うん・・・」
自分を納得させるように、和真は何度も頷いた。
「和真・・・ 話して無くて、ごめんな・・・・」
「いや、いいよ。 言いにくいことだろうし・・・・ でも・・・ その、陽人は、知ってたんだよな・・・・?」
和真は少しだけ寂しそうな瞳で、オレを見た。
そう・・・・だよな・・・・
結果的に、和真にだけ秘密にしてしまったわけで・・・・
「陽人には・・・・ 前に、桐谷とキスしてるとこ見られてさ・・・・ それで・・・
でも、和真には話して無かったから・・・ ゴメン、な」
和真は少し微笑んだ。
「なんか、オレの方こそ、ゴメン。 なんで話してくんなかったんだろって、思っちまった。
でも・・・ そりゃー、言いにくいよな」
和真は手を伸ばして、オレの肩をぐって抱いてきた。
「でもさ! オレのこと、もっと信用しろって! 桐谷とつき合ってるからって、なんか変わるわけじゃねーだろ」
「・・・うん」
和真の言葉が、嬉しかった。
オレ自身はチャラいって思われてるし、周りにはなんて思われてもへーき。
そう思ってたけど。
・・・・陽人や和真がどう思うか・・・ それは気にしてたんだなって、改めて思った。
「桐谷のこと、大事にしろよー。 瑞樹、結構ワガママだからな」
「えっ、オレそんなワガママかな」
「ワガママっていうか、基本がモテるからさ。 相手から好かれて当然みたいなとこあるだろ、お前」
うっわ。 それ、性格悪くねー?
「和真ぁ・・・ オレのこと、そんな風に思ってたのかよ・・・」
軽く落ち込みながら言うと、和真は笑ってオレの肩を叩いた。
「あくまで恋愛において、だぜ? 女のコに対する態度! 別にオレたちに対してじゃなくて。
・・・だからさ」
和真はオレにカオを近づける。
「ちゃんと桐谷の話とか、聞いてやれよ? 瑞樹みたいにモテる奴とつき合ってるだけで、相手は結構不安に思うもんなんだからさ」
「そんなもんか?」
和真はあきれたように笑った。
「お前なー・・・ オレが、瑞樹の歴代の彼女からいっつも相談受けてたのなんて、知らねーだろ。 みーんな、『瑞樹に本当に好かれてるか分かんない』とか、『瑞樹がまた合コン行ってる』とか、オレにグチって来てたぜ?」
「まじかよ」
「でも、重くなったら瑞樹にすぐ捨てられそうだからって、みんなガマンしててさ・・・ ほんっと、女のコ泣かせるよなーって思ってた」
和真の話に、思わず眉間にシワを寄せてしまう。
「うわー・・・ オレ、サイテーだな・・・」
「今頃気づいたか?」
和真はいたずらっ子のような表情。
「サイテーってことはねーけど。 モテる奴には、そうじゃない奴の気持ちなんて、分かんねーんだろうなって思う。
瑞樹も、陽人も、さ」
「和真だって、モテんじゃん」
「オレなんか、お前らに比べたら全然だろ。 レベルが違う」
オレの肩を抱いてる和真のカオを至近距離で見ると、なんか胸がきゅってなった。
思わず、和真の首に腕を回して抱き着く。
「うぉっ、瑞樹?」
ぎゅううって、和真に抱き着く腕に力を入れる。
「和真・・・ こんなオレたちと仲良くしてくれて、ありがとな・・・・ 和真、すっげーいいヤツだな」
和真はオレの背中に手を回して、ぽんぽんって叩いた。
「お前ら2人とも、ちゃんとつき合う相手が出来て良かったな。
・・・瑞樹、桐谷と仲良くしろよ」
「うん・・・ ありがと、和真」
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