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第六部
裁判の開始
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「へぇ、確かにそのほうが早く終わるかもしれないわね」
「強制召喚って……」
謁見の間の入り口にいた莉緒たちへ説明すると、莉緒は納得したみたいだがイヴァンが気の毒そうな顔をしている。
みんなで謁見の間に入ってすぐ横に避けると、改めて部屋の中を見回していく。国王がいろいろと指示を出しているようで、幾人かの貴族がこちらを避けながら謁見の間を出入りしている。TYPEシリーズに押さえつけられている大臣は放置されたままだが、特に何も言われないのでそのままにしておこう。しばらくそこで反省しているといい。
「騎士を全員解放してもらえぬじゃろうか。不届き者が城内に入り込んだと連絡があったのでな。警備に回したい」
誰も寄り付かない俺たちの周囲だったが、国王が周囲の声を振り切ってこちらにやってきた。
「そういうことなら」
俺たちの突入に便乗した奴らでもいるんだろうか。そういえば犯罪組織もあったな。もしかするとレジスタンス組織もあるかもしれないが、俺たちには関係ない。
っと、そろそろ最初の鳥TYPEが到着しそうだな。
「ちょっとそこ危ないんで失礼しますよっと」
騎士を開放しつつ、国王を魔法で掴んで横へとずらす。
「むっ?」
身構えた国王が反応してすぐあとに、謁見の間を出た廊下の反対側の壁が破壊されて吹き飛んだ。破片が飛び散らないように結界を張って受け止める。壁を突き破った鳥TYPEが廊下へ降り立つと、足でがっちり捕まえられていた男からうめき声が漏れる。
「おっと、さっそく審議官長官殿がやってきたようですよ」
王城から一番近いのが審議官邸だ。この調子だと次に来るのは男爵になりそうだなと考えていると、国王の顔が引きつっていた。
「ちょ、おまっ、なんつーことを……」
「あっはははは!」
イヴァンも顔を引きつらせているが、勢いはないながらもしっかりツッコミを入れている。莉緒には受けたようだが、フォニアはよくわかってないようで「鳥さん来た」と喜んでいる。
あ、こら、ニル、長官をツンツンするのはばっちいからやめなさい。気絶してるっぽいからいいけど、起きたらうるさそうじゃないか。
「あと二人ももうすぐ到着すると思うので」
「っ!? そ、そうか」
固まったままだった国王が正気を取り戻すと、慌てて他の大臣へと指示を出している。召喚状の作成も急かしてるようだが、早くできるのならそれに越したことはない。
檻に入れて連れてきた奴らは騎士に外へ連れ出されているが、TYPEシリーズに捕まっている者の中には助けを求めて喚く者もいるが、俺は開放する気はないし騎士たちも相手にしていない。
「はぁ……。もうすぐ来るというのであれば、その前にひとつ確認させてくれ」
一通り指示を出し終えた後、国王が大きくため息をついてやってきた。どうやら俺に罪が着せられた経緯を教えて欲しいらしい。宰相はうその報告をしていたらしいので、真相は知らないのだろう。
それに誰にも邪魔されることなく話が聞けるのは今のうちだ。
ざっくりと今までの経緯を説明すれば、国王から大きなため息が漏れる。
「久しぶりに聞いたSランク冒険者じゃったから記憶に残っていたが、あきれてものも言えん」
聞けばその程度では罪になるものではないらしい。そもそもこの国の国民ではないので、貴族の命令を聞く必要もないと。そんな気はしたが、予想は正しかったわけだ。
「本当に申し訳ないことをした。国王としてこの通り謝罪する。……宰相含めて四人はしっかりと罪人として裁くので、穏便に済ませてもらえんじゃろうか」
すでに穏便ではなくなっている気はするが、恐らくこれ以上暴れるなということだろう。ここに来るまでに真正面から人や城をぶっ飛ばしているので、割と気は済んでいると言える。
そして気が済んだのであれば、この後のやり取りが徐々に面倒だなと思い始めてもいるのも事実だ。
「へぇ、そこまで言うのであれば、この先どうなるか見させてもらいます」
「もちろんじゃ」
しばらくすれば召喚状もできあがったようだ。国王が玉座に座り、そばにある小さな台の上で召喚状にサインを入れている。
残りの男爵と審議官の二人も鳥TYPEによって強制登城させられており、謁見の間の手前で放心している。というか壊された壁やTYPEシリーズの威容を見て、青い顔をしているな。
「もうそこにいるじゃろうが、これを届けてきてくれ」
「はっ」
国王が声を掛けると騎士が一人召喚状を受け取って、謁見の間の前で呆然とする三人へと手渡しに走る。そのうち三人もここにやってくるだろう。
玉座に国王が座り、その傍には数人の大臣と騎士が配置についている。そして謁見の間の中央を挟んで左側に俺たち、反対側にはTYPEシリーズと押さえつけられた大臣たちだ。
そんな布陣になっている謁見の間に、召喚状を受け取った三人が壊れた扉をくぐって入ってきた。
「こ、この状況はいったい……」
俺たちが視界に入ったタイミングで足を止めた三人だったが、何も言わない国王を見て部屋の中央へとゆっくり進んでくる。
「そ、そうですぞ! 急に襲われたと思ったら……!」
「城が魔物に占拠されているではないですか!?」
俺たちはともかく、TYPEシリーズが平然としているのは異様だったようだ。自分たちが襲われたわけだし、わからなくもない。しかも国王も何も言わないとなれば沈黙に耐えられなかったのか、騒ぎ出してしまう三人だ。
「静粛に!」
国王の傍に控えていた大臣が、いつまでたっても口を閉じない三人に青筋を浮かべながら叫ぶ。
さすがに騒いでいる場合ではないと気が付いたのか、場が一気に静かになる。
「これより緊急裁判を行う!」
「「「え?」」」
国王の宣言に、三人の間抜け声が謁見の間に響き渡った。
「強制召喚って……」
謁見の間の入り口にいた莉緒たちへ説明すると、莉緒は納得したみたいだがイヴァンが気の毒そうな顔をしている。
みんなで謁見の間に入ってすぐ横に避けると、改めて部屋の中を見回していく。国王がいろいろと指示を出しているようで、幾人かの貴族がこちらを避けながら謁見の間を出入りしている。TYPEシリーズに押さえつけられている大臣は放置されたままだが、特に何も言われないのでそのままにしておこう。しばらくそこで反省しているといい。
「騎士を全員解放してもらえぬじゃろうか。不届き者が城内に入り込んだと連絡があったのでな。警備に回したい」
誰も寄り付かない俺たちの周囲だったが、国王が周囲の声を振り切ってこちらにやってきた。
「そういうことなら」
俺たちの突入に便乗した奴らでもいるんだろうか。そういえば犯罪組織もあったな。もしかするとレジスタンス組織もあるかもしれないが、俺たちには関係ない。
っと、そろそろ最初の鳥TYPEが到着しそうだな。
「ちょっとそこ危ないんで失礼しますよっと」
騎士を開放しつつ、国王を魔法で掴んで横へとずらす。
「むっ?」
身構えた国王が反応してすぐあとに、謁見の間を出た廊下の反対側の壁が破壊されて吹き飛んだ。破片が飛び散らないように結界を張って受け止める。壁を突き破った鳥TYPEが廊下へ降り立つと、足でがっちり捕まえられていた男からうめき声が漏れる。
「おっと、さっそく審議官長官殿がやってきたようですよ」
王城から一番近いのが審議官邸だ。この調子だと次に来るのは男爵になりそうだなと考えていると、国王の顔が引きつっていた。
「ちょ、おまっ、なんつーことを……」
「あっはははは!」
イヴァンも顔を引きつらせているが、勢いはないながらもしっかりツッコミを入れている。莉緒には受けたようだが、フォニアはよくわかってないようで「鳥さん来た」と喜んでいる。
あ、こら、ニル、長官をツンツンするのはばっちいからやめなさい。気絶してるっぽいからいいけど、起きたらうるさそうじゃないか。
「あと二人ももうすぐ到着すると思うので」
「っ!? そ、そうか」
固まったままだった国王が正気を取り戻すと、慌てて他の大臣へと指示を出している。召喚状の作成も急かしてるようだが、早くできるのならそれに越したことはない。
檻に入れて連れてきた奴らは騎士に外へ連れ出されているが、TYPEシリーズに捕まっている者の中には助けを求めて喚く者もいるが、俺は開放する気はないし騎士たちも相手にしていない。
「はぁ……。もうすぐ来るというのであれば、その前にひとつ確認させてくれ」
一通り指示を出し終えた後、国王が大きくため息をついてやってきた。どうやら俺に罪が着せられた経緯を教えて欲しいらしい。宰相はうその報告をしていたらしいので、真相は知らないのだろう。
それに誰にも邪魔されることなく話が聞けるのは今のうちだ。
ざっくりと今までの経緯を説明すれば、国王から大きなため息が漏れる。
「久しぶりに聞いたSランク冒険者じゃったから記憶に残っていたが、あきれてものも言えん」
聞けばその程度では罪になるものではないらしい。そもそもこの国の国民ではないので、貴族の命令を聞く必要もないと。そんな気はしたが、予想は正しかったわけだ。
「本当に申し訳ないことをした。国王としてこの通り謝罪する。……宰相含めて四人はしっかりと罪人として裁くので、穏便に済ませてもらえんじゃろうか」
すでに穏便ではなくなっている気はするが、恐らくこれ以上暴れるなということだろう。ここに来るまでに真正面から人や城をぶっ飛ばしているので、割と気は済んでいると言える。
そして気が済んだのであれば、この後のやり取りが徐々に面倒だなと思い始めてもいるのも事実だ。
「へぇ、そこまで言うのであれば、この先どうなるか見させてもらいます」
「もちろんじゃ」
しばらくすれば召喚状もできあがったようだ。国王が玉座に座り、そばにある小さな台の上で召喚状にサインを入れている。
残りの男爵と審議官の二人も鳥TYPEによって強制登城させられており、謁見の間の手前で放心している。というか壊された壁やTYPEシリーズの威容を見て、青い顔をしているな。
「もうそこにいるじゃろうが、これを届けてきてくれ」
「はっ」
国王が声を掛けると騎士が一人召喚状を受け取って、謁見の間の前で呆然とする三人へと手渡しに走る。そのうち三人もここにやってくるだろう。
玉座に国王が座り、その傍には数人の大臣と騎士が配置についている。そして謁見の間の中央を挟んで左側に俺たち、反対側にはTYPEシリーズと押さえつけられた大臣たちだ。
そんな布陣になっている謁見の間に、召喚状を受け取った三人が壊れた扉をくぐって入ってきた。
「こ、この状況はいったい……」
俺たちが視界に入ったタイミングで足を止めた三人だったが、何も言わない国王を見て部屋の中央へとゆっくり進んでくる。
「そ、そうですぞ! 急に襲われたと思ったら……!」
「城が魔物に占拠されているではないですか!?」
俺たちはともかく、TYPEシリーズが平然としているのは異様だったようだ。自分たちが襲われたわけだし、わからなくもない。しかも国王も何も言わないとなれば沈黙に耐えられなかったのか、騒ぎ出してしまう三人だ。
「静粛に!」
国王の傍に控えていた大臣が、いつまでたっても口を閉じない三人に青筋を浮かべながら叫ぶ。
さすがに騒いでいる場合ではないと気が付いたのか、場が一気に静かになる。
「これより緊急裁判を行う!」
「「「え?」」」
国王の宣言に、三人の間抜け声が謁見の間に響き渡った。
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