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2.アイスクリーム

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「なあ、アイス食ってかねー?」

オレは隣を歩くクラスメート・・・・ じゃねえ、彼氏、に、声をかける。


「アイス? 別にいいけど・・・・ 星野、好きなのか?」

「ああ。好き」


オレ、星野 瑞樹(ホシノ ミズキ) 16歳。 高2。

身長は170㎝ちょい。 

カオは結構かわいいって、よく女のコにも言われる。 中性的・・・なのかな。

自分で言うのもなんだけど、結構モテる方。 つき合うにも遊ぶにも困ったことないし。



で、オレの隣を歩くのは、ついさっきつき合い始めた、オレの・・・彼氏。


桐谷 涼司(キリヤ リョウジ)。

身長はオレより高い、180まではないか・・・? 黒髪に、黒縁メガネ。 真面目な感じ。

実際、成績だっていいし、クラス委員長なんかやっちゃってる奴で。

カオは・・・ よく見ると、結構カッコいい。



でもなんで、オレなんか好きになったんだろう。

オレは結構モテるのもあって、チャラいイメージを持たれてるようなヤツなのに。

桐谷とはイメージが違い過ぎて、つき合ってる友人も全然違うし。

っていうか、オレのこと『好き』ってこと自体、本当なのかな・・・・



オレは桐谷のカオを覗き込んだ。

「・・・なんだ?」

表情を変えず、オレを見下ろす。


・・・さっき、あんなに欲情に溺れた表情で、オレのことを見てたなんて、ウソみたいだ。


「・・・いや、べつに」


元々仲のいい間柄ってわけでもない。

ただのクラスメートとしか思ってなかった。

必要なこと以外、話したこととか・・・・ほとんど、ない、かも。


だから・・・なにを話したらいいか分からなくて。

オレたちは無言のまま駅に向かってた。




「ここ」

オレは駅前にあるアイスクリームショップで足を止めた。

「来たことあるか?」

「いや・・・ない」

そうだな。 桐谷のイメージとは、ちょっと違うもんな。

「結構うまいんだぜ?」

「へえ・・・」


店構えはいかにも女のコが好きそうな、カワイイ感じで。 桐谷のようなタイプの男と2人で入るのは、ちょっと場違いな感じもするけど。

オレは男友達とも女友達とも何度も来てるから、ためらわずに中に入る。

すると、同じ学校の生徒が何人かいた。


「あー、瑞樹だぁ」

「瑞樹もアイス食べに来たの?」

友達の女のコたちに話しかけられる。

「ねぇ瑞樹、コレ、新作なんだって♡」

女のコが食べてるのは、ベリーの果肉がたっぷり入ってるアイスだ。

「へえ、うまそーだな」

「食べてみる?」


『はい』って、笑顔でスプーンにアイスをすくって差し出してくれた。


「ん、ありがと」

オレは迷わずそれを食べた。

ベリーの甘酸っぱさが、口の中に広がる。


「うん、うまいな」

「でしょ♡」

「オレもそれにしよっかな」


「瑞樹、今日は一人で来たの?」

そう言われて、オレは桐谷の存在を思いだした。

「あ、いや。 桐谷と来たんだ」


女のコたちは、オレの後ろに視線を向けて、少し驚いた表情をした。

「え、桐谷くん、と?」

「瑞樹、仲良かったの?」

「ん、いやー、まあ、な」


そうだよな。

女のコたちだって、オレと桐谷の組み合わせは、珍しく思うだろう。

だからって・・・・ つき合い始めました、なんて、言えねーし・・・・・


「桐谷くんも、アイス好きなんだ?」

「ちょっと意外だねー」

「いや、オレは別に。 星野に連れてこられただけだ」

桐谷は表情を変えずに、小さく首を振った。

「そうなの?」

「瑞樹、桐谷くん無理矢理連れてきたりしたらかわいそうだよー」

「別に無理矢理ってわけじゃねーよ」

女のコたちに言われて、オレは思わずふて腐れてしまう。

だってさ、『アイス食ってかねー?』って誘ったら、別に・・・断らなかったし。



「・・・桐谷も、せっかくだし、なんか食えよ」

「ああ」

促すと、桐谷は素直にうなずいてショーケースを眺めた。

「種類が多いんだな。 ・・・星野は、どれが好きなんだ?」

「オレ? 今日は新作のベリーのヤツ頼むけど・・・ オレのおすすめは、チョコかなあ。
ココの、すっげー濃厚でうまいんだぜ」

「そうか。 じゃあ、それにする」

「え、いいのか?」

オレは甘いの好きだし、濃厚なチョコが好きだからいいけど、桐谷は甘いの大丈夫なのかな・・・


桐谷はちらってオレを見た。

「星野が好きなら、食ってみたい」


うっ・・・・・

不覚にも、一瞬、どきってしてしまった。


オレが好きなら食ってみたいって・・・ なんか、ちょっとうれしいような・・・


でもそう思ってしまったことが、なんだか恥ずかしくて、オレは桐谷から視線をそらした。



それぞれ注文したアイスを手にすると、

「瑞樹ー。 一緒座ろ?」

さっき話してた女のコたちが、テーブルの席に手招きしてくれてる。

「おー」

オレはそっちに近づいて、オレにアイスをくれた女のコの隣に座った。

「桐谷も来いよ」

少しためらうようにしてた桐谷を呼んで、オレの向かいに座らせる。


「私、桐谷くんとこんな風に話すの、初めてー」

「瑞樹とはよく一緒に帰ったりしてるの?」

「いいや。 今日が初めてだ」

「そうなんだぁ。 でも、2人が一緒に居るって、なんか不思議」

「雰囲気全然違うもんね」


女のコたちは、桐谷と話すのが物珍しいみたいで、すごく興味津々だ。

桐谷はとくに表情を変えることなく話してる。


基本的に、・・・・・クール、なイメージ、だよなぁ・・・・・


「瑞樹と桐谷くん、今日はなんで一緒なの?」


一瞬、桐谷が動きを止めて、

オレの方をちらって見た。


「あ、か、帰り偶然一緒になってさ。 で、オレがアイス食いたい気分だなーって思って、誘ったんだ」


・・・嘘は言ってない。

でも、ホントのことを言うわけにはいかないし、内心ちょっと焦ってしまう。


「たまにはこういうのもいいだろ?」

桐谷に聞くと、少し表情を緩めた。

「・・・・ああ、そうだな」

「チョコ、どうだ? 甘いの大丈夫だったか?」

「ああ。 うまいよ」


桐谷はうなずくと、スプーンにアイスをすくって、オレに差し出してきた。


「・・・これ、好きなんだろ?」


・・・・うん。 好き。 好きだよ。

オレがすすめたんだし、そのチョコは。

でもさ。


「・・・・食べないのか?」


・・・確かにさっき、オレは女のコに食べさせてもらったよ。

でもさ。

男が男に・・・食べさせるって・・・・どうなんだよ、それ。


桐谷は真っ直ぐにオレを見つめてる。

その視線に耐えられずに、オレは桐谷のくれたチョコアイスを、ぱくって、食べた。



「きゃー♡ 桐谷くん、かわいい♡」

オレに食べさせる桐谷を見て、女のコたちが喜ぶ。

「食べさせるなんて意外ー!」

「彼女にもそういうこと、してあげるの?」


桐谷は真面目なカオでうなずく。

「・・・つき合ってる相手には、こういうこと、したくなるもんじゃないのか?」


おいおいおい!

真面目に答えるなよ!


「桐谷くん、優しいんだねー♡」

「うん。 すごくクールなイメージだったけど、話しやすいしー♡」

女のコたちは、桐谷の答えに大喜びだ。


・・・・なんか、桐谷の株が、どんどんあがってねー?


オレはアイスを食べながら、桐谷のカオをちらって見た。


・・・・カオは・・・・整ってるよな・・・・

イケメン、の、部類だと思う。

正直、彼女とかいても全然不思議じゃない感じだ・・・・・・


それなのに、なんでオレが好きなんだ?


・・・まあ、考えたってわかんねーよな。

好みなんてひとそれぞれだし?


考え事をしながらアイスを食べてると、あっという間に食べ終わってしまった。


・・・・うん、うまかった。


女のコたちと桐谷が話してるのを、ぼーって眺める。


・・・別に、話し下手ってわけでもなさそう。

普通に女のコたち、楽しそうだし。


・・・ってなると、ほんとにますます、なんでオレなのかわからない。


・・・・ゲイ、なのかな?



「・・・野。 星野?」

考え込んでて、名前を呼ばれてることに気づかなかった。

「あ、ごめん。 なに?」

「いや・・・・ 食べ終わったんなら、行くか?」

「瑞樹、どうしたの? ぼーっとしてる」


オレは軽く頭を振って立ち上がる。

「いや、なんでもねー。 行くか」

桐谷もオレと一緒に立ち上がった。


「じゃあな」

女のコたちに笑顔で手を振ると、彼女たちも笑顔で手を振った。

「じゃあね、瑞樹、桐谷くん」

「桐谷くん、また遊ぼー♡」



アイスクリームショップを後にして、桐谷と一緒に駅に入る。

「桐谷って、結構モテるんだな」

「は?」

「女のコたち、お前に興味津々だったし、話せてうれしそーだったじゃん」

「・・・そんなことないだろ」

そういう桐谷は、オレから目を逸らして、少し視線を落とす。


・・・・照れてる、のか?

なんか、かわいー、かも。


意外な表情を見た気がして、なんか少しうれしくなる。


「桐谷って、家どっち方面なんだ?」

聞くと、オレとは反対方向だった。

「そか。 オレあっちだから。 じゃあな」

「・・・ああ」


オレは軽く手を振って、桐谷と別れてホームへ向かう。



・・・・・なんか、今日って、いろいろあったなあ。

いきなり、桐谷に告白されて。

キスされて。

すげー気持ちよくて。

・・・つき合うことになって。


電車を待っていて、ふと見ると向かい側のホームに桐谷がいるのに気が付いた。

桐谷はオレを見てたんだろうか。

目が合った。


軽く手を振ると、桐谷は目を逸らしてうつむいてしまった。


・・・反応が、かわいい。


その時、オレの乗る電車が到着して、桐谷の姿は見えなくなった。


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