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閑話(第六部)
閑話1 メサリア
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「シュウ様。ようこそおいでくださいました」
いつものように仕事をしていると、ふと気配を感じたので迎えに行けば案の定でした。我が情報ギルドのグランドマスターであるシュウ様が、テレポートの魔法で本部へとやってきました。
「ああ、ちょっと実験をしたくてね」
「実験……、ですか?」
いつものようにギルドの運営資金を受け取りつつ、シュウ様の言葉を繰り返す。たまにとんでもないことをなさるので、油断がならないのです。
「そうそう。えーっと……」
ここはフェアリィバレイにある妖精の宿の一室。シュウ様がテレポートで訪れるための部屋です。独り言をつぶやきながら壁際へと歩いていくと、シュウ様が何かを始めました。
「ん? おお? なんかできそう?」
いったい何ができそうなんでしょうか。期待と不安が半分ずつ入り混じって膨れ上がってきます。
「えっ?」
と思っていたら、目の前の壁にいきなり扉ができてしまいました。
「思ったより簡単にできたなぁ」
しかしシュウ様はそう一言だけ呟くと扉の向こう側に消えてしまいます。ちゃんと説明はしてくれると思いますが、少しだけ不安です。さすがにこのまま放置はないと思いたいです。
それにしても壁の向こう側は廊下だったはずなんですが、薄暗い石造りの通路のようなものが見えてしまいました。変なところと繋がってなければいいのですが……。
とりあえず受け取った資金を確認しようと、袋の口を開けて中身を確認してみました。今回も十億フロンの価値があるミスリル貨が一枚混じっています。両替にも苦労するのですが仕方がありません。
組織を運営しているわたしなどより、一個人の冒険者として動いているシュウ様のほうが、ミスリル貨を使う機会などないでしょう。
気が付けばシュウ様が扉から戻ってきています。何やら枝がいっぱいついている箱のようなものを手に持っていらっしゃいますが、あれは何でしょうか。扉から二本ほど紐のようなものが伸びていて箱に繋がっています。
「……お、繋がった」
手元ですまほを操作して満足そうにしていらっしゃいます。あれはわたしたちに配られたものと違うすまほでしょうか。確かその場の景色を一瞬で切り取れる機能があったはず。それがあれば我らが情報ギルドの仕事も飛躍的に捗りそうです。
「実験はうまくいきましたか?」
あまりにも気になりすぎたので、シュウ様の作業がひと段落付いたと思うところで声を掛けてしまいました。
「ん? ああ、すまん、問題なしだ」
「もしかして、シュウ様のそのすまほが使えるようになったので……?」
恐る恐る尋ねてみると、ニヤリとした笑みが返ってきたのでわたしの予感は正しかったのでしょう。
「そうだな。これでここにいても撮った写真をすぐに送れるようになったぞ。といっても無線の範囲はそんなに広くないから、ここから五十メートルも離れたら繋がらないかもしれないけど」
なんということでしょう。まさに思った通り仕事が捗りそうではありませんか。
「ああそれと、今俺たちが拠点にしてる街とここも繋がったから行き来が楽になったぞ」
「……は?」
「ほら、この扉の通路のすぐ向こう側だ」
そうでした。扉ができたんでした。すまほのせいで意識の外にいってしまっていました。
「……その扉はなんなんでしょうか。いきなりできたように見えましたが」
シュウ様が作り出した扉ということはわかりますが、今シュウ様が拠点にしている場所と繋がった? 確かフェアデヘルデ王国にいらっしゃったはずですよね。
え? それが扉一つで繋がった?
もうわけがわかりません。
「あー、そうだな。最初から説明しないとだな」
ええ、もちろんですとも。すぐさま連絡が取れるようになるすまほが配付されてから、わたしたちの組織が飛躍的に大きくなってきています。それが、扉をくぐるだけで遠く離れた地にも行けるようになるのですか?
「これはダンジョンなんだ」
「……え?」
ダンジョン?
「…………………………ええ?」
一瞬頭が真っ白になってしまいました。ダンジョンとは、お宝と魔物があふれるあのダンジョンでしょうか。そんな恐ろしいものがこの妖精の宿に……、と思いましたが、シュウ様がそんなことをするはずもありません。
「今すぐ他の拠点にもダンジョンの入り口を作ってください」
ダンジョンを操れるようになったというシュウ様の話を理解した瞬間、無意識にそう言葉にしていました。すまほで情報だけでなく、人員や物資まですぐに送れるではありませんか!
「さあ行きましょう。すぐに行きましょう!」
「あ、はい」
確かすまほを配った地域であればシュウ様はテレポートで飛べるはずです。戸惑うシュウ様の腕を取ると即行動です。
「各地から人員を集めてフェアデヘルデ王国の王都に送り込みましょう。シュウ様が今求めている情報を最速で手に入れます」
「あ、ああ、よろしく頼んだ」
シュウ様へそう告げると、戸惑いつつも今すぐ動くことに納得してくれたご様子です。大陸各地の拠点に配布したすまほへと向けて一緒に転移し、ダンジョンの入り口を作成して繋げて回っていただきました。
さらに後日配付されたニホン製の「すまほ」と「のーとぱそこん」のおかげで情報収集がさらに捗ったのは言うまでもありません。
わたしもニホン語を早急に覚える必要がありそうです。
いつものように仕事をしていると、ふと気配を感じたので迎えに行けば案の定でした。我が情報ギルドのグランドマスターであるシュウ様が、テレポートの魔法で本部へとやってきました。
「ああ、ちょっと実験をしたくてね」
「実験……、ですか?」
いつものようにギルドの運営資金を受け取りつつ、シュウ様の言葉を繰り返す。たまにとんでもないことをなさるので、油断がならないのです。
「そうそう。えーっと……」
ここはフェアリィバレイにある妖精の宿の一室。シュウ様がテレポートで訪れるための部屋です。独り言をつぶやきながら壁際へと歩いていくと、シュウ様が何かを始めました。
「ん? おお? なんかできそう?」
いったい何ができそうなんでしょうか。期待と不安が半分ずつ入り混じって膨れ上がってきます。
「えっ?」
と思っていたら、目の前の壁にいきなり扉ができてしまいました。
「思ったより簡単にできたなぁ」
しかしシュウ様はそう一言だけ呟くと扉の向こう側に消えてしまいます。ちゃんと説明はしてくれると思いますが、少しだけ不安です。さすがにこのまま放置はないと思いたいです。
それにしても壁の向こう側は廊下だったはずなんですが、薄暗い石造りの通路のようなものが見えてしまいました。変なところと繋がってなければいいのですが……。
とりあえず受け取った資金を確認しようと、袋の口を開けて中身を確認してみました。今回も十億フロンの価値があるミスリル貨が一枚混じっています。両替にも苦労するのですが仕方がありません。
組織を運営しているわたしなどより、一個人の冒険者として動いているシュウ様のほうが、ミスリル貨を使う機会などないでしょう。
気が付けばシュウ様が扉から戻ってきています。何やら枝がいっぱいついている箱のようなものを手に持っていらっしゃいますが、あれは何でしょうか。扉から二本ほど紐のようなものが伸びていて箱に繋がっています。
「……お、繋がった」
手元ですまほを操作して満足そうにしていらっしゃいます。あれはわたしたちに配られたものと違うすまほでしょうか。確かその場の景色を一瞬で切り取れる機能があったはず。それがあれば我らが情報ギルドの仕事も飛躍的に捗りそうです。
「実験はうまくいきましたか?」
あまりにも気になりすぎたので、シュウ様の作業がひと段落付いたと思うところで声を掛けてしまいました。
「ん? ああ、すまん、問題なしだ」
「もしかして、シュウ様のそのすまほが使えるようになったので……?」
恐る恐る尋ねてみると、ニヤリとした笑みが返ってきたのでわたしの予感は正しかったのでしょう。
「そうだな。これでここにいても撮った写真をすぐに送れるようになったぞ。といっても無線の範囲はそんなに広くないから、ここから五十メートルも離れたら繋がらないかもしれないけど」
なんということでしょう。まさに思った通り仕事が捗りそうではありませんか。
「ああそれと、今俺たちが拠点にしてる街とここも繋がったから行き来が楽になったぞ」
「……は?」
「ほら、この扉の通路のすぐ向こう側だ」
そうでした。扉ができたんでした。すまほのせいで意識の外にいってしまっていました。
「……その扉はなんなんでしょうか。いきなりできたように見えましたが」
シュウ様が作り出した扉ということはわかりますが、今シュウ様が拠点にしている場所と繋がった? 確かフェアデヘルデ王国にいらっしゃったはずですよね。
え? それが扉一つで繋がった?
もうわけがわかりません。
「あー、そうだな。最初から説明しないとだな」
ええ、もちろんですとも。すぐさま連絡が取れるようになるすまほが配付されてから、わたしたちの組織が飛躍的に大きくなってきています。それが、扉をくぐるだけで遠く離れた地にも行けるようになるのですか?
「これはダンジョンなんだ」
「……え?」
ダンジョン?
「…………………………ええ?」
一瞬頭が真っ白になってしまいました。ダンジョンとは、お宝と魔物があふれるあのダンジョンでしょうか。そんな恐ろしいものがこの妖精の宿に……、と思いましたが、シュウ様がそんなことをするはずもありません。
「今すぐ他の拠点にもダンジョンの入り口を作ってください」
ダンジョンを操れるようになったというシュウ様の話を理解した瞬間、無意識にそう言葉にしていました。すまほで情報だけでなく、人員や物資まですぐに送れるではありませんか!
「さあ行きましょう。すぐに行きましょう!」
「あ、はい」
確かすまほを配った地域であればシュウ様はテレポートで飛べるはずです。戸惑うシュウ様の腕を取ると即行動です。
「各地から人員を集めてフェアデヘルデ王国の王都に送り込みましょう。シュウ様が今求めている情報を最速で手に入れます」
「あ、ああ、よろしく頼んだ」
シュウ様へそう告げると、戸惑いつつも今すぐ動くことに納得してくれたご様子です。大陸各地の拠点に配布したすまほへと向けて一緒に転移し、ダンジョンの入り口を作成して繋げて回っていただきました。
さらに後日配付されたニホン製の「すまほ」と「のーとぱそこん」のおかげで情報収集がさらに捗ったのは言うまでもありません。
わたしもニホン語を早急に覚える必要がありそうです。
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