成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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第五部

予想通りの依頼

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「お願い、ですか?」

「ああ。楓のことを、どうか探してもらえないだろうか」

 深々と頭を下げながら懇願する仁平さん。

「私からもお願いしたい。君たちも大変な思いをして今ここにいるんだとは想像するが、私たちには君たち以外に頼れる者がいない」

 二人して頭を下げられるとなんとも居心地が悪くなってくる。……というと語弊があるかもしれない。
 今まで傲慢で見下してくる相手しかいなかったから、なんだかむず痒い。とはいえ依頼内容としては予想通りだ。しかもこういう頼み方をされてしまうと、受けてもいいんじゃないかと思えてくるから不思議だ。

「もちろん相応のお礼はさせてもらう。……ここではない日本からきたというのであれば、身分証明書など持っていないだろう。となればスマホを買うこともできまい」

「ああ、それはいいな。儂も礼として何がいいか考えとったが。どうせならスマホ決済もいくらでも使えるようにしておこう」

 十四郎さんに続いて仁平さんが提示してきたのは、なんとスマホだった。しかもスマホ決済し放題とかマジですか。

「使い放題って……、いっぱい買い物しちゃいますよ……?」

「うむ。楓の捜索に関係ないものでも好きなように購入してくれてかまわんよ。スマホを拾ってくれた礼でもあるからの」

「そうだな。それにスマホがあればこの世界の調べ物もできるだろう」

「えっ? すまほってそんなことまでできんのかよ?」

 イヴァンが驚いているが、実際スマホはいろんなことができるからな。
 しかしそこまで言われればこの依頼は引き受けてもいいんじゃなかろうか。

『いいんじゃないかしら』

『莉緒もそう思うか?』

『だって、食材買い放題じゃない? これを逃す手はないわね』

『だよなぁ』

『俺にはよくわからんから二人に任せる……』

 莉緒と二人で頷き合っていると、イヴァンは思考を放棄したようだ。フォニアに至ってはニルを枕にして寝ている。

「もちろん君たちにも予定はあるのはわかっているが、片手間でもいいので探してみてはくれないだろうか」

「ええ、わかりました。引き受けましょう」

「ほ、本当か!?」

「はい。もともと私たちは異世界のあちこちを食を求めて旅して回ってただけで、そんな大した目的なんてありませんでしたし」

「ありがとう……、本当にありがとう……!」

 瞳を潤ませながらお礼を言う二人には「乗り掛かった舟です」と言っておいた。

「さて、もう時間も遅くなってしまったな。夕食にしようと思うが、君たちも一緒にどうだろうか。もちろんごちそうするよ」

「じゃあ遠慮なくご一緒させてもらいます」

 外を見ればもう日が落ちて暗くなっていた。と言っても眼下の街には明かりが次々と灯っていて、綺麗な夜景が広がっている。

「おーい、フォニア起きろ」

 席を立って窓際へと近づくと、その手前で寝ていたフォニアを起こす。

「……ふえ?」

 ほっぺに涎の跡を付けたフォニアが寝ぼけたまま辺りを見渡すと、窓の外を向いたときに動きが止まった。

「きれいだねぇ……」

「はは、そうだな。腹減ったか? 晩ご飯食べに行くぞ」

「うん!」

 ご飯の言葉に耳がピクリと反応すると、元気な返事が返ってきた。

「はは、静かだと思ったらそんなところで寝ていたのか……」

 会議室の床とはいえ絨毯が敷いてある。ましてやニルを枕にしていたのであればそこそこ快適だったんだろう。

「では行こうか」

 くわっとあくびをするニルも連れて、仁平さんのあとをついて行った。



「うまっ、うまっ!」

「うまーい!」

 イヴァンとフォニアがすき焼きをフォークでかきこんでいる。
 イヴァンの肉と俺たちの和食というリクエストの結果がこの晩ご飯だった。黄金比率を謳う割り下がいい味を出している。

「ははは、いっぱいあるから遠慮せずに食べてくれ」

 ここは十四郎さんに連れられてやってきた、同じビルにあるすき焼きの専門店だ。お箸を器用に使えなかった二人が、豪快に肉を食べる様子を呆れて見ていたらそう声を掛けられた。

「ありがとうございます。めちゃくちゃ美味しいですね……」

 個室になっていて他人に気を使う必要もないとはいえ、さすがにニルは連れてこられなかった。それもあって心持ち急いで食べている感じはある。いい匂いの漂ってくる店先で断られてショックを受けるニルに、憐憫の情が湧いてやまない。
 あとで美味い飯食わせてやるから待っててくれよ……。

「卵に付けて食べるってのがすげぇよな。こんなに美味いとは思わなかったぜ……」

「ニルも食べられればよかったのにね」

「ははは、犬に味のついたものはダメなんじゃなかったかな」

 フォニアの言葉に笑いながら仁平さんが言葉を続ける。

「ニルは犬じゃなくて魔物なので何でも食べますよ」

「へっ? ま、まもの?」

「ええそうですね。何だったら玉ねぎとか食べてもなんともないですし、いつも俺たちと同じもの食べてます」

 尻尾もふさふさすぎてパッと見だと気づかないけど、ちゃんと三本あるしね。
 ニルについてあれこれと説明していたが、柳原さん親子の二人はいつの間にか箸の動きが止まってちょっと青い顔になっていた。
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