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31.逃げてしまう
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気付いたら午後の授業はとっくに始まっている時間だった。
とりあえず屋上で時間をつぶすことにする。
ごろんって寝転がって、空を見上げた。
・・・・・修吾の気持ちにはびっくりした。
でも、ちゃんとあきらのこと好きって、伝えたし。
テニスも一緒に頑張ろうってなったし。
・・・・よかったよ、な。
指で、唇に触れる。
修吾に、何度もキスされた。
指で、首筋に触れる。
ここも、舐められて。
手を、胸に当てる。
胸にも、触られた。
あきら相手じゃないのに、オレのカラダって、反応してたよな・・・・・
オレって、ダメだな・・・・・
こんなんで、あきらのそばにいて、いいのかな・・・・・
もやもやした気持ちのまま、オレは授業が終わるのを待っていた。
「レイキ、今日部長なんだったんだ?」
HRが終わって、亮介がオレに話しかけてくる。
「お前、5限目いなかったろ。 何か言われて落ち込んでたのか?」
・・・・・そういえば、部長に呼ばれたって言ったんだったな・・・・
「いやー、大丈夫。 5限目はちょっとダルくてサボっただけだし」
オレはあいまいな返事をした。
「レイキ」
あきらに話しかけられて、思わずびくっとしてしまう。
「な・・・に?」
オレ、普通にできてるかな・・・・
「レイキたち、どこで話ししてたんだ? 部室、誰もいなかったし」
あきらは、少し探るような表情・・・
部長に呼ばれたはずだったのに、部室に居なかったから、ヘンに思うよな・・・
「あー、あきら、部室に来たのか?」
「ああ。 大丈夫かなって、思ってさ」
オレはあきらの目を見ることができない。
「話、すぐ終わったんだよ。 だから、あきらが来たとき、もう誰もいなかったのかも」
「そうか・・・・」
あきらはオレの腕をつかんだ。
「な、なんだよ」
耳元に口を寄せてきて、
「レイキ・・・・部活の前に、あそこ、行こ?」
あきらの低い声に、ぞくって、オレの腰にしびれが走る。
あきらが言ってるのは、空き教室のことだ。 あそこで、キスしようって、言ってるんだ・・・・・・
「あー、オレ、ちょっと先生のトコ行かなきゃなんだ。 あきらと亮介、先部活行っててくれよ」
あきらのカオは見れなくて、うつむいたままそう言った。
「おう、わかった」
亮介は普通に返事をしてくれたけど、あきらは無言のまま。
でもオレは、あきらがどんな表情をしてるかを見れなかった。
オレはあきらと亮介を残して教室を出た。
・・・・別に、先生に用事なんてないんだけど。
とりあえず、屋上に避難する。
「はあ・・・・・」
フェンスに寄りかかって、ため息。
何やってんだ、オレ。
なんであきらから逃げてんだろ。
「・・・・坂本くん?」
不意に呼ばれて振り返ると、紺野がいた。
「紺野? ・・・・なんで、ここに?」
聞いてから、紺野の姿を見て、ああ、と思った。
紺野の手には、クラリネット。
「屋上で練習してんだ?」
「うん。 今日は天気もいいし、風が気持ちいいから」
紺野はオレの隣に来る。
「紺野、吹奏楽だったんだな」
「うん。 坂本くんは、今から部活?」
「ああ。 その前に、ちょっと休憩」
紺野は持ってきた譜面台を足元に置いた。
「今日、部長に呼ばれたんでしょ? 大丈夫だったの?」
「ああー・・・・・、うん、大丈夫」
何とも言えずに、言葉を濁す。
・・・そろそろ、行くかなー。
そう思ってると、
「ね、ねえ、坂本くん」
紺野が少しうつむいて、少しカオを赤らめている。
「うん?」
「あ、のね・・・・・。 レイキくんって、呼んでもいい・・・・?」
言いながら、カオを真っ赤にした。
「あ、ああ。 いーぜ」
いきなり言われてちょっとびっくりしたけど・・・・
「ほんと!? ありがとう!」
オレの返事に、紺野はパッて笑顔になった。
そんなに喜んでくれたら、悪い気はしないな。
でも、なんでオレなんだろ?
・・・ああ、あきらと仲良くしたいから、まずはオレ、ってことか。
今までも、そういう目的の女のコって、たくさんいたしな。
オレは荷物を持った。
「じゃ、オレ、そろそろ部活行くな。 紺野もがんばってな」
「うん。 ・・・・レイキくんも、がんばって」
ニコニコ笑う紺野に送り出されて、屋上を後にする。
部室に行くと、ちょうど修吾がいた。
「・・・・よ、よう」
「・・・おう」
他の部員はおらず、2人きり・・・だ。
・・・・・なんか、気まずい。
オレはロッカーに荷物を入れる。
修吾とはロッカーが隣同士だから、距離が近くなる。
「・・・・あきらと亮介、もう行ってたぜ。 一緒じゃなかったんだな」
声をかけられて、オレはびくってなってしまう。
「あ、ああ。 ・・・・オレ、ちょっと先生に用があって、さ」
着替えようとして、一瞬、手が止まる。
今日の昼休み、ここで修吾にされたことを思い出してしまう。
・・・・・制服を脱ぐのを、ためらってしまう。
「レーイキ」
「な、なに?」
振り返ると、修吾はオレを覗き込んできていた。
修吾のカオが、至近距離にある。
「オレ、もう、あんなことしねーから。 そんな、不安がるな」
修吾の瞳には、まだ、欲情の光が、ある。
それでも、ちゃんと、強い理性の光もあって。
「・・・・じゃねーと、襲うぞ・・・・・?」
耳元で、ささやかれて、
オレはぞくってしてしまう。
「・・・・・ほら。 そんな、煽るカオ、すんなって」
修吾は少しつらそうなカオで、それでも微笑んで、オレの頭をぽんぽんって叩いた。
「・・・・うん。 ゴメン」
修吾は、優しい。
「オレ、先に行ってるな」
笑ってそう言って、修吾は出て行った。
・・・・修吾はオレと元通りの関係に戻るために、気を使ってくれてる。
オレも、ちゃんと努力しなくちゃな・・・・・
着替えて、グラウンドに出て行った。
「修吾」
オレはランニングをしている修吾の隣に並んだ。
「・・・修吾、ゴメン。 ありがとな」
へらって笑うと、修吾も笑顔になる。
「練習、がんばろーぜ」
「おう」
その日は、ラリーの練習とか、ペアでやるものは修吾と組んでやった。
「いーじゃん、レイキ!」
「修吾もな!」
前みたいに息が合って、心地よくテニスができた。
部長がオレたちに声をかける。
「坂本、望月。 お前ら仲直りしたのか?」
いやー・・・・ケンカしてたわけじゃないんだけど・・・・・・・・
「はいっ。 もー、だいじょーぶっすよ!」
修吾が笑顔で部長に答える。
『なっ』って修吾はオレの方を見る。
「はい。大丈夫です!」
オレも笑顔で答えた。
修吾とは、元通りの関係に戻れそうだ・・・・・
本当に良かった。
とりあえず屋上で時間をつぶすことにする。
ごろんって寝転がって、空を見上げた。
・・・・・修吾の気持ちにはびっくりした。
でも、ちゃんとあきらのこと好きって、伝えたし。
テニスも一緒に頑張ろうってなったし。
・・・・よかったよ、な。
指で、唇に触れる。
修吾に、何度もキスされた。
指で、首筋に触れる。
ここも、舐められて。
手を、胸に当てる。
胸にも、触られた。
あきら相手じゃないのに、オレのカラダって、反応してたよな・・・・・
オレって、ダメだな・・・・・
こんなんで、あきらのそばにいて、いいのかな・・・・・
もやもやした気持ちのまま、オレは授業が終わるのを待っていた。
「レイキ、今日部長なんだったんだ?」
HRが終わって、亮介がオレに話しかけてくる。
「お前、5限目いなかったろ。 何か言われて落ち込んでたのか?」
・・・・・そういえば、部長に呼ばれたって言ったんだったな・・・・
「いやー、大丈夫。 5限目はちょっとダルくてサボっただけだし」
オレはあいまいな返事をした。
「レイキ」
あきらに話しかけられて、思わずびくっとしてしまう。
「な・・・に?」
オレ、普通にできてるかな・・・・
「レイキたち、どこで話ししてたんだ? 部室、誰もいなかったし」
あきらは、少し探るような表情・・・
部長に呼ばれたはずだったのに、部室に居なかったから、ヘンに思うよな・・・
「あー、あきら、部室に来たのか?」
「ああ。 大丈夫かなって、思ってさ」
オレはあきらの目を見ることができない。
「話、すぐ終わったんだよ。 だから、あきらが来たとき、もう誰もいなかったのかも」
「そうか・・・・」
あきらはオレの腕をつかんだ。
「な、なんだよ」
耳元に口を寄せてきて、
「レイキ・・・・部活の前に、あそこ、行こ?」
あきらの低い声に、ぞくって、オレの腰にしびれが走る。
あきらが言ってるのは、空き教室のことだ。 あそこで、キスしようって、言ってるんだ・・・・・・
「あー、オレ、ちょっと先生のトコ行かなきゃなんだ。 あきらと亮介、先部活行っててくれよ」
あきらのカオは見れなくて、うつむいたままそう言った。
「おう、わかった」
亮介は普通に返事をしてくれたけど、あきらは無言のまま。
でもオレは、あきらがどんな表情をしてるかを見れなかった。
オレはあきらと亮介を残して教室を出た。
・・・・別に、先生に用事なんてないんだけど。
とりあえず、屋上に避難する。
「はあ・・・・・」
フェンスに寄りかかって、ため息。
何やってんだ、オレ。
なんであきらから逃げてんだろ。
「・・・・坂本くん?」
不意に呼ばれて振り返ると、紺野がいた。
「紺野? ・・・・なんで、ここに?」
聞いてから、紺野の姿を見て、ああ、と思った。
紺野の手には、クラリネット。
「屋上で練習してんだ?」
「うん。 今日は天気もいいし、風が気持ちいいから」
紺野はオレの隣に来る。
「紺野、吹奏楽だったんだな」
「うん。 坂本くんは、今から部活?」
「ああ。 その前に、ちょっと休憩」
紺野は持ってきた譜面台を足元に置いた。
「今日、部長に呼ばれたんでしょ? 大丈夫だったの?」
「ああー・・・・・、うん、大丈夫」
何とも言えずに、言葉を濁す。
・・・そろそろ、行くかなー。
そう思ってると、
「ね、ねえ、坂本くん」
紺野が少しうつむいて、少しカオを赤らめている。
「うん?」
「あ、のね・・・・・。 レイキくんって、呼んでもいい・・・・?」
言いながら、カオを真っ赤にした。
「あ、ああ。 いーぜ」
いきなり言われてちょっとびっくりしたけど・・・・
「ほんと!? ありがとう!」
オレの返事に、紺野はパッて笑顔になった。
そんなに喜んでくれたら、悪い気はしないな。
でも、なんでオレなんだろ?
・・・ああ、あきらと仲良くしたいから、まずはオレ、ってことか。
今までも、そういう目的の女のコって、たくさんいたしな。
オレは荷物を持った。
「じゃ、オレ、そろそろ部活行くな。 紺野もがんばってな」
「うん。 ・・・・レイキくんも、がんばって」
ニコニコ笑う紺野に送り出されて、屋上を後にする。
部室に行くと、ちょうど修吾がいた。
「・・・・よ、よう」
「・・・おう」
他の部員はおらず、2人きり・・・だ。
・・・・・なんか、気まずい。
オレはロッカーに荷物を入れる。
修吾とはロッカーが隣同士だから、距離が近くなる。
「・・・・あきらと亮介、もう行ってたぜ。 一緒じゃなかったんだな」
声をかけられて、オレはびくってなってしまう。
「あ、ああ。 ・・・・オレ、ちょっと先生に用があって、さ」
着替えようとして、一瞬、手が止まる。
今日の昼休み、ここで修吾にされたことを思い出してしまう。
・・・・・制服を脱ぐのを、ためらってしまう。
「レーイキ」
「な、なに?」
振り返ると、修吾はオレを覗き込んできていた。
修吾のカオが、至近距離にある。
「オレ、もう、あんなことしねーから。 そんな、不安がるな」
修吾の瞳には、まだ、欲情の光が、ある。
それでも、ちゃんと、強い理性の光もあって。
「・・・・じゃねーと、襲うぞ・・・・・?」
耳元で、ささやかれて、
オレはぞくってしてしまう。
「・・・・・ほら。 そんな、煽るカオ、すんなって」
修吾は少しつらそうなカオで、それでも微笑んで、オレの頭をぽんぽんって叩いた。
「・・・・うん。 ゴメン」
修吾は、優しい。
「オレ、先に行ってるな」
笑ってそう言って、修吾は出て行った。
・・・・修吾はオレと元通りの関係に戻るために、気を使ってくれてる。
オレも、ちゃんと努力しなくちゃな・・・・・
着替えて、グラウンドに出て行った。
「修吾」
オレはランニングをしている修吾の隣に並んだ。
「・・・修吾、ゴメン。 ありがとな」
へらって笑うと、修吾も笑顔になる。
「練習、がんばろーぜ」
「おう」
その日は、ラリーの練習とか、ペアでやるものは修吾と組んでやった。
「いーじゃん、レイキ!」
「修吾もな!」
前みたいに息が合って、心地よくテニスができた。
部長がオレたちに声をかける。
「坂本、望月。 お前ら仲直りしたのか?」
いやー・・・・ケンカしてたわけじゃないんだけど・・・・・・・・
「はいっ。 もー、だいじょーぶっすよ!」
修吾が笑顔で部長に答える。
『なっ』って修吾はオレの方を見る。
「はい。大丈夫です!」
オレも笑顔で答えた。
修吾とは、元通りの関係に戻れそうだ・・・・・
本当に良かった。
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