君の笑顔が大好きで -モテないオレとイケメン親友の恋-

mii

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5.ほっぺにちゅーとかありえない

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紗希ちゃんにフラれてからもう5日が経って、今日は金曜日だ。

『お疲れ様でしたーーぁ!!!』


部活が終わって、みんなで連れ立って更衣室に行く。


・・・・あれからずっと、オレは変だ。


紗希ちゃんにフラれてから感じていた、心が鉛のように重い感覚は、なくなった。

代わりにオレの心を占めているのは・・・・・


「レイキ、どっか寄って帰るか?」

微笑みをたたえた切れ長の瞳で、オレを見下ろしてくるあきら。

「・・・おう」

オレはカオが赤くなりそうで、あきらから目を逸らして返事をした。



・・・・そう、こいつなんだ。



正確に言うと、こいつにキスされそうになった、あのシチュエーション。

抱きしめられた感覚、香水の香り、至近距離で見たキレイなカオと、唇・・・・


あれを思い浮かべると、

・・・・・ほら! また心臓がうるさくなる。


『レイキ・・・・』

耳元で響いたあの声を思い出すだけで、腰がぞくってするんだ。



「レイキ、着替えねーの?」

「うわうっ!」

物思いにふけっていたオレは、いきなり修吾に声をかけられて、びっくりして変な声を上げてしまった。。。


「き、着替えるよっ!」


ちらっとあきらの方を見ると、ウェアを脱いで上半身裸になっている状態だった。


「・・・・・っ!」


・・・・今まで何度もあきらの上半身の裸は見たことある。

着替えるときだったり、シャワーを浴びるときだったり、もちろん水泳の授業のときとか、合宿でも・・・・


でも、変なことを考えていたオレには、刺激が強すぎた。


やばっ・・・・!
カオが赤くなるっ・・・・・!!

オレは右手の甲で口元を抑えて、思わずあとずさった。


どんっ。


広くない更衣室で、オレの隣で着替えていた修吾に背中をぶつけてしまった。


「え、レイキ? お前何やってんの?」

「ごっ、ごめんっ・・・」


カオを見られたくなくて、うつむいて謝るしかできない。


「レイキ、どうした?」

低くてイイ声が響いて、ふわって、香水の香り。


あきらが膝を曲げて、オレのカオを覗き込んできた。


練習であんなに汗をかいたのに、何でこんないい香りがするんだろ・・・・

っていうか、カオ、近づけないでくれっ!!



「な、んでもねーよっ」


ぶっきらぼうに言って、あきらを押しのけて、オレもウェアを脱ぎ捨てた。







帰りは、あきらと修吾とオレの3人だった。

亮介は、最近女子テニス部に狙ってるコがいて、そのコを帰りに誘ってみるって張り切ってた。


・・・・っていう事は、この間合コンの話はしたけど、しばらく亮介からの誘いはないかなーー・・・


「修吾ってさ、合コンとかすんの?」

修吾もモテるし、そういうツテ、持ってるかも。

そう考えて、聞いてみた。


「えー? まあ、たまにはなあ。 そういえば、レイキと一緒に行ったことないよなあ」

「だなあ」


失恋した後は、新しい恋を探すため、結構合コンに参加したりするんだけど。

そう言えば、修吾と行ったことはない。


「あ、今度するかもしんねーんだ。 ちょっと頼まれてて。
じゃあレイキ、メンバーに入れてていいか?」

おっ、ちょうどいいタイミングじゃん!

「おう、行く行く! よろしくー」

オレはうきうきしながら返事をした。


修吾はあきらの方を向いて、

「あきらも行くか? フリーなんだよな?
・・・・あー、でもあきらが居たら、全部持ってかれそー・・・・」

思わず聞きはしたものの、『聞くんじゃなかった』ってカオしてる。

「あきらは行かねーよ。 合コンなんか行かなくても、女に困ってねーし」

あきらと一緒に合コンに行ったのって、初めて行った時だけだ。その後は大体亮介とか、他の友達と行ってる。 

実際、あきらはいろんな女のコと遊んでるけど、ぜーんぶ向こうから寄ってきたのだし。合コンなんて行く必要ないしな。


「いや、オレも行く。 修吾、よろしく」


・・・・え!?

あきらも行くのか!?

意外過ぎなんだけど。


「おっけー。 でも、マジで全部持ってくなよー。 他のメンバーのことも考えろよなーーーー」

修吾があきらを睨みながら言う。

若干・・・・・いや結構その表情に後悔がにじんで見えるのは、気のせいじゃないだろう。


だって、あきらを連れて行ったら・・・・他の男のメンバーに恨まれるだろうなー、修吾。
女のコからの評価はかなり上がるだろうけど。


でも、意外だなー。あきらが自分から合コンに行くなんてさ。


ちら、とあきらのカオを盗み見る。

あきらは修吾と楽しそうにしゃべってる。



最近、あきらのカオをなかなか直視できなくなってるんだよなー・・・・


あー、でもやっぱりカッコいい。


思考がまた、あのキスのシチュエーションになりそうで、オレは軽く頭を振った。


もう、オレどうしたんだろう。

欲求不満なんだろうか??

まあ、彼女いたことないから、常に欲求不満ではあるわけだけど。


「あーーーーっ、彼女欲しいーーーー!!」


思わず口に出してしまい、修吾に大笑いされる。

「気合十分だな、レイキー」

修吾が肩を組んできた。


「レイキ、どんなコが好みなんだ?」

「オレはー・・・」

なぜか、視線があきらに向かってしまった。


目が合ったあきらが、『なに?』というように少し首をかしげる。



ちがう、ちがう。

あきらはカッコいいけど、今修吾が聞いてきてるのは女のコの好みだ。


「やっぱ、かわいい感じかなー。髪もゆるふわな感じで、雰囲気がふわっとしててさー」

紗希ちゃんを思い浮かべながら答える。


うん、そうそう。

オレの好みはそんな感じだ。


「おっけ。そういうコを連れてくるように、頼んどくわ」

「さんきゅ、修吾」


へらって、修吾に笑顔を向けた。



「レイキって、ほんとかわいいよなー」


・・・え?


肩を組んだまま、至近距離で修吾がオレを覗き込んでくる。


「なんか、小動物みてー」


甘い修吾の顔が、すげえ近い。

いつもより近い距離に少し戸惑いながら、オレも修吾のカオをまじまじと見た。


あきらよりも大きな二重の瞳。まつ毛も長くて。
でも全然女っぽい感じはなくて、意志の強そうな瞳。
唇は・・・少し厚めで、ふっくらしてる。

うん、修吾もやっぱりカッコいい。


「修吾って、カッコいいよなー・・・」

ぽそっと呟く。

「だろーっ?」

悪びれもせず、笑顔で肯定する修吾。


他の奴が言ったら『何言ってんだ』って感じだけど、修吾はほんとにイケメンだからな・・・


「なんでオレの周りって、カッコいいやつばっかなんだろ。 これじゃ、オレがモテなくてもしょーがなくねー?」

ため息まじりに言うと、

「えー? でも、レイキも結構女のコに『かわいー』って言われてるぜ?」


うーん、それってからかい半分じゃないですかねー?


「かわいーって言われてもなあ。 女のコにとっては、ぬいぐるみとかに言うのと同じ感覚じゃね?」

そんなんじゃ、彼女なんて程遠いだろ。


「でも、確かにかわいーもんな」



ちゅ。

右頬にやわらかい感触があって、リップ音が聞こえた。




えっ?えっ?えっ?


オレはカチッと固まってしまった。


「あれ? おーい、レイキー??」


動かなくなったオレに、修吾が呼びかける。




オレ、今、修吾に『ほっぺにちゅー』されたーーーーーー!!!!?????





オレはまだ肩を組んだままの修吾を思いっきり振り払って、


「しゅうごおおおおおおおおお!!!!」

「わりいわりい!」


オレがどなりつけた瞬間走り出した修吾を追いかける。


「だって、レイキがかわいーからさあ」


捕まえた修吾の胸倉をつかんで、自分の方に引き寄せる。

修吾の方が身長が高いから、自然とオレが見上げる形になるんだけど。


「お前、バカにしてんだろー!?」

「ちがうって。ほんと、レイキがかわいかったからさ」


こいつ・・・・・女のコにもこんな甘い事言ってんだろうなあ。




あきらが、ポンって修吾の肩をたたく。

「こいつ、ほんと免疫ないから。 あんまふざけんなよ」


低い声でそう言ったあきらを見上げて、びっくりした。



切れ長の瞳を細めて、すっげえ冷たい表情で修吾を見てる。



「お、おう・・・・」

さすがに修吾もそんなあきらにびびったのか、

「レイキ悪かったな」

すまなさそうな表情で、オレに謝ってきた。


「いや、別に・・・」

オレも、修吾から手を放す。




「じゃあな、修吾」

あきらは修吾に声をかけると、オレの腕をつかんで歩き出した。



オレはあきらに引っ張られながら、

「じゃ、じゃあな、修吾。またなー!」

って、笑顔で手を振った。


修吾も少しこわばった表情をのぞかせながらも、

「おう、またなー」

って、笑顔で手を振ってくれた。
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