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第六部
ダンジョンの探索
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ダンジョンとの境界線は相変わらず水平面になっている。今回も念のため先に顔を突っ込んで覗いてみるが、地形は前回と変わっていなかった。
莉緒と頷き合うと、空中に浮かびながらダンジョンへと入っていく。
『もうずっと浮いて進むか』
『罠踏まなくて済むわね』
『それでも注意しないと危ないけどな』
周囲の敵に気取られないように、音声ではなく念話でやり取りを行う。空を行けば罠は踏まなくて済むが、ぶっ飛ばして空中を飛ぶ敵を串刺しにした罠に前回出会っているので楽観はできない。
手を抜かずにもう一度ダンジョンの再スキャンを行う。前回来た時にダンジョンをスキャンしているので、今回は地形以外の情報更新だけだ。どうやら前回進んだ目の前の十字路の左方向に魔物が一体いるらしい。
『最初はよく観察してみようか』
『わかった。結界は任せて』
『うん。よろしく』
軽く莉緒と打ち合わせると、念のため通路の罠を警戒しつつも十字路へと入っていく。左側を見れば遠くのほうにずんぐりとしたシルエットの、四足歩行するロボットがいた。
そいつは俺たちを見つけると二本の足で立って歩いてくる。どうやら熊っぽい見た目だが、そこまで素早くなさそうである。ステータスを確認すると名前は「TYPE0314」で、筋力に特化していてその数値は一万五千ほどだ。
後ろで莉緒から魔力が膨れ上がった瞬間、敵の周囲に空間遮断結界が張り巡らされる。十字路左の通路は幅三メートルほどか。熊ロボの高さは二メートル半ほど。両腕を振り回せば通路いっぱいはカバーできそうだが、両腕を閉じた状態で結界に捕らわれているので、壁際は通り抜けられそうだ。
『見た目通りに脳筋タイプなステータスだな』
『そうなんだ』
ゆっくりと近づいていくと相手もこちらを視認したのか身構える。そして走りだそうとして目の前の見えない結界にぶつかった。しかし目の前に見えない壁があると認識できないのか、足を滑らせながらその場で走る動きを続けている。
『……頭は悪そうだな』
『搦め手でいけば案外弱いかも?』
『かもしれないなぁ。でもまぁ、油断せずに行こう』
ゆっくりと熊ロボに近づいていく。相手の間合いに入るギリギリのところで、こちらを攻撃しようと腕を振り上げる。が、結界に阻まれて途中で止まる。腕を振り下ろすもやはり結界に阻まれてしまう。
どうすることもできないと判断した俺たちは、今度は相手の耐久力を試しつつも無傷で撃破することに成功した。結界内で魔法を発動させるだけの簡単なお仕事だ。
『こんなもんか』
『でも見た目通りそこそこ耐久力はあったわね』
『んだなぁ。……よし、次は近くにある部屋に行ってみるか』
『オーケー』
ダンジョンにお宝があるとすれば部屋だろうということで、一番近いところに向かっていく。今のところ出てくる敵は全部ロボットで、名前は「TYPE」のあとに四桁の数字になっている奴ばかりだ。犬や猫といった四足歩行の哺乳類から、爬虫類や鳥タイプまでバリエーションが豊かだ。今のところステータスの上限は二万で、それ以上の敵には遭遇していない。
『搦め手が全部ハマるわね……』
『厄介なダンジョンかと思ってたけど、案外――』
『柊、ストップ!』
楽かもね、と思っていたところに莉緒から警告が飛んでくる。足を止めて後ろを振り返ると、魔法系統の罠があるかもしれないと教えてくれた。目を凝らして前方に集中すると、糸のように細くなった魔力が通路に張り巡らされている。確かに罠っぽい。
『へぇ、こんなのがあるのか』
『通り抜けたら何かありそうでしょ?』
『何が起こるか気になるところだけど、このダンジョンの罠は凶悪なやつが多いからなあ』
ここを通り抜けないと部屋へはたどり着けないので、迂回する選択肢はない。
『とりあえず魔力をぶつけてみるか』
少し距離を取って魔力を飛ばし、糸のように張り巡らされた魔力線を切るように横断させる。はらりと糸がほどけるように魔力線が消えると、その場に魔力があふれて通路の中心で爆発が起こった。
『おー、相変わらずえぐいなぁ』
即座に結界を張って爆風を防ぐと、風を通路の奥に吹かせて視界を確保する。ダンジョン全体がずしんと震えたので、それなりに威力はあったと思う。
『ダンジョンの壁とかはそんなに傷ついてないわね』
爆発は一瞬だったからか、それほど熱も籠っていない。爆心地を通り過ぎて通路の奥へ向かうと、最初の目的地である部屋が見えてきた。入り口に扉は付いておらず中が見える。学校の教室の半分くらいの広さだろうか。奥行きのある四角くて細長い部屋だ。
『奥に何かあるわね』
左右の壁は凹凸がなかったが、奥の壁に何かがあるのが見える。というか壁にいろいろと飾ってあるみたいだ。改めて部屋の中を空間魔法を使って詳細にスキャンしていく。
『ああ、触れると発動する罠がいっぱいあるから、地面もそうだけど壁と天井にも触れないように気を付けて』
『わかった』
莉緒にも魔法系の罠を見てもらったが問題なさそうとのこと。慎重に部屋の中の罠地帯を抜けると、奥の壁の手前までやってきた。
壁には無作為に棚や杭などが打ち付けられていて、そこにいろんなものが飾られている。魔物か何かの首のはく製だとか、装飾の凝った剣だとか、瓶に詰められた薬品だとかほんとに色々だ。
すごく気になるのはもちろんなんだけど、さてどうしたものか。
『これも罠っぽいわねぇ』
莉緒から念話が届くがまったくもってその通り。壁の向こう側の空間には発動待ちの罠がいっぱい潜んでいる。
『物を持ち上げたりすると発動するっぽい』
『うへぇ』
推測が合っていることを教えると、莉緒から変なうめき声が聞こえてきた。
莉緒と頷き合うと、空中に浮かびながらダンジョンへと入っていく。
『もうずっと浮いて進むか』
『罠踏まなくて済むわね』
『それでも注意しないと危ないけどな』
周囲の敵に気取られないように、音声ではなく念話でやり取りを行う。空を行けば罠は踏まなくて済むが、ぶっ飛ばして空中を飛ぶ敵を串刺しにした罠に前回出会っているので楽観はできない。
手を抜かずにもう一度ダンジョンの再スキャンを行う。前回来た時にダンジョンをスキャンしているので、今回は地形以外の情報更新だけだ。どうやら前回進んだ目の前の十字路の左方向に魔物が一体いるらしい。
『最初はよく観察してみようか』
『わかった。結界は任せて』
『うん。よろしく』
軽く莉緒と打ち合わせると、念のため通路の罠を警戒しつつも十字路へと入っていく。左側を見れば遠くのほうにずんぐりとしたシルエットの、四足歩行するロボットがいた。
そいつは俺たちを見つけると二本の足で立って歩いてくる。どうやら熊っぽい見た目だが、そこまで素早くなさそうである。ステータスを確認すると名前は「TYPE0314」で、筋力に特化していてその数値は一万五千ほどだ。
後ろで莉緒から魔力が膨れ上がった瞬間、敵の周囲に空間遮断結界が張り巡らされる。十字路左の通路は幅三メートルほどか。熊ロボの高さは二メートル半ほど。両腕を振り回せば通路いっぱいはカバーできそうだが、両腕を閉じた状態で結界に捕らわれているので、壁際は通り抜けられそうだ。
『見た目通りに脳筋タイプなステータスだな』
『そうなんだ』
ゆっくりと近づいていくと相手もこちらを視認したのか身構える。そして走りだそうとして目の前の見えない結界にぶつかった。しかし目の前に見えない壁があると認識できないのか、足を滑らせながらその場で走る動きを続けている。
『……頭は悪そうだな』
『搦め手でいけば案外弱いかも?』
『かもしれないなぁ。でもまぁ、油断せずに行こう』
ゆっくりと熊ロボに近づいていく。相手の間合いに入るギリギリのところで、こちらを攻撃しようと腕を振り上げる。が、結界に阻まれて途中で止まる。腕を振り下ろすもやはり結界に阻まれてしまう。
どうすることもできないと判断した俺たちは、今度は相手の耐久力を試しつつも無傷で撃破することに成功した。結界内で魔法を発動させるだけの簡単なお仕事だ。
『こんなもんか』
『でも見た目通りそこそこ耐久力はあったわね』
『んだなぁ。……よし、次は近くにある部屋に行ってみるか』
『オーケー』
ダンジョンにお宝があるとすれば部屋だろうということで、一番近いところに向かっていく。今のところ出てくる敵は全部ロボットで、名前は「TYPE」のあとに四桁の数字になっている奴ばかりだ。犬や猫といった四足歩行の哺乳類から、爬虫類や鳥タイプまでバリエーションが豊かだ。今のところステータスの上限は二万で、それ以上の敵には遭遇していない。
『搦め手が全部ハマるわね……』
『厄介なダンジョンかと思ってたけど、案外――』
『柊、ストップ!』
楽かもね、と思っていたところに莉緒から警告が飛んでくる。足を止めて後ろを振り返ると、魔法系統の罠があるかもしれないと教えてくれた。目を凝らして前方に集中すると、糸のように細くなった魔力が通路に張り巡らされている。確かに罠っぽい。
『へぇ、こんなのがあるのか』
『通り抜けたら何かありそうでしょ?』
『何が起こるか気になるところだけど、このダンジョンの罠は凶悪なやつが多いからなあ』
ここを通り抜けないと部屋へはたどり着けないので、迂回する選択肢はない。
『とりあえず魔力をぶつけてみるか』
少し距離を取って魔力を飛ばし、糸のように張り巡らされた魔力線を切るように横断させる。はらりと糸がほどけるように魔力線が消えると、その場に魔力があふれて通路の中心で爆発が起こった。
『おー、相変わらずえぐいなぁ』
即座に結界を張って爆風を防ぐと、風を通路の奥に吹かせて視界を確保する。ダンジョン全体がずしんと震えたので、それなりに威力はあったと思う。
『ダンジョンの壁とかはそんなに傷ついてないわね』
爆発は一瞬だったからか、それほど熱も籠っていない。爆心地を通り過ぎて通路の奥へ向かうと、最初の目的地である部屋が見えてきた。入り口に扉は付いておらず中が見える。学校の教室の半分くらいの広さだろうか。奥行きのある四角くて細長い部屋だ。
『奥に何かあるわね』
左右の壁は凹凸がなかったが、奥の壁に何かがあるのが見える。というか壁にいろいろと飾ってあるみたいだ。改めて部屋の中を空間魔法を使って詳細にスキャンしていく。
『ああ、触れると発動する罠がいっぱいあるから、地面もそうだけど壁と天井にも触れないように気を付けて』
『わかった』
莉緒にも魔法系の罠を見てもらったが問題なさそうとのこと。慎重に部屋の中の罠地帯を抜けると、奥の壁の手前までやってきた。
壁には無作為に棚や杭などが打ち付けられていて、そこにいろんなものが飾られている。魔物か何かの首のはく製だとか、装飾の凝った剣だとか、瓶に詰められた薬品だとかほんとに色々だ。
すごく気になるのはもちろんなんだけど、さてどうしたものか。
『これも罠っぽいわねぇ』
莉緒から念話が届くがまったくもってその通り。壁の向こう側の空間には発動待ちの罠がいっぱい潜んでいる。
『物を持ち上げたりすると発動するっぽい』
『うへぇ』
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