成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
371 / 421
第六部

もう一つの監視場所

しおりを挟む
「イヴァン兄! おかえり!」

 翌朝起きるとイヴァンが帰ってきており、フォニアが尻尾を激しく振って喜んでいた。夜中に帰ってきたことは知ってるけど、フォニアはもう寝ていたので朝から興奮気味だ。

「ああ、ただいま」

 フォニアの頭をぐりぐりと撫でながら大きなあくびを漏らしている。そんなに眠いならもうちょっと寝ててもいいと思うんだが、もしかして朝から出勤なのだろうか。

「現場はどんな感じ?」

 Dランク冒険者としてスタンピードに参加しているイヴァンに尋ねてみる。前線はちょくちょく見るが、正直俺たちには後方で何をやっているのか具体的なところは見えてこない。

「うーん、まぁすげぇ慌ただしいかな。収納カバン持ってるのバレてるから、あちこちに物資補給に走らされてるよ」

「あー、そういう感じなのか」

「俺も前線で戦いてぇ」

 不満そうにするイヴァンにはご愁傷様としか言えない。口にはしないが。

「おはようございます。朝食の用意ができていますのでどうぞ」

 そろそろ朝飯の用意でもするかと思っていたところで、エルがキッチンから朝食の乗ったワゴンを押して出てきた。

「お、用意してくれてたんだ。サンキュー」

「いえ、スタンピードの監視体制も出来上がって、ある程度自動でやってくれるようになったので」

「へぇ、そりゃすごい」

 すまし顔で答えるエルだが、変にキリッとした顔が内心でドヤ顔しているように見えて面白い。

「じゃあそろそろ、王都方面の偵察も鳥TYPEに始めてもらおうかなぁ」

 次に進めたいのは、俺たちを犯罪者に仕立て上げた主要人物の偵察だ。OHANASHIしに行くのに、いろいろと情報は先取りしておきたい。

「かしこまりました。主要ターゲットとなる人物の普段の宿と行動範囲はすでに把握済みですので、後ですまほにでーたを送っておきます」

「え?」

 日本にいたときによく聞いた言葉を、言いなれない人物から聞いた違和感に思わず振り返る。

「鳥たいぷでの偵察ができるようになれば、りあるたいむでの監視も可能かと」

「えーっと、あー、うん、そうだね。……それでよろしくお願いします」

 エルの進化っぷりについていけずに思わず敬語になってしまった。

「みんなおはよー。……ってどうしたの?」

 起きてきた莉緒に怪訝な表情を向けられる。

「いや、なんでもない。エルのパソコン使いこなしに驚いてただけだ」

「あー、うん、確かにすごいよね。私もそこまで使いこなせないし……」

 一緒に遠い目をする莉緒に、エルも我慢しきれなかったのかドヤ顔が表情に出る。が、その様子にとうとう俺も我慢しきれなくなって笑ってしまった。



 昼前に第一外壁手前の本陣へ顔を出したが、まだ余裕があるとのことで王都近くへと次元の穴を開けてやってきた。
 今回ターゲットとなる相手は我らが情報ギルド「ヒノマル」が調査済みである。メサリアさんにも日本で売られているスマホやローカライズしたパソコンをいくつか提供していたが、やっぱりエル同様に使いこなすのは早かった。
 調べ上げた人物は次の通りだ。

 俺を審議機関へと申請した、ベイファン・ローイング男爵。
 審議内容を調査して黒と判決を下した審議官長官、ダレーディモ・トーガビート伯爵。
 調査内容と結果が問題ないか、第三者としての判定を下す国の宰相、ザイニーン・ムシリトーレ侯爵。
 そして俺たちの前に派遣されてきた審議官、ウェズリー・グラブス子爵の計四人だ。

 エルから教えてもらって知ったのだが、虫TYPEでも対象の監視が行えるとのこと。小さくて見つかりにくいため間近で監視可能だが、追跡能力が低いため逃げようと思えば簡単に振り切れてしまうらしい。しかし鳥TYPEでの遠方からの監視と連携すれば、再追跡が容易になるとのことだ。
 今回は一人に付き鳥TYPEを一体、虫TYPEを二体つけることにする。

「よし、お前たち、行くぞ」

 ダンジョンに繋げた次元の穴から、TYPEシリーズをそれぞれ呼び出していく。鳥TYPEは上空を空高く飛び、虫TYPEは俺の服の内側へと潜り込む。対象の人物はヒノマルが割り出してくれたが、TYPEシリーズへそれを覚えこませるには、直接視認できるところから対象を指定する必要があるのだ。

 念のため変装して隠密系スキルをフル稼働させると、王都の城壁を乗り越えて中へと侵入する。エルから受け取ったターゲットの隠し撮り写真を確認する。伯爵と侯爵は会ったこともないが、これがあれば片っ端から鑑定をしなくても大丈夫だ。

 男爵は王都にある自分の屋敷に滞在しているとのことでさっそく向かう。貴族街のはずれにある小ぢんまりとした屋敷だ。気配察知も駆使してサクッと指定完了だ。審議官長官と審議官は、普段は審議官邸で仕事中とのことでこちらも簡単に終わった。

 そして最後の宰相となれば、もちろん職場は王城となる。さすがに城内ともなれば情報は少ないが、謁見の間の写真があったことには驚いた。よく入り込めたとは思うが、はてさて、宰相の侯爵閣下は今どこにいるだろうか。

 とはいえ、残り二体となった虫TYPEも動員して探せばすぐに見つかった。会議室で会議中のようだったが問答無用だ。テレポートで会議室の隅へと転移すると鑑定でしっかりと名前を確認し、監視対象として指定すればミッションコンプリートだ。

「初めてスパイみたいな活動したけど、思ったより簡単だったな……」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...