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人生を破壊する存在との出会い
6話 案内の続き
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奇妙な光景になった。
仁令令菜《にれいれな》さんは大広間のど真ん中で正座をして、豚のショウガ焼きメインの朝食を食べている。
俺はお茶を出して、オーナーの明子さんは二人分の履歴書と睨めっこ。
「・・・・・・」
なんとなく観察してしまった。
仁令さん、多分かなり育ちがいい。
背筋を伸ばしてマナー良く食事をしている。
なんとなく俺より少し年下な気がするが、しっかりしてる。
「ふーん」
明子さんは履歴書をテーブルに置いた。
お茶を1口すする。
「あなたたち。経歴とか今私が口にしても大丈夫?」
まず質問された。
「かまいません」
当然そう答えた。
「はい」
仁令さんも了承する。
「2人とも遅生まれの17才。太一は来年の春には社会人・・・・・・ね」
「はい」
「・・・・・・」
意外だ。
仁令さんはタメだった。
どことなく幼げな感じがしたんだが、小柄だからかな?
「令菜はなんで高校中退したの?」
「あっ、あの」
「答えたくないときはいいんだけど」
・・・・・・高校中退してるのか。
「いえ、あの・・・・・・1年生のときにイジメにあって、それから登校拒否に」
「ん? そう。私も似たようなもんだったわ。珍しくもないよ」
「・・・・・・!」
驚いた。
こんな厚かまし・・・・・・いや、フレンドリーな人が過去にいじめられたりしてたのか。
「じゃ、二人とも明日から頼むね。今日はあと自由。ちなみに準備期間ってことで今日の日当も出すから」
「あ、はい」
と、言われても。
まだ午前9時。
明日まで何すればいいんだ?
明子さんは台所の冷蔵庫の前にいる。
「さーて、酒酒。あなたたちも飲む?」
「え?」
「いや、真面目に」
「けっこうです」
提案は丁重にお断りした。
未成年に何言ってるんですか? ってツッコミ待ちでもなかったっぽい。
仁令さんもぶんぶんと首を振る。
「あ、そうだ。トイレと風呂を案内してなかったね。ついて来て
」
明子さんはのそのそと立ち上がる。
若いのにさっきから動きが鈍い。
これはもしかして・・・・・・
「明場さん。もしかして昨日寝てない?」
質問した。
当たりのようだ。
だるそうに頷く。
「うん。本業がギリギリまで休めなくて」
「はあ」
「それはそうと太一。私をアケバって名字で呼ばないで」
缶チューハイを開けながらそう言われた。
フルーツ系の匂いが漂う。
そのままグビグビと数口飲み干してる。
俺ら案内するんじゃなかったのか。
「そのアケバって名前嫌いなの」
「はあ」
「ほら、油断するとケバッ! って聞こえるから」
「そ、そうですかね?」
「実際さっき太一も聞き間違えたでしょ」
「は、はあ」
冗談なんだか本気なんだかわからない。
さすがにもう酔っ払ったってことはないだろうが。
「よし、じゃあ私たちはこれからみんな名前で呼び合おう。それがいいわ」
「あ、はい」
「じゃあついて来、太一 令菜」
「は、はい」
そのままフラフラと移動を始めた。
大丈夫なんだろうか? この人。
†††††
そのまま風呂とトイレに案内された。
急に真冬の外に出たので身震いする。
ふと、見ると・・・・・・。
明子さんは毛皮のコート、仁令・・・・・・令菜さんはダッフルコートをいつの間にか着込んでる。
上着を置いてきたことを軽く後悔した。
「ここな」
風呂とトイレは何のことはない。
レストランランプのほうにあった。
「こっち側は従業員入り口。客はこっちの部屋へは来れないの」
だるそうに説明を続ける。
勝手口のようなドアをあけると、さらに奥に3つのドアが。
すべてにプラカードがかかってて、それぞれ 男子トイレ 女子トイレ 風呂とかかれている。
「一応トイレは男女別れてるけど、そんなこだわんなくていいわ。だけどお風呂は気をつけてね。使用中は『使用中』のカードかけて中から鍵かけるようにして」
説明の途中で明子さんは大あくびをする。
「ちょうどいいわ。私、これからシャワー使うね」
「は、はい」
「あなたたちはスキー板レンタルしてくるなり雪だるま作るなりしたら? じゃあね」
バタンと風呂の扉が閉まる。
そんなこと言われても困るんだが。
「・・・・・・」
しばらく沈黙が続く。
「あ、言い忘れてた」
「え?」
急にまた扉が開く。
って・・・・・・。
「ちょっ、明子さん。なんで脱いでるんですか?」
「バスタオルしてるでしょ」
明子さんはバスタオル一枚だけ体に羽織った姿だった。
絶対おちょくってる。
「釣りできるとこもあるから。2人ともいろいろ情報集めて楽しんでね」
またドアがバタンと閉まる。
鍵をかけた音はしない。
何を考えているんだ。
「・・・・・・」
なんとなく令菜さんと目があった。
なんだか冷ややかな目で見られてる。
「太一くん、顔真っ赤だよ」
「あっ」
「・・・・・・エッチ」
ボソッとつぶやいて令菜さんは去っていく。
なんだかやるせない気分になった。
青少年が美人のあんな姿を見せられたら、誰だって似たような反応するだろうに。
「・・・・・・・」
しかし、少し安心した。
令菜さん、ドライブインで見たときはもっと暗そうな子に見えたが・・・・・・今の様子は普通の17才の女の子と何も変わらない気がした。
†††††
結局3人とも大広間に戻っていた。
リゾート地の自由時間に引きこもるってどうなんだろう。
「・・・・・・」
風呂上りの明子さんはうつぶせに寝転びながら大きめのタブレットで何かのドラマを見ている。
確かあれ今期のトレンディドラマだ。
「それはないでしょ?」
ときに独り言を叫ぶ。
それにしても、明子さんのその恰好はどうにかならんものだろうか?
ベビードールって奴か。
それを一枚だけ着ている。
下着が見えているわけではないが、白い生足はあらわに・・・・・・。
「・・・・・・」
良かった令菜さんのほうは重装備だ。
ジーンズにパーカー。
・・・・・・そして左手首には例のリストバンド。
あの時・・・・・・ドライブインでぶつかったとき、偶然手首の傷を見てしまったことは黙っておこう。
少しの間の付き合いだ。
立ちいったことに首を突っ込むべきではない。
「・・・・・・あっ、もう!」
「・・・・・・」
令菜さんは俺のそんな思いを知るわけがない。
座椅子に座りながら、ひたすらスマホで何かのゲームをしていた。
仁令令菜《にれいれな》さんは大広間のど真ん中で正座をして、豚のショウガ焼きメインの朝食を食べている。
俺はお茶を出して、オーナーの明子さんは二人分の履歴書と睨めっこ。
「・・・・・・」
なんとなく観察してしまった。
仁令さん、多分かなり育ちがいい。
背筋を伸ばしてマナー良く食事をしている。
なんとなく俺より少し年下な気がするが、しっかりしてる。
「ふーん」
明子さんは履歴書をテーブルに置いた。
お茶を1口すする。
「あなたたち。経歴とか今私が口にしても大丈夫?」
まず質問された。
「かまいません」
当然そう答えた。
「はい」
仁令さんも了承する。
「2人とも遅生まれの17才。太一は来年の春には社会人・・・・・・ね」
「はい」
「・・・・・・」
意外だ。
仁令さんはタメだった。
どことなく幼げな感じがしたんだが、小柄だからかな?
「令菜はなんで高校中退したの?」
「あっ、あの」
「答えたくないときはいいんだけど」
・・・・・・高校中退してるのか。
「いえ、あの・・・・・・1年生のときにイジメにあって、それから登校拒否に」
「ん? そう。私も似たようなもんだったわ。珍しくもないよ」
「・・・・・・!」
驚いた。
こんな厚かまし・・・・・・いや、フレンドリーな人が過去にいじめられたりしてたのか。
「じゃ、二人とも明日から頼むね。今日はあと自由。ちなみに準備期間ってことで今日の日当も出すから」
「あ、はい」
と、言われても。
まだ午前9時。
明日まで何すればいいんだ?
明子さんは台所の冷蔵庫の前にいる。
「さーて、酒酒。あなたたちも飲む?」
「え?」
「いや、真面目に」
「けっこうです」
提案は丁重にお断りした。
未成年に何言ってるんですか? ってツッコミ待ちでもなかったっぽい。
仁令さんもぶんぶんと首を振る。
「あ、そうだ。トイレと風呂を案内してなかったね。ついて来て
」
明子さんはのそのそと立ち上がる。
若いのにさっきから動きが鈍い。
これはもしかして・・・・・・
「明場さん。もしかして昨日寝てない?」
質問した。
当たりのようだ。
だるそうに頷く。
「うん。本業がギリギリまで休めなくて」
「はあ」
「それはそうと太一。私をアケバって名字で呼ばないで」
缶チューハイを開けながらそう言われた。
フルーツ系の匂いが漂う。
そのままグビグビと数口飲み干してる。
俺ら案内するんじゃなかったのか。
「そのアケバって名前嫌いなの」
「はあ」
「ほら、油断するとケバッ! って聞こえるから」
「そ、そうですかね?」
「実際さっき太一も聞き間違えたでしょ」
「は、はあ」
冗談なんだか本気なんだかわからない。
さすがにもう酔っ払ったってことはないだろうが。
「よし、じゃあ私たちはこれからみんな名前で呼び合おう。それがいいわ」
「あ、はい」
「じゃあついて来、太一 令菜」
「は、はい」
そのままフラフラと移動を始めた。
大丈夫なんだろうか? この人。
†††††
そのまま風呂とトイレに案内された。
急に真冬の外に出たので身震いする。
ふと、見ると・・・・・・。
明子さんは毛皮のコート、仁令・・・・・・令菜さんはダッフルコートをいつの間にか着込んでる。
上着を置いてきたことを軽く後悔した。
「ここな」
風呂とトイレは何のことはない。
レストランランプのほうにあった。
「こっち側は従業員入り口。客はこっちの部屋へは来れないの」
だるそうに説明を続ける。
勝手口のようなドアをあけると、さらに奥に3つのドアが。
すべてにプラカードがかかってて、それぞれ 男子トイレ 女子トイレ 風呂とかかれている。
「一応トイレは男女別れてるけど、そんなこだわんなくていいわ。だけどお風呂は気をつけてね。使用中は『使用中』のカードかけて中から鍵かけるようにして」
説明の途中で明子さんは大あくびをする。
「ちょうどいいわ。私、これからシャワー使うね」
「は、はい」
「あなたたちはスキー板レンタルしてくるなり雪だるま作るなりしたら? じゃあね」
バタンと風呂の扉が閉まる。
そんなこと言われても困るんだが。
「・・・・・・」
しばらく沈黙が続く。
「あ、言い忘れてた」
「え?」
急にまた扉が開く。
って・・・・・・。
「ちょっ、明子さん。なんで脱いでるんですか?」
「バスタオルしてるでしょ」
明子さんはバスタオル一枚だけ体に羽織った姿だった。
絶対おちょくってる。
「釣りできるとこもあるから。2人ともいろいろ情報集めて楽しんでね」
またドアがバタンと閉まる。
鍵をかけた音はしない。
何を考えているんだ。
「・・・・・・」
なんとなく令菜さんと目があった。
なんだか冷ややかな目で見られてる。
「太一くん、顔真っ赤だよ」
「あっ」
「・・・・・・エッチ」
ボソッとつぶやいて令菜さんは去っていく。
なんだかやるせない気分になった。
青少年が美人のあんな姿を見せられたら、誰だって似たような反応するだろうに。
「・・・・・・・」
しかし、少し安心した。
令菜さん、ドライブインで見たときはもっと暗そうな子に見えたが・・・・・・今の様子は普通の17才の女の子と何も変わらない気がした。
†††††
結局3人とも大広間に戻っていた。
リゾート地の自由時間に引きこもるってどうなんだろう。
「・・・・・・」
風呂上りの明子さんはうつぶせに寝転びながら大きめのタブレットで何かのドラマを見ている。
確かあれ今期のトレンディドラマだ。
「それはないでしょ?」
ときに独り言を叫ぶ。
それにしても、明子さんのその恰好はどうにかならんものだろうか?
ベビードールって奴か。
それを一枚だけ着ている。
下着が見えているわけではないが、白い生足はあらわに・・・・・・。
「・・・・・・」
良かった令菜さんのほうは重装備だ。
ジーンズにパーカー。
・・・・・・そして左手首には例のリストバンド。
あの時・・・・・・ドライブインでぶつかったとき、偶然手首の傷を見てしまったことは黙っておこう。
少しの間の付き合いだ。
立ちいったことに首を突っ込むべきではない。
「・・・・・・あっ、もう!」
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