成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
366 / 421
第六部

伝言

しおりを挟む
 TYPEシリーズたちの戦果は上々だ。強さ4の魔物だが、それでも特化したステータスは一万五千ほどある。その半分にも満たないステータスの魔物など、連携が取れるようになったTYPEシリーズたちの敵ではなかった。

 ただしダンジョンの外での戦闘行為は活動の限界時間があるのか、思ったより長続きしないことが判明したのは収穫だろうか。生物タイプの魔物であれば何か食べればいいんだろうけど、ロボだと純粋に内蔵の魔石から魔力を供給するしかない。自然に吸収する分はあるだろうが、ダンジョンの外は効率が悪いようだった。

 その結果、群れを殲滅できたら死体をダンジョンまで運び、DPに変えつつも魔力を補給する作戦で行くことに決まった。今までは自然とダンジョンに入った魔物しかDPに変えていなかったけど、これでDP効率も上がるんじゃなかろうか。

 とまぁ、しばらくは順調にスタンピードの準備を整えていたのではあるが。

「ふむ……」

 どうやら俺を捕縛する密命を受けた軍が動き始めたようである。付かず離れずに周囲を同じ速度で歩きながら、ちらちらとこちらに意識を飛ばしている人物が三人いるのだ。街に軍隊が集まってきたからか、揃いの軍服を着た人間もちらほら見るようになっているが、三人はその軍服を身に着けている。そういう意味では今のこの街に溶け込んでいるように思える。

 今日も今日とて日課になっているギルドへの顔を出すために向かっているところだ。たぶん俺一人で行動しているところを狙ったんだろうけど、まさか真正面から来るとは思っていなかった。と言っても夜襲をかけようとしても、家の壁は海皇亀の甲羅で覆われてるからビクともしないけど。

 そんなことを思っていると、後ろにいた一人が動き出した。
 背後から無言で襲い掛かってきた男を躱すと、足を引っかけて腕を取って地面に転がす。そのまま腕を踏み抜こうとしたところに飛んできた矢を掴むと、振り下ろした足は止めずにやっぱり転がした男の腕を潰す。

「ぐがああぁぁぁ!!」

 転がった男から漏れる苦悶の呻きとともに、通行人からも悲鳴が上がり俺の周囲から人が遠ざかっていく。遠距離の人間は気づかなかったけど他にもいるのだろうか。
 逃げる時間を与えないようにすかさず振りかぶると、遠距離攻撃を加えてきた奴に掴んだ矢を投げ返してやる。屋根から一人転がり落ちてくるのを遠目にしつつ、残り二人の動向を探る。
 と、一人がこちらに近づいてきて、もう一人は撤退する様子を見せた。逃がさないけどな。

「待て! これ以上暴れるようなら罪状が――」

「ぶぎゃ!」

 出てきた奴のセリフが言い終わるのを待たずに、逃げようとした奴の頭を魔法で作った見えない手で鷲掴みにする。人が捌けた輪の中に引きずり出すと、言葉を遮った男の隣の地面に叩きつける。

「――っ!?」

 言葉を遮られた男は、青い顔をして地面に叩きつけられた男と俺を交互に見るだけだ。男たちを睨みつけながらゆっくりと近づいていくと、へっぴり腰で身構えたまま両手をこちらに突き出してきた。

「ま、待て! 罪状が増えてもいいのか!?」

「罪状?」

 前口上なく襲い掛かってきたので、ただ単に火の粉を払っただけという態度を崩さずに問いかける。

「俺たちは正式な国の軍隊だ! 手を出したら罪状が増えるだけだぞ!?」

「へぇ。軍人がいきなり一般人に襲い掛かってもそっちは罪にならないんだ?」

「そんなわけないだろうが! お前が断罪された犯罪者だからに決まってるだろう!」

 ほほぅ。一応軍にも規律というものは存在しているらしい。しかしまぁ、どこかで貴族の馬車に轢かれた平民がいたように、機能しているのかどうかは別問題かもしれないが。あれこれ問答する気はないので手っ取り早く要求だけ突きつけることにしよう。

「ふーん。じゃあ罪状を増やすついでにちょっと上の人間に伝言を頼めるかな」

 威圧スキルを有効にして言葉をかけると、男の顔がますます青ざめてくる。

「ぐっ……、なん……」

 威圧の効果か、まともに言葉を喋ることもできなくなっているようだ。

「スタンピードが片付いたら、発端になった男爵をはじめ俺を犯罪者にした人物と、それを認めた関係する人物にちょっと話があるから、首を洗って待ってろってね」

 言葉と共に一歩ずつ男に近づいていき、最後の言葉を告げるときには一メートルほどまで距離を縮めて人差し指を突き付ける。

「いいか? しっかり伝えるんだぞ? 真正面から訪ねていくから準備しておけってな?」

 さらに間近で威圧を込めると真っ青になった男がぶんぶんと首を縦に何度も振っている。

「お前もしっかり聞いてたな? わかったなら今すぐ行け」

 もう一人倒れている男にも声をかけると威圧を解く。気が付けば周囲を囲んでいた野次馬は誰一人いなくなっており、大通りが閑散としていた。
 軽くなった空気にキョロキョロ周囲を見回した男二人は、そのまま慌てて走り去っていく。腕を潰した男は放置されたままだがまぁ後から誰かが何とかするだろう。

 逃げた男には空間魔法でマーカーを付けておいたし、数日後にでも念押しの手紙を枕元に届けてやれば間違いなくやってくれるかな。
 さすがにちょっかいをかけてくる奴らはこれで最後だろうと思いながら、そのまま冒険者ギルドへと足を進めるのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...