成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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第五部

イヴァンからの知らせ

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 結果的にこの五人組は噂の新人狩りではなかった。
 なので、大々的に俺たちが捕まえましたと冒険者ギルドまで引きずっていくわけにはいかない。そんな姿を見られれば、俺たちから一気に新人臭がしなくなる。

「というわけなんです」

『あいつらですか……。ギルドでも素行が悪かったんですが、やっぱりそうだったんですね』

 さっそくスマホでドロシーと連絡を付けると、そんな感想が返ってきた。パーティ名『ケルベロス』という五人組で、普段から悪い意味で注目されているパーティだったらしい。

「で、引き渡そうと思ってるんだけど、どうしようかね。なんだったらギルドの会議室に直接テレポートで送り込むけど」

『それはそれで楽ですが、ダンジョンから出た記録が付けられないのはちょっと……』

「あぁ、なるほど。じゃあここまで引き取りに誰か寄越してくれるかな」

『承知しました』

「両手両足縛って転がしておくから、あとはよろしく」

 場所を伝えてあとはドロシーへと丸投げすると、スマホの通話を切ってポケットへ仕舞う。異空間ボックスからロープを取り出すと、男五人の手足を縛りあげておいた。

「これでいいかな。あとはさっきの魔法陣のことだけど……」

「そうね。すごく見覚えがあったし、魔法陣も探ってみたけどやっぱりあれって魔人族の召喚陣だよね」

 魔人族という言葉が聞こえたからか、フォニアも眉間に皺を寄せて「むむぅ」と唸っている。

「ああ、間違いないと思う。魔物の集団を送り込んでおいたけど、きっちりと潰しておかないとダメだろうなぁ」

「うん。こうも頻繁に召喚されたんじゃたまんないわよね」

 思い返せば確か召喚された部屋の床に魔法陣が描かれていたはずだ。周囲を魔人族が固めて魔力を流していたように思う。

「少なくとも床に描いてあった召喚陣だけでもぶっ壊しに行かないとな」

「しょうかんじん、ぶっこわす!」

 莉緒と頷き合っていると、フォニアも両手を上げて気合を入れている。女神による追加召喚? はなかったようだが、次にもう一回発動させるにはしばらく時間がかかるだろう。前回魔人族の世界に召喚されてから今回の発動まで、結構時間がかかってるみたいだし。
 しかし咄嗟に隷属耐性の付与なんて試してみたけど、うまくいったんだろうか。なんとなく念じてみただけで、できたかどうか実感もない。ちょっとこっちの魔物でもう一回試してみるか。

「よし、じゃあとりあえずさっさとここから出よう」

 五人組回収チームと一緒にいるところを見られても厄介だ。まだまだ新人臭さを出しておかなければならないのである。

「おー」

 フォニアの掛け声とともに新しい通路から出ると、元の行き止まりに見えるように塞ぎなおしておく。関係ない他の冒険者に見つかると厄介だし、ドロシーには伝えてあるから大丈夫だろう。

「他の行き止まりもメインで探索しようか」

「はーい」

 言うことをよく聞き分けてくれるフォニアとニルを真ん中にして、ダンジョンの行き止まりを巡っていく。

「なんだあれ?」

 何度目かの行き止まりに突き当たった時、壁の天井近くに神棚のように突き出している岩を発見した。

「なになに?」

 フォニアが好奇心の目で神棚へ視線を向けているので、抱き上げて魔法で宙に浮く。

「なんだろうな」

 そこには太陽の光も射さない洞窟フロアにもかかわらず、青々と茂った植物が生えていた。神棚の上に黒っぽい柔らかい土が敷き詰められていて、岩から直接生えているわけではなさそうだ。

「草ね」

「そうだな」

 同じく宙に浮いていた莉緒の身も蓋もない言葉に思わずうなずいてしまう。鑑定してみるがただの雑草のようだ。すごいところに生えてるから珍しい植物なのかと思ったが、そうでもないらしい。まだ浅い階層だから調べ尽くされてるということだろうか。

「でもダンジョン内のアイテムってこんな感じで落ちてるのかな」

「さっきも四角い囲いの中に入ってたわよね」

「てっきり宝箱みたいなものが出てくると思ってたんだけどな」

「……宝箱って何?」

 ダンジョンと言えば宝箱かと思ったけど、ゲームをしない莉緒には通じなかった。でもよく考えれば、ダンジョンがわざわざ宝箱を用意する必要性もよくわからない。お宝があることがわかっていれば人はダンジョンに入ってくるのだ。

「ボクもお宝がんばって見つけるよ!」

 俺たちの話を聞いていたフォニアが何やら気合を入れ出した。ふんふんと匂いを嗅ぎながら俺の後をついてくる。一緒になってニルも鼻をふんふんさせているのが面白い。

「おう、がんばれフォニア」

「がんばってね。応援してるよフォニアちゃん」

「うん!」

 俺たちの応援の言葉にふんすと鼻息を荒くしている。壁の凹凸で影になっている個所に回り込んでみたり、ヒビが入っている細い割れ目に顔を近づけて覗き込んだりなんとも楽しそうだ。

 そうしてしばらくダンジョンを彷徨っていると、ポケットに忍ばせていたスマホが着信を知らせてきた。静かなダンジョンで音が鳴ると目立って仕方がない。初めて着信を受けたけどこれはなんとかすべきか。マナーモードって素晴らしかったんだな……。
 さすがに俺以外も着信音に気づいたようで、全員の視線を集めている。肩をすくめてポケットからスマホを取り出して電話に出ると、慌てたイヴァンの声が聞こえてきた。
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