イケメンのオレにカレシができました! 気持ちイイからまあいっか

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22.※ キスが好きなのかな、それとも・・・

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陽人・・・・急にどうしたんだ?

なんか、怒ってるよな・・・・・

オレ、なんかしたっけ・・・・

でも、今日は陽人と全然話してないし、思い当たることはなにもなかった。


結局、校舎裏手の人気のないところまで来て、陽人はやっとオレの腕を放した。

「陽人・・・・ もー、なんなんだよ・・・・お前、強く掴み過ぎだろ 」

オレは掴まれていた左腕の部分を、右手でさすった。

「なんだよ。 こんなとこ連れてきてさ」


陽人はオレに背を向けて立ってる。

陽人・・・・どうしたんだろう。


「・・・・瑞樹」

オレに背を向けたまま、陽人が話しだす。

「ん?」


「お前と桐谷って・・・・・ なんなの?」


急に聞かれて、どきって、した。

なんで、こんなこと、陽人は訊いてくるんだろう。


「なにって・・・なんだよ。 意味わかんねーんだけど」

オレは笑い混じりに返答する。

陽人はオレを振り返った。 オレと違って全然笑ってなんかなくて、やっぱり鋭い瞳でオレを見てる。


「前に訊いたよな。 なんで最近仲良くなったんだって。 きっかけが、あったんじゃないかって」

「ああ・・・・」

そういえば、前に陽人に訊かれたな。

でも、理由なんて話せないし。

「別にそんなのないって言っただろ。 なんとなくだって。
・・・・・って言うかさ、そんなこと訊くためにこんなとこまで連れてきたのかよ」


・・・・なんか、変な感じがする。

陽人の様子、いつもと違うし。

オレはこの場から、早く立ち去りたかった。


「もういいだろ。 戻るぞ」

オレは陽人に背を向けて、校舎の方に足を向ける。


「待てよ」

陽人が後ろから、オレの腕を掴んだ。

「ちゃんと答えろ。 お前たち・・・・なんなんだ?」

オレはちょっとイラッとしてしまった。

陽人がなにを訊きたいのかが分からない。


「友達だよ! オレが桐谷と仲良くしちゃいけねーのかよ!」

オレは振り向きながら、陽人に怒鳴った。


陽人はオレを見て、その瞳を細めた。



「お前は・・・・ 友達と、あんなキス、すんのかよ」



「は・・・・・?」

陽人の口から出た言葉を、理解することが出来ない。


キス・・・・・?

オレと、桐谷、の・・・・?

なんで陽人が知ってるんだ・・・・・・?



「・・・・先週、見たんだ。 お前と桐谷」

え・・・・・?  せん、しゅう・・・・・・・?

先週、キスしたのって、放課後、教室での・・・・・・ あれ、か・・・・・・?


陽人は、小さくため息をついて話し出した。

「・・・先週・・・金曜日、オレあずみ先輩と話してて、帰るの遅くなったんだよな。 教室にカバン取りに戻ったらさ・・・・・

お前と桐谷が、 キス、 してて 」


うそ、だろ。


「しかも、すっげー濃厚なやつで。 びっくりしてたら、奥村さんが教室に向かってくるのが見えた」


陽人に、見られた。


「お前たち、全然気付く様子ないし、さすがに奥村さんに見られたたまずいだろうって思ってさ、ドア、蹴っ飛ばしたんだ」


あの、すごい音。

あれ、陽人だったんだ・・・・・


「お前たちさ・・・・ つき合ってんのか・・・?」


たとえ陽人にでも、言っていいのかどうか、迷ってしまう。

もう現場は見られちゃってるわけだし・・・・・

でも、オレが一方的に桐谷を襲ったって言った方が、良かったりするのかな・・・・


「つ、きあって、ない」

結局、オレは嘘をついた。


「つき合ってなくて、男とあんなキス、するのかよ?」

陽人はオレに近づくと、顎に指をかけてきた。

くいって引っ張られて、上向かされる。

「・・・・・お前、すげーカオ、蕩けてたぞ?」


そっ・・・んなところまで、見られてたのか・・・・・!?


「とっ、蕩けてなんか、ねーよっ」

「いや。 すげー気持ちよさそうだった」


たっ、確かに、桐谷とのキスは、気持ちイイけど。


「オっ、オレが、無理矢理、桐谷にキスしただけだから」

陽人を睨みながら言うと、陽人は首を振った。

「・・・・・無理矢理って感じじゃなかった。
なあ、つき合ってんだろ?」

オレはふるふると首を振る。

「ちがう」


陽人はぐって、オレの両肩を掴んできた。


「なんでっ・・・・ 嘘、つくんだよ! オレ、そんなに信用ねーか?」


陽人は泣きそうな表情で。

陽人のこんなカオ、見たことない。


そっか・・・・・

嘘ついたり、隠したりしたら、陽人のこと、傷つけちゃうことになるんだな・・・・・・


オレは小さく息を吐いた。

「・・・・ ごめん、陽人。 信用してないわけじゃなくて・・・・・・ 言うのが、ちょっと、怖かった」

オレは陽人の胸元を掴んで、自分より背の高い陽人をすがるように見上げた。

「陽人・・・・! 誰にも、言うなよ?」

陽人はフッて笑って、ぽんぽんってオレの頭を撫でた。

「言わねーよ。 大丈夫だ」

はっきりとそう言ってくれる陽人の言葉に、ほっとする。

「オレはいいけど、桐谷がオレとつき合ってるなんて、バレたらダメだろ・・・・・」


「・・・・・ 桐谷を守ろうと思って、嘘ついたのか?」


守ろうと・・・・

そういうことなのかな・・・・・


自分の気持ちがよく分からなくて、なにも答えられないでいると、陽人は少し笑った。

「瑞樹・・・・ 桐谷のこと、好きなんだな」


はっ・・・・!?

好き・・・・・?

オレが、桐谷のことを・・・・・・・?


「いや、そんなことねーし」

否定すると、陽人は不思議そうなカオをした。

「え。 好きだから、つき合ってんだろ?」

「いや・・・・ 桐谷に告白されて」

「告白されたからつき合うって、まあ瑞樹らしいけど。 でも、男相手だし、そこ躊躇しなかったのかよ」

「・・・・ 告白されて、・・・・・キス、されて」


・・・・やばい。

話すの、恥ずかしいな・・・・・

そう思って、少しうつむき気味になってしまう。


「キス・・・・ 気持ちよくてさ・・・・・ いいかなーって、思っちゃった、から」


オレの言葉に、陽人は笑いだした。

「気持ちよくて、流されたわけか。 ますます瑞樹らしいな」

くっそ。 なんか、すげー恥ずかしい。

でも、陽人が笑って良かった。


「最初は流されてつき合ったのかもだけどさ、今も変わんねーの?」

訊かれて、思わず考え込む。


・・・・どうなん、だろ。

桐谷のこと好きかどうかなんて、考えたことなかった。

桐谷に告白されて、キスが気持ちよくて、だったらつき合ってもいいかなー、なんて、軽く考えてただけだから。


それで・・・・・・

セックスまでして、それもすげー気持ちよかった。



だいたい、桐谷のキスって、なんであんなに気持ちいいんだろ。

上手い、の、かな・・・・

でもそれだったら、キスが上手い相手だったら、誰でも気持ちイイってことになるよな・・・・・


ふと、オレの目の前にいる陽人を見る。

オレの答えを待ってる陽人は、少し首を傾げた。


・・・・・陽人も、キス、上手いよなあ。 たぶん。

いろんな女のコとつき合ってるし、遊んでるし。


「なあ陽人」

「ん?」

「オレに、キス、してみてくんねー?」

「はあっ!?」

陽人は声を上げて、後ずさった。

「瑞樹っ、なに言ってんだよ!」

うん、確かにいきなりこんなこと言われたら、びっくりするよな。


「オレさ、桐谷のキス、好きなんだよな・・・。 でもそれって、キスが上手いから好きなだけなのかなーって思って」

「・・・・つまり、キスが好きなのか、桐谷自身が好きなのか、わかんねーってことか」

「・・・・・そう」


陽人はオレを見てため息をついた。

「まあ・・・・ 相手が男だしな・・・・ 自分の気持ちがはっきりわからなくなるのかもな・・・・」

「・・・うん」


陽人には頷いたけど。 オレ、今までちゃんと人を好きになったことって、ない気も・・・する。

ずっと、相手に告白されてつき合って、でもてきとーに扱って、相手がイヤだって言ったら、じゃあ別れようってあっさり別れて。

そんなんだから、 ・・・・桐谷は男だから、 ますます、自分の気持ちなんて、わからない・・・・


陽人はオレに近づいて、顎に指をかけた。


「・・・友達とキスなんてするのかよって、言ったオレがこんなこと言うのもなんだけど。
先週お前見て、オレ、ちょっと興味持っちゃったんだよな」

「興味?」


陽人が、今までオレが見たことないような、色気のある表情をした。


「瑞樹がすげー蕩けたカオしてたのが、かわいくて。 けっこー、キたからさ。
お前からキスしてって言うんだったら、断る理由、ないし」


陽人、すげーカッコいい。

女のコを落とす時、こんな表情なんだろうな。


「・・・・いいのか?」

オレはこくんって、頷いた。


「瑞樹。 口、開けて」


陽人に言われるまま口を開けると、


「ふっ・・・・・んんっ」


噛みつくように、深いキスを、された。



舌が、オレの口内を這う。


「んんっ・・・・」


オレは陽人の首に手を回した。


ちゅっ・・・・ぴちゃ・・・・


舌が絡まり、濡れた音が響く。


「はっ、ん、・・・・は、ると、・・・ぁっ」


気持ちイイ。 やっぱり、陽人はキスが上手い。


舌を絡めたり、オレの舌を甘噛みしたり、吸ったり、唇を舐めたり、

本当に、気持ちイイ。


「瑞樹っ・・・・ お前、イイな・・・・・」

キスの合間に呟いて、オレを抱きしめる。

また深く、唇を重ねる。



気持ちイイ、ん、だけど。


桐谷の時に感じるような、ぞくぞくって腰から全身に快感が走る、

あの感覚は、ない。



しばらく唇を重ねた後、ちゅっと音を立てて離れた。

2人の唇の間を、銀糸が伝う。



「・・・・・瑞樹、どう? オレのキスは」

陽人はオレを抱きしめたまま訊いてくる。

抱きしめられてるから、陽人とカオがすごく近い。

「・・・・・気持ち、よかった」

「桐谷と、違った?」


オレは少しうつむいて、

「桐谷としたときの方が・・・・・ ぞくぞくして、 全身が、気持ちよかった・・・・・」


陽人はオレの耳にキスをした。

「なんか、妬けるな。 ・・・・・でも、そうだろうなって思う」

「え?」

「この間みたいに、蕩けたカオ、してないから」

なっ・・・・

「桐谷相手だから、あんなカオになるんだろうな」


オレっ・・・ どんなカオしてたんだろう。

今更ながら、恥ずかしくなってくる。


陽人は腕を解いて、オレを離した。


「例えばさ、桐谷が・・・・奥山さんとつき合ったりしたら、どう思う?」



「そんなの、いやだ」

即答するオレに、陽人は笑った。

「なんで嫌なんだよ」

「なんでって・・・・ 」

なんでだろ。

でも、桐谷はオレのこと好きでいてくれなきゃ、嫌だと思った。


これってなんだろう・・・・・・ 独占欲?


陽人はまた、ぽんぽんってオレの頭を撫でる。

「まあ、まだおこちゃまの瑞樹くんには、むずかしいでちゅかねー」

「おまえっ・・・ バカにしてんだろ」

「だって、バカじゃん。 オレにキス頼むとか」

ははって笑って、でも優しい瞳でオレを見た。

「ちょっとゆっくり考えてみろよ。 お前が自分の気持ちに気付いたら、桐谷も喜ぶだろ」


オレの・・・・・ 気持ち・・・・・・


「瑞樹とのキスは、結構良かったからさ。 またしてやってもいいぜー」

そう言って、陽人はちゅって、オレの唇にキスをした。


「ちょっ・・・陽人!」

「相談料な」



陽人は校舎の外階段に腰を下ろし、オレを見上げた。

「もうすぐ授業始まるな。 瑞樹は、戻るか?」

オレはため息をつきながら、陽人の隣に腰を下ろした。

授業を受ける気には・・・・・ならない、な。


「陽人・・・・ ありがとな」

「どーいたしまして。 またさ、キスしたくなったらしていいか?」

「もうだめだ」

「けちだなー、瑞樹」

「なんとでも言え」



オレ・・・・・桐谷のこと、好き・・・・なのかな・・・・・・

物思いにふけるオレの隣で、陽人はスマホをいじりだす。

敢えて話しかけず、オレが考える時間を作ってくれてるのが分かった。


今まで、こんなに誰かのことを考えたことって、ない気がする。

よく分からない自分の気持ちを探るのって、なんだか面倒で。

でも、逃げちゃダメなんだろうってことは、わかる。


オレは桐谷のいろんな表情を思い出してみた。

元々、すごくクールな奴だと思ってた。  それは間違ってないんだけど・・・

つき合いだしてからは、意外といろんな表情をみせるなぁって、思った。

照れたカオや、ちょっと不機嫌なカオ、すまなさそうなカオや、笑ったカオ・・・

それから、欲情したカオ。

いろんな表情を見つける度に、なんか嬉しかった。



『例えばさ、桐谷が・・・・奥山さんとつき合ったりしたら、どう思う?』

さっき陽人に訊かれて、嫌だって、思った。


そういえば・・・

美香が桐谷のこと気に入ってるみたいで、一緒に遊ぼうとしてたり、腕組んでたり、それをみてなんか気分がもやもやしてたのって・・・・


これも・・・・ 独占欲、 なのかな・・・・・


なんで・・・・・?

なんで、独占欲とか、出てくるんだろ・・・・・


桐谷には、オレのこと好きでいて欲しい・・・

そう思うのは・・・・・



オレも、桐谷のこと・・・・・・


好き、だから・・・・・・?




なんか急に恥ずかしくなってきて、オレは抱えた膝にカオを埋めた。



オレっ・・・・・ 桐谷のこと・・・・・


好きなんだ・・・・・・・・!



いたたまれなくなって、オレは膝を抱えたまま、足をバタバタとさせてしまう。


やばい・・・ なんか、すげー、恥ずかしい・・・・・・



「瑞樹ー。 お前、すげー挙動不審なんだけど」

陽人の冷めた声がする。

「陽人っ・・・・・」

オレはすがるように陽人を見た。


「っ・・・・・」

陽人はオレを見ると、驚いたカオをした。

「オレ・・・そんなカオの瑞樹、初めて見た」

言われて、オレは慌てて手で自分のカオを抑える。

「ヘンなカオしてんだろ・・・・ 見るなよ・・・!」


陽人はカオを覆っていたオレの手を掴むと、オレのカオから離させた。 そして、覗き込んでくる。

「いや・・・瑞樹、すげーかわいい。
瑞樹のそんなカオ見たら、桐谷も喜ぶと思うぜ」

「うそだろ・・・・ こんなカオ、見せれるわけ、ねーじゃん」

手を掴まれてるから、カオを隠すことも出来ない。

オレはうつむいた。


「大丈夫だって。 かわいーから、自信持て、瑞樹」

陽人はそう言ってくれるけど、オレは桐谷の前で普通のカオでいる自信がなくなってしまった。


うつむいてるオレの髪を、陽人がそっと撫でるのが分かった。


「・・・・瑞樹もさ、分かるだろ? 告白してくる女のコたちのカオ。 ちょっとほっぺたとか赤くしてさ、瑞樹のこと、好きですって、一生懸命見つめてくる感じ」

陽人の言葉に、オレは小さく頷く。

「今の瑞樹のカオ、そのコたちと同じだぜ?」

「・・・・まじかよ」

「まじで。 ・・・・桐谷のこと、ほんとに好きなんだな・・・・・・」


うつむいたままのオレの髪を、陽人は黙って撫でてくれた。


初めて気づいた自分の気持ちに、オレはどうしていいかわからなくなってしまっていた。






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