成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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第六部

介入

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 やがて魔の森からメタルドラゴンサーペントが現れたのが見えた。

「うわー、思ったより大きいわね」

「あれくらい大きいと、二、三メートルくらいの魔物なら丸呑みできそうだな」

 直径一メートルほどだが、蛇の口は思ったよりも開くのだ。

「……人間も余裕で食べられるわね」

「そうなったら助けに行くしかないな」

 苦笑いしながら呟く莉緒に肩をすくめる。丸呑みだったら、食べられた少し後でも間に合いそうだ。

 冒険者たちが待ち構えていたことに気づいた蛇は鎌首をもたげると、武器を持って構える人間たちを見下ろして警戒している。
 その静寂を破ったのは斜め前方から放たれた魔法だ。直径一メートルを超える炎の弾が高速で蛇の頭に迫る。時間差で反対側からも弓矢が飛び、後方の森の中からも巨大なメイスを構えた冒険者が飛び出してきた。

「おー、始まった始まった」

「思ったよりやるじゃない」

 Aランク冒険者パーティは全部で十三人、軍から派遣されてきたのは五十人くらいだろうか。普段の冒険者たちの戦いを見たことがないので何とも言えないが、やっぱり動きにくそうにしているように見える。

「そうかな?」

「えーっと、軍隊のほうね」

「ああ、そっちか」

 確かに、魔物を相手にするのは苦手と聞いていたけど、それほどとは感じなかった。軍の中でも精鋭部隊なのかもしれない。とはいえ冒険者たちほどじゃない。やっぱり邪魔しているように見えるのは間違いではないと思う。
 しばらくすると軍人の数人が吹き飛ばされてリタイアする者がではじめる。魔法は使ってこないが、とにかく表皮が硬くてひたすら物理で攻めてくる魔物だ。各種耐性も持っていてなかなかダメージを与えられない。切れ味がよさそうに思えた冒険者の刀も通じていないようだ。

「なかなか防御を突破できなさそうだな」

「そうねぇ。……大丈夫かしら?」

 そろそろ戦闘開始から三十分は経過しただろうか。軍隊の半数がリタイアしたころに、森の奥からレッドアントの群れが姿を現した。

「おっと、魔物の援軍だぞ」

「あらら、ちょっとこれは厳しいんじゃ……」

 未だに致命打を与えられていない状況で援軍はきついだろう。さらにレッドアントが現れたことに気づいた軍隊に動揺が広がっていく。動きが悪くなった軍隊に動きを制限されたのか、冒険者たちの状況も良くない方向へと向かっていく。
 蛇の尻尾が鞭のようにしなると勢いよく冒険者たちと軍隊を上方へと吹き飛ばす。

「おや」

 少し離れたところで様子を見ていたギルドマスターから、炎の魔法が打ち上げられる。

「合図が来たわね」

「だなぁ」


 吹き飛んで空中を舞う人間に向かって、蛇が大きな口を開く。食われようとしているのはどうやらリキョウらしい。莉緒に行ってくると告げると、目視で近くの座標を設定してテレポートで蛇の少し上空へと転移した。
 落下して蛇に近づいている間に口が閉じられ、リキョウの姿が見えなくなった。もしかしなくても食われてしまったらしい。

「リキョウ!」

 パーティメンバーらしき人物から悲鳴が上がるが、まだ間に合うはずだ。
 異空間ボックスからオリハルコン製の刀を取り出すと、鞘と刀の両方に魔力を込める。落下方向を微調節して蛇にある程度近づくと、抜刀の勢いをそのままに刀を振りぬき、即座に納刀して地面へと着地を決めた。

「間に合ったかな?」

 特に抵抗なく刃を振りぬけたので大丈夫だとは思う。
 見上げると、どこか虚空を見つめたまま微動だにしない蛇がいた。

「えっ?」

 俺と蛇に視線をやりながら呆然と呟いていた冒険者だったが、気を取り直したのか蛇に意識を注いでいる。
 しばらくすると割り込んできたレッドアントも片付いたのか、警戒しつつ蛇の周りに人が集まってくる。

「あ!」

 誰かが上げた声に蛇へと注目すると、その口が徐々に開かれていき――

「あぶねぇ……、死ぬかと思……うおわぁ!」

 リキョウがセリフと共に顔を出したと同時に、切断された蛇の首が地面へと落下した。

「――ッ!?」

「な、何者だ!?」

 一斉に驚愕の表情を浮かべる周囲と、誰何してくる軍の人間。
 そこにギルドマスターが小走りで現れた。

「間に合ってよかったネ。助かったネ」

「いやホント」

 ギルドマスターと頷き合っていると、蛇の口からリキョウが這いだしてきた。

「マジでびっくりした……」

 よっこらしょと言いながら立ち上がると、蛇を睨みつけた後に周囲を見回して俺と目が合う。

「あー……、そういうことか……」

 額に手を当てて天を仰ぐと、悔しそうに大きくため息をついている。

「アンタも刀を使うんだな……。おれのじゃまったく歯が立たなかったのに」

 銀髪ツンツン頭の男が、自分の刀と見比べている。

「サポートがあれば安心と思っていたが、実際にサポートされてみると悔しいもんだね」

 巨大な杖を抱えた赤髪の女は憮然とした表情だ。サポートどころか一気にとどめを刺してしまったので不満があるのかもしれない。

「くっ、突然現れて成果を横取りとは、何者だと聞いているのが聞こえんのか!」

 主要メンバーにスルーされたのがよほど気に食わなかったのか、持っていた剣を地面に叩きつけて軍人が威嚇してきた。
 一斉に注目を集めたはよかったが、周りから睨みつけられてひるんでいる。客観的に見て、リキョウが食われる原因を作ったのが軍隊のやらかしだからだ。

「それじゃ、俺の仕事は終わったんであとはよろしく」

 とはいえ俺はギルドマスターの要請に従っただけなので、面倒な軍隊との折衝は丸投げするに限る。

「待て!」

 待てと言われて待つわけもない。そのままスルーして莉緒の元へと足を向ける。

「待つネ」

 と思ったのにギルドマスターに止められた。
 ニヤリと笑う軍人にイラっとしたけど、ギルドマスターにニヤリと笑い返される。

「戦利品を本陣裏まで運んで欲しいネ」

「ああ、了解」

 軍人に利益は一切やらんと聞こえた俺は同じくニヤリと笑い返し、討伐したメタルドラゴンサーペントをさっさと異空間ボックスへ収納するとその場を後にした。
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