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洞窟の試験
5話 再び蛇の魔物に遭遇
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全員渓谷を渡った。
私は即座にヒューの背中から下りる。
あんまり男同士でくっついていたくない。
「意外に天井が高いな。うーん、俺もう少し偵察する。二人はそこで待ってろ」
ヒューはそう言うと、そのままフワフワと上昇していく。
「ヒューさんのあの魔法。戦闘には不向きそうですが、偵察に便利そうです」
メリンダがカチューシャを押さえながら上を見てつぶやく。
……周囲の魔力を感知しながら答える。
「あれはこの王国でよく広まってる魔法だ。主に湿地帯で活動するために使われる」
「湿地帯……ですか」
「ああ、手練は馬車を馬ごと長時間浮遊させたりする」
「……! すごいですね、それ。例えば道が開けてない未開の土地にも物資を運んだりできます?」
「そのとおり。一説にはこのポーリサ王国がここ50年ほど急激に経済成長したのは、あの魔法のおかげなんて説もある」
「……」
メリンダは今度はポカーンと口を開けて上空を眺め始めた。
そんなに興味深いのか。
手元の炎の玉を少し上に移動させてヒューを照らし観察してる。
「驚いた。天井のくぼみに大量の骨があったぞ」
「え?」
戻ってきた。
ゆっくりと下りながら、意外な発言をしている。
「進みながら話そう」
「ああ」
スタンっと着地すると、ヒューは黒くて長い尻尾をくねらせながら先頭を歩く。
そういえばこいつ、夜目が効くのか。
「骨って動物のか?」
先ほどの発言が気になって聞いてみた。
「いや、ほとんどエルフのだな」
「エルフの骨だと?」
「魔物に食われた方々のなれの果てでしょうか?」
「俺もそう思う。おそらく何百年何千年の間に行方不明になったエルフは、ここで息絶えていた」
「マッドヴァイパーか」
先ほど自分が襲われた事を思い出す。
奴らはエルフを好んで捕食する。
「そういえば、お前と合流する前にエルフの中年と会った」
「へえ」
「彼、大丈夫かな。この洞窟のマッドヴァイパーに狙われたりしたら……」
私の心配ごとに、ヒューは呆れた顔で手を広げる。
「博識なお前らしくないな」
「え?」
「マッドヴァイパーが好むのは厳密にはエルフの肉ではないぞ。魔力の高い生物だ」
「……あっ」
「それがたまたまエルフに多いだけであってな、こんな辺境をうろついてるエルフが魔力が高いとも思えんぞ」
「ああ、思い出した。その中年の体内の魔力量は一般人と変わらなかった。魔物に狙われる事もないか」
安堵した。
まあ、それなりに長い年月を生きているエルフなら魔物への対処法くらい心得ているかもしれないが。
「そういえばミーシャさんもエルフなのに体内の魔力量が少なかったですね」
思い出したように、メリンダが語る。
「ああ、あいつはそうなんだ。生まれつき体内の魔力量が少ない」
「それなら……なぜ彼女の価値とは何なのでしょうか?」
「価値? ミーシャは素晴らしい女性だ。魔力の大小など関係ない」
「いやいや。お熱いのはけっこうだけど、メリンダが言いたいのはそういう事じゃないだろ」
「……」
少し恥ずかしい。
たしかに、この流れならそうか。
†††††
コツコツと音をたてながら洞窟を進む。
足音を極力減らす事もできる。
しかし我々はあえて大きく足音を鳴らしていた。
反響音を感知するためだ。
それはともかく……。
「帝国がミーシャさんを誘拐した具体的な理由ってなんでしょう?」
その質問には答えられない。
ヒューとアイコンタクトを取る。
「悪いな。それはさっきまでの調べりゃすぐわかる情報とは違う」
「あらあら」
「教えられないな」
「そうですか。どうぞお気になさらずに」
そうだ。
ミーシャはある特異な体質が狙われて帝国の工作員にさらわれた。
まだ完全に信用していないメリンダにそれを教えるわけにはいかない。
「とは言っても、ミーシャをさらった黒幕の帝国はな、もちろん彼女の秘密を知ってるからなあ……隠しても無意味なんだが」
早歩きで進みながらも、雑談が続く。
「マークさん……近くいますね」
突然のメリンダの一言で場に緊張が走る。
空気が変わった。
「ああ、三体。すべて私が狙いか」
「ん? マッドヴァイパーか? お前らの能力便利でいいよな」
「とにかく、一人一殺でいいな?」
「オーケー」
「わかりました」
三人とも前衛だ。
やはり作戦は大雑把。
「チーズみたいだな」
狙われているというのに、ヒューの余裕の発言。
しかしまあ言いたい事はわかる。
ランタンで照らした進行方向の岩壁には無数の大きな穴が空いていた。
「来るぞ!」
「了解」
横穴の一つ一つがマッドヴァイパーの巣か。
感知した三体は微かな這いずる音ともに近づいてきて、岩壁から頭を出す。
こんな狭い洞窟で両サイドから……。
「えっと、こいつらバカ? なんで身動き取れないのに出てきた?」
ヒューはそう言うと、即座に目の前の魔物の首を長剣で切り落とした。
断末魔をあげる間もなく、宝玉が転げ落ちる。
「この子たち……洞窟内に、いえ自分たちの巣に侵入されるのは慣れてないのかもはしれませんね」
メリンダも余裕だ。
会話しながら、例によって素手でマッドヴァイパーの額から宝玉を抜き取る。
「さて私も自分のノルマを片付けるか」
空間に穴を開けた。
穴の向こうに、絶えず帯電している鳥型の魔物が見えた。
「……!」
洞窟内に轟音が鳴り響く。
私は召喚魔法を使い、三匹目の魔物に即座にトドメを刺した。
私は即座にヒューの背中から下りる。
あんまり男同士でくっついていたくない。
「意外に天井が高いな。うーん、俺もう少し偵察する。二人はそこで待ってろ」
ヒューはそう言うと、そのままフワフワと上昇していく。
「ヒューさんのあの魔法。戦闘には不向きそうですが、偵察に便利そうです」
メリンダがカチューシャを押さえながら上を見てつぶやく。
……周囲の魔力を感知しながら答える。
「あれはこの王国でよく広まってる魔法だ。主に湿地帯で活動するために使われる」
「湿地帯……ですか」
「ああ、手練は馬車を馬ごと長時間浮遊させたりする」
「……! すごいですね、それ。例えば道が開けてない未開の土地にも物資を運んだりできます?」
「そのとおり。一説にはこのポーリサ王国がここ50年ほど急激に経済成長したのは、あの魔法のおかげなんて説もある」
「……」
メリンダは今度はポカーンと口を開けて上空を眺め始めた。
そんなに興味深いのか。
手元の炎の玉を少し上に移動させてヒューを照らし観察してる。
「驚いた。天井のくぼみに大量の骨があったぞ」
「え?」
戻ってきた。
ゆっくりと下りながら、意外な発言をしている。
「進みながら話そう」
「ああ」
スタンっと着地すると、ヒューは黒くて長い尻尾をくねらせながら先頭を歩く。
そういえばこいつ、夜目が効くのか。
「骨って動物のか?」
先ほどの発言が気になって聞いてみた。
「いや、ほとんどエルフのだな」
「エルフの骨だと?」
「魔物に食われた方々のなれの果てでしょうか?」
「俺もそう思う。おそらく何百年何千年の間に行方不明になったエルフは、ここで息絶えていた」
「マッドヴァイパーか」
先ほど自分が襲われた事を思い出す。
奴らはエルフを好んで捕食する。
「そういえば、お前と合流する前にエルフの中年と会った」
「へえ」
「彼、大丈夫かな。この洞窟のマッドヴァイパーに狙われたりしたら……」
私の心配ごとに、ヒューは呆れた顔で手を広げる。
「博識なお前らしくないな」
「え?」
「マッドヴァイパーが好むのは厳密にはエルフの肉ではないぞ。魔力の高い生物だ」
「……あっ」
「それがたまたまエルフに多いだけであってな、こんな辺境をうろついてるエルフが魔力が高いとも思えんぞ」
「ああ、思い出した。その中年の体内の魔力量は一般人と変わらなかった。魔物に狙われる事もないか」
安堵した。
まあ、それなりに長い年月を生きているエルフなら魔物への対処法くらい心得ているかもしれないが。
「そういえばミーシャさんもエルフなのに体内の魔力量が少なかったですね」
思い出したように、メリンダが語る。
「ああ、あいつはそうなんだ。生まれつき体内の魔力量が少ない」
「それなら……なぜ彼女の価値とは何なのでしょうか?」
「価値? ミーシャは素晴らしい女性だ。魔力の大小など関係ない」
「いやいや。お熱いのはけっこうだけど、メリンダが言いたいのはそういう事じゃないだろ」
「……」
少し恥ずかしい。
たしかに、この流れならそうか。
†††††
コツコツと音をたてながら洞窟を進む。
足音を極力減らす事もできる。
しかし我々はあえて大きく足音を鳴らしていた。
反響音を感知するためだ。
それはともかく……。
「帝国がミーシャさんを誘拐した具体的な理由ってなんでしょう?」
その質問には答えられない。
ヒューとアイコンタクトを取る。
「悪いな。それはさっきまでの調べりゃすぐわかる情報とは違う」
「あらあら」
「教えられないな」
「そうですか。どうぞお気になさらずに」
そうだ。
ミーシャはある特異な体質が狙われて帝国の工作員にさらわれた。
まだ完全に信用していないメリンダにそれを教えるわけにはいかない。
「とは言っても、ミーシャをさらった黒幕の帝国はな、もちろん彼女の秘密を知ってるからなあ……隠しても無意味なんだが」
早歩きで進みながらも、雑談が続く。
「マークさん……近くいますね」
突然のメリンダの一言で場に緊張が走る。
空気が変わった。
「ああ、三体。すべて私が狙いか」
「ん? マッドヴァイパーか? お前らの能力便利でいいよな」
「とにかく、一人一殺でいいな?」
「オーケー」
「わかりました」
三人とも前衛だ。
やはり作戦は大雑把。
「チーズみたいだな」
狙われているというのに、ヒューの余裕の発言。
しかしまあ言いたい事はわかる。
ランタンで照らした進行方向の岩壁には無数の大きな穴が空いていた。
「来るぞ!」
「了解」
横穴の一つ一つがマッドヴァイパーの巣か。
感知した三体は微かな這いずる音ともに近づいてきて、岩壁から頭を出す。
こんな狭い洞窟で両サイドから……。
「えっと、こいつらバカ? なんで身動き取れないのに出てきた?」
ヒューはそう言うと、即座に目の前の魔物の首を長剣で切り落とした。
断末魔をあげる間もなく、宝玉が転げ落ちる。
「この子たち……洞窟内に、いえ自分たちの巣に侵入されるのは慣れてないのかもはしれませんね」
メリンダも余裕だ。
会話しながら、例によって素手でマッドヴァイパーの額から宝玉を抜き取る。
「さて私も自分のノルマを片付けるか」
空間に穴を開けた。
穴の向こうに、絶えず帯電している鳥型の魔物が見えた。
「……!」
洞窟内に轟音が鳴り響く。
私は召喚魔法を使い、三匹目の魔物に即座にトドメを刺した。
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