成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
278 / 424
第五部

仕事の交換

しおりを挟む
「へぇ、あたしのご主人様たちが信じられないなんて、心外だねぇ」

 どれだけ俺たちが怪しく見えるのかを並べ立てていたドロシーに、どうやって信じてもらおうか考えていたところ、黙って後ろで立っていたエルが言葉を発した。

「ご主人……さま?」

 急に割って入られたドロシーが俺たちの後ろに視線をやるが、俺たちも一緒になって後ろを振り向く。

「いきなりご主人様ってなんだよ」

「そうよ、ちょっと気持ち悪いじゃない」

「……あたしがリオの奴隷だって話をしようと思って出てきただけなのに、ひどい言いぐさだね」

 ドロシーに何か言ってくれそうな気配はわかったけど、それよりも慣れない呼ばれ方をされたことの違和感が勝ってしまった。

「あのエルヴィリノスを、奴隷ですって……?」

 話を途中でぶった切ってしまった形になったと思ったけど、ドロシーには何かが伝わったようで何よりだ。にしても「あの」ってなんなんだろうな。二十年前に暗殺ギルドに世話になってたときに何かやらかしたのか。

「シュウ様。冒険者証をお見せしていただければと」

「そういえばそうだな」

 メサリアさんの言葉に、改めて俺たちがどこに来たのかを思い出す。冒険者ギルドに来たんだからして、冒険者証は信用に値するだろう。
 Sランクの証であるミスリルのプレートを取り出してテーブルに置くと、息を呑む音が聞こえてきた。

「ふ、二人とも……」

 そういえばステータスだけならSランク相当なエルもそれなりに有名なのかもしれないな。スキルが見えるようになってから見てないから、あとで見ておくか。

「前のギルドマスターが手も足も出なかったほどなので、気を付けてくださいね」

「門番から緊急連絡が入っていたけど……、あなたたちのことだったのね……」

「そういうわけで、魔道具を改造するので持ってきてもらえますか」

「すぐ持ってきます!」

 冒険者証を出してからは効果てきめんだった。
 即座に席を立つと慌てて部屋を出て行き、しばらくしてすぐに帰ってきた。「どうぞ」とスマホを差し出すが、椅子に座らずに直立不動のままだ。
 いちいち相手にするのも面倒なので、そのまま受け取るとスマホに改造を施す。もう何度もしてきたので慣れたものだ。数分で終わらせるとドロシーへと返した。

「これで改造した全てのスマホとつながるようになったはず」

「え、全部……?」

「なので何かあったらすぐに連絡をください」

「わ、わかりました」

「じゃあ他所よそのギルドにも連携よろしく」

「あ、ちょっと待ってください!」

 これで話は終わりだとばかりに席を立とうとしたところ、ドロシーに呼び止められた。視線で続きを促すと、恐る恐る口を開いた。

「カエデさんを探す任務が最優先なのはわかりました。ですが、こちらも人数をかけている優先任務がひとつありまして……」

 聞くところによると、少し前からダンジョンで新人狩りが発生しているらしい。慣れない若い冒険者をダンジョン内で襲って、装備品などを奪う事件だ。中には新人を抜け出したくらいの冒険者が犠牲になった例もあるようで、その犯人探しが行われているらしかった。

「そして犯人は、盗賊ギルドの人間だとわかるような痕跡を残しているらしくて……」

「へぇ。盗賊ギルドには心当たりがないと?」

「はい。気づかれにくいようにはされていますが、こちら側からするとわざとらしく見えるので。それに盗賊ギルド側としては新人狩りをするメリットもありませんし」

 盗賊ギルドメンバーによる囮作戦なども行われているようだが、さっぱり引っかかってくれる様子もないようだ。
 確かに、駆け出し冒険者の身ぐるみ剥いだところでそんなにお金になるとも思えない。日ごろから食うのに困ってる盗賊ギルド員が駆け出し冒険者に手を出すというのも、徹底されたギルドのルールからしても考えられないとのことだ。

「なるほどねぇ……」

 腕を組んで考え込んでいると、隣から「ふふっ」と莉緒の笑い声が聞こえてきたかと思えば。

「なんだかダンジョンに行きたそうな顔してるわよ」

 内に秘めていた願望がバレて一瞬言葉が出なくなったが、別に隠したいわけじゃないし行きたいのは事実だ。

「どんなところかは気になるけどね」

 しかしなんともばつが悪くて頬を掻いて視線を彷徨わせる。

「別にいいんじゃない? それに私たちの見た目だと新人に見えるだろうし」

「……そこだけは実に遺憾なことだけど」

「……なんて凶悪な新人だよ」

 俺たちがしみじみしていると、後ろからぼそりと呟く声が聞こえてきた。が、きっぱりと無視するとドロシーへと顔を向ける。

「というわけでそっちは俺たちが引き受けよう。楓さんの捜索に力を貸してくれ」

「えと、いや、いいんですか?」

「ああ。他の場所に配った魔道具の改造が終わってからだから、明日か明後日以降からになるけど」

「えっ?」

「じゃあそういうことでよろしく」

「あ、そうそう。これ楓さん捜索用の資金ね」

 ポカンとするドロシーを置いて、ジャラリと音のする革袋をテーブルへと積んでいく。メサリアさんからあらかじめギルドの規模を聞いていたので、それに相当する金額だ。

「楓さんに繋がるヒントでも見つかったらボーナスも出るから、がんばって」

 有無を言わせぬように席を立つと、冒険者ギルドの会議室からフェアリィバレイまで次元の穴を開き、さっさとお暇することにした。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラス転移したが、目覚めたジョブが最弱職だった件~

おさない
ファンタジー
ごく普通の高校生である俺こと観音崎真城は、突如としてクラス丸ごと異世界に召喚されてしまう。   異世界の王いわく、俺達のような転移者は神から特別な能力――職業(ジョブ)を授かることができるらしく、その力を使って魔王を討伐して欲しいのだそうだ。 他の奴らが『勇者』やら『聖騎士』やらの強ジョブに目覚めていることが判明していく中、俺に与えられていたのは『観光客』という見るからに弱そうなジョブだった。 無能の烙印を押された俺は、クラスメイトはおろか王や兵士達からも嘲笑され、お城から追放されてしまう。 やれやれ……ここが死ぬほどやり込んだ『エルニカクエスト』の世界でなければ、野垂れ死んでいた所だったぞ。 実を言うと、観光客はそれなりに強ジョブなんだが……それを知らずに追放してしまうとは、早とちりな奴らだ。 まあ、俺は自由に異世界を観光させてもらうことにしよう。 ※カクヨムにも掲載しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...