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27.デート
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週末。
今日オレは桐谷と駅で待ち合わせをしている。
電車を降りて改札を出ると、桐谷を見つけた。
桐谷は人の流れに視線を向けてる。
・・・・オレのこと、探してるんだよな。
手を振ると、桐谷の視線はオレを捉えて、その表情は、柔らかくなった。
・・・・うわ。 あんな表情の桐谷、初めて見た、かも。
オレの前で笑ったりすることは増えたけど。
・・・・あんな表情も、するんだな・・・・
思わず足を止めたオレに、桐谷は今度は怪訝そうなカオになった。
立ち止まったオレに、近づいてくる。
「星野?」
声をかけられて、ハッとする。
「あ、ああ。 おはよ、桐谷」
「おはよう。 どうかしたのか?」
オレは笑って首を振った。
「何でもねーよ。 行こうぜ」
オレと桐谷は、駅からバスに乗った。
今日は少し遠出をする。
バスに乗って、海まで行くんだ。
まだ海の季節ではないけど・・・・
海の近くのカフェで、パフェが人気のところがあるって、桐谷が教えてくれたんだ。
桐谷も、少し離れたところに出かければ、学校の奴もいないだろうって考えてくれたみたいで。
わざわざオレのために調べてくれて・・・・ すげー、うれしい。
オレたちはバスに乗ると、一番後ろの座席に座った。
バスには結構空席がある。
「夏以外に海に行ったことって、ほとんどないかも」
「そうだな」
「でも桐谷は・・・ 夏でもあんまり、海行かなそうだよな」
隣に座る桐谷を見て、ちょっと笑ってしまう。
「なんで笑うんだよ。 海が似合わないってことか?」
「んー」
水着で海岸に居る桐谷を想像してみるけど・・・・
「うん。 あんま、似合わねー気がする」
「ひどいな。 オレだって、夏なら海に行ったりもする」
「去年の夏は行ったのか?」
オレの質問に桐谷は少し考えてから、苦笑した。
「・・・・・行ってないな」
「だろ。 だってなんか、イメージ違うもんな」
桐谷は腕を組むと、少し不機嫌そうな表情になる。
「・・・・そりゃあ、海ってやっぱり、星野みたいにキラキラした奴が似合うんだろうけど」
「キラキラ?」
オレ、が?
「ああ。 星野とか高井、・・・・中間、とか」
確かに、陽人たちとは夏休みに海に行ったけど。
「女子にモテてて、リア充っていうか。 そういう奴が似合うイメージだろ、海ってさ」
言いながら、桐谷は眉間にシワを寄せる。
どんどん機嫌、悪くなってる?
オレは桐谷の腕を引っ張って、組んでいたのをほどかせた。
その左腕に、自分の右腕を回して体を寄せる。
「オレがキラキラしてるって言ってくれんの、なんかうれしー。
でもさ、桐谷だって、リア充じゃん」
桐谷のカオをのぞき込むようにして、少し首を傾げて見せた。
桐谷は少し瞳を大きくすると、オレからカオを背けて、空いている右手で口元を抑えた。
「・・・・星野、離れろ」
・・・・照れてる。 かわいーなあ。
「やーだ」
オレはさらにぎゅって、桐谷の腕に抱き付いた。
「桐谷がリア充だって認めるまで、離れねーもん」
オレたちは一番後ろの席だし、車内に立ってる人はいない。
ほかの人に見られる心配がない状況だから、オレは桐谷にさらにカラダを寄せた。
「ちょ・・・っ、星野!」
「なー。 桐谷はリア充じゃねーの?
・・・・オレと、つき合ってんのに?」
少し眉根を寄せて、悲しそうな表情をしてみた。
桐谷はそんなオレを見て、小さくため息をつく。
「お前は・・・・
・・・・・ああ、オレはリア充だよ。 星野のおかげで」
オレは桐谷の耳元に口を寄せた。
「オレもリア充だよ。 桐谷のおかげで」
そう告げて、耳に軽くキスをする。
「・・・星野っ!」
桐谷は少し頬を染めてオレを制する、けど。
「あ、海!」
オレは桐谷の肩越しに見えた海に、視線を奪われてしまった。
オレの声に、桐谷も窓の外を見る。
窓際に座ってる桐谷の膝に手をついて身を乗り出すと、オレは窓にカオを寄せた。
「・・・星野」
桐谷が、自分の目の前に身を乗り出すオレの腰に手を回してきた。
そっと、頬にも触れて。
唇を耳元に寄せて、キスを、してきた。
「・・・・・っ」
ほんの少し唇が触れただけなのに、オレのカラダは反応してしまう。
オレはキスされた耳を抑えて、おとなしく座席に戻った。
桐谷とは少し、距離を取って。
「・・・なんでそんな離れて座るんだ?」
・・・・・やばい。 カオが赤くなってんのが、わかる。
オレは耳を抑えたままうつむいて、カオを隠した。
・・・・自分から仕掛けるのは好きだ。
桐谷の照れたカオを見るの、好きだし。
でも。
不意打ちみたいにこういうことをされると、弱い。
黙ったままうつむいてると、桐谷の手がオレの頭を撫でた。
そっとカオを上げて桐谷を見ると、優しい表情でオレを見ていた。
「・・・・もうすぐ着くな」
バスを降りると目の前は海!
目的地のカフェは、バス停からほど近い場所にあった。
カフェから海岸も目と鼻の先。
「後で海岸歩こうぜ」
「そうだな」
カフェは白を基調としたかわいくてオシャレな造り。
いかにも女子が好きそうな感じだよな。
店内はそこそこ混んでたけど、座ることが出来た。
「わー・・・・ すげーいっぱいあるな」
このカフェは、パフェが有名な店。
味はもちろんなんだろうけど、とにかく種類が豊富だ。
「どれにしよっかなー」
うきうきしながらメニューを眺める。
「やっぱ、フルーツとクリームがたっぷりなのに惹かれるなぁ・・・・
桐谷は?」
オレは向かいの席に座る桐谷に視線を移した。
桐谷はオレを見て微笑むと、
「星野が2つ選べよ。 半分ずつ食べよう」
「え・・・・ でも、それじゃ桐谷、好きなの食えねーじゃん」
・・・・・まあ、 そんなにパフェが好きなのか、分かんねーけど・・・・・・
「オレは星野が選んだのを食べたい」
微笑んでそう言われて、オレは恥ずかしくてうつむいた。
結局オレが、自分が食べたいパフェを2つ選んだ。
ベリーがたくさん乗っていて、ベリー系のアイスもたっぷり入ってるパフェと、
ガトーショコラがちょこんって乗ってる、チョコアイスもたっぷり入ってるパフェ。
・・・・改めて店内を見回すと。
パンケーキの店に行った時と同じように、オレたちのような男だけの客はいない。
・・・・やっぱちょっと、恥ずかしーよな・・・・・
「・・・・男だけで来てんのって、オレたちだけだな」
オレの言葉に、桐谷も店内を見回して、うなずく。
「そうだな」
「・・・・やっぱちょっと、恥ずかしくねー・・・・?」
少し小さい声で言うオレに、
「好きで食べに来てるんだ。別にいいだろ」
桐谷はパンケーキの店に行った時のように、ハッキリと言った。
・・・・こういうとこ、すげーなって、思う。
・・・他人にどう思われようと、自分が好きだからイイって。
「・・・でも、少し注目を浴びてるのはわかる」
「え?」
桐谷は少し眉根を寄せた。
・・・やっぱ、男だけで食いに来てるから、か?
で、桐谷は少し迷惑に思ってるのかな・・・・
申し訳ないなって思ってると、桐谷は思いがけないことを言った。
「星野のことを見てる人が、たくさんいる」
「え・・え?」
「やっぱり星野はカッコイイしカワイイし・・・モテるんだな・・・・」
タメ息まじりに呟く桐谷。
ちょっと、待て。
カッコいい、は、ともかく、カワイイ??
わけわかんねーよ。
もう1度店内を見回すと、確かに何人もの人と目が合った。
・・・オレはモテるし、こうやって見られるのも慣れてる、けど。
今は・・・今見られてるのは・・・オレだけが原因じゃねーな・・・・
今度はちらって、桐谷のカオを見る。
黒髪に黒縁メガネで、すげーマジメな、知的な感じ。 で、イケメン。
桐谷自身が気づいてないだけで、注目浴びてると思う。
それから・・・見た目にチャラいオレと、マジメな桐谷。 こんな組み合わせの男同士でパフェ食べに来てたら・・・まあ、注目浴びるよな・・・・
「・・・今注目浴びてるのって、オレのせいだけじゃねーと思う」
「え?」
「たぶん、チャラいオレとマジメな桐谷の組み合わせだから。 目立つんだろうな」
「そう、かな・・・」
オレはうなずいて、
「それに・・・桐谷だって、・・イ、ケメン、だ、から・・・」
言いながら、恥ずかしくなってきた。
桐谷は少し驚いたカオをして、そして照れたように微笑んだ。
「・・・・そんなこと、言われたことないけど。 ・・・・星野が言ってくれたら、うれしいな」
桐谷の笑顔。
・・・・桐谷だって、カワイイ、と思う。
桐谷の笑顔に、オレの胸はきゅってなった。
そうこうしてると、注文したパフェが来た。
「わーっ、うまそー♡」
とりあえず、スマホを取り出して写真を撮る。
こんなスイーツの写真なんて、SNSに上げれるはずもなく、誰に見せるわけでもないんだけど。
オレは先にベリーのパフェを食べた。
「うまいなーっ♡」
甘酸っぱくて、すげーおいしい♡
パフェに浸って堪能してると、
パシャッ
不意に響く、シャッター音。
「ちょっ、桐谷」
桐谷がオレにスマホを向けてた。
「パフェ食べてる星野が、カワイイから」
そう言って、微笑む。
「はずかしーから、食ってるとこなんて、撮るなよ」
少しふて腐れて言うけど、
「いいだろ。 撮りたいんだ」
桐谷は自分のパフェからチョコアイスをすくって、差し出してきた。
「ほら、こっちあげるから、な?」
・・・・なんか、子ども扱いされてる気がする。
でも食べさせてくれるのが嬉しくて、差し出されたアイスを少し身を乗り出して、パクって食べた。
・・・・周りの視線は気になるけど、別に知ってる人もいないし、少しくらいいいだろ。
「ん。 チョコもおいしいな」
オレは自分のベリーのアイスも、スプーンにすくって差し出した。
「はい、桐谷」
桐谷は差し出されたスプーンを見て、少し驚いた表情をした。
「食わねーの?」
少し首を傾げると、桐谷はハッとしたように首を振った。
「た、食べるよ」
そう言って、オレのスプーンからアイスを食べた。
・・・・・あー・・・・ なんかすげー、かわいいな・・・・・
「桐谷、おいしい?」
桐谷は少し頬を赤らめて頷いた。
・・・・・こういう表情の桐谷、好きだな・・・・・
「・・・星野は、よくこういうこと、するのか?」
「こういうことって?」
「その・・・・食べさせたり、とか・・・・ 彼女に」
「あー・・・」
そう言えば、あんまりしたことないな。
っていうか、だいたい『瑞樹、食べさせてー♡』っておねだりされて、はいはいって感じでやってあげてただけだしな。
「自分からすすんでやったことってないかも。
・・・・桐谷が、初めてだ」
「そうなん・・・・だ。 じゃあ、なんでオレにしたんだ・・・・?」
「えー? ・・・・・桐谷が、かわいーから」
桐谷は驚いたカオをした。
「か、かわいいって、オレが?」
「うん。 オレ、桐谷の照れてるカオ、好きだし。 それに、つき合ってんだから、いーじゃん。 桐谷だって、オレにしてるだろ」
オレはベリーのアイスをすくうと、もう一度桐谷に差し出した。
桐谷はまた頬を少し染めて、アイスをぱくって食べた。
・・・・ああ、やっぱ、かわいいな。
いつもクールな表情の桐谷が、こんなカオ、するんだもんな。
完全に桐谷と2人の世界に入っちゃってたオレは、ふと視線を感じて振り返った。
すると、何人もの人に見られてるのに気が付いた。
・・・・やっば。 すげー恥ずかしい。
さすがにやり過ぎたな。
桐谷も気付いたみたいで、オレたちはカオを見合わせて苦笑した。
それからはおとなしくパフェを堪能した。
今日オレは桐谷と駅で待ち合わせをしている。
電車を降りて改札を出ると、桐谷を見つけた。
桐谷は人の流れに視線を向けてる。
・・・・オレのこと、探してるんだよな。
手を振ると、桐谷の視線はオレを捉えて、その表情は、柔らかくなった。
・・・・うわ。 あんな表情の桐谷、初めて見た、かも。
オレの前で笑ったりすることは増えたけど。
・・・・あんな表情も、するんだな・・・・
思わず足を止めたオレに、桐谷は今度は怪訝そうなカオになった。
立ち止まったオレに、近づいてくる。
「星野?」
声をかけられて、ハッとする。
「あ、ああ。 おはよ、桐谷」
「おはよう。 どうかしたのか?」
オレは笑って首を振った。
「何でもねーよ。 行こうぜ」
オレと桐谷は、駅からバスに乗った。
今日は少し遠出をする。
バスに乗って、海まで行くんだ。
まだ海の季節ではないけど・・・・
海の近くのカフェで、パフェが人気のところがあるって、桐谷が教えてくれたんだ。
桐谷も、少し離れたところに出かければ、学校の奴もいないだろうって考えてくれたみたいで。
わざわざオレのために調べてくれて・・・・ すげー、うれしい。
オレたちはバスに乗ると、一番後ろの座席に座った。
バスには結構空席がある。
「夏以外に海に行ったことって、ほとんどないかも」
「そうだな」
「でも桐谷は・・・ 夏でもあんまり、海行かなそうだよな」
隣に座る桐谷を見て、ちょっと笑ってしまう。
「なんで笑うんだよ。 海が似合わないってことか?」
「んー」
水着で海岸に居る桐谷を想像してみるけど・・・・
「うん。 あんま、似合わねー気がする」
「ひどいな。 オレだって、夏なら海に行ったりもする」
「去年の夏は行ったのか?」
オレの質問に桐谷は少し考えてから、苦笑した。
「・・・・・行ってないな」
「だろ。 だってなんか、イメージ違うもんな」
桐谷は腕を組むと、少し不機嫌そうな表情になる。
「・・・・そりゃあ、海ってやっぱり、星野みたいにキラキラした奴が似合うんだろうけど」
「キラキラ?」
オレ、が?
「ああ。 星野とか高井、・・・・中間、とか」
確かに、陽人たちとは夏休みに海に行ったけど。
「女子にモテてて、リア充っていうか。 そういう奴が似合うイメージだろ、海ってさ」
言いながら、桐谷は眉間にシワを寄せる。
どんどん機嫌、悪くなってる?
オレは桐谷の腕を引っ張って、組んでいたのをほどかせた。
その左腕に、自分の右腕を回して体を寄せる。
「オレがキラキラしてるって言ってくれんの、なんかうれしー。
でもさ、桐谷だって、リア充じゃん」
桐谷のカオをのぞき込むようにして、少し首を傾げて見せた。
桐谷は少し瞳を大きくすると、オレからカオを背けて、空いている右手で口元を抑えた。
「・・・・星野、離れろ」
・・・・照れてる。 かわいーなあ。
「やーだ」
オレはさらにぎゅって、桐谷の腕に抱き付いた。
「桐谷がリア充だって認めるまで、離れねーもん」
オレたちは一番後ろの席だし、車内に立ってる人はいない。
ほかの人に見られる心配がない状況だから、オレは桐谷にさらにカラダを寄せた。
「ちょ・・・っ、星野!」
「なー。 桐谷はリア充じゃねーの?
・・・・オレと、つき合ってんのに?」
少し眉根を寄せて、悲しそうな表情をしてみた。
桐谷はそんなオレを見て、小さくため息をつく。
「お前は・・・・
・・・・・ああ、オレはリア充だよ。 星野のおかげで」
オレは桐谷の耳元に口を寄せた。
「オレもリア充だよ。 桐谷のおかげで」
そう告げて、耳に軽くキスをする。
「・・・星野っ!」
桐谷は少し頬を染めてオレを制する、けど。
「あ、海!」
オレは桐谷の肩越しに見えた海に、視線を奪われてしまった。
オレの声に、桐谷も窓の外を見る。
窓際に座ってる桐谷の膝に手をついて身を乗り出すと、オレは窓にカオを寄せた。
「・・・星野」
桐谷が、自分の目の前に身を乗り出すオレの腰に手を回してきた。
そっと、頬にも触れて。
唇を耳元に寄せて、キスを、してきた。
「・・・・・っ」
ほんの少し唇が触れただけなのに、オレのカラダは反応してしまう。
オレはキスされた耳を抑えて、おとなしく座席に戻った。
桐谷とは少し、距離を取って。
「・・・なんでそんな離れて座るんだ?」
・・・・・やばい。 カオが赤くなってんのが、わかる。
オレは耳を抑えたままうつむいて、カオを隠した。
・・・・自分から仕掛けるのは好きだ。
桐谷の照れたカオを見るの、好きだし。
でも。
不意打ちみたいにこういうことをされると、弱い。
黙ったままうつむいてると、桐谷の手がオレの頭を撫でた。
そっとカオを上げて桐谷を見ると、優しい表情でオレを見ていた。
「・・・・もうすぐ着くな」
バスを降りると目の前は海!
目的地のカフェは、バス停からほど近い場所にあった。
カフェから海岸も目と鼻の先。
「後で海岸歩こうぜ」
「そうだな」
カフェは白を基調としたかわいくてオシャレな造り。
いかにも女子が好きそうな感じだよな。
店内はそこそこ混んでたけど、座ることが出来た。
「わー・・・・ すげーいっぱいあるな」
このカフェは、パフェが有名な店。
味はもちろんなんだろうけど、とにかく種類が豊富だ。
「どれにしよっかなー」
うきうきしながらメニューを眺める。
「やっぱ、フルーツとクリームがたっぷりなのに惹かれるなぁ・・・・
桐谷は?」
オレは向かいの席に座る桐谷に視線を移した。
桐谷はオレを見て微笑むと、
「星野が2つ選べよ。 半分ずつ食べよう」
「え・・・・ でも、それじゃ桐谷、好きなの食えねーじゃん」
・・・・・まあ、 そんなにパフェが好きなのか、分かんねーけど・・・・・・
「オレは星野が選んだのを食べたい」
微笑んでそう言われて、オレは恥ずかしくてうつむいた。
結局オレが、自分が食べたいパフェを2つ選んだ。
ベリーがたくさん乗っていて、ベリー系のアイスもたっぷり入ってるパフェと、
ガトーショコラがちょこんって乗ってる、チョコアイスもたっぷり入ってるパフェ。
・・・・改めて店内を見回すと。
パンケーキの店に行った時と同じように、オレたちのような男だけの客はいない。
・・・・やっぱちょっと、恥ずかしーよな・・・・・
「・・・・男だけで来てんのって、オレたちだけだな」
オレの言葉に、桐谷も店内を見回して、うなずく。
「そうだな」
「・・・・やっぱちょっと、恥ずかしくねー・・・・?」
少し小さい声で言うオレに、
「好きで食べに来てるんだ。別にいいだろ」
桐谷はパンケーキの店に行った時のように、ハッキリと言った。
・・・・こういうとこ、すげーなって、思う。
・・・他人にどう思われようと、自分が好きだからイイって。
「・・・でも、少し注目を浴びてるのはわかる」
「え?」
桐谷は少し眉根を寄せた。
・・・やっぱ、男だけで食いに来てるから、か?
で、桐谷は少し迷惑に思ってるのかな・・・・
申し訳ないなって思ってると、桐谷は思いがけないことを言った。
「星野のことを見てる人が、たくさんいる」
「え・・え?」
「やっぱり星野はカッコイイしカワイイし・・・モテるんだな・・・・」
タメ息まじりに呟く桐谷。
ちょっと、待て。
カッコいい、は、ともかく、カワイイ??
わけわかんねーよ。
もう1度店内を見回すと、確かに何人もの人と目が合った。
・・・オレはモテるし、こうやって見られるのも慣れてる、けど。
今は・・・今見られてるのは・・・オレだけが原因じゃねーな・・・・
今度はちらって、桐谷のカオを見る。
黒髪に黒縁メガネで、すげーマジメな、知的な感じ。 で、イケメン。
桐谷自身が気づいてないだけで、注目浴びてると思う。
それから・・・見た目にチャラいオレと、マジメな桐谷。 こんな組み合わせの男同士でパフェ食べに来てたら・・・まあ、注目浴びるよな・・・・
「・・・今注目浴びてるのって、オレのせいだけじゃねーと思う」
「え?」
「たぶん、チャラいオレとマジメな桐谷の組み合わせだから。 目立つんだろうな」
「そう、かな・・・」
オレはうなずいて、
「それに・・・桐谷だって、・・イ、ケメン、だ、から・・・」
言いながら、恥ずかしくなってきた。
桐谷は少し驚いたカオをして、そして照れたように微笑んだ。
「・・・・そんなこと、言われたことないけど。 ・・・・星野が言ってくれたら、うれしいな」
桐谷の笑顔。
・・・・桐谷だって、カワイイ、と思う。
桐谷の笑顔に、オレの胸はきゅってなった。
そうこうしてると、注文したパフェが来た。
「わーっ、うまそー♡」
とりあえず、スマホを取り出して写真を撮る。
こんなスイーツの写真なんて、SNSに上げれるはずもなく、誰に見せるわけでもないんだけど。
オレは先にベリーのパフェを食べた。
「うまいなーっ♡」
甘酸っぱくて、すげーおいしい♡
パフェに浸って堪能してると、
パシャッ
不意に響く、シャッター音。
「ちょっ、桐谷」
桐谷がオレにスマホを向けてた。
「パフェ食べてる星野が、カワイイから」
そう言って、微笑む。
「はずかしーから、食ってるとこなんて、撮るなよ」
少しふて腐れて言うけど、
「いいだろ。 撮りたいんだ」
桐谷は自分のパフェからチョコアイスをすくって、差し出してきた。
「ほら、こっちあげるから、な?」
・・・・なんか、子ども扱いされてる気がする。
でも食べさせてくれるのが嬉しくて、差し出されたアイスを少し身を乗り出して、パクって食べた。
・・・・周りの視線は気になるけど、別に知ってる人もいないし、少しくらいいいだろ。
「ん。 チョコもおいしいな」
オレは自分のベリーのアイスも、スプーンにすくって差し出した。
「はい、桐谷」
桐谷は差し出されたスプーンを見て、少し驚いた表情をした。
「食わねーの?」
少し首を傾げると、桐谷はハッとしたように首を振った。
「た、食べるよ」
そう言って、オレのスプーンからアイスを食べた。
・・・・・あー・・・・ なんかすげー、かわいいな・・・・・
「桐谷、おいしい?」
桐谷は少し頬を赤らめて頷いた。
・・・・・こういう表情の桐谷、好きだな・・・・・
「・・・星野は、よくこういうこと、するのか?」
「こういうことって?」
「その・・・・食べさせたり、とか・・・・ 彼女に」
「あー・・・」
そう言えば、あんまりしたことないな。
っていうか、だいたい『瑞樹、食べさせてー♡』っておねだりされて、はいはいって感じでやってあげてただけだしな。
「自分からすすんでやったことってないかも。
・・・・桐谷が、初めてだ」
「そうなん・・・・だ。 じゃあ、なんでオレにしたんだ・・・・?」
「えー? ・・・・・桐谷が、かわいーから」
桐谷は驚いたカオをした。
「か、かわいいって、オレが?」
「うん。 オレ、桐谷の照れてるカオ、好きだし。 それに、つき合ってんだから、いーじゃん。 桐谷だって、オレにしてるだろ」
オレはベリーのアイスをすくうと、もう一度桐谷に差し出した。
桐谷はまた頬を少し染めて、アイスをぱくって食べた。
・・・・ああ、やっぱ、かわいいな。
いつもクールな表情の桐谷が、こんなカオ、するんだもんな。
完全に桐谷と2人の世界に入っちゃってたオレは、ふと視線を感じて振り返った。
すると、何人もの人に見られてるのに気が付いた。
・・・・やっば。 すげー恥ずかしい。
さすがにやり過ぎたな。
桐谷も気付いたみたいで、オレたちはカオを見合わせて苦笑した。
それからはおとなしくパフェを堪能した。
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