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第六部
広範囲攻撃
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壁を作った翌日。
俺たちは再び作った壁の上に立っていた。
ギルドマスターにはすでに壁が完成したことは伝えてある。一日で出来上がったことに驚いてブツブツ言っていたが、そのまま正気に戻らなかったので放置したままだ。
今日は壁の上に立って範囲魔法の確認をしようと思う。と言ってもここは、街から五十キロは離れた場所に作った壁の上だ。警戒レベルが2になったとはいえ、魔の森の依頼がゼロになったわけではない。念のため他の冒険者がいなさそうな場所を選んだというわけだ。
「街から離れると似たような地形じゃないわね」
莉緒がおでこに手で庇を作りながら、魔の森側を眺めてため息をつく。街の北門を出て魔の森に向かう場合は緩やかな斜面を登る地形だったが、ここはちょっと勾配が急になっていて、地面に凹凸も激しくついている。
「街から遠くて一番マシな地形がここなんだし、諦めるしかないけどな」
「それはそうだけど」
「どうせ魔法の練習したら街の北側と似たような地形になるだろ」
「……それもそうね」
もっとひどいことになる可能性も高かったけどそれは言わないでおく。莉緒もわかってるのか納得した様子だ。
「それじゃ始めるか」
お互いが一キロほど離れた場所につくと、さっそく練習開始だ。
主に攻めてくる魔物の耐久力はだいたい判明している。
『確実に仕留めるよりも広範囲に敵を行動不能にするくらいがちょうどいいかな?』
『魔法の系統は何がいいかしら? 属性に偏りがあるとほぼ無傷で通過しそうな魔物も出てきそうよね』
念話で莉緒と話をしながら使用する魔法を決めていく。広範囲に広がる爆発系魔法で範囲を稼ぐよりも、中級魔法を広範囲にばら撒くほうがバラつきがなくていいかもしれない。
『とりあえず一発試してみるか』
魔力を込めて周囲に展開する。最初はよく使っていたアースニードルだ。威力を絞って範囲を広げることに意識を集中させる。
海皇亀戦で弾丸に改良を加えた影響か、最近のアースニードルの弾は凶悪になっている気がするので抑え気味にしないと。衝撃浸透効果は不要だけど飛距離を伸ばすには回転はかけたほうがいいかな。
作る弾を決めれば弾を生成して、あとは放射状に発射するだけだ。たぶん照準は甘くてもだいたい当たると思うのでそこは手を抜いても大丈夫なはず。
「ふむふむ」
だいたい幅三百メートルで奥行き五百メートルくらいに届いたかもしれない。今の感触を忘れないように改善を加えながら試行錯誤していく。
魔力はそんなに減った気がしない。まだまだいけそうだ。
『あら、着弾範囲かぶってきたわね』
『あれ? んじゃもうちょっと離れるか』
一キロは離れていたはずだけどちょっと足りなかったらしい。念のため五キロほど離れてこの日は一日中練習に費やした。
最終的には幅三キロメートル、奥行き二キロメートルくらいの範囲に届かせることができるようになった。弾が爆発するように威力を上げると射程が半分ほどになってしまったがそれはいい。
ちなみに莉緒は、俺と同じ威力なら射程が二倍ほどだった。ちょっと悔しいけどこればっかりは仕方がない。一通り広範囲攻撃の感覚はつかめたのでよしとしよう。
「そろそろダンジョンの魔物の実地訓練もしておくか」
あとやり残したことはこれくらいかなと思い、今度は一人で魔の森奥地に来ていた。奥地ともなれば日中でも陽の光は届かず周囲は薄暗い。
ダンジョンの魔物に命令を下せるのもダンジョンマスターだけなのだ。魔物に意思があって知性があれば、ダンジョンマスター以外からのお願いくらいは聞いてくれるかもしれないが、ロボだからか俺以外の命令は一切受け付けなかったのだ。
だけど魔の森にあるダンジョン入り口からしか魔物を投入できないのは不便だ。なんとか好きな場所にダンジョン入り口を作りたいものであるが……。
「うーん……、自分の領域ねぇ……」
試しに五メートル四方の地面を土魔法で平らにしてみる。
「ダメか」
平らにした地面を、石のタイルを敷いたように整備してみる。
「まだダメか」
四方のうち三方に壁を作ってみるがこれでもダメだったので、今度は屋根も付けてみる。次は残った一方に扉となるような穴をくりぬいて壁を付けてみた。
「お、いけた」
自分の領域ってこんなのでよかったのか。自分の土地じゃなくてもいいんだな。って街にある家も、自分の土地ってわけでもないか?
「じゃあさっそく始めるか」
TYPEシリーズを待機させているフロアと繋がるようにダンジョンの入り口を作成する。ダンジョンの魔物だけが行き来できるように制限を付けると、床全面をダンジョンに潜る階段に作り替える。
一部隊だけ外に出てこいと命令を下すとロボたちが次々と姿を現すが、部屋に入りきらずにいっぱいになってしまう。ダンジョンの入り口はもうできたからいいかと思い、扉の穴が開いた壁を一面ぶち抜くと、後続のTYPEシリーズが続々とダンジョンから出てきた。
「よしよし」
目の前に整列する十体のTYPEシリーズを満足げに眺める。クリエイトメニューを触っていてわかったが、TYPEシリーズの上位二桁が種族タイプ、三桁目がステータスタイプ、四桁目が単純に強さを表しているらしい。
今回はダンジョンに一番多くいた四桁目の強さ4の魔物で部隊を編成している。森の中なので、足回りの強そうな猫タイプ、猿タイプ、蛇タイプ、鼠タイプ、鳥タイプがそれぞれ二体ずつだ。
「よし行け」
少し離れたところにある魔物の群れへ向けて出撃命令を下すと、十体のロボたちが素早く移動を始めた。
俺たちは再び作った壁の上に立っていた。
ギルドマスターにはすでに壁が完成したことは伝えてある。一日で出来上がったことに驚いてブツブツ言っていたが、そのまま正気に戻らなかったので放置したままだ。
今日は壁の上に立って範囲魔法の確認をしようと思う。と言ってもここは、街から五十キロは離れた場所に作った壁の上だ。警戒レベルが2になったとはいえ、魔の森の依頼がゼロになったわけではない。念のため他の冒険者がいなさそうな場所を選んだというわけだ。
「街から離れると似たような地形じゃないわね」
莉緒がおでこに手で庇を作りながら、魔の森側を眺めてため息をつく。街の北門を出て魔の森に向かう場合は緩やかな斜面を登る地形だったが、ここはちょっと勾配が急になっていて、地面に凹凸も激しくついている。
「街から遠くて一番マシな地形がここなんだし、諦めるしかないけどな」
「それはそうだけど」
「どうせ魔法の練習したら街の北側と似たような地形になるだろ」
「……それもそうね」
もっとひどいことになる可能性も高かったけどそれは言わないでおく。莉緒もわかってるのか納得した様子だ。
「それじゃ始めるか」
お互いが一キロほど離れた場所につくと、さっそく練習開始だ。
主に攻めてくる魔物の耐久力はだいたい判明している。
『確実に仕留めるよりも広範囲に敵を行動不能にするくらいがちょうどいいかな?』
『魔法の系統は何がいいかしら? 属性に偏りがあるとほぼ無傷で通過しそうな魔物も出てきそうよね』
念話で莉緒と話をしながら使用する魔法を決めていく。広範囲に広がる爆発系魔法で範囲を稼ぐよりも、中級魔法を広範囲にばら撒くほうがバラつきがなくていいかもしれない。
『とりあえず一発試してみるか』
魔力を込めて周囲に展開する。最初はよく使っていたアースニードルだ。威力を絞って範囲を広げることに意識を集中させる。
海皇亀戦で弾丸に改良を加えた影響か、最近のアースニードルの弾は凶悪になっている気がするので抑え気味にしないと。衝撃浸透効果は不要だけど飛距離を伸ばすには回転はかけたほうがいいかな。
作る弾を決めれば弾を生成して、あとは放射状に発射するだけだ。たぶん照準は甘くてもだいたい当たると思うのでそこは手を抜いても大丈夫なはず。
「ふむふむ」
だいたい幅三百メートルで奥行き五百メートルくらいに届いたかもしれない。今の感触を忘れないように改善を加えながら試行錯誤していく。
魔力はそんなに減った気がしない。まだまだいけそうだ。
『あら、着弾範囲かぶってきたわね』
『あれ? んじゃもうちょっと離れるか』
一キロは離れていたはずだけどちょっと足りなかったらしい。念のため五キロほど離れてこの日は一日中練習に費やした。
最終的には幅三キロメートル、奥行き二キロメートルくらいの範囲に届かせることができるようになった。弾が爆発するように威力を上げると射程が半分ほどになってしまったがそれはいい。
ちなみに莉緒は、俺と同じ威力なら射程が二倍ほどだった。ちょっと悔しいけどこればっかりは仕方がない。一通り広範囲攻撃の感覚はつかめたのでよしとしよう。
「そろそろダンジョンの魔物の実地訓練もしておくか」
あとやり残したことはこれくらいかなと思い、今度は一人で魔の森奥地に来ていた。奥地ともなれば日中でも陽の光は届かず周囲は薄暗い。
ダンジョンの魔物に命令を下せるのもダンジョンマスターだけなのだ。魔物に意思があって知性があれば、ダンジョンマスター以外からのお願いくらいは聞いてくれるかもしれないが、ロボだからか俺以外の命令は一切受け付けなかったのだ。
だけど魔の森にあるダンジョン入り口からしか魔物を投入できないのは不便だ。なんとか好きな場所にダンジョン入り口を作りたいものであるが……。
「うーん……、自分の領域ねぇ……」
試しに五メートル四方の地面を土魔法で平らにしてみる。
「ダメか」
平らにした地面を、石のタイルを敷いたように整備してみる。
「まだダメか」
四方のうち三方に壁を作ってみるがこれでもダメだったので、今度は屋根も付けてみる。次は残った一方に扉となるような穴をくりぬいて壁を付けてみた。
「お、いけた」
自分の領域ってこんなのでよかったのか。自分の土地じゃなくてもいいんだな。って街にある家も、自分の土地ってわけでもないか?
「じゃあさっそく始めるか」
TYPEシリーズを待機させているフロアと繋がるようにダンジョンの入り口を作成する。ダンジョンの魔物だけが行き来できるように制限を付けると、床全面をダンジョンに潜る階段に作り替える。
一部隊だけ外に出てこいと命令を下すとロボたちが次々と姿を現すが、部屋に入りきらずにいっぱいになってしまう。ダンジョンの入り口はもうできたからいいかと思い、扉の穴が開いた壁を一面ぶち抜くと、後続のTYPEシリーズが続々とダンジョンから出てきた。
「よしよし」
目の前に整列する十体のTYPEシリーズを満足げに眺める。クリエイトメニューを触っていてわかったが、TYPEシリーズの上位二桁が種族タイプ、三桁目がステータスタイプ、四桁目が単純に強さを表しているらしい。
今回はダンジョンに一番多くいた四桁目の強さ4の魔物で部隊を編成している。森の中なので、足回りの強そうな猫タイプ、猿タイプ、蛇タイプ、鼠タイプ、鳥タイプがそれぞれ二体ずつだ。
「よし行け」
少し離れたところにある魔物の群れへ向けて出撃命令を下すと、十体のロボたちが素早く移動を始めた。
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