イケメンのオレにカレシができました! 気持ちイイからまあいっか

mii

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32.なんでそっけないんだろう

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今日はせっかく桐谷を待ってたのに、一緒に帰ることが出来なくて。

それに、帰る時全くオレの方を見てくれなかったから、なにか怒ってんのかな・・?とか、ちょっと不安にもなった。

けどその日の夜LINEをしてるときの桐谷はいつも通りだった。


『明日、朝少し早く行こうかな』

今日一緒に帰れなかったし。 明日少し会えたらいいなって思って。

そしたら、

『明日の朝、奥山さんと一緒に勉強する約束したんだ』

え、奥山さんと、勉強の約束・・・?

ぎゅって、胸が痛くなる。

やっぱ奥山さん、桐谷のこと・・・

『そっか』

奥山さんと勉強するから、オレに来るなってことだよ・・・な

オレは胸が苦しくて、そっけない返事しかできなかった。

『ごめんな』

・・・謝るんなら、奥山さんと2人で過ごすなよ!

そう思うけど、実際にはそんなこと言えなくて。

『大丈夫。 おやすみ』

オレはモヤモヤとしたまま、会話を打ち切った。




桐谷には『来るな』ってニュアンスのこと言われたけど、やっぱり会いたいなって思ってたのか、次の日の朝は、早く目が覚めてしまった。

少し、少しだけなら、話、できない、かな・・・

淡い期待を抱いて、いつもよりも早く学校に向かった。


教室の前に来て、小さく、ため息をつく。

・・・もう、2人とも、来てるかな・・・

カオを上げてドアに手をかけ、勢いよく開く。


ガラガラッ!


思ったより大きな音が響いて自分で驚いてしまうけど、教室の中の2人はもっと驚いたみたいだった。

「・・・星野」

桐谷と奥山さん、2人とも驚いた表情でオレを見る。

並べた机をくっつけて、2人で勉強していたみたいだ。

・・・っていうか、距離、近くね?


「・・・星野くん、おはよう」

奥山さんは、オレに笑顔を見せてくれる。

「星野くんも、桐谷くんに教えてもらうの?」

・・・確かに、そういう事にすればよかったのかもしれない。 そうすれば、奥山さんもいるけど、桐谷と過ごすことが出来るから。

でもオレは・・・ 桐谷と、2人で、過ごしたくて。

「あ、いや、別に」

それで、思わず否定してしまった。


「・・・オレたち勉強してるから。 邪魔しないでくれるかな」


桐谷の冷たい声が響く。

教科書から目を上げずに、オレの方を見ないで、そう言った。


ぎゅって、胸が苦しくなる。


・・・なんだよ。

確かに昨日、LINEで『来るな』って感じで言われたけど・・・

学校で話さないって言ったのはオレだし、こんな、奥山さんの前で、話すところとか見られたらダメなのもわかってるけど・・・


そんな言い方、しなくても、いいだろ。


「・・・・別に邪魔とかしねーし。 入ってきて悪かったな」


感情を抑えつけて出した声は、思いのほか低くて。

奥山さんは慌てたように桐谷とオレのカオを交互に見た。


・・・ガラガラッ・・・バンッ!


オレは開けたときよりも勢いよく教室のドアを閉めた。


・・・奥山さん、絶対、桐谷のこと、好きだし。

それなのに、なんで2人きりになるんだよ。

・・・オレだって、不安に思ったり・・・・するんだからな・・・・・!



イラつきながら、オレは屋上に昇って行った。


「はーぁ・・・・・・」

せっかく早く来たのに、桐谷とは過ごせないまま。 それどころか、なんか雰囲気悪くなってるし。

あー・・・ 来るんじゃなかったな・・・・

奥山さんと親しくしてるの、見ちゃったしさ・・・・


イライラしたまま屋上で横になってると、

「みーずき、おはよ」

由奈が声をかけてきた。 笑顔で上からオレのカオを覗き込んでくる。

「ああ・・・おはよ」

体を起こすと、由奈はオレの隣に座った。

「瑞樹、今日早いんだね」

オレはちらって周りに視線を走らせる。 ・・・美香は、居ないんだ。

「美香は教室に居たよ」

オレの視線の意味がわかったみたいで、由奈が教えてくれる。

・・・もう、教室にも人が増えてきてる時間か・・・

「由奈はどうしたんだ?」

「ドラマ、観ようと思って。 バスの中で観てたんだけど、続き気になって」

そう言って、スマホを取り出す。

「ふーん・・・」

由奈の手元を覗き込むと、オレは観ていない恋愛のドラマだった。

「瑞樹は興味ないでしょ」

「まあ・・・そーだな」


ふと、視線を感じて振り返った。


「奥山・・さん?」

少し離れたところに、奥山さんが立ってた。 オレが振り返ったから、びっくりしたみたいだ。

「オレに、用?」

なんだろと思って、首を傾げる。 奥山さんはすまなさそうな顔をした。

「あ、ごめんね。 松元さんと、話してるのに」

オレに用があって来たのかな。 そしたら由奈と話してたから、声かけられずにいたって感じ、かな。

由奈も奥山さんを振り返る。

「どうぞー。 私ドラマ観てるし、瑞樹と話してるわけじゃないから」

オレは奥山さんを手招きした。

「ここ、座んなよ」

そう言って、自分の隣の床をぽんぽんと叩いた。

「あ、うん、ありがとう」

オレの右隣に奥山さんが座る。 左隣には由奈が座ってて、スマホでドラマを観ている。 オレたちの邪魔にならないように、イヤホンを取り出してつけてくれた。

「なに? どうしたの?」

こんな風に、奥山さんと話したことなんてない。 急に、なんの用だろう。

奥山さんは少し心配そうな瞳でオレを見た。

「星野くん、大丈夫?」

さっきのこと、だよな。

「別に・・・大丈夫だよ」

オレは立てた膝に肘をつき、頬杖をつく。

「桐谷くんね、ちょっと気にしてたみたい」

「え・・・桐谷、が?」

「うん」

桐谷・・・オレのこと、気にしてくれてたのか・・・?

奥山さんは微笑んで、

「最近、仲いいんでしょ? 星野くんと、桐谷くん」

え、バレて、る?

でも、奥山さんには一緒に居るところ何度か見られたし・・・仕方ないの、かな。

「オレと桐谷が? んなわけないない」

オレは少し笑って、カオの前で手を振った。

「でも桐谷くんから、何度も星野くんの話聞くから・・・」

え、ちょっと、まじかよ。 桐谷、オレのことそんなに奥山さんに話してたのか?

なに話してたんだろ・・・

「桐谷・・・さ。 なんの話してたの・・・?」

桐谷の話はあまりしない方がいい。 分かってるけど、桐谷がオレのことなんて言ってたのか気になって。

奥山さんは少し首を傾げて、思い出すような仕草をする。

「んー・・・ あ、ほら、アイスとか、パンケーキ食べに行ったとか! 桐谷くん、楽しそうに話してたよ」

嬉しそうに話す奥山さんに、オレは恥ずかしくなって、膝に肘を乗せたままその左手の甲で目元を覆った。


桐谷・・・・奥山さんに、そんなこと話してたのかよ・・・・

嬉しい・・・けど、じゃあ、仲いいってバレてたんじゃん・・・・


「そう・・・なんだ・・・・」

やばい、オレ、カオ赤くないかな。

「でも昨日と今日、桐谷くんちょっと星野くんにそっけなかったでしょ? どうしたのかなって思ってたけど、なんか落ち込んでるみたいで・・・」

ちらって奥山さんを見ると、さっきのうれしそうな顔とは違って、心配そうな表情になってて。


ああ・・・ 奥山さん、やっぱ桐谷のこと好きなんだな・・・・

そう思うと、不安がよぎってしまう。


オレは口角を持ち上げた。

「・・・奥山さんさ、桐谷のこと、好きなんだな」

そう言うと、奥山さんの頬はぱって赤くなった。

「え、そ、そんなこと、ないよっ」

慌てたように、ぱたぱたと手を振る。 その姿を見て、思わず笑ってしまった。

「そんな焦んなくていいって。 別に、桐谷には言わねーから」

「星野くん、違うってば」

「大丈夫大丈夫」

落ち着かせるように奥山さんの肩をぽんぽんって叩くと、彼女はあきらめたように口をつぐんだ。

恥ずかしそうに視線を落とす彼女を見つめる。


・・・やっぱ、美人、だよなあ・・・・

清楚な感じだし・・・・桐谷とは・・・似合う、な・・・・・


「・・・奥山さんと桐谷は、お似合いだと思う」

思わず口をついて出た言葉。 自分で言ったその言葉に、ショックを受けてしまった。

「そ、んなこと、ないよ」

奥山さんは少し照れたように笑って、

「桐谷くん、怒ってないと思うから、大丈夫だよ」

桐谷とオレのことを心配して来てくれたんだよな。 奥山さん、優しいよな・・・

「・・・ああ、ありがとな」

お礼を言うと、奥山さんは満足そうに笑って立ち上がった。

「私、教室戻るね」

「ああ」

小さく手を振る奥山さんを見送って、

「はーぁ・・・・・」

思わず、大きなため息をつく。


「瑞樹」

突然声をかけられてびっくりする。 ・・・由奈の存在、忘れてた・・・・

「な、んだよ」

由奈はドラマを観終わったのかイヤホンを外すと、オレを見てニヤって笑った。

「瑞樹、好きな人いるって、美香に言ったんでしょ」

「え? あ、ああ・・・」

「瑞樹が遊んでくれないーって、いろんなコが言ってるしね。 瑞樹に彼女が出来たんじゃないかって、噂になってるけど」

「あー・・・」

なんとも言えなくて、オレは言葉を濁す。

由奈は口角を持ち上げたまま、オレにカオを近づけてきた。 イジワルそうな表情に、オレは思わず後ろに手をついて、後ろ体重になる。


「瑞樹の好きな人って・・・ 奥山さん、だったんだ?」


・・・・・・・・

由奈の言葉に、完全に思考が停止した。

おくやま、さん?


「な、んで、そうなるんだ」

「えー。 だって、今話してたの見てたら、そんな感じだったから。 奥山さんが桐谷くんのこと好きで、ショックなんでしょー?」

た、しかに。 奥山さんが桐谷のこと好きって分かって、ショックではあったけど。

でもそれって、オレが奥山さんのこと好きだからじゃねーんだけど・・・・

うわ、どうしよう。 違うって言っても、理由を説明できない。


「違う。 とにかく、違うから。
・・・っていうか、由奈、ドラマ観てたんじゃねーのかよ」

オレに覆いかぶさるように身を乗り出してきてた由奈の肩を押し返す。

由奈はオレから離れて座ってたところに戻ったけど、イジワルな表情のままで。

「だって、2人の話の方が面白そうだったから」

「イヤホン着けてたフリかよ」

イヤホンのコードを指に巻き付けて、くるくると回す。

「そっかあ・・・ 奥山さんじゃねえ・・・・ 瑞樹でも苦戦するよね」

「だから、違うって」

「でも意外だなあ・・・ 瑞樹、マジメなコが好きだったの?」

「ゆーなー」

ニラみながら由奈に近づきその肩をつかむと、由奈はハハって笑った。

「・・・美香には言わないから。 ま、瑞樹がんばってね」

そう言うと立ち上がって、オレに手を差し出す。

「そろそろ教室行こ」

オレは由奈の手を握って立ち上がった。


オレたちは並んで階段を降りる。

「由奈、違うからな。 勝手に勘違いするな」

「はいはい」

由奈は全くオレの話を聞かない。


オレは小さくため息をついた。


・・・・桐谷は怒ってないって・・・・ じゃあ、なんであんなにそっけないんだよ・・・

それに、奥山さんと敢えて2人きりになったりしてさ・・・・


結局、胸のモヤモヤは晴れないままだった。




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