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第七部
選び抜かれた使用人
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メサリアさんの要望をふんだんに取り入れた、ヒノマル本拠地の建設が始まった。こっちは俺たちの家ほどこだわりはないので、さくさくと出来上がっていく。
そして合間にスマホに連絡が入れば、小さい次元の穴を開いて奴隷たちをこっそり鑑定していくのだ。
「なんか珍しいスキル持ちはいたか?」
休憩の合間に次元の穴を覗き終わったところで、スルメイカを咥えたイヴァンが声を掛けてきた。
「掘り出し物のスキル持ちは思ったよりいたかも」
すでに十か所以上の奴隷商の奴隷を確認している。もう数えるのが面倒になったけど、二百人くらいは見たかもしれない。
スキルを持っていれば高く売れるんだから、それなりに奴隷商側で奴隷の特技は把握できていると思ってたけどそうでもなかった。
よく考えればこの世界では、水晶に触れると職業が判明するシステムだ。しかし職業が表示される確率は半分以下みたいで、何が得意なのかわからない人間のほうが多いのだ。
それに職業が出たとしても、持っているスキルから一番適性のありそうなものが出るだけに過ぎない。いろんなことができそうな人間は鑑定してみなければわからないのだ。
もちろん鑑定スキル持ちの人間もいるだろうが、スキルまで見えるほど鑑定を極めた人間は相当珍しいはずだ。少なくとも俺は師匠以外には知らない。
「へぇ」
「だから予定より人数多めにこっちに来るかもね」
「そうなのか?」
「ヒノマルも人材不足みたいだからね。使えそうな奴隷がいるなら全員買うんだって」
誰のせいで人材不足になっているのかには言及せず、事実だけを伝えると。
「ふーん。大変なんだな」
酒燗器からお猪口に日本酒を注いでいるイヴァンには、そこまで興味はなさそうだ。
実際に俺も、最初はこんなスキル持ちがいるのかと思ってたけど、さすがにもう飽きてきた。テーブルに広げたポテチを食べながら今後の作業を思い浮かべる。
「まぁねぇ。だから奴隷……、というか従業員用の寮も作らないといけなくて」
「そんなことになってんのか」
「建物はすぐできるからいいんだけど、まぁどっちにしろメサリアさんに相談してよかったよ」
「なんだよそれ」
「いやだって、自分でやってたら、人が来てから寝る場所がないってなりそうじゃね?」
だいたいのことはやってみたらなんとかなると思っている俺である。いろいろと計画性がないもんだと改めて自覚したくらいだ。
「わかっててメサリアさんに相談できてるなら大丈夫じゃない?」
「そういうもんかな」
莉緒が慰めてくれるけど、そういうものかもしれない。適材適所という言葉もあるし、俺には俺しかできないことをやれればいいということか。
「そうそう」
「まぁいいんじゃね?」
などと緩い感じで拠点の構築が進んでいく。
そしてまた数日後、ついに奴隷の第一弾グループが訪れる日がやってきた。この日のためにダンジョンのクリエイトメニューから、ダンジョンの入り口を利用できる鍵を作り出している。使用人だけが使える出入口のみを許可した鍵だ。
制服も職種ごとにおそろいの物を日本の衣料店で揃えている。やはり同じものをたくさんそろえるには、服を全部手作りしているこの世界では無理だ。
「「「「よ、よろしくお願いします!」」」」
ガチガチに緊張した奴隷たちが整列して挨拶する。
大陸の主要な街から集められただけあって、十代から四十代くらいまでの様々な人種が揃っている。しかし二十人くらいいるので全部覚えられたもんじゃない。
「今日からお仕えすることになるご主人さまです。くれぐれも失礼のないように」
「「「「はい!」」」」
「えーっと水本柊です。よろしく」
なお、奴隷たちの前に立たされているのは俺だけだ。莉緒も含めて他のメンバーは前面に立ってくれなかった。
基本的にはメサリアさんが主導で話をするので、俺は立ってるだけだが。
メサリアさんが俺たちの家の使用人とヒノマルの従業員などに人員を分けると、俺の前には六人が残った。
「では改めて。執事をさせていただくセバスチャン・ウィンスローと申します」
「メイドのグレース・モリスですわ」
「は、え、はい、同じくメイドのハンナ・キングスレイです」
「料理人のフランク・ウェバーだ」
「あたしも料理人らしいけど、レイチェルって言います」
「庭いじりが趣味のサムエルじゃ」
家名持ちは没落したり、家督を継げなかった三子以降で借金を抱えたりした貴族とのこと。さすがにスキルを多く持つ者は貴族に多いということなのかもしれない。
ロマンスグレーのセバスチャン。できるおばちゃんメイド長と言った雰囲気のグレース。メイド見習いな雰囲気のハンナ。頑固そうな料理人フランク。街の料理屋でウェイトレスをしていたというレイチェル。最後に見た目はマッチョでのんびり爺さん口調な唯一の兎人族のサムエルだ。
メサリアさんに言われて揃えてみたけど、思ったより大所帯になった気がする。この六人は俺以外にも顔を合わせることも多いので、皆も改めて自己紹介をした。
一応正しい知識を知っていて欲しかったので、ニルがSランクの魔物のフローズヴィトニルであることや、フォニアもSランクの魔物、妖狐であることを伝えると顔を青くしていた。
そしてこの六人の職場となる俺たちの家を案内することとなった。
そして合間にスマホに連絡が入れば、小さい次元の穴を開いて奴隷たちをこっそり鑑定していくのだ。
「なんか珍しいスキル持ちはいたか?」
休憩の合間に次元の穴を覗き終わったところで、スルメイカを咥えたイヴァンが声を掛けてきた。
「掘り出し物のスキル持ちは思ったよりいたかも」
すでに十か所以上の奴隷商の奴隷を確認している。もう数えるのが面倒になったけど、二百人くらいは見たかもしれない。
スキルを持っていれば高く売れるんだから、それなりに奴隷商側で奴隷の特技は把握できていると思ってたけどそうでもなかった。
よく考えればこの世界では、水晶に触れると職業が判明するシステムだ。しかし職業が表示される確率は半分以下みたいで、何が得意なのかわからない人間のほうが多いのだ。
それに職業が出たとしても、持っているスキルから一番適性のありそうなものが出るだけに過ぎない。いろんなことができそうな人間は鑑定してみなければわからないのだ。
もちろん鑑定スキル持ちの人間もいるだろうが、スキルまで見えるほど鑑定を極めた人間は相当珍しいはずだ。少なくとも俺は師匠以外には知らない。
「へぇ」
「だから予定より人数多めにこっちに来るかもね」
「そうなのか?」
「ヒノマルも人材不足みたいだからね。使えそうな奴隷がいるなら全員買うんだって」
誰のせいで人材不足になっているのかには言及せず、事実だけを伝えると。
「ふーん。大変なんだな」
酒燗器からお猪口に日本酒を注いでいるイヴァンには、そこまで興味はなさそうだ。
実際に俺も、最初はこんなスキル持ちがいるのかと思ってたけど、さすがにもう飽きてきた。テーブルに広げたポテチを食べながら今後の作業を思い浮かべる。
「まぁねぇ。だから奴隷……、というか従業員用の寮も作らないといけなくて」
「そんなことになってんのか」
「建物はすぐできるからいいんだけど、まぁどっちにしろメサリアさんに相談してよかったよ」
「なんだよそれ」
「いやだって、自分でやってたら、人が来てから寝る場所がないってなりそうじゃね?」
だいたいのことはやってみたらなんとかなると思っている俺である。いろいろと計画性がないもんだと改めて自覚したくらいだ。
「わかっててメサリアさんに相談できてるなら大丈夫じゃない?」
「そういうもんかな」
莉緒が慰めてくれるけど、そういうものかもしれない。適材適所という言葉もあるし、俺には俺しかできないことをやれればいいということか。
「そうそう」
「まぁいいんじゃね?」
などと緩い感じで拠点の構築が進んでいく。
そしてまた数日後、ついに奴隷の第一弾グループが訪れる日がやってきた。この日のためにダンジョンのクリエイトメニューから、ダンジョンの入り口を利用できる鍵を作り出している。使用人だけが使える出入口のみを許可した鍵だ。
制服も職種ごとにおそろいの物を日本の衣料店で揃えている。やはり同じものをたくさんそろえるには、服を全部手作りしているこの世界では無理だ。
「「「「よ、よろしくお願いします!」」」」
ガチガチに緊張した奴隷たちが整列して挨拶する。
大陸の主要な街から集められただけあって、十代から四十代くらいまでの様々な人種が揃っている。しかし二十人くらいいるので全部覚えられたもんじゃない。
「今日からお仕えすることになるご主人さまです。くれぐれも失礼のないように」
「「「「はい!」」」」
「えーっと水本柊です。よろしく」
なお、奴隷たちの前に立たされているのは俺だけだ。莉緒も含めて他のメンバーは前面に立ってくれなかった。
基本的にはメサリアさんが主導で話をするので、俺は立ってるだけだが。
メサリアさんが俺たちの家の使用人とヒノマルの従業員などに人員を分けると、俺の前には六人が残った。
「では改めて。執事をさせていただくセバスチャン・ウィンスローと申します」
「メイドのグレース・モリスですわ」
「は、え、はい、同じくメイドのハンナ・キングスレイです」
「料理人のフランク・ウェバーだ」
「あたしも料理人らしいけど、レイチェルって言います」
「庭いじりが趣味のサムエルじゃ」
家名持ちは没落したり、家督を継げなかった三子以降で借金を抱えたりした貴族とのこと。さすがにスキルを多く持つ者は貴族に多いということなのかもしれない。
ロマンスグレーのセバスチャン。できるおばちゃんメイド長と言った雰囲気のグレース。メイド見習いな雰囲気のハンナ。頑固そうな料理人フランク。街の料理屋でウェイトレスをしていたというレイチェル。最後に見た目はマッチョでのんびり爺さん口調な唯一の兎人族のサムエルだ。
メサリアさんに言われて揃えてみたけど、思ったより大所帯になった気がする。この六人は俺以外にも顔を合わせることも多いので、皆も改めて自己紹介をした。
一応正しい知識を知っていて欲しかったので、ニルがSランクの魔物のフローズヴィトニルであることや、フォニアもSランクの魔物、妖狐であることを伝えると顔を青くしていた。
そしてこの六人の職場となる俺たちの家を案内することとなった。
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