343 / 421
第六部
遺跡探索
しおりを挟む
エルも来るかと聞いたけど、相変わらず留守番をしていると返ってきた。未発見かもしれない遺跡よりも日本の文化が勝つようだ。日本は逃げたりしないんだけどな。
「いってきます」
「いってらっしゃいませ」
庭先でエルに見送られながら次元魔法で直接現地まで飛ぶ。
「ほえー」
「いかにもって感じだな」
周囲を見回したフォニアとイヴァンから第一声が聞こえてくる。周囲は完全な森に囲まれていて、ポツンと荒れた石畳に覆われた地帯だ。
「あっちだね!」
キョロキョロと見回していたフォニアが、屋根の付いている建物を指さして胸を張る。
「ふふ、残念。こっちなのよね」
「えー」
莉緒が先導して歩く後ろを、フォニアががっくりと肩を落としてついていく。
「ほら、あそこに階段があるでしょう?」
「あ、ほんとだ」
ただしそれも一瞬だけだ。すぐに元気を取り戻すと興味深そうに階段を覗き込んでいる。
「シュウたちは地下二階まで行ったんだよな?」
「ああ。何もなかったけどな」
フォニアをスマホで撮影していると、イヴァンも少しだけソワソワした様子で尋ねてきた。
「よーし、フォニア行くぞ!」
「うん!」
ここからが本番だとばかりにフォニアに発破をかけて先に階段を下りていく。特に何があるわけでもなかったし、今も空間魔法で地下一階を走査しているが危険なものは見当たらない。
莉緒が魔法で照明を作って階段を下りると、地下一階の部屋を改めてみんなで探索する。特に隠し扉など見つかることもなく地下二階の部屋も探索し終え、下りの階段の前に全員で集まった。
「ここから先は俺たちも行ってないから慎重に行くぞ」
全員を見回すと真剣な表情で頷きが返ってくる。まずはいつものように空間魔法で階段の先の様子を調査だ。
「……ん?」
と思ったけど空間魔法が下り階段の途中までしか広がっていかない。
「どうかした?」
「いや、この先の空間が途切れてるんだが……」
この反応は覚えがある。以前ダンジョンに潜ったときと同じだ。ダンジョンは階層ごとに別次元になっていて空間が連続していないのだ。
「つまりここから先はダンジョンになってるってこと?」
「そうなるな」
「マジか!」
「だんじょん!」
俺たちの言葉にイヴァンが顔をしかめているが、フォニアの目はキラキラと輝いている。以前潜ったダンジョンで活躍したのを思い出したんだろうか。確かに大活躍だったけど、探索に貢献したかというとそうでもなく別方向での活躍だ。未知のダンジョンとなれば慎重にならざるを得ない。
「ただでさえ強力な魔物がいる魔の森のダンジョンなんて嫌な予感しかしねえぞ……」
「そういうもんなのか?」
「……いや、知らねぇけど」
少しだけ考え込んだイヴァンだったが知らないらしい。でもなんとなく言いたいことはわかる。RPGだって物語が進んでいけば徐々に敵は強くなってくるものだ。イベントでもない限りはいきなり弱い敵が出てきたりはしない。
「なんにしろ俺が先行するから後から付いてきてくれ。莉緒は一番後ろで警戒を頼む」
「わかったわ」
気合を入れなおすとゆっくりと階段を下りていく。十段ほど下りて行った先からがどうやらダンジョンになっているようだ。ただ階段が続いているだけで見た目からではどこから先がダンジョンなのか境界がわからない。しかし空間魔法で探れない境目が次の段を下りた水平方向に広がっていて、ここから地下のエリアがダンジョンだと教えてくれる。
「うーん……」
このまま行けば足から先にダンジョンに入ってしまい、ある程度下りないとダンジョンの中の様子がわからない。しゃがみこんで先に顔だけ突っ込んでみることにした。
「マジか」
そこに広がっていた光景に絶句する。
「どうしたんだ?」
後ろからイヴァンの声が聞こえてきたので顔を引っ込める。ダンジョンの外からは普通に階段が続いているようにしか見えない。
皆にも水平面にダンジョンとの境界があることを説明すると、皆でしゃがみこんでダンジョン内を覗き込む。
「うげっ」
「うわぁ……」
「えええぇぇぇ」
三者三様の言葉が聞こえてくるが、皆の思いは同じようだ。
ダンジョン領域に足を踏み入れて三段ほど下りた先には落とし穴が待ち構えていたのだ。横幅いっぱいで奥行きは三メートルほどだろうか。迂回方法はなく飛び越えていくしかない。穴の底は五メートルくらい下方にあって大したことはなさそうだが、通路なのか広間なのか横に空間がある。落ちて体制が整わない間に魔物にでも襲われたらたまったもんじゃない。
「いきなりこんな罠があるとか、楽に攻略できそうにないわね」
「罠多めのダンジョンとかだったら嫌だな」
思わずしかめっ面になってしまうが、未発見の遺跡としてすでにギルドに報告してしまっている。ここで探索を諦めて他の奴らに先を越されるのもなんとなく嫌なので、ここはポジティブに考えることにしよう。
「うーん。罠発見スキルとか生えないか期待するか」
「なんだよそれ」
イヴァンには怪訝な顔をされたが、莉緒には呆れた表情で肩をすくめられた。だがやる気が出てきたことには違いない。面倒になったら魔法で空中に足場を作って、地面に触れないように進めばいい。
「じゃあ改めて、行きますか」
皆へと声をかけると、最初の罠を飛び越えてダンジョンへと足を踏み入れた。
「いってきます」
「いってらっしゃいませ」
庭先でエルに見送られながら次元魔法で直接現地まで飛ぶ。
「ほえー」
「いかにもって感じだな」
周囲を見回したフォニアとイヴァンから第一声が聞こえてくる。周囲は完全な森に囲まれていて、ポツンと荒れた石畳に覆われた地帯だ。
「あっちだね!」
キョロキョロと見回していたフォニアが、屋根の付いている建物を指さして胸を張る。
「ふふ、残念。こっちなのよね」
「えー」
莉緒が先導して歩く後ろを、フォニアががっくりと肩を落としてついていく。
「ほら、あそこに階段があるでしょう?」
「あ、ほんとだ」
ただしそれも一瞬だけだ。すぐに元気を取り戻すと興味深そうに階段を覗き込んでいる。
「シュウたちは地下二階まで行ったんだよな?」
「ああ。何もなかったけどな」
フォニアをスマホで撮影していると、イヴァンも少しだけソワソワした様子で尋ねてきた。
「よーし、フォニア行くぞ!」
「うん!」
ここからが本番だとばかりにフォニアに発破をかけて先に階段を下りていく。特に何があるわけでもなかったし、今も空間魔法で地下一階を走査しているが危険なものは見当たらない。
莉緒が魔法で照明を作って階段を下りると、地下一階の部屋を改めてみんなで探索する。特に隠し扉など見つかることもなく地下二階の部屋も探索し終え、下りの階段の前に全員で集まった。
「ここから先は俺たちも行ってないから慎重に行くぞ」
全員を見回すと真剣な表情で頷きが返ってくる。まずはいつものように空間魔法で階段の先の様子を調査だ。
「……ん?」
と思ったけど空間魔法が下り階段の途中までしか広がっていかない。
「どうかした?」
「いや、この先の空間が途切れてるんだが……」
この反応は覚えがある。以前ダンジョンに潜ったときと同じだ。ダンジョンは階層ごとに別次元になっていて空間が連続していないのだ。
「つまりここから先はダンジョンになってるってこと?」
「そうなるな」
「マジか!」
「だんじょん!」
俺たちの言葉にイヴァンが顔をしかめているが、フォニアの目はキラキラと輝いている。以前潜ったダンジョンで活躍したのを思い出したんだろうか。確かに大活躍だったけど、探索に貢献したかというとそうでもなく別方向での活躍だ。未知のダンジョンとなれば慎重にならざるを得ない。
「ただでさえ強力な魔物がいる魔の森のダンジョンなんて嫌な予感しかしねえぞ……」
「そういうもんなのか?」
「……いや、知らねぇけど」
少しだけ考え込んだイヴァンだったが知らないらしい。でもなんとなく言いたいことはわかる。RPGだって物語が進んでいけば徐々に敵は強くなってくるものだ。イベントでもない限りはいきなり弱い敵が出てきたりはしない。
「なんにしろ俺が先行するから後から付いてきてくれ。莉緒は一番後ろで警戒を頼む」
「わかったわ」
気合を入れなおすとゆっくりと階段を下りていく。十段ほど下りて行った先からがどうやらダンジョンになっているようだ。ただ階段が続いているだけで見た目からではどこから先がダンジョンなのか境界がわからない。しかし空間魔法で探れない境目が次の段を下りた水平方向に広がっていて、ここから地下のエリアがダンジョンだと教えてくれる。
「うーん……」
このまま行けば足から先にダンジョンに入ってしまい、ある程度下りないとダンジョンの中の様子がわからない。しゃがみこんで先に顔だけ突っ込んでみることにした。
「マジか」
そこに広がっていた光景に絶句する。
「どうしたんだ?」
後ろからイヴァンの声が聞こえてきたので顔を引っ込める。ダンジョンの外からは普通に階段が続いているようにしか見えない。
皆にも水平面にダンジョンとの境界があることを説明すると、皆でしゃがみこんでダンジョン内を覗き込む。
「うげっ」
「うわぁ……」
「えええぇぇぇ」
三者三様の言葉が聞こえてくるが、皆の思いは同じようだ。
ダンジョン領域に足を踏み入れて三段ほど下りた先には落とし穴が待ち構えていたのだ。横幅いっぱいで奥行きは三メートルほどだろうか。迂回方法はなく飛び越えていくしかない。穴の底は五メートルくらい下方にあって大したことはなさそうだが、通路なのか広間なのか横に空間がある。落ちて体制が整わない間に魔物にでも襲われたらたまったもんじゃない。
「いきなりこんな罠があるとか、楽に攻略できそうにないわね」
「罠多めのダンジョンとかだったら嫌だな」
思わずしかめっ面になってしまうが、未発見の遺跡としてすでにギルドに報告してしまっている。ここで探索を諦めて他の奴らに先を越されるのもなんとなく嫌なので、ここはポジティブに考えることにしよう。
「うーん。罠発見スキルとか生えないか期待するか」
「なんだよそれ」
イヴァンには怪訝な顔をされたが、莉緒には呆れた表情で肩をすくめられた。だがやる気が出てきたことには違いない。面倒になったら魔法で空中に足場を作って、地面に触れないように進めばいい。
「じゃあ改めて、行きますか」
皆へと声をかけると、最初の罠を飛び越えてダンジョンへと足を踏み入れた。
19
お気に入りに追加
513
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる