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3.イケメン親友に抱きしめられて
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屋上にごろんって寝そべって、青い空を見上げる。
今日はぽかぽか気持ちいい。
5月のいい感じの風が頬を撫でていく。
「はああーーーーー・・・・・・」
それでも、オレの口からこぼれるのはため息ばっかだ。
『坂本くん、ゴメンね』
今まで、何度そのセリフを聴いたことがあるだろう。
オレは惚れっぽい性格なのか、中学から今までいろんな人を好きになって、そのたびに告白してきた。
・・・・そして、いつも玉砕。
だいたいいつも言われるのは、『嫌いじゃないけど、友達としか思えなくて』
オレの何がダメなんだろう。
男らしくないのかな。
あきらの言うとおり、今までは結構立ち直り早かった。
ダメだったらスパッと諦めて、次の恋を探してた。
でも今回は・・・
昨日の今日だからまだ気分が晴れないだけなのか。
でも、心が鉛みたいに重くて。
ごろんって、寝返りを打つ。
その時、屋上のドアが開くのが見えた。
「・・・・あ」
入ってきた人物と、目が合う。
「やーっぱ、ここか」
あきれたように呟く、あきら。
切れ長の目を細めてオレを見下ろして、隣に腰を下ろす。
オレも体を起こして、座った。
「・・・あきら、授業は?」
「お前こそ」
「・・・・だよな」
ぼーっと空を眺めてると、ふと、あきらが沈黙を破った。
「レイキ、大丈夫か?」
あきらを見ると、少し心配そうな瞳をしてオレを見ていた。
「めずらし。心配してくれんの?」
オレはへらって笑って、あきらから目をそらした。
昨日、紗希ちゃんと別れた後はまっすぐ家に帰った。
でもどうしても胸が苦しくて、あきらに電話したんだ。
だから、あきらは一応事の顛末は知っている。
「・・・・オレって、何がダメなのかなあ」
あきらに質問するわけではないが、口を突いて出てしまう。
「いっつも言われんだよね。『友達としか思えなくて』って。都合良いセリフだと思わねー?」
なんでだろ。
「もちろん、あきらみたいにカッコよくないし。オレなんかとはつき合いたくないんだろうけど。
でも、『嫌い』とか『好みじゃない』とか、否定してくれた方がこっちも諦めつくのにな」
それで、いつもまた友達に戻ってしまうんだ。・・・好きなコの困ったカオが見たくないから。
今まで通りの関係に戻してしまうんだ。
でも、結構それってつらいものがある。
だからまた次の恋を探し始めてしまうんだ。
早く忘れたくて。
「友達でいたいってのは、相手のコの本心なんじゃねえの? レイキとは友達でいたいんだよ」
「えーっ? オレはつき合いたいのに? ・・・・女のコって、勝手だよなあ」
「でも、その勝手を許してやってるのは、レイキだろ?」
あきらの言葉にびっくりした。
・・・オレが?
「レイキは誰にでも優しいからな。 女の方も、レイキといたら癒されるとか、あるんじゃねーの?
で、デートに誘われて、思わずついて行っちまう。
すごく楽しいけど、やっぱり、恋愛感情とは違う。
でも、レイキとの関係を壊したくない・・・・・・友達としては好きだから、『嫌い』とか、お前を否定するような言葉は出ないんだよ」
あきらがオレを見てフッて笑った。
「しかもその後、女の望む通り、友達に戻ってやってるだろ? ・・・・相手の困ったカオが見たくないからなんだろうけど。
だから女はまたホッとするんだ。 『坂本くんと、今まで通り居心地のいい友達関係に戻れた』って、さ。
でもさ・・・お前、それってつらくないの?」
ズキンって、胸が痛んだ。
好きになった女のコと、また友達関係に戻る。
これって、実は結構つらいんだよな。
だって友達でいたら、そのコに好きな人が出来たり、誰かとつき合ったりっていうの、目の当たりにしてしまう。
だから、いつもすぐに次の恋を探してた・・・・そのつらさから解放されるために。
うつむいたオレを、あきらが見つめているのが分かる。
「つらくて、それから逃げようとして、すぐに次の恋を探してたんだろ?
・・・でも、今まで無理してきたから、それがたまってきてんじゃねー?」
・・・・そうかも、しれない。
少しずつ、少しずつ、心をごまかして、無理をさせて。
だから、ついにこんなに鉛みたいな重みを抱えることになってしまって。
「・・・・でもさ、友達でいたいって、言うんだ。好きなコが。
だったら、かなえてやりたいじゃん?」
オレは笑ってあきらを見た。
・・・・・・びっくりした。
あきらが、つらそうなカオをしてたから。
何で、あきらがそんなにつらそうなカオしてるんだ?
「何で、無理して笑うんだよ。 お前を振ったやつのために、何でそんな無理するんだよ」
あきらの手が伸びて、オレの頬に触れた。
「・・・・オレの前で無理して笑うな」
そう言われて。
別に泣きたいって思ってたわけじゃないのに。
ぽろって、涙がこぼれた。
「う、うわっ」
オレは慌ててうつむいて、目をこすった。
あきらの前で泣くなんて、かっこわりぃ。
「わりぃ。 お前が優しくするから、めずらしくてびっくりしてさ」
へらって笑って、立ち上がろうとした。
・・けど、立ち上がれなかった。
あきらに腕をつかまれて。
「・・・あきら?」
あきらを見ると、すごく真剣な眼差しとぶつかった。
「・・・・オレの前で無理して笑うな」
もう一度、ゆっくりとそう言った。
そして、つかんだままのオレの腕を引っ張った。
オレはバランスを崩して、あきらの胸に倒れ込む。
そのオレを、あきらはぎゅっと抱きしめてきた。
「・・・・オレの前では、泣いていい。 無理してるレイキは、見たくない」
ぎゅって、心臓をつかまれるような感覚があった。
あきらがいつもつけている、香水の香りに包まれる。
「・・・レイキ・・・」
少し低い、イイ声が耳元でして、オレの鼓膜を震わせる。
耳に、あきらの息遣いまで聞こえるようだった。
どくん、どくん・・・・・・
自分の心臓の音が、やけにうるさい。
カオが、なんだかほてってくる。
「・・・・無理すんな、レイキ。 つらいときって、涙が出るもんだろ?」
・・・・うん、そう、だよな。
ぽろぽろぽろ。
あきらの言葉に促されるように、オレの目から涙がこぼれてきた。
「・・・・振られたときって、自分を否定された気がする。 だって、オレじゃだめってことだろ・・・・?
ただ、『友達ではいたいって、思ってくれてるんだ』って・・・・そう思って、好きなコの望みだから叶えたくて、友達関係に戻ってた。
でもやっぱり・・・好きなコが他の男と仲良くするのを間近で見るのはつらくて。
だから、早く他に好きなコを見つけたくて・・・・それで・・・」
オレはあきらに抱きしめられたまま、言葉をこぼす。
カオを見られてないからかな。 見られてたら、きっと恥ずかしくて、こんなこと言えない。
あきらは黙ってオレの話を聴いていた。
つき合いは長いけど、失恋した後に、こんな話をあきらにしたことは、ない。
あきらはモテるから。 カッコいいから。
こんな情けない自分は見せたくなかった。
だって、振られるだけでかっこわりいのに、その後ぐちぐち言うなんて、あきらには出来なかった。
「・・・あきらあ。 オレ、すっげえかっこわりぃよな。 ゴメンなぁ、こんなとこ見せて・・・・」
涙でぐしゅぐしゅしながら、あきらの胸にカオをうずめたまましゃべる。
こんなカオ、見せらんねー。
「・・・なんで。かっこわるくなんか、ない。全部レイキじゃん。
我慢すんなよ。・・・・・オレの前では、全部見せろよ」
あきら・・・。 なんてカッコいいんだろ。
そりゃあ、モテるよな。
「あきらぁ・・・」
思わず、あきらにぎゅって抱き着く。
すると、あきらがオレを抱きしめる力が強くなった。
「レイキ・・・」
さっきまでよりも近く、耳元で呟く、あきらの声。
吐息まで感じて、ぞくってした。
オ、レ、・・・どうしたんだ?
どくん、どくん、どくん、・・・
心臓の音がさらにうるさく感じる。
「レイキ」
あきらの声が、耳元で。
また、ぞくって、した。 腰が。
あきらがオレを抱きしめていた腕をほどいて、両手をオレの頬に当てた。
オレのカオを、上向かせる。
やっべぇ。涙と鼻水でぐしゃぐしゃのカオなのに・・・・・!
至近距離で、あきらにカオを覗き込まれる。
・・・・・こんなに近くであきらのカオをまじまじと見たことはないけど。
・・・・・・・・・・キレイだ。
キメの細かい肌、きりっとして意志の強そうな眉、切れ長の瞳、通った鼻筋、潤った唇・・・
やっぱり、カッコいい。
そんなことを考えていたら。
あきらが、ほんの少し口をあけて、カオを傾けて近づけてくる。
え?え?え?
これって・・・・もしかして。
オレ、キスされんの!!!!?????
そう思った瞬間、心臓が今までにないくらいぎゅって縮んで。
どんっっ!!
オレはあきらを突き飛ばしていた。
あきらは驚きと、ほんの少し、後悔を混ぜたような表情をした。
「あああああああきら、ごめんっ! オレっ・・・・・、だ、大丈夫か?」
「・・・・ああ・・・・」
あきらはフッて笑って、
「レイキがかわいかったから。 思わず、キスしそーになった」
な、な、な、
「何言ってんだよ!?」
や、やっぱりあれ、キスされそうになってたのか!!!???
驚きのあまり口をパクパクさせてるオレを見て、あきらはプッて吹きだした。
「あははは。じょーだんだよ」
ぽんぽんって、オレの頭を軽くたたいて、
「あんま、無理すんなよ。話はいつでも聞いてやるからさ」
そう言って、立ち上がった。
「オレ、先戻るな」
「お、おう」
「泣きたくなったら、連絡しろよ。いつでも胸は貸してやるから」
「泣かねーよ」
制服の袖でカオをぬぐうオレを見て、あきらはフッと笑った。
「じゃーな」
軽く手を振って、屋上から出ていく。
その背中を見送って、
「はーーーーーーっ・・・・・・」
オレはまた、盛大にため息をつきながらゴロンって横になった。
・・・・・なんだったんだ、一体。
オレ、あきらの前ですっげえ情けないとこ見せちった。
それから・・・・・
至近距離で見た、あきらのカオを思い出す。
・・・・・・すっげー、きれいだったなーーーー・・・・・
あの唇に、キスされたら、どんなんなんだろう・・・・・
抱きしめられた時の感覚と、あの香水の香りと、耳に響く声を思い出して・・・
「・・・・・っ」
また、腰がぞくって、した。
オレ、どうしたんだ?
弱ってる時に、めずらしくあきらに優しくされたから・・・?
その時、1時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。
オレは軽く頭を振って、立ち上がった。
今日はぽかぽか気持ちいい。
5月のいい感じの風が頬を撫でていく。
「はああーーーーー・・・・・・」
それでも、オレの口からこぼれるのはため息ばっかだ。
『坂本くん、ゴメンね』
今まで、何度そのセリフを聴いたことがあるだろう。
オレは惚れっぽい性格なのか、中学から今までいろんな人を好きになって、そのたびに告白してきた。
・・・・そして、いつも玉砕。
だいたいいつも言われるのは、『嫌いじゃないけど、友達としか思えなくて』
オレの何がダメなんだろう。
男らしくないのかな。
あきらの言うとおり、今までは結構立ち直り早かった。
ダメだったらスパッと諦めて、次の恋を探してた。
でも今回は・・・
昨日の今日だからまだ気分が晴れないだけなのか。
でも、心が鉛みたいに重くて。
ごろんって、寝返りを打つ。
その時、屋上のドアが開くのが見えた。
「・・・・あ」
入ってきた人物と、目が合う。
「やーっぱ、ここか」
あきれたように呟く、あきら。
切れ長の目を細めてオレを見下ろして、隣に腰を下ろす。
オレも体を起こして、座った。
「・・・あきら、授業は?」
「お前こそ」
「・・・・だよな」
ぼーっと空を眺めてると、ふと、あきらが沈黙を破った。
「レイキ、大丈夫か?」
あきらを見ると、少し心配そうな瞳をしてオレを見ていた。
「めずらし。心配してくれんの?」
オレはへらって笑って、あきらから目をそらした。
昨日、紗希ちゃんと別れた後はまっすぐ家に帰った。
でもどうしても胸が苦しくて、あきらに電話したんだ。
だから、あきらは一応事の顛末は知っている。
「・・・・オレって、何がダメなのかなあ」
あきらに質問するわけではないが、口を突いて出てしまう。
「いっつも言われんだよね。『友達としか思えなくて』って。都合良いセリフだと思わねー?」
なんでだろ。
「もちろん、あきらみたいにカッコよくないし。オレなんかとはつき合いたくないんだろうけど。
でも、『嫌い』とか『好みじゃない』とか、否定してくれた方がこっちも諦めつくのにな」
それで、いつもまた友達に戻ってしまうんだ。・・・好きなコの困ったカオが見たくないから。
今まで通りの関係に戻してしまうんだ。
でも、結構それってつらいものがある。
だからまた次の恋を探し始めてしまうんだ。
早く忘れたくて。
「友達でいたいってのは、相手のコの本心なんじゃねえの? レイキとは友達でいたいんだよ」
「えーっ? オレはつき合いたいのに? ・・・・女のコって、勝手だよなあ」
「でも、その勝手を許してやってるのは、レイキだろ?」
あきらの言葉にびっくりした。
・・・オレが?
「レイキは誰にでも優しいからな。 女の方も、レイキといたら癒されるとか、あるんじゃねーの?
で、デートに誘われて、思わずついて行っちまう。
すごく楽しいけど、やっぱり、恋愛感情とは違う。
でも、レイキとの関係を壊したくない・・・・・・友達としては好きだから、『嫌い』とか、お前を否定するような言葉は出ないんだよ」
あきらがオレを見てフッて笑った。
「しかもその後、女の望む通り、友達に戻ってやってるだろ? ・・・・相手の困ったカオが見たくないからなんだろうけど。
だから女はまたホッとするんだ。 『坂本くんと、今まで通り居心地のいい友達関係に戻れた』って、さ。
でもさ・・・お前、それってつらくないの?」
ズキンって、胸が痛んだ。
好きになった女のコと、また友達関係に戻る。
これって、実は結構つらいんだよな。
だって友達でいたら、そのコに好きな人が出来たり、誰かとつき合ったりっていうの、目の当たりにしてしまう。
だから、いつもすぐに次の恋を探してた・・・・そのつらさから解放されるために。
うつむいたオレを、あきらが見つめているのが分かる。
「つらくて、それから逃げようとして、すぐに次の恋を探してたんだろ?
・・・でも、今まで無理してきたから、それがたまってきてんじゃねー?」
・・・・そうかも、しれない。
少しずつ、少しずつ、心をごまかして、無理をさせて。
だから、ついにこんなに鉛みたいな重みを抱えることになってしまって。
「・・・・でもさ、友達でいたいって、言うんだ。好きなコが。
だったら、かなえてやりたいじゃん?」
オレは笑ってあきらを見た。
・・・・・・びっくりした。
あきらが、つらそうなカオをしてたから。
何で、あきらがそんなにつらそうなカオしてるんだ?
「何で、無理して笑うんだよ。 お前を振ったやつのために、何でそんな無理するんだよ」
あきらの手が伸びて、オレの頬に触れた。
「・・・・オレの前で無理して笑うな」
そう言われて。
別に泣きたいって思ってたわけじゃないのに。
ぽろって、涙がこぼれた。
「う、うわっ」
オレは慌ててうつむいて、目をこすった。
あきらの前で泣くなんて、かっこわりぃ。
「わりぃ。 お前が優しくするから、めずらしくてびっくりしてさ」
へらって笑って、立ち上がろうとした。
・・けど、立ち上がれなかった。
あきらに腕をつかまれて。
「・・・あきら?」
あきらを見ると、すごく真剣な眼差しとぶつかった。
「・・・・オレの前で無理して笑うな」
もう一度、ゆっくりとそう言った。
そして、つかんだままのオレの腕を引っ張った。
オレはバランスを崩して、あきらの胸に倒れ込む。
そのオレを、あきらはぎゅっと抱きしめてきた。
「・・・・オレの前では、泣いていい。 無理してるレイキは、見たくない」
ぎゅって、心臓をつかまれるような感覚があった。
あきらがいつもつけている、香水の香りに包まれる。
「・・・レイキ・・・」
少し低い、イイ声が耳元でして、オレの鼓膜を震わせる。
耳に、あきらの息遣いまで聞こえるようだった。
どくん、どくん・・・・・・
自分の心臓の音が、やけにうるさい。
カオが、なんだかほてってくる。
「・・・・無理すんな、レイキ。 つらいときって、涙が出るもんだろ?」
・・・・うん、そう、だよな。
ぽろぽろぽろ。
あきらの言葉に促されるように、オレの目から涙がこぼれてきた。
「・・・・振られたときって、自分を否定された気がする。 だって、オレじゃだめってことだろ・・・・?
ただ、『友達ではいたいって、思ってくれてるんだ』って・・・・そう思って、好きなコの望みだから叶えたくて、友達関係に戻ってた。
でもやっぱり・・・好きなコが他の男と仲良くするのを間近で見るのはつらくて。
だから、早く他に好きなコを見つけたくて・・・・それで・・・」
オレはあきらに抱きしめられたまま、言葉をこぼす。
カオを見られてないからかな。 見られてたら、きっと恥ずかしくて、こんなこと言えない。
あきらは黙ってオレの話を聴いていた。
つき合いは長いけど、失恋した後に、こんな話をあきらにしたことは、ない。
あきらはモテるから。 カッコいいから。
こんな情けない自分は見せたくなかった。
だって、振られるだけでかっこわりいのに、その後ぐちぐち言うなんて、あきらには出来なかった。
「・・・あきらあ。 オレ、すっげえかっこわりぃよな。 ゴメンなぁ、こんなとこ見せて・・・・」
涙でぐしゅぐしゅしながら、あきらの胸にカオをうずめたまましゃべる。
こんなカオ、見せらんねー。
「・・・なんで。かっこわるくなんか、ない。全部レイキじゃん。
我慢すんなよ。・・・・・オレの前では、全部見せろよ」
あきら・・・。 なんてカッコいいんだろ。
そりゃあ、モテるよな。
「あきらぁ・・・」
思わず、あきらにぎゅって抱き着く。
すると、あきらがオレを抱きしめる力が強くなった。
「レイキ・・・」
さっきまでよりも近く、耳元で呟く、あきらの声。
吐息まで感じて、ぞくってした。
オ、レ、・・・どうしたんだ?
どくん、どくん、どくん、・・・
心臓の音がさらにうるさく感じる。
「レイキ」
あきらの声が、耳元で。
また、ぞくって、した。 腰が。
あきらがオレを抱きしめていた腕をほどいて、両手をオレの頬に当てた。
オレのカオを、上向かせる。
やっべぇ。涙と鼻水でぐしゃぐしゃのカオなのに・・・・・!
至近距離で、あきらにカオを覗き込まれる。
・・・・・こんなに近くであきらのカオをまじまじと見たことはないけど。
・・・・・・・・・・キレイだ。
キメの細かい肌、きりっとして意志の強そうな眉、切れ長の瞳、通った鼻筋、潤った唇・・・
やっぱり、カッコいい。
そんなことを考えていたら。
あきらが、ほんの少し口をあけて、カオを傾けて近づけてくる。
え?え?え?
これって・・・・もしかして。
オレ、キスされんの!!!!?????
そう思った瞬間、心臓が今までにないくらいぎゅって縮んで。
どんっっ!!
オレはあきらを突き飛ばしていた。
あきらは驚きと、ほんの少し、後悔を混ぜたような表情をした。
「あああああああきら、ごめんっ! オレっ・・・・・、だ、大丈夫か?」
「・・・・ああ・・・・」
あきらはフッて笑って、
「レイキがかわいかったから。 思わず、キスしそーになった」
な、な、な、
「何言ってんだよ!?」
や、やっぱりあれ、キスされそうになってたのか!!!???
驚きのあまり口をパクパクさせてるオレを見て、あきらはプッて吹きだした。
「あははは。じょーだんだよ」
ぽんぽんって、オレの頭を軽くたたいて、
「あんま、無理すんなよ。話はいつでも聞いてやるからさ」
そう言って、立ち上がった。
「オレ、先戻るな」
「お、おう」
「泣きたくなったら、連絡しろよ。いつでも胸は貸してやるから」
「泣かねーよ」
制服の袖でカオをぬぐうオレを見て、あきらはフッと笑った。
「じゃーな」
軽く手を振って、屋上から出ていく。
その背中を見送って、
「はーーーーーーっ・・・・・・」
オレはまた、盛大にため息をつきながらゴロンって横になった。
・・・・・なんだったんだ、一体。
オレ、あきらの前ですっげえ情けないとこ見せちった。
それから・・・・・
至近距離で見た、あきらのカオを思い出す。
・・・・・・すっげー、きれいだったなーーーー・・・・・
あの唇に、キスされたら、どんなんなんだろう・・・・・
抱きしめられた時の感覚と、あの香水の香りと、耳に響く声を思い出して・・・
「・・・・・っ」
また、腰がぞくって、した。
オレ、どうしたんだ?
弱ってる時に、めずらしくあきらに優しくされたから・・・?
その時、1時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。
オレは軽く頭を振って、立ち上がった。
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