265 / 421
第五部
この世界にできた接点
しおりを挟む
「……なんとなく知ってる日本と微妙に違うな」
コンビニ入り口近くの雑誌売り場でドライブマップを見つけた俺は、さっそく中身を開いて目に入った日本の地形を見て呟いた。南北に細長いのは間違いないが、なんかこう、違和感がある。
「なんだろうな……」
他に世界地図も見てみたいが、さすがにコンビニにあるドライブマップだけあってそこまで広範囲は載っていない。
北は北海道から本州があり、淡路島や四国九州の島もちゃんとある。名前は全然違うけど。うーん、形が微妙に違うのか……、それとも名前のせいなのか、わからん。
とりあえずここは大阪あたりの場所らしい。地図上では白河崎県って書いてあるけど。ややこしいなもう。
「他の本は……」
漫画に至っては知ってる作品がひとつもなかった。ゴムが人間になるやつとか鬼を片っ端からナンパするやつとか、ちょっと続きが気になってたんだけどなぁ。
こっちは芸能雑誌か。知ってる有名人が一人もいない……。国名は日本なんだけど、自分のまったく知らない日本が存在することにすごく気持ち悪さを感じる。
「はぁ……」
知っているけど知らない世界に大きくため息をつく。コピー元の自分がいない世界とわかって安心といえば安心だけど、調べれば調べるほどに増えてくる違和感にすごく複雑な気分だ。よく知る世界ではあるけど、すごく居心地が悪い。へぇ、と思えることもあるから全部が全部悪いってわけじゃないんだけどね。
そうしてしばらくコンビニの雑誌コーナーで時間を潰していると、ポケットに入れていたスマホに着信が入った。名前を見ると『じぃじ』だったので、みんなに戻ってくるように先に念話で連絡しておく。
「はい、もしもし」
『ああ、待たせたね。近くまで来たんだが、場所はコンビニでよかったかな?』
「あ、はい。コンビニで大丈夫です」
『承知した』
外に視線を向けると、この場所に似つかわしくない高級車が駐車場へと入ってくるところだった。今までテレビでしか見たことなかったけど、あの長い車体はリムジンとかいうやつだろうか。
何も買わずにコンビニを出ると、スマホ越しに今出てきたのが自分だと伝える。
普通車しか駐車スペースの取っていない場所にリムジンが入ってくる。ちょっとはみ出してるけど仕方がない。運転手がさっと降りて後ろのドアを開けると、スマホを耳に当てたままの男性が姿を現した。ビシッとした紺色のスーツを決め、頭に白髪の混じった渋い男性だ。
同じようにスマホを耳に当てた俺を視界に捉えると、驚いた表情でスマホをポケットに仕舞い片手を挙げる。
「キミが楓のスマホを見つけてくれた人物で合っているかい?」
「はい、水本柊です」
「おお、これは失礼。儂は柳原仁平という。本当に、手掛かりを見つけてくれてありがとう」
噛みしめるように言葉にするとお互いに握手を交わす。
「いえ、たまたまなので……」
「ああ、それでもだ」
がっちりと握り合った手を離すと、柳原さんがぐるっと周囲を見回してまた俺に視線を戻す。
「そういえば一人なのかい?」
電話越しに俺以外の声が聞こえていたからだろうか。もう戻ってきてるんだけどね。
「あ、すみません、お待たせしました」
後ろから聞こえた声に振り返り、ギョッとしたのか一歩後ずさっている。服装もそうだけど、全身ローブにフードを被った大男のイヴァンはそれなりに威圧感があるんだろう。
「ああ……、大丈夫だ……。改めて自己紹介しよう――」
そう言ってもう一度名乗ると、一人一人としっかりと握手を交わしていく柳原さん。
「莉緒です。よろしくお願いします」
「イヴァンです」
「ボクはフォニアだよ! この子はニルって言うの」
「わふぅ!」
フォニアと握手するときにはしゃがみこんで、しっかり目線を合わせていた。そして頬が緩んでいたのも見逃さない。うちのフォニアは可愛いのだ。
「さて、さっそく場所を変えたいんだがいいだろうか」
「かまいませんよ」
「そうか、では行こう」
というと停めてあったリムジンへと引き返すと、運転手にドアを開けさせて笑顔で振り返り。
「遠慮なく乗ってくれ」
とだけ言うと、車内へと乗り込んでいく。
「えっ、この車……」
莉緒がリムジンを見て足を止める。
「お邪魔します」
好奇心の勝った俺は、そのまま車の後部のドアの中へと乗り込んでいく。
広々とした空間はすごく開放感がある。扉のあった反対側の側面はすべて座席になっており、入ってすぐ左側にはテーブルと各種のカップやグラス、その向こうに冷蔵庫があった。運転席に近い側は大型のテレビが埋め込まれている。
後ろから遠慮がちに莉緒が乗ってくるとフォニアとニルが続き、最後にイヴァンが腰をかがめておっかなびっくりした様子で入ってきた。
扉が閉められると運転手が運転席へと乗り込んできたので、柳原さんが声を掛ける。
「オフィスまで頼む」
「かしこまりました」
そしてゆっくりと動き出すと、フォニアとイヴァンから驚愕の声が聞こえてきた。
「あ、そういえば今更ですけど、ニルも乗ってよかったんですか?」
「はっはっは。かまわんよ。それに置いていくわけにもいかんだろう」
足元で伏せるニルを撫でながら聞くと、笑いながら答えが返ってきた。
たとえ高速道路で飛ばしても走って追いかけてこれるだろうけど、そんなことしたら通報されてえらいことになりそうだし黙っておいた。
コンビニ入り口近くの雑誌売り場でドライブマップを見つけた俺は、さっそく中身を開いて目に入った日本の地形を見て呟いた。南北に細長いのは間違いないが、なんかこう、違和感がある。
「なんだろうな……」
他に世界地図も見てみたいが、さすがにコンビニにあるドライブマップだけあってそこまで広範囲は載っていない。
北は北海道から本州があり、淡路島や四国九州の島もちゃんとある。名前は全然違うけど。うーん、形が微妙に違うのか……、それとも名前のせいなのか、わからん。
とりあえずここは大阪あたりの場所らしい。地図上では白河崎県って書いてあるけど。ややこしいなもう。
「他の本は……」
漫画に至っては知ってる作品がひとつもなかった。ゴムが人間になるやつとか鬼を片っ端からナンパするやつとか、ちょっと続きが気になってたんだけどなぁ。
こっちは芸能雑誌か。知ってる有名人が一人もいない……。国名は日本なんだけど、自分のまったく知らない日本が存在することにすごく気持ち悪さを感じる。
「はぁ……」
知っているけど知らない世界に大きくため息をつく。コピー元の自分がいない世界とわかって安心といえば安心だけど、調べれば調べるほどに増えてくる違和感にすごく複雑な気分だ。よく知る世界ではあるけど、すごく居心地が悪い。へぇ、と思えることもあるから全部が全部悪いってわけじゃないんだけどね。
そうしてしばらくコンビニの雑誌コーナーで時間を潰していると、ポケットに入れていたスマホに着信が入った。名前を見ると『じぃじ』だったので、みんなに戻ってくるように先に念話で連絡しておく。
「はい、もしもし」
『ああ、待たせたね。近くまで来たんだが、場所はコンビニでよかったかな?』
「あ、はい。コンビニで大丈夫です」
『承知した』
外に視線を向けると、この場所に似つかわしくない高級車が駐車場へと入ってくるところだった。今までテレビでしか見たことなかったけど、あの長い車体はリムジンとかいうやつだろうか。
何も買わずにコンビニを出ると、スマホ越しに今出てきたのが自分だと伝える。
普通車しか駐車スペースの取っていない場所にリムジンが入ってくる。ちょっとはみ出してるけど仕方がない。運転手がさっと降りて後ろのドアを開けると、スマホを耳に当てたままの男性が姿を現した。ビシッとした紺色のスーツを決め、頭に白髪の混じった渋い男性だ。
同じようにスマホを耳に当てた俺を視界に捉えると、驚いた表情でスマホをポケットに仕舞い片手を挙げる。
「キミが楓のスマホを見つけてくれた人物で合っているかい?」
「はい、水本柊です」
「おお、これは失礼。儂は柳原仁平という。本当に、手掛かりを見つけてくれてありがとう」
噛みしめるように言葉にするとお互いに握手を交わす。
「いえ、たまたまなので……」
「ああ、それでもだ」
がっちりと握り合った手を離すと、柳原さんがぐるっと周囲を見回してまた俺に視線を戻す。
「そういえば一人なのかい?」
電話越しに俺以外の声が聞こえていたからだろうか。もう戻ってきてるんだけどね。
「あ、すみません、お待たせしました」
後ろから聞こえた声に振り返り、ギョッとしたのか一歩後ずさっている。服装もそうだけど、全身ローブにフードを被った大男のイヴァンはそれなりに威圧感があるんだろう。
「ああ……、大丈夫だ……。改めて自己紹介しよう――」
そう言ってもう一度名乗ると、一人一人としっかりと握手を交わしていく柳原さん。
「莉緒です。よろしくお願いします」
「イヴァンです」
「ボクはフォニアだよ! この子はニルって言うの」
「わふぅ!」
フォニアと握手するときにはしゃがみこんで、しっかり目線を合わせていた。そして頬が緩んでいたのも見逃さない。うちのフォニアは可愛いのだ。
「さて、さっそく場所を変えたいんだがいいだろうか」
「かまいませんよ」
「そうか、では行こう」
というと停めてあったリムジンへと引き返すと、運転手にドアを開けさせて笑顔で振り返り。
「遠慮なく乗ってくれ」
とだけ言うと、車内へと乗り込んでいく。
「えっ、この車……」
莉緒がリムジンを見て足を止める。
「お邪魔します」
好奇心の勝った俺は、そのまま車の後部のドアの中へと乗り込んでいく。
広々とした空間はすごく開放感がある。扉のあった反対側の側面はすべて座席になっており、入ってすぐ左側にはテーブルと各種のカップやグラス、その向こうに冷蔵庫があった。運転席に近い側は大型のテレビが埋め込まれている。
後ろから遠慮がちに莉緒が乗ってくるとフォニアとニルが続き、最後にイヴァンが腰をかがめておっかなびっくりした様子で入ってきた。
扉が閉められると運転手が運転席へと乗り込んできたので、柳原さんが声を掛ける。
「オフィスまで頼む」
「かしこまりました」
そしてゆっくりと動き出すと、フォニアとイヴァンから驚愕の声が聞こえてきた。
「あ、そういえば今更ですけど、ニルも乗ってよかったんですか?」
「はっはっは。かまわんよ。それに置いていくわけにもいかんだろう」
足元で伏せるニルを撫でながら聞くと、笑いながら答えが返ってきた。
たとえ高速道路で飛ばしても走って追いかけてこれるだろうけど、そんなことしたら通報されてえらいことになりそうだし黙っておいた。
16
お気に入りに追加
513
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる