成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
298 / 421
第五部

いろいろと興味は尽きないようです

しおりを挟む
 建物内にいる他の人たちから逃げるように出ると、ここまで来たときに使った車へと乗り込んで、仁平さんの待つDORAGON社のビルへと向かった。
 明日香は「またあいつらに見つかったら面倒」とか言ってたけど、なんとなく説明するのが面倒で逃げたようにも感じられるがそれは言わないでおく。

「DORAGON社って、あのDORAGON社か……?」

 行き先を告げた明日香が、訝しげな表情で運転席からこちらを振り返る。いまいちピンときてはいないが、世界五大通信会社のひとつであるDORAGON社に俺たちが何の用があるのか疑問らしい。
 と言っても俺たちに用があるのは向こうなんだけどな。

「あの、と言われてもよくわかりませんけど、DORAGON社には間違いないはずです」

「あー……、うん、……そうか……」

 無難な返しができたかなと思ったけど、明日香は言葉を濁してそのまま黙ってしまった。静かになる車内ではあるが、日本を知らないイヴァンとフォニアとエルの三人は、窓に張り付いて興味深そうにずっと外を眺めている。

「うお、なんだありゃ!」

「はやい!」

 たまたま通りかかった新幹線を目撃したようで、興奮した様子を見せる三人。俺たちが空を飛ぶ普段の移動速度よりも速そうだ。全力を出せばわからないが、少なくともニルは付いてこられない。

「今度電車に乗ってみようか」

「電車?」

「もしかして今さっき向こうを高速で走り抜けていったあれか?」

 フォニアは首を傾げるだけだったが、イヴァンが察したのかほぼ正解を言い当てる。

「あれじゃなくて、もうちょっと遅い似たようなやつだけどな」

「うん! 乗りたい!」

「じゃあ仁平さんとご飯食べたら電車で帰ろうか」

「やったぁ!」

 両手を上げてはしゃぐフォニアを撫でると、スマホを取り出して地図アプリを開く。日本で拠点としているマンションは地図には入れてあるのだ。DORAGON社からマンションまではそこまで遠くない。いくつかルートがあるけどあとで考えよう。



「着いたぞ」

 フォニアたちとおしゃべりしているうちに到着したようだ。車から降りると見覚えのある地下駐車場だった。明日香も車から降りてキョロキョロと物珍しそうにしている。

「送ってもらってありがとうございます」

「これも仕事だからな。気にしなくていいさ」

「おねーさんありがとう!」

 フォニアが耳をぴこぴこさせながら丁寧に礼を言うと、明日香も表情が崩れている。

「じゃあ私たちはこれで失礼しますね」

「ああ、元気でな」

 最後に挨拶をすると、明日香が俺たち一人ずつ見渡していく。最後のエルでしばらく止まっていたが、特に何を言うでもなく踵を返すと車へと戻っていった。

「……ずっと黙ってるのも結構辛いものね。いろいろ聞きたいことがあったんだけど」

 車を見送ったところでエルがため息とともに零す。

「もうしばらくの辛抱だな」

 奥のエレベーターホールへと向かいながら肩をすくめると、エルからさらに大きなため息が聞こえてきた。
 異空間ボックスから入館証を取り出すと、服の裾が引っ張られる。

「お兄ちゃん。……ボクもそれやってみたい」

 振り返ると、フォニアが上目遣いで取り出した入館証を指差していた。

「これ?」

 手渡してあげると嬉しそうにして頭上に掲げる。

「ありがとう!」

 入館証のカードをひっくり返して裏側を確認すると、ニヤニヤとした表情を抑えられないまま奥の扉へと向かう。だがしかし、カードを読み取り機へと翳そうと手を伸ばし、背伸びをしても届かないようであった。
 ゆっくりと振り返ったフォニアの顔は悲しみに濡れており、今にも涙が零れ落ちそうになっている。

「あー、うん……、届かないかぁ」

 声に出して笑うわけにもいかず、ゆっくりとフォニアの頭を撫でるとしばし考える。
 踏み台になりそうなものはいっぱい入ってたなと思い、異空間ボックスから木箱を取り出して床に置いた。

「これなら届くだろ」

「……うん!」

 再度顔を輝かせたフォニアが台に乗ってカードを翳す。と、「ピッ」という効果音と共に扉が開いた。

「ボクにも開けられたよ!」

「よかったな」

 台から降りて嬉しそうにするフォニアからカードを受け取ると、盛大に頭を撫でてやった。

「……へぇ、その小さいカードが鍵になっているというわけね」

 エルが感心したように頷くと、読み取り機をしきりに観察している。あらゆる角度から眺めてはぶつぶつと呟いているけど、いい加減にしないと置いていくぞ?
 全員で扉の中へと入っていくと、慌てた様子でエルが最後に入ってくる。

「なんだここは……?」

 狭いエレベーター内を見回して首を傾げている。
 フォニアを抱き上げて72階のボタンを押させると、床に降りて嬉しそうに閉ボタンを押している。
 扉が閉まる様子を見ていたエルだったが、何を思ったのか71、70と順番にボタンを押し始めた。

「こら、やめい」

 腕を取って止めると、エルが不思議そうに振り返る。が、エレベーターが動き出すと同時に余裕があったエルの表情が慌てだした。

「これは建物の各階層を移動する乗り物なんだよ。押したら用事のない階にも止まるだろうが」

「なん……だと――ッ!?」

 説明して納得したようだったが、五階を越えて外の景色が見えるようになった瞬間、エルの目がこれでもかというくらいに見開かれた。

「なんというか、イヴァンよりリアクションが面白いエルってのも新鮮だな」

 莉緒を振り返ると、エルに押された階のボタンをダブルタップしているところだった。止まる必要のない階のボタンが、ダブルタップされることで次々と消えて行く。

「なん……だと」

 エルと同じ反応をしたら、莉緒が耐えきれずに噴き出した。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...