成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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第五部

新たな勢力?

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「次元の穴を開けられるようになるまでもうちょっとかかりそうね」

 何事もなく脱出してきた俺たちは、ひとまず城壁の上へと降り立っていた。仕事を終えたから即帰還というわけにもいかなかったのだ。さすがに世界を超えるともなれば二連続で発動できるものでもない。

「なにして時間潰すんだ?」

「街に出ても悲鳴を上げて逃げられるだけだしなぁ」

 イヴァンの言うように、莉緒の魔力が回復するまでちょっとだけ時間がある。この世界でできることって他に何かあったっけ?
 他に何かやりたいことがあるのかメンバーを見回していると、またもやエルが首を傾げていた。

「どうしたんだエル?」

「いや、例の魔人族っての? さっぱり言葉がわからなかったんだけど……、奴らと会話してたイヴァンも何喋ってるかわからなかったのよね」

「そうなのか」

 思わずイヴァンと顔を見合わせるが、イヴァンいわく特に意識して喋る言葉を切り替えてるつもりはないらしい。

「俺も特に意識はしてないけどな」

「私もそうね」

「もしかしてそれも神様からの恩恵とか?」

 エルの言葉に軽く頷くと「ずるい」と言われてしまった。が、どうしようもないので諦めてくれとしか言いようがない。

「じゃあこれはわかる?」

 魔人族と喋ることを意識して話しかけると首を傾げられる。

「なに? もしかして魔人族語? 何言ってるかさっぱり」

「へぇ、なるほど……。じゃあこっちは?」

 今度は莉緒がエルへと話しかける。言語について意識しているので、後半の言葉が日本語になっていることはわかった。

「なるほど、まではわかったけど、そのあとがわからない。さっきと言語体系が違うようだけど……」

「今のは日本語」

「これがわからないってことは、楓さんの世界にいっても言葉が通じないな」

「なん……だと」

 エルが愕然とした表情で固まる。

「……新しい文化に触れられると思って、楽しみにしていたのに……」

 ひざから崩れ落ちると両手を地面について絶望に暮れている。

「お前、そんな趣味あったのか」

「……これだけ長生きだと、どこに行っても新しいものなんて滅多にないんだよ」

「そういうもんか」

 項垂れるエルの肩をフォニアがわけもわからずにポンポンと叩いている。ドヤ顔でうんうんと頷いているけど、同情してるのかなんなのかはよくわからない。けど可愛いからいいか。

「まぁ、それなら街の方へ行ってみるか。ここでこうしてても暇なだけだし」

 俺の言葉に俯いていたエルが顔を上げる。

「泣いて逃げられるけどな」

「それさっきも言ってたけど、なんなの? 魔人族ってステータス高めなんじゃないの?」

「それは知らん」

 地底人相手に逃げ惑う理由なんぞ知らんし、別に知りたいとも思わない。むしろ逃げてくれるならむしろ好都合ってもんじゃなかろうか。

「んじゃさっそく行こうか」

 こうして俺たちは全員揃って、城壁の上から街へと降りて行った。



 大通りへと降り立った瞬間、前回と同様に大声で悲鳴を上げられて一気に周囲には誰もいなくなった。

「――は?」

 エルがポカンとした表情で周囲を見回しているが、これが現実なので仕方がない。きっとここまでとは思ってなかっただろう。

「どうせ会話通じないんだし、魔人族はいてもいなくても一緒じゃね?」

「んなわけあるか! こう、風情とかいろいろあんだろ!?」

 慰めになるかどうかわからない言葉をかけると、イヴァンからツッコミが返ってきた。そう言われればそういうもんかもしれない。けどエルのために通訳をするつもりはこれっぽっちもないけどな。

「誰もいなくなったし、いろいろ店覗いて行こうぜ」

 飲食店では客が食い散らかしたり逃げる際にテーブルをひっくり返したりしたのか、えらい惨状となっている。

「ここのご飯はあんまりおいしくなかったよ」

 散らかったお店をちらりと見つつ、フォニアが不満を漏らしている。

「あと、私たちにとっては毒になるものも、魔人族は普通に食べるみたいね」

「そうだな。だから食い物以外をメインで見ていこうか」

 誰もいなくなった雑貨屋や服飾店などを物色していくが、めぼしいモノは特に見当たらない。でかい図体をしているからか、不器用なんだろうか。武器屋にも入ってみたが、サイズがでかいものが置いてあるだけだ。

「魔道具みたいなのがあればいいんだけどなぁ……」

「面白いモノないわね」

 どうやら料理だけではなく、日常生活に至るすべての文化がそこまで発達していないらしい。

「うーん。これ以上いても面白味はないし、そろそろ帰るか?」

「そうねぇ。魔力もある程度は――」

 いい加減に飽きてきて大通りをぶらぶらしていると、裏通りから何かが近づいてくる気配を感じた。そのまま勢いを緩めることなく大通りへと飛び出すと、後ろを気にしながらこっちへ向かってくる。どう見ても魔人族だ。

「くそっ、このまま逃げ――」

 逃走方向へと顔を向けた魔人族が、俺たちを視界に捉えた一瞬行動が止まる。振り返ってどうするか即決定したのか、そのまま突っ込んできた。

「まさか先回りされてるとは!」

「だけど人数少ない方が可能性はあるだろ! お前らそこをどけ!」

 二人組の魔人族が揃って手に魔力を込めていくと、後ろから追いかけてきたであろう者たちも姿を現した。

「逃げるな!」

 十人ほどまとめて出てきたのは、二本足二本腕の小柄な――普通サイズ・・・・・の人間だった。大通りへ一列に並ぶと片膝をついて、手に持っていた大型銃を魔人族へと向けるのだった。
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