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19.※ 友達からのキス
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女のコたちは、近くの高校の2年生だった。
女のコの方の幹事は、修吾の中学の同級生らしい。
(オレ以外の)男のメンバーを見て、女のコたちのテンションがかなりあがってるのが分かった。
そりゃー、そうだろうなあ・・・・
その女のコたちの中に、・・・・・いた。
オレが好みだと修吾に話した雰囲気のコが。
色白で、大きな瞳で、少し暗めの茶色いロングヘアを、緩くまとめている。
背はあまり高くなく、細身で、雰囲気がふわっとしてて。
かなり、オレの好みど真ん中な感じだった。
オレたちはカラオケに移動した。
大人数で使える部屋に、みんなでわいわいと入ってく。
オレは、オレの好みのかわいいコと、隣同士で座った。
「じゃ、オレたち歌いまーす!」
後輩たちが、盛り上げるために、1曲目を入れる。
おー、頑張ってくれよー。
盛り上げてる後輩たちを横目に、オレは隣に座ってるコに話しかけた。
「オレ、坂本玲紀。 よろしくね」
「初めまして。倉田(クラタ) 希(ノゾミ)です」
そう言って、倉田さんは少し恥ずかしそうに笑った。
「高2だよね? じゃあ、同い年だし、タメ語で」
へらって笑うと、倉田さんは大きく頷いた。
「うんっ」
かわいーなあ。
やっぱりこういうコが好みなのは、確かだなって自分で思う。
カラオケだとやっぱ音が大きいから、隣同士に座ってても話す時はカオを寄せ合う感じになる。
「カラオケって、よく来る?」
「うーん、友達とはいくけど。 こういうのは、ほとんど来たことなくて」
笑顔に照れが混じってて、ホントかわいい。
でも、かわいいって思うけど、前みたいにどきどきしたり、つき合いたいって思ったりは・・・ないかな・・・
「レイキも曲入れろよー」
修吾に選曲のリモコンを渡される。
オレ、歌は結構得意なんだ。
女のコにも、『甘い声でどきどきする』って言われたことあるし。
・・・・・・あれ?? それでも恋愛に発展しないって・・・・なんでだろう。。。
・・・やっぱ、歌はあんまイケてないのかも。。。。
若干不安になりながら、オレは自分の好きな曲を入れた。
倉田さんはそれを見て、
「あ、私、好き! この歌」
と、目を輝かせる。
「ほんと? じゃー、ちょっとがんばって歌わねーと」
へらって笑って言うと、倉田さんはにこってして、
「楽しみ」
って、オレの腕に軽く触れた。
今までのオレなら、『修吾、ありがとーーーーーー!!!!』って、心の中で叫んでたんだろうなあ。
あきらとこうならなかったら、きっと倉田さんの事好きになってたと思う。
オレの右隣に倉田さんが座っているけど、ふっと左側を見ると、あきらが座ってた。
でも、あきらの左隣に座ってるコと、カオを寄せ合って話していて、オレには半分くらい背中を向けていた。
あきらと話しているコはほんとに楽しそうにしている。
ああ、あのコ、あきらに落ちたなって思った。
オレはそっと、ため息をつく。
・・・・・・・・あきらに堕ちてんのは、オレもだけど。
ふと、ソファに置いていたオレの左手に、何かが触れた。
えっ、と思って視線を落とすと、あきらの右手だった。
あきらは女のコと話しながら、右手でオレの左手を握ってきた。
テーブルの陰で、みんなからは見えないように。
そして、女のコと話しながら少し体を後ろに下げて、背中をオレにくっつけてきた。
・・・・・どきどきする。
周りにみんながいるのに、隠れてこんなこと。
しかも、あきらの右手は、オレの左手をなぞるようにそっと動く。
あきらの指がオレのカラダを這っていくあの感覚を思い出して、腰にしびれが走った。
もう・・・・・! こんなところで・・・・・・・!!
「ねぇ、坂本くんって、こういうの・・・・よく来るの?」
倉田さんに、少し上目使いで聞かれて。
「えっ? あっ、うーん。 好きなコがいないときは、来るなあ」
あきらの指に気を取られて、オレはあまり考えずに返事をする。
「・・・じゃあ坂本くん、今は好きな人いないんだ?」
「ああ・・・・・うん」
あきらのカオが浮かぶけど、好きな人がいるなんて、言えないし。
「そっか・・・・」
倉田さんは唇に指を当てて少しうつむいた後、上目使いでオレを見上げた。
「ね、レイキくんって、呼んでもいい?」
「えっ!?」
突然言われてびっくりする。 でも、せっかく言ってくれてるんだし。
「う、うん。いーよ。
・・・・・じゃ、オレも希ちゃんで、いい?」
「うん! うれしい!」
希ちゃんは、パって笑顔になった。
「坂本先輩ですよね?」
後輩に言われて見ると、オレの入れた曲になってた。
「あ、ああ。 ありがとう」
あきらの体温を少し名残惜しく感じながら、手を伸ばしてマイクを受け取った。
希ちゃんと目が合う。
「・・・がんばって歌うね」
「うん」
二人とも微笑んで。
はたから見たら、すごいイイ雰囲気なんじゃないだろうか。
歌ってる間もずっと後輩は盛り上げてくれてて。
オレが歌い終わると、
「坂本先輩、かっこいいーーーー!!」
後輩が叫んでくれる。
「すごーい! レイキくん、上手!」
希ちゃんも、キラキラ笑顔で拍手してくれた。
「よかった、満足してもらえた?」
「うん! すごいカッコよかったよ!」
希ちゃんは、ホントかわいい。
「ねえ、レイキくん、他にどんな曲が好き? 好きな歌手とかいる?」
希ちゃんとの話は、結構盛り上がっていた。
ふと気づくと、あきらがいない。
・・・・・トイレ、かな。
「ゴメン、ちょっと」
希ちゃんに言って、立ち上がる。
部屋を出ると、どこからか戻ってきた修吾と鉢合わせる。
「お、レイキー。 あのコといい感じじゃん?」
「ああ、修吾、ありがとな」
・・・・これで、疑いは晴れるだろうか。
「オレ、あきらにやられたぜー」
「え?」
修吾はちらっとオレを横目で見ながら言った。
「オレの狙ってたコと、あきら、二人で話してる」
はあーって、修吾はため息をついた。
「すげーいい感じだったぜー。 あー、オレ、他のコにすっかなー」
オレは少なからずショックを受けてしまった。
・・・・あきらはモテるから、当たり前なのに。
「・・・・あきら、どこ?」
「ん? あっちの階段の近くのベンチにいた・・・・・・って、レイキ、邪魔しない方がいーんじゃね?」
修吾に探るような目で見られて、ハッとした。
・・・・そうだ、今オレがそんなにあきらのこと気にするって、不自然だろ。
「オ、レ、トイレ行って来るな」
「ああ。 あー、まじであきら誘うんじゃなかったかなー」
ぶつぶつ言ってる修吾を背に、トイレに向かう。
・・・・さっきあきらと話してたコは部屋にいる。
ってことは、今あきらと話してるのは別のコ、だよな。
一旦トイレに向かった足は、修吾の言っていた階段の方に向かった。
階段近くのベンチに、あきらと女のコの姿があった。
2人に見えないように、そっと覗いてみる。
2人は肩が触れ合うほど近くに座り、話声は聞き取れないけど楽しそうにしゃべってる。
女のコの手は、あきらの腕に触れていた。
しばらく楽しそうに話した後、
女のコはあきらの首に手を回して、軽く抱きついた。
・・・・・・オレはその場を離れた。
胸が苦しくなって、服の胸元を掴む。
・・・・・・・・あきらがモテるのはいつものこと。
今のは、あきらじゃなくて、女のコの方からしてたんだし。
知ってたことだし、わかってる。
でも。
トイレに行って、個室の中に入る。
「・・・・・うっ・・・・・・」
胸が、つぶされそうに、痛い。
あきらは、オレのことが好きって、言ってくれた。
でも、オレ、男だし。
あきらみたいにカッコいい奴の隣には、やっぱりかわいい女のコが合ってて。
オレたちの関係って、人に言えるようなものじゃなくて。
でも、オレ、あきらのキスが好きで。 抱きしめてほしくて。
あきらが・・・・・好き、で。
どうしよう。 どうしたらいいんだろう。
ホントは、女のコとあんなこと、してほしくない。
・・・・オレにだけ、してほしい。
でも、そんなこと、思っちゃいけない気がして。
「うぅっ・・・・・」
オレは、こぼれそうになる涙を必死でこらえていた。
・・・・・・どれくらい、こもってたのか。
「レイキー?」
個室の外で、修吾の声がする。
・・・・・やば。 心配して見に来たんだ。
コンコン。
ドアがノックされる。
「レイキなのかー?」
どうしよう。 オレ、普通のカオしてるかな。
返事が出来ずにいると、修吾のため息が聞こえた。
「レーイキ。 お前さあ、・・・・・・あきらと、何かあったのか?」
・・・・・やっぱり、修吾は疑ってる・・・・?
オレは一つ、息を吐いてからドアを開けた。
「わりぃ、修吾。 探してくれたんだ? ちょっと、ハラ痛くなってさ」
手を洗いながらへらって笑うと、修吾の真剣な眼差しにぶつかった。
オレはすぐに目を逸らす。
「行こーぜ」
言って、トイレから出ようとすると、修吾に腕をつかまれた。
ぐいって引っ張られて、洗面台を背に、至近距離で修吾と向き合う。
修吾はオレを挟むように洗面台に両手をついて、オレは動けなくなった。
「・・・・逃げんな」
いつになく真剣な、修吾のカオ。
オレは、へらって笑うしかできない。
「逃げてねーよ。 修吾、どうしたんだよ?」
この雰囲気を変えるために、なるべく茶化すように言うけど・・・・
修吾の表情は変わらない。
修吾はオレの肩に額をあてた。
「・・・・・最近、レイキすっげえキレイでさ。 何か、・・・色気が出てて。
・・・・また、好きなやつができたのかなって思ってたけど、今までとは違う感じだし。
もしかして、彼女かな?って、思ってた」
修吾は、そのままの体勢で話しをする。
「・・・・・でも、気づいた。
・・・お前が練習中にボーってしてる時、見てんのは・・・・あきら、だった」
どくんっ。
オレの心臓がなる。
「あきらが上手いから、プレーを盗みたくて見てる、後輩たちとは違う。
・・・・レイキは、あきらのプレーじゃなくて、あきらを見てたんだろ」
どくん、どくん・・・・
心臓が、うるさい。
どうしよう。
動揺してることが、体を寄せている修吾に伝わってしまいそうなくらい・・・・・
・・・・・・・オレ、そんなにあきらの事、見てたのか・・・?
「・・・・・そしたらさ、この香りじゃん」
修吾は、オレの首筋にカオを寄せた。
「・・・・・香水、借りて付けたにしては香り弱すぎだし。
・・・・これ、あきらからうつった香りなんだろ・・・・・?」
・・・・もう、ごまかしきれない・・・・・・?
「・・・あきらと、つき合ってんの・・・?」
修吾は、ささやくように聞いてきた。
修吾の息が、首筋に当たって、ぞくぞくしてしまう。
「・・・・・んなわけ、ねーじゃん。修吾、何言ってんだよ」
もうごまかしきれない、そう思いつつも、最後の抵抗。
なるべく、軽い感じで言ったんだけど。
「じゃあ、つき合ってないけど、香りが移るようなことする、関係なんだ・・・・?」
修吾は、オレの耳元でささやいた。
「・・・・・っ」
吐息が耳にかかり、ぞくって、する。
修吾は、オレの首筋にキスしてきた。
「んっ・・・・・・!」
腰がしびれて、思わず、声が漏れる。
「レイキ・・・・・なんか、たまんねー・・・」
修吾はついていた両手を、オレの背中に回して抱きしめてきた。
「ちょっ・・・・・修吾!」
修吾を押し返そうとするけど、力が入らない。
「レイキ・・・・・」
唇が、重ねられる。
カオを背けようとするけど、後頭部をがっちり押さえられてて出来ない。
修吾は、オレの口内に舌を入れてきた。
歯列を舐められて、腰に快感が走る。
「んぅっ・・・・!」
もう、力なんか全然入らない。
修吾を押しのけるどころか、足に力が入らなくて、修吾にしがみついてしまう。
オレの口内を舐めまわして、修吾の唇は離れていった。
「しゅう、ご。 もう、やめろよ・・・・・」
「レイキ・・・・・・すっげえ、エロい」
至近距離でオレを見つめる修吾の瞳には、欲情が揺れている。
「・・・・・あきらと、こういうこと、してんのか・・・?」
首筋にキスをしながら聞いてくる。
「・・・・・っ、してねー・・・・っ!」
もうっ、修吾、なんなんだよ・・・・・・・!!!
人の話し声と、足音が近づいてくるのがわかった。
修吾がオレから離れたとき、ガチャッとトイレのドアが開いて、他の人たちが入ってきた。
オレは修吾を押しのけて、トイレから出ようとする。
「レイキ!」
修吾に腕をつかまれる。
「・・・・・・その、ゴメン。 悪かった・・・・」
オレは修吾の腕を振り払って、部屋に戻った。
女のコの方の幹事は、修吾の中学の同級生らしい。
(オレ以外の)男のメンバーを見て、女のコたちのテンションがかなりあがってるのが分かった。
そりゃー、そうだろうなあ・・・・
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オレが好みだと修吾に話した雰囲気のコが。
色白で、大きな瞳で、少し暗めの茶色いロングヘアを、緩くまとめている。
背はあまり高くなく、細身で、雰囲気がふわっとしてて。
かなり、オレの好みど真ん中な感じだった。
オレたちはカラオケに移動した。
大人数で使える部屋に、みんなでわいわいと入ってく。
オレは、オレの好みのかわいいコと、隣同士で座った。
「じゃ、オレたち歌いまーす!」
後輩たちが、盛り上げるために、1曲目を入れる。
おー、頑張ってくれよー。
盛り上げてる後輩たちを横目に、オレは隣に座ってるコに話しかけた。
「オレ、坂本玲紀。 よろしくね」
「初めまして。倉田(クラタ) 希(ノゾミ)です」
そう言って、倉田さんは少し恥ずかしそうに笑った。
「高2だよね? じゃあ、同い年だし、タメ語で」
へらって笑うと、倉田さんは大きく頷いた。
「うんっ」
かわいーなあ。
やっぱりこういうコが好みなのは、確かだなって自分で思う。
カラオケだとやっぱ音が大きいから、隣同士に座ってても話す時はカオを寄せ合う感じになる。
「カラオケって、よく来る?」
「うーん、友達とはいくけど。 こういうのは、ほとんど来たことなくて」
笑顔に照れが混じってて、ホントかわいい。
でも、かわいいって思うけど、前みたいにどきどきしたり、つき合いたいって思ったりは・・・ないかな・・・
「レイキも曲入れろよー」
修吾に選曲のリモコンを渡される。
オレ、歌は結構得意なんだ。
女のコにも、『甘い声でどきどきする』って言われたことあるし。
・・・・・・あれ?? それでも恋愛に発展しないって・・・・なんでだろう。。。
・・・やっぱ、歌はあんまイケてないのかも。。。。
若干不安になりながら、オレは自分の好きな曲を入れた。
倉田さんはそれを見て、
「あ、私、好き! この歌」
と、目を輝かせる。
「ほんと? じゃー、ちょっとがんばって歌わねーと」
へらって笑って言うと、倉田さんはにこってして、
「楽しみ」
って、オレの腕に軽く触れた。
今までのオレなら、『修吾、ありがとーーーーーー!!!!』って、心の中で叫んでたんだろうなあ。
あきらとこうならなかったら、きっと倉田さんの事好きになってたと思う。
オレの右隣に倉田さんが座っているけど、ふっと左側を見ると、あきらが座ってた。
でも、あきらの左隣に座ってるコと、カオを寄せ合って話していて、オレには半分くらい背中を向けていた。
あきらと話しているコはほんとに楽しそうにしている。
ああ、あのコ、あきらに落ちたなって思った。
オレはそっと、ため息をつく。
・・・・・・・・あきらに堕ちてんのは、オレもだけど。
ふと、ソファに置いていたオレの左手に、何かが触れた。
えっ、と思って視線を落とすと、あきらの右手だった。
あきらは女のコと話しながら、右手でオレの左手を握ってきた。
テーブルの陰で、みんなからは見えないように。
そして、女のコと話しながら少し体を後ろに下げて、背中をオレにくっつけてきた。
・・・・・どきどきする。
周りにみんながいるのに、隠れてこんなこと。
しかも、あきらの右手は、オレの左手をなぞるようにそっと動く。
あきらの指がオレのカラダを這っていくあの感覚を思い出して、腰にしびれが走った。
もう・・・・・! こんなところで・・・・・・・!!
「ねぇ、坂本くんって、こういうの・・・・よく来るの?」
倉田さんに、少し上目使いで聞かれて。
「えっ? あっ、うーん。 好きなコがいないときは、来るなあ」
あきらの指に気を取られて、オレはあまり考えずに返事をする。
「・・・じゃあ坂本くん、今は好きな人いないんだ?」
「ああ・・・・・うん」
あきらのカオが浮かぶけど、好きな人がいるなんて、言えないし。
「そっか・・・・」
倉田さんは唇に指を当てて少しうつむいた後、上目使いでオレを見上げた。
「ね、レイキくんって、呼んでもいい?」
「えっ!?」
突然言われてびっくりする。 でも、せっかく言ってくれてるんだし。
「う、うん。いーよ。
・・・・・じゃ、オレも希ちゃんで、いい?」
「うん! うれしい!」
希ちゃんは、パって笑顔になった。
「坂本先輩ですよね?」
後輩に言われて見ると、オレの入れた曲になってた。
「あ、ああ。 ありがとう」
あきらの体温を少し名残惜しく感じながら、手を伸ばしてマイクを受け取った。
希ちゃんと目が合う。
「・・・がんばって歌うね」
「うん」
二人とも微笑んで。
はたから見たら、すごいイイ雰囲気なんじゃないだろうか。
歌ってる間もずっと後輩は盛り上げてくれてて。
オレが歌い終わると、
「坂本先輩、かっこいいーーーー!!」
後輩が叫んでくれる。
「すごーい! レイキくん、上手!」
希ちゃんも、キラキラ笑顔で拍手してくれた。
「よかった、満足してもらえた?」
「うん! すごいカッコよかったよ!」
希ちゃんは、ホントかわいい。
「ねえ、レイキくん、他にどんな曲が好き? 好きな歌手とかいる?」
希ちゃんとの話は、結構盛り上がっていた。
ふと気づくと、あきらがいない。
・・・・・トイレ、かな。
「ゴメン、ちょっと」
希ちゃんに言って、立ち上がる。
部屋を出ると、どこからか戻ってきた修吾と鉢合わせる。
「お、レイキー。 あのコといい感じじゃん?」
「ああ、修吾、ありがとな」
・・・・これで、疑いは晴れるだろうか。
「オレ、あきらにやられたぜー」
「え?」
修吾はちらっとオレを横目で見ながら言った。
「オレの狙ってたコと、あきら、二人で話してる」
はあーって、修吾はため息をついた。
「すげーいい感じだったぜー。 あー、オレ、他のコにすっかなー」
オレは少なからずショックを受けてしまった。
・・・・あきらはモテるから、当たり前なのに。
「・・・・あきら、どこ?」
「ん? あっちの階段の近くのベンチにいた・・・・・・って、レイキ、邪魔しない方がいーんじゃね?」
修吾に探るような目で見られて、ハッとした。
・・・・そうだ、今オレがそんなにあきらのこと気にするって、不自然だろ。
「オ、レ、トイレ行って来るな」
「ああ。 あー、まじであきら誘うんじゃなかったかなー」
ぶつぶつ言ってる修吾を背に、トイレに向かう。
・・・・さっきあきらと話してたコは部屋にいる。
ってことは、今あきらと話してるのは別のコ、だよな。
一旦トイレに向かった足は、修吾の言っていた階段の方に向かった。
階段近くのベンチに、あきらと女のコの姿があった。
2人に見えないように、そっと覗いてみる。
2人は肩が触れ合うほど近くに座り、話声は聞き取れないけど楽しそうにしゃべってる。
女のコの手は、あきらの腕に触れていた。
しばらく楽しそうに話した後、
女のコはあきらの首に手を回して、軽く抱きついた。
・・・・・・オレはその場を離れた。
胸が苦しくなって、服の胸元を掴む。
・・・・・・・・あきらがモテるのはいつものこと。
今のは、あきらじゃなくて、女のコの方からしてたんだし。
知ってたことだし、わかってる。
でも。
トイレに行って、個室の中に入る。
「・・・・・うっ・・・・・・」
胸が、つぶされそうに、痛い。
あきらは、オレのことが好きって、言ってくれた。
でも、オレ、男だし。
あきらみたいにカッコいい奴の隣には、やっぱりかわいい女のコが合ってて。
オレたちの関係って、人に言えるようなものじゃなくて。
でも、オレ、あきらのキスが好きで。 抱きしめてほしくて。
あきらが・・・・・好き、で。
どうしよう。 どうしたらいいんだろう。
ホントは、女のコとあんなこと、してほしくない。
・・・・オレにだけ、してほしい。
でも、そんなこと、思っちゃいけない気がして。
「うぅっ・・・・・」
オレは、こぼれそうになる涙を必死でこらえていた。
・・・・・・どれくらい、こもってたのか。
「レイキー?」
個室の外で、修吾の声がする。
・・・・・やば。 心配して見に来たんだ。
コンコン。
ドアがノックされる。
「レイキなのかー?」
どうしよう。 オレ、普通のカオしてるかな。
返事が出来ずにいると、修吾のため息が聞こえた。
「レーイキ。 お前さあ、・・・・・・あきらと、何かあったのか?」
・・・・・やっぱり、修吾は疑ってる・・・・?
オレは一つ、息を吐いてからドアを開けた。
「わりぃ、修吾。 探してくれたんだ? ちょっと、ハラ痛くなってさ」
手を洗いながらへらって笑うと、修吾の真剣な眼差しにぶつかった。
オレはすぐに目を逸らす。
「行こーぜ」
言って、トイレから出ようとすると、修吾に腕をつかまれた。
ぐいって引っ張られて、洗面台を背に、至近距離で修吾と向き合う。
修吾はオレを挟むように洗面台に両手をついて、オレは動けなくなった。
「・・・・逃げんな」
いつになく真剣な、修吾のカオ。
オレは、へらって笑うしかできない。
「逃げてねーよ。 修吾、どうしたんだよ?」
この雰囲気を変えるために、なるべく茶化すように言うけど・・・・
修吾の表情は変わらない。
修吾はオレの肩に額をあてた。
「・・・・・最近、レイキすっげえキレイでさ。 何か、・・・色気が出てて。
・・・・また、好きなやつができたのかなって思ってたけど、今までとは違う感じだし。
もしかして、彼女かな?って、思ってた」
修吾は、そのままの体勢で話しをする。
「・・・・・でも、気づいた。
・・・お前が練習中にボーってしてる時、見てんのは・・・・あきら、だった」
どくんっ。
オレの心臓がなる。
「あきらが上手いから、プレーを盗みたくて見てる、後輩たちとは違う。
・・・・レイキは、あきらのプレーじゃなくて、あきらを見てたんだろ」
どくん、どくん・・・・
心臓が、うるさい。
どうしよう。
動揺してることが、体を寄せている修吾に伝わってしまいそうなくらい・・・・・
・・・・・・・オレ、そんなにあきらの事、見てたのか・・・?
「・・・・・そしたらさ、この香りじゃん」
修吾は、オレの首筋にカオを寄せた。
「・・・・・香水、借りて付けたにしては香り弱すぎだし。
・・・・これ、あきらからうつった香りなんだろ・・・・・?」
・・・・もう、ごまかしきれない・・・・・・?
「・・・あきらと、つき合ってんの・・・?」
修吾は、ささやくように聞いてきた。
修吾の息が、首筋に当たって、ぞくぞくしてしまう。
「・・・・・んなわけ、ねーじゃん。修吾、何言ってんだよ」
もうごまかしきれない、そう思いつつも、最後の抵抗。
なるべく、軽い感じで言ったんだけど。
「じゃあ、つき合ってないけど、香りが移るようなことする、関係なんだ・・・・?」
修吾は、オレの耳元でささやいた。
「・・・・・っ」
吐息が耳にかかり、ぞくって、する。
修吾は、オレの首筋にキスしてきた。
「んっ・・・・・・!」
腰がしびれて、思わず、声が漏れる。
「レイキ・・・・・なんか、たまんねー・・・」
修吾はついていた両手を、オレの背中に回して抱きしめてきた。
「ちょっ・・・・・修吾!」
修吾を押し返そうとするけど、力が入らない。
「レイキ・・・・・」
唇が、重ねられる。
カオを背けようとするけど、後頭部をがっちり押さえられてて出来ない。
修吾は、オレの口内に舌を入れてきた。
歯列を舐められて、腰に快感が走る。
「んぅっ・・・・!」
もう、力なんか全然入らない。
修吾を押しのけるどころか、足に力が入らなくて、修吾にしがみついてしまう。
オレの口内を舐めまわして、修吾の唇は離れていった。
「しゅう、ご。 もう、やめろよ・・・・・」
「レイキ・・・・・・すっげえ、エロい」
至近距離でオレを見つめる修吾の瞳には、欲情が揺れている。
「・・・・・あきらと、こういうこと、してんのか・・・?」
首筋にキスをしながら聞いてくる。
「・・・・・っ、してねー・・・・っ!」
もうっ、修吾、なんなんだよ・・・・・・・!!!
人の話し声と、足音が近づいてくるのがわかった。
修吾がオレから離れたとき、ガチャッとトイレのドアが開いて、他の人たちが入ってきた。
オレは修吾を押しのけて、トイレから出ようとする。
「レイキ!」
修吾に腕をつかまれる。
「・・・・・・その、ゴメン。 悪かった・・・・」
オレは修吾の腕を振り払って、部屋に戻った。
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