265 / 424
第五部
この世界にできた接点
しおりを挟む
「……なんとなく知ってる日本と微妙に違うな」
コンビニ入り口近くの雑誌売り場でドライブマップを見つけた俺は、さっそく中身を開いて目に入った日本の地形を見て呟いた。南北に細長いのは間違いないが、なんかこう、違和感がある。
「なんだろうな……」
他に世界地図も見てみたいが、さすがにコンビニにあるドライブマップだけあってそこまで広範囲は載っていない。
北は北海道から本州があり、淡路島や四国九州の島もちゃんとある。名前は全然違うけど。うーん、形が微妙に違うのか……、それとも名前のせいなのか、わからん。
とりあえずここは大阪あたりの場所らしい。地図上では白河崎県って書いてあるけど。ややこしいなもう。
「他の本は……」
漫画に至っては知ってる作品がひとつもなかった。ゴムが人間になるやつとか鬼を片っ端からナンパするやつとか、ちょっと続きが気になってたんだけどなぁ。
こっちは芸能雑誌か。知ってる有名人が一人もいない……。国名は日本なんだけど、自分のまったく知らない日本が存在することにすごく気持ち悪さを感じる。
「はぁ……」
知っているけど知らない世界に大きくため息をつく。コピー元の自分がいない世界とわかって安心といえば安心だけど、調べれば調べるほどに増えてくる違和感にすごく複雑な気分だ。よく知る世界ではあるけど、すごく居心地が悪い。へぇ、と思えることもあるから全部が全部悪いってわけじゃないんだけどね。
そうしてしばらくコンビニの雑誌コーナーで時間を潰していると、ポケットに入れていたスマホに着信が入った。名前を見ると『じぃじ』だったので、みんなに戻ってくるように先に念話で連絡しておく。
「はい、もしもし」
『ああ、待たせたね。近くまで来たんだが、場所はコンビニでよかったかな?』
「あ、はい。コンビニで大丈夫です」
『承知した』
外に視線を向けると、この場所に似つかわしくない高級車が駐車場へと入ってくるところだった。今までテレビでしか見たことなかったけど、あの長い車体はリムジンとかいうやつだろうか。
何も買わずにコンビニを出ると、スマホ越しに今出てきたのが自分だと伝える。
普通車しか駐車スペースの取っていない場所にリムジンが入ってくる。ちょっとはみ出してるけど仕方がない。運転手がさっと降りて後ろのドアを開けると、スマホを耳に当てたままの男性が姿を現した。ビシッとした紺色のスーツを決め、頭に白髪の混じった渋い男性だ。
同じようにスマホを耳に当てた俺を視界に捉えると、驚いた表情でスマホをポケットに仕舞い片手を挙げる。
「キミが楓のスマホを見つけてくれた人物で合っているかい?」
「はい、水本柊です」
「おお、これは失礼。儂は柳原仁平という。本当に、手掛かりを見つけてくれてありがとう」
噛みしめるように言葉にするとお互いに握手を交わす。
「いえ、たまたまなので……」
「ああ、それでもだ」
がっちりと握り合った手を離すと、柳原さんがぐるっと周囲を見回してまた俺に視線を戻す。
「そういえば一人なのかい?」
電話越しに俺以外の声が聞こえていたからだろうか。もう戻ってきてるんだけどね。
「あ、すみません、お待たせしました」
後ろから聞こえた声に振り返り、ギョッとしたのか一歩後ずさっている。服装もそうだけど、全身ローブにフードを被った大男のイヴァンはそれなりに威圧感があるんだろう。
「ああ……、大丈夫だ……。改めて自己紹介しよう――」
そう言ってもう一度名乗ると、一人一人としっかりと握手を交わしていく柳原さん。
「莉緒です。よろしくお願いします」
「イヴァンです」
「ボクはフォニアだよ! この子はニルって言うの」
「わふぅ!」
フォニアと握手するときにはしゃがみこんで、しっかり目線を合わせていた。そして頬が緩んでいたのも見逃さない。うちのフォニアは可愛いのだ。
「さて、さっそく場所を変えたいんだがいいだろうか」
「かまいませんよ」
「そうか、では行こう」
というと停めてあったリムジンへと引き返すと、運転手にドアを開けさせて笑顔で振り返り。
「遠慮なく乗ってくれ」
とだけ言うと、車内へと乗り込んでいく。
「えっ、この車……」
莉緒がリムジンを見て足を止める。
「お邪魔します」
好奇心の勝った俺は、そのまま車の後部のドアの中へと乗り込んでいく。
広々とした空間はすごく開放感がある。扉のあった反対側の側面はすべて座席になっており、入ってすぐ左側にはテーブルと各種のカップやグラス、その向こうに冷蔵庫があった。運転席に近い側は大型のテレビが埋め込まれている。
後ろから遠慮がちに莉緒が乗ってくるとフォニアとニルが続き、最後にイヴァンが腰をかがめておっかなびっくりした様子で入ってきた。
扉が閉められると運転手が運転席へと乗り込んできたので、柳原さんが声を掛ける。
「オフィスまで頼む」
「かしこまりました」
そしてゆっくりと動き出すと、フォニアとイヴァンから驚愕の声が聞こえてきた。
「あ、そういえば今更ですけど、ニルも乗ってよかったんですか?」
「はっはっは。かまわんよ。それに置いていくわけにもいかんだろう」
足元で伏せるニルを撫でながら聞くと、笑いながら答えが返ってきた。
たとえ高速道路で飛ばしても走って追いかけてこれるだろうけど、そんなことしたら通報されてえらいことになりそうだし黙っておいた。
コンビニ入り口近くの雑誌売り場でドライブマップを見つけた俺は、さっそく中身を開いて目に入った日本の地形を見て呟いた。南北に細長いのは間違いないが、なんかこう、違和感がある。
「なんだろうな……」
他に世界地図も見てみたいが、さすがにコンビニにあるドライブマップだけあってそこまで広範囲は載っていない。
北は北海道から本州があり、淡路島や四国九州の島もちゃんとある。名前は全然違うけど。うーん、形が微妙に違うのか……、それとも名前のせいなのか、わからん。
とりあえずここは大阪あたりの場所らしい。地図上では白河崎県って書いてあるけど。ややこしいなもう。
「他の本は……」
漫画に至っては知ってる作品がひとつもなかった。ゴムが人間になるやつとか鬼を片っ端からナンパするやつとか、ちょっと続きが気になってたんだけどなぁ。
こっちは芸能雑誌か。知ってる有名人が一人もいない……。国名は日本なんだけど、自分のまったく知らない日本が存在することにすごく気持ち悪さを感じる。
「はぁ……」
知っているけど知らない世界に大きくため息をつく。コピー元の自分がいない世界とわかって安心といえば安心だけど、調べれば調べるほどに増えてくる違和感にすごく複雑な気分だ。よく知る世界ではあるけど、すごく居心地が悪い。へぇ、と思えることもあるから全部が全部悪いってわけじゃないんだけどね。
そうしてしばらくコンビニの雑誌コーナーで時間を潰していると、ポケットに入れていたスマホに着信が入った。名前を見ると『じぃじ』だったので、みんなに戻ってくるように先に念話で連絡しておく。
「はい、もしもし」
『ああ、待たせたね。近くまで来たんだが、場所はコンビニでよかったかな?』
「あ、はい。コンビニで大丈夫です」
『承知した』
外に視線を向けると、この場所に似つかわしくない高級車が駐車場へと入ってくるところだった。今までテレビでしか見たことなかったけど、あの長い車体はリムジンとかいうやつだろうか。
何も買わずにコンビニを出ると、スマホ越しに今出てきたのが自分だと伝える。
普通車しか駐車スペースの取っていない場所にリムジンが入ってくる。ちょっとはみ出してるけど仕方がない。運転手がさっと降りて後ろのドアを開けると、スマホを耳に当てたままの男性が姿を現した。ビシッとした紺色のスーツを決め、頭に白髪の混じった渋い男性だ。
同じようにスマホを耳に当てた俺を視界に捉えると、驚いた表情でスマホをポケットに仕舞い片手を挙げる。
「キミが楓のスマホを見つけてくれた人物で合っているかい?」
「はい、水本柊です」
「おお、これは失礼。儂は柳原仁平という。本当に、手掛かりを見つけてくれてありがとう」
噛みしめるように言葉にするとお互いに握手を交わす。
「いえ、たまたまなので……」
「ああ、それでもだ」
がっちりと握り合った手を離すと、柳原さんがぐるっと周囲を見回してまた俺に視線を戻す。
「そういえば一人なのかい?」
電話越しに俺以外の声が聞こえていたからだろうか。もう戻ってきてるんだけどね。
「あ、すみません、お待たせしました」
後ろから聞こえた声に振り返り、ギョッとしたのか一歩後ずさっている。服装もそうだけど、全身ローブにフードを被った大男のイヴァンはそれなりに威圧感があるんだろう。
「ああ……、大丈夫だ……。改めて自己紹介しよう――」
そう言ってもう一度名乗ると、一人一人としっかりと握手を交わしていく柳原さん。
「莉緒です。よろしくお願いします」
「イヴァンです」
「ボクはフォニアだよ! この子はニルって言うの」
「わふぅ!」
フォニアと握手するときにはしゃがみこんで、しっかり目線を合わせていた。そして頬が緩んでいたのも見逃さない。うちのフォニアは可愛いのだ。
「さて、さっそく場所を変えたいんだがいいだろうか」
「かまいませんよ」
「そうか、では行こう」
というと停めてあったリムジンへと引き返すと、運転手にドアを開けさせて笑顔で振り返り。
「遠慮なく乗ってくれ」
とだけ言うと、車内へと乗り込んでいく。
「えっ、この車……」
莉緒がリムジンを見て足を止める。
「お邪魔します」
好奇心の勝った俺は、そのまま車の後部のドアの中へと乗り込んでいく。
広々とした空間はすごく開放感がある。扉のあった反対側の側面はすべて座席になっており、入ってすぐ左側にはテーブルと各種のカップやグラス、その向こうに冷蔵庫があった。運転席に近い側は大型のテレビが埋め込まれている。
後ろから遠慮がちに莉緒が乗ってくるとフォニアとニルが続き、最後にイヴァンが腰をかがめておっかなびっくりした様子で入ってきた。
扉が閉められると運転手が運転席へと乗り込んできたので、柳原さんが声を掛ける。
「オフィスまで頼む」
「かしこまりました」
そしてゆっくりと動き出すと、フォニアとイヴァンから驚愕の声が聞こえてきた。
「あ、そういえば今更ですけど、ニルも乗ってよかったんですか?」
「はっはっは。かまわんよ。それに置いていくわけにもいかんだろう」
足元で伏せるニルを撫でながら聞くと、笑いながら答えが返ってきた。
たとえ高速道路で飛ばしても走って追いかけてこれるだろうけど、そんなことしたら通報されてえらいことになりそうだし黙っておいた。
16
お気に入りに追加
527
あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!
林檎茶
ファンタジー
俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?
俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。
成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。
そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。
ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。
明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。
俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。
そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。
魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。
そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。
リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。
その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。
挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラス転移したが、目覚めたジョブが最弱職だった件~
おさない
ファンタジー
ごく普通の高校生である俺こと観音崎真城は、突如としてクラス丸ごと異世界に召喚されてしまう。
異世界の王いわく、俺達のような転移者は神から特別な能力――職業(ジョブ)を授かることができるらしく、その力を使って魔王を討伐して欲しいのだそうだ。
他の奴らが『勇者』やら『聖騎士』やらの強ジョブに目覚めていることが判明していく中、俺に与えられていたのは『観光客』という見るからに弱そうなジョブだった。
無能の烙印を押された俺は、クラスメイトはおろか王や兵士達からも嘲笑され、お城から追放されてしまう。
やれやれ……ここが死ぬほどやり込んだ『エルニカクエスト』の世界でなければ、野垂れ死んでいた所だったぞ。
実を言うと、観光客はそれなりに強ジョブなんだが……それを知らずに追放してしまうとは、早とちりな奴らだ。
まあ、俺は自由に異世界を観光させてもらうことにしよう。
※カクヨムにも掲載しています

スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる