306 / 421
第五部
屋敷への潜入方法
しおりを挟む
まずは屋敷全体の調査だ。そとから見える範囲では家の壁に囲まれていて中は伺い知れない。玄関門は閉ざされており、格子の隙間からは若干荒れた庭が見える。
三階建ての建物は部屋数は十ほどはありそうな大きさで、馬はいなさそうだが厩舎なども見える。
「屋敷の中にいるのは四人かな」
気配察知を屋敷の内部まで伸ばした結果をみんなに伝える。
「……ちょっと少なすぎない?」
「この規模の屋敷ならば執事とメイド数人に、料理人や庭師とかが必要になりそうね」
莉緒の言葉にエルが補足してくれる。さすが侍女だけあってこういうことには詳しい。
「この時間帯ならおそらく出かけてもいないでしょうから、四人で全員かと思います」
人数を当てたことに驚いているジェクターだったが、そちらの調査結果とも一致しているようだ。
「で、どうするんだ?」
イヴァンが両腕を組みながら目の前の屋敷を見上げている。
「四人だけしかいないんなら突入してひとりひとり確認してもいいけど……、楓さんがいなかった場合にこじれそうだよなぁ」
「それはそうでしょうね。今はただの無関係な他人だけど、明らかに敵に回っちゃいそう」
教えてくれるものも教えてくれなくなれば厄介だ。
「もう正面から訪ねていって人探ししてるとぶちまけるか?」
顎に手を当てて考えていると、エルが不思議そうに首を傾げている。
「ご主人様たちの実力があれば、誰にも見つからずに潜入して確認できるんじゃ?」
その言葉に思わず莉緒と顔を見合わせる。
「確かに? 遮音結界を張れば音は漏れないな」
「いざとなったらテレポートでどこからでも外に出られるわね」
「じゃあ両面作戦で行くか」
「わかった」
「俺は真正面から屋敷を訪ねる。探し人がいるってな。莉緒は屋敷に潜入して、中にいる人物の顔を確認してきてくれ」
「うん。もし楓ちゃんがいたらどうするの?」
「女が素直に返してくれる可能性もあるから、まだ接触はやめておこうか。連れ出すだけならそう難しくはないだろうし、まずは楓さんがここにいるかどうかだけの確認にしとこう」
「おっけー」
直近の方針が決まったところで改めて屋敷へと集中する。
「うーん、今回俺たちは役に立ちそうにないな……」
後ろから聞こえてきた声に振り返ると、苦笑いを浮かべたイヴァンがフォニアの頭にポンと手を置いていた。
「ボクも……」
フォニアも耳をぺたりと倒して悲しそうな顔をしている。
「うふふ、フォニアちゃんは出番が来たらお願いするから、その時はよろしくね」
「うん」
頭を撫でられて多少は気分を持ち直したようだ。
「じゃあ街でもぶらぶらしてるか? ミミナ商会以外だったら買い物しててもいいぞ」
「あー、まぁそうさせてもらおうかな。……ってかなんでミミナ商会はダメなんだ?」
「ちょっとひと悶着あった商会だからな」
イヴァンが微妙な顔になってるけどしょうがない。あそこの商会にいい印象を持てるわけもない。
「よくわからんがわかった。またあとで連絡してくれ。ニルも俺たちと行こうか」
「わふっ!」
「じゃああたしはシュウについて行くわね」
「そうなのか?」
エルはどうするのかと思っていたら俺についてくるらしい。
「使用人を連れた人物が尋ねてきたほうが、向こうも重く受け止めてくれるでしょ」
確かに、そう言われればそうかもしれない。子どもっぽいと言われた気がしないでもないが、実際に侮られることが多かったのは事実なのだ。
「じゃあそれぞれ行動開始だ。ジェクターさんも案内ありがとうございました」
「あ、いえ。お役に立てたようでよかったです」
こうして俺とエルは屋敷の玄関へと向かい、他のメンバーもそれぞれ動き出した。
エルが先行して玄関の門を開けて歩く後をついて行く。玄関のドアノッカーを叩いてしばらく待つが反応がない。屋敷内では一人の人間が慌てたように動く気配が感じられるので、待っていれば出てくるだろう。
「大変、お待たせ、いたしました。何か御用でしょうか」
息を切らせて出てきたのは年配のメイドさんだ。白髪の混じった金髪をしていて、なんとなく苦労しているような雰囲気を感じさせる。
「こちらはSランク冒険者のシュウ様だ。人を探していてな。こちらにおられるリフレシア殿に話を聞きたいと伺った」
「……Sランク!?」
エルからSランクという話が出たので、首元から証拠の冒険者証を出して相手に見せる。どうやらSランクというのはこういうところでも威力を発揮するらしい。
「は、はい! ただいま確認してまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか!」
そう言葉にすると慌てたように屋敷の中へと引っ込んでいく。
「客を応接室に通してもてなす人員もいないのか……」
エルが呆れているが確認した人数を思えばそんなものだろう。下手をすればメイドはあの人だけで、最悪料理人も兼任している可能性すらありそうだ。
『玄関から奥の部屋に向かうメイドを発見。楓ちゃんじゃなさそう』
『俺たちを出迎えたメイドだな。今から例の女のところに俺たちが来たことを伝えに行くみたいだ』
莉緒からの念話につい先ほどの出来事を伝えておく。
『わかった。先にそっちを確認しておくね』
『よろしく』
しばらくすると莉緒から女を確認したと連絡が入る。確かに老けて見えるがあの写真の人物には間違いないとのことだ。伝えられた人物の気配を空間魔法で記憶しておく。となればあと二人だな。
「お待たせいたしました。リフレシア様がお会いになるそうです。こちらへどうぞ」
さらに待つことしばし。メイドが玄関へと現れると、女が会うということで屋敷の中へと足を踏み入れた。
三階建ての建物は部屋数は十ほどはありそうな大きさで、馬はいなさそうだが厩舎なども見える。
「屋敷の中にいるのは四人かな」
気配察知を屋敷の内部まで伸ばした結果をみんなに伝える。
「……ちょっと少なすぎない?」
「この規模の屋敷ならば執事とメイド数人に、料理人や庭師とかが必要になりそうね」
莉緒の言葉にエルが補足してくれる。さすが侍女だけあってこういうことには詳しい。
「この時間帯ならおそらく出かけてもいないでしょうから、四人で全員かと思います」
人数を当てたことに驚いているジェクターだったが、そちらの調査結果とも一致しているようだ。
「で、どうするんだ?」
イヴァンが両腕を組みながら目の前の屋敷を見上げている。
「四人だけしかいないんなら突入してひとりひとり確認してもいいけど……、楓さんがいなかった場合にこじれそうだよなぁ」
「それはそうでしょうね。今はただの無関係な他人だけど、明らかに敵に回っちゃいそう」
教えてくれるものも教えてくれなくなれば厄介だ。
「もう正面から訪ねていって人探ししてるとぶちまけるか?」
顎に手を当てて考えていると、エルが不思議そうに首を傾げている。
「ご主人様たちの実力があれば、誰にも見つからずに潜入して確認できるんじゃ?」
その言葉に思わず莉緒と顔を見合わせる。
「確かに? 遮音結界を張れば音は漏れないな」
「いざとなったらテレポートでどこからでも外に出られるわね」
「じゃあ両面作戦で行くか」
「わかった」
「俺は真正面から屋敷を訪ねる。探し人がいるってな。莉緒は屋敷に潜入して、中にいる人物の顔を確認してきてくれ」
「うん。もし楓ちゃんがいたらどうするの?」
「女が素直に返してくれる可能性もあるから、まだ接触はやめておこうか。連れ出すだけならそう難しくはないだろうし、まずは楓さんがここにいるかどうかだけの確認にしとこう」
「おっけー」
直近の方針が決まったところで改めて屋敷へと集中する。
「うーん、今回俺たちは役に立ちそうにないな……」
後ろから聞こえてきた声に振り返ると、苦笑いを浮かべたイヴァンがフォニアの頭にポンと手を置いていた。
「ボクも……」
フォニアも耳をぺたりと倒して悲しそうな顔をしている。
「うふふ、フォニアちゃんは出番が来たらお願いするから、その時はよろしくね」
「うん」
頭を撫でられて多少は気分を持ち直したようだ。
「じゃあ街でもぶらぶらしてるか? ミミナ商会以外だったら買い物しててもいいぞ」
「あー、まぁそうさせてもらおうかな。……ってかなんでミミナ商会はダメなんだ?」
「ちょっとひと悶着あった商会だからな」
イヴァンが微妙な顔になってるけどしょうがない。あそこの商会にいい印象を持てるわけもない。
「よくわからんがわかった。またあとで連絡してくれ。ニルも俺たちと行こうか」
「わふっ!」
「じゃああたしはシュウについて行くわね」
「そうなのか?」
エルはどうするのかと思っていたら俺についてくるらしい。
「使用人を連れた人物が尋ねてきたほうが、向こうも重く受け止めてくれるでしょ」
確かに、そう言われればそうかもしれない。子どもっぽいと言われた気がしないでもないが、実際に侮られることが多かったのは事実なのだ。
「じゃあそれぞれ行動開始だ。ジェクターさんも案内ありがとうございました」
「あ、いえ。お役に立てたようでよかったです」
こうして俺とエルは屋敷の玄関へと向かい、他のメンバーもそれぞれ動き出した。
エルが先行して玄関の門を開けて歩く後をついて行く。玄関のドアノッカーを叩いてしばらく待つが反応がない。屋敷内では一人の人間が慌てたように動く気配が感じられるので、待っていれば出てくるだろう。
「大変、お待たせ、いたしました。何か御用でしょうか」
息を切らせて出てきたのは年配のメイドさんだ。白髪の混じった金髪をしていて、なんとなく苦労しているような雰囲気を感じさせる。
「こちらはSランク冒険者のシュウ様だ。人を探していてな。こちらにおられるリフレシア殿に話を聞きたいと伺った」
「……Sランク!?」
エルからSランクという話が出たので、首元から証拠の冒険者証を出して相手に見せる。どうやらSランクというのはこういうところでも威力を発揮するらしい。
「は、はい! ただいま確認してまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか!」
そう言葉にすると慌てたように屋敷の中へと引っ込んでいく。
「客を応接室に通してもてなす人員もいないのか……」
エルが呆れているが確認した人数を思えばそんなものだろう。下手をすればメイドはあの人だけで、最悪料理人も兼任している可能性すらありそうだ。
『玄関から奥の部屋に向かうメイドを発見。楓ちゃんじゃなさそう』
『俺たちを出迎えたメイドだな。今から例の女のところに俺たちが来たことを伝えに行くみたいだ』
莉緒からの念話につい先ほどの出来事を伝えておく。
『わかった。先にそっちを確認しておくね』
『よろしく』
しばらくすると莉緒から女を確認したと連絡が入る。確かに老けて見えるがあの写真の人物には間違いないとのことだ。伝えられた人物の気配を空間魔法で記憶しておく。となればあと二人だな。
「お待たせいたしました。リフレシア様がお会いになるそうです。こちらへどうぞ」
さらに待つことしばし。メイドが玄関へと現れると、女が会うということで屋敷の中へと足を踏み入れた。
21
お気に入りに追加
513
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる