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第五部
第一報
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その夜、スマホでぽちぽちとSNSのアカウントを作った。
もちろん投稿動画の広告でまともに稼げるなんて思っていない。フォニアが見てもらいたいと思ったからそっちはついでだ。
普段こっちの世界にいないから、別に素顔を晒しても特に問題ないと思ってる。
「えーっと、『うちの子かわいいので見てください』っと。これでいいか」
ぽちっとするとフォニアが世界に発信されていく。
とはいえ結局お金稼ぎの方法は思いついていない。異世界産の品は大々的に売れないから、しばらくは個人的に仁平さんたちに提供するだけでもいいかもしれない。
急ぐことでもないし、ゆっくりと考えることにした。
そして翌日。
全員を連れて電車で買い物へと向かう。ちなみにニルは先に異世界へと送っている。電車での移動はケージに入らないとダメだし、たぶん向こうについても店の入り口でお留守番になると言ったら即答だった。
メサリアさんの言うことはちゃんと聞くようにと言い聞かせてあるから、たぶん大丈夫だと思う。
「初めて見た時から思ってたけど、人が多いわね……」
時間は午前九時過ぎの電車内である。駅構内や電車内を見回してエルがぼやいている。
「朝の通学通勤の時間帯はもっとすごいわよ」
「ああ、電車の扉が開いても人で埋まっててな。乗るスペースがないなんてざらだよな」
「そうそう。前に電車降りられなくなって遅刻しそうになったこともあったわね」
「あるある」
微妙に思い出話をしているとイヴァンが電車内を見回して。
「じゃあ今は空いてる方なんだ……」
ため息交じりに呟いている。
確かに座席は埋まっているけど立っている客はほとんどいない。フォニアも扉の窓に噛り付いて外の景色を眺めている。
そんなこんなで電車の旅を満喫しつつも、目的地である倉庫店に着いた。
大きいカートを二つほど持ち込んで次々と商品を放り込んでいく。
フォニアが目を輝かせながら選んだ商品ももちろん購入決定だ。これくらいの量だと毎日使わないにしても一か月持たずに消費してしまう。
「なくなったらまた買いに来るしかないな」
「あっちでも作れたらいいけどね」
莉緒の言葉に、以前考えていたことを実行に移す時がきたとピンとくる。
「……じゃあ醤油と味噌の手作りキットも買っていくか」
「……それって前に言ってたやつ?」
「そうそう。日本語を向こうの言葉に翻訳したら、あとは丸投げでいいんでない?」
ちょうど手作りキットがあったのでそれもカートに放り込んでいく。
「それもそうね。私も味噌や醤油づくりには興味があるから、一緒に作ってみようかしら。もちろんエルにも手伝ってもらうから」
「もちろんだ。あれが自分で作れるならあたしだってがんばるさ」
「ボクも!」
「はは、それじゃ一回はみんなで作るか」
こうして各々が好きなものを詰め込んでいくと、あっという間に二つのカートがいっぱいになる。
「一度清算してもう一回来ようか」
「そうね。お昼食べてからもう一回来ましょうか」
「うん!」
「ぜひそうしてくれ」
「……お前ら元気だな」
やる気一杯の俺たちだったが、イヴァンだけはもうお腹いっぱいみたいだ。さっきからずっと買い物してるから飽きたのか。でもまあ最後まで付き合ってもらおう。
というわけでお昼を食べた後は買った荷物を異空間ボックスに入れて買い物を続け、夕方ごろに異世界側へと帰ってきた。
「シュウ様。新しい情報が届いています」
フェアリィバレイの妖精の宿へと帰ってきてすぐ、メサリアさんが慌てた様子でやってきた。
「新しい情報?」
「はい。カエデ様に繋がる情報かと」
「マジか」
「ええっ? 情報集まるのはやすぎない?」
驚く俺たちだったが、イヴァンは変なものを見たような表情になっている。情報伝達速度の遅い世界ではあるが、スマホを広めて金にものを言わせた効果が出たということか。
「とりあえず話を聞こう」
ちょうどここは宿の執務室だ。全員でテーブルに着くとさっそくメサリアさんが話を始めてくれた。
「まず、場所は商業国家アレスグーテの商都コメッツになります」
「なるほど……、やっぱりスマホを手に入れた場所が一番近かったわけか」
「はい。そうなります。そして発見したのは、シュウ様たちにいただいた絵に描かれていた人物です」
俺たちが渡した写真をメサリアさんがテーブルの上へと差し出してくる。そこには目つきの悪い不健康そうなワインレッドの髪の女が写っている。
「へぇ、この本人が見つかったんだ?」
問いかけに対してコクリと頷くメサリアさん。まさかこんなに早く手掛かりが見つかるとは思っていなかったけど、関係者が見つかったとなれば楓さん発見もかなり近くなったんではないだろうか。
あとは生きていることを祈るだけだが……。
「現地の人間には連絡は入れてありますが、すぐに向かわれますか?」
ぐるりと周囲を見回せば、フォニアはうつらうつらしていてイヴァンも疲れているように見える。
「そうだな……。明日の朝一で出ることにするよ」
早く見つかったとはいえ、急を要するわけでもない。しっかりと休息をとってから向かうことにした。
もちろん投稿動画の広告でまともに稼げるなんて思っていない。フォニアが見てもらいたいと思ったからそっちはついでだ。
普段こっちの世界にいないから、別に素顔を晒しても特に問題ないと思ってる。
「えーっと、『うちの子かわいいので見てください』っと。これでいいか」
ぽちっとするとフォニアが世界に発信されていく。
とはいえ結局お金稼ぎの方法は思いついていない。異世界産の品は大々的に売れないから、しばらくは個人的に仁平さんたちに提供するだけでもいいかもしれない。
急ぐことでもないし、ゆっくりと考えることにした。
そして翌日。
全員を連れて電車で買い物へと向かう。ちなみにニルは先に異世界へと送っている。電車での移動はケージに入らないとダメだし、たぶん向こうについても店の入り口でお留守番になると言ったら即答だった。
メサリアさんの言うことはちゃんと聞くようにと言い聞かせてあるから、たぶん大丈夫だと思う。
「初めて見た時から思ってたけど、人が多いわね……」
時間は午前九時過ぎの電車内である。駅構内や電車内を見回してエルがぼやいている。
「朝の通学通勤の時間帯はもっとすごいわよ」
「ああ、電車の扉が開いても人で埋まっててな。乗るスペースがないなんてざらだよな」
「そうそう。前に電車降りられなくなって遅刻しそうになったこともあったわね」
「あるある」
微妙に思い出話をしているとイヴァンが電車内を見回して。
「じゃあ今は空いてる方なんだ……」
ため息交じりに呟いている。
確かに座席は埋まっているけど立っている客はほとんどいない。フォニアも扉の窓に噛り付いて外の景色を眺めている。
そんなこんなで電車の旅を満喫しつつも、目的地である倉庫店に着いた。
大きいカートを二つほど持ち込んで次々と商品を放り込んでいく。
フォニアが目を輝かせながら選んだ商品ももちろん購入決定だ。これくらいの量だと毎日使わないにしても一か月持たずに消費してしまう。
「なくなったらまた買いに来るしかないな」
「あっちでも作れたらいいけどね」
莉緒の言葉に、以前考えていたことを実行に移す時がきたとピンとくる。
「……じゃあ醤油と味噌の手作りキットも買っていくか」
「……それって前に言ってたやつ?」
「そうそう。日本語を向こうの言葉に翻訳したら、あとは丸投げでいいんでない?」
ちょうど手作りキットがあったのでそれもカートに放り込んでいく。
「それもそうね。私も味噌や醤油づくりには興味があるから、一緒に作ってみようかしら。もちろんエルにも手伝ってもらうから」
「もちろんだ。あれが自分で作れるならあたしだってがんばるさ」
「ボクも!」
「はは、それじゃ一回はみんなで作るか」
こうして各々が好きなものを詰め込んでいくと、あっという間に二つのカートがいっぱいになる。
「一度清算してもう一回来ようか」
「そうね。お昼食べてからもう一回来ましょうか」
「うん!」
「ぜひそうしてくれ」
「……お前ら元気だな」
やる気一杯の俺たちだったが、イヴァンだけはもうお腹いっぱいみたいだ。さっきからずっと買い物してるから飽きたのか。でもまあ最後まで付き合ってもらおう。
というわけでお昼を食べた後は買った荷物を異空間ボックスに入れて買い物を続け、夕方ごろに異世界側へと帰ってきた。
「シュウ様。新しい情報が届いています」
フェアリィバレイの妖精の宿へと帰ってきてすぐ、メサリアさんが慌てた様子でやってきた。
「新しい情報?」
「はい。カエデ様に繋がる情報かと」
「マジか」
「ええっ? 情報集まるのはやすぎない?」
驚く俺たちだったが、イヴァンは変なものを見たような表情になっている。情報伝達速度の遅い世界ではあるが、スマホを広めて金にものを言わせた効果が出たということか。
「とりあえず話を聞こう」
ちょうどここは宿の執務室だ。全員でテーブルに着くとさっそくメサリアさんが話を始めてくれた。
「まず、場所は商業国家アレスグーテの商都コメッツになります」
「なるほど……、やっぱりスマホを手に入れた場所が一番近かったわけか」
「はい。そうなります。そして発見したのは、シュウ様たちにいただいた絵に描かれていた人物です」
俺たちが渡した写真をメサリアさんがテーブルの上へと差し出してくる。そこには目つきの悪い不健康そうなワインレッドの髪の女が写っている。
「へぇ、この本人が見つかったんだ?」
問いかけに対してコクリと頷くメサリアさん。まさかこんなに早く手掛かりが見つかるとは思っていなかったけど、関係者が見つかったとなれば楓さん発見もかなり近くなったんではないだろうか。
あとは生きていることを祈るだけだが……。
「現地の人間には連絡は入れてありますが、すぐに向かわれますか?」
ぐるりと周囲を見回せば、フォニアはうつらうつらしていてイヴァンも疲れているように見える。
「そうだな……。明日の朝一で出ることにするよ」
早く見つかったとはいえ、急を要するわけでもない。しっかりと休息をとってから向かうことにした。
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