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第五部
じぃじ
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「もしも――」
『楓か!? 無事なのか! 今どこにいる!?』
緑色の受話器アイコンをスライドさせて電話に出た瞬間、低い声をした男の叫び声が響き渡った。思わず受話器を耳から離すとスマホの画面にスピーカーのアイコンが出たので、みんなにも聞こえるようにとぽちっと押す。
気が付かなかったけど確かに圏外ではなくなっているみたいだ。
『もしもし! 楓! 返事をしてくれ!』
「うおっ」
急に大きくなったスマホの音声にイヴァンが反応する。
『誰かいるのか!?』
その声をスマホが拾ったようで、向こうから誰何する声が響いてきた。
『楓……、返事をしてくれ……』
しばらく無言が続いていたが、スマホの向こう側で力なく頽れる音が届いた。
「すみませんが、楓さんはここにはいません」
なんともいたたまれない空気感になり、電話に出たことを多少後悔しつつもはっきりと告げる。楓さんがどこの誰かは知らないけど、少なくともここにいないのは確かだ。
『…………そうか、……そんな予感はしていたよ』
さっきよりもいくらか落ち着いた、というか沈んだ声が返ってきた。
『むしろ楓の……、孫娘のスマホを拾ってくれて感謝する』
「いえ」
『直接会って詳しく話を聞きたいんだが、どうだろうか。スマホを拾ってくれた礼もさせてほしい』
スマホから聞こえてくる声に俺たちは顔を見合わせる。
にしても孫娘とお爺ちゃんか……。行方不明とか、そりゃ心配するよなぁ。
「なぁシュウ、拾ったもの使ったら犯罪なんじゃなかったのか?」
「まぁそうだけど。行方不明になった唯一の手掛かりなんだろうし、いきなり罪に問われることはないと思うけど」
相手に聞こえないように小さい声で囁くイヴァンに、同じく囁き返す。
『ああ、楓のスマホで買い物をしたことについては気にしないでくれたまえ。お礼の一つと思ってもらってかまわない』
が、あんまり意味はなかったようだ。聞こえていたのかどうかはわからないが、どっちにしろ話を聞きたいのは本当なんだろう。
というか買い物したってもうバレてるのか。早いな……。
このスマホは商都のオークションで手に入れたけど、それ以前はどこかの研究室で年単位で研究されてたって話だった気がする。もう何年もスマホに繋がらなかったことを思えば、俺たちという手掛かりは手放したくないはずだ。
「はは……、すみません」
『いやいや、むしろ楓のスマホの行方が判明したのは、使ってくれたおかげだからな。感謝こそすれ責める気などないよ』
「それは助かります」
『それで、どうだろうか』
改めて確認してくる相手に、俺も莉緒へと視線を向けると頷きが返ってきた。
「はい、お話するのはかまいません。ただ、このスマホはオークションで手に入れただけなので、持ち主のことは一切知らないのですが……」
『そうか……、いやそれでもかまわない。他にも聞きたいこともあるのでね』
「であれば、わかりました。時間や場所はどうしましょうか」
地理がさっぱりわからんので、正直ここから移動するのは難しい。せめてスマホが使えれば地図アプリでなんとかなる気もするけどね。
『こちらから出向くつもりだが、今から時間は取れるだろうか』
お、来てくれるらしい。しかも今からか。残念ながら通話中のスマホ画面には日付が表示されていないが、今日は平日ではないんだろうか。いや行方不明のお孫さんの手掛かりともなれば仕事はさぼるか……?
「大丈夫ですよ」
『おお、そうか。それはありがたい。では今から向かうので待っていてほしい。おそらく一時間はかからないはずだ』
「わかりました。ではお待ちしています」
『ああ、ではまた後で』
「はい」
そのまま電話が切れたので、こちらからも赤いボタンをタップして通話を切る。異空間ボックスに仕舞うと圏外になりそうだから、ポケットにでも入れておくことにした。
「って、ここの場所伝えてなかったけど大丈夫なのか?」
「それなら大丈夫じゃないかな。探してたお孫さんのスマホみたいだし、位置情報はわかってるんじゃないかな」
「へぇ……、シュウたちの空間魔法みたいなやつか……。こっちの世界もすげぇな」
変なところで感心しているイヴァンだが、もちろん魔法ではない。わざわざ訂正する気も起きないけど。
「んじゃまぁ、来るまでのんびり待ちますか」
「……探検は?」
一息つこうとしたところでフォニアが上目遣いでお伺いを立ててきた。フォニアからそう言われては断ることも難しい。
「さっきの人が迎えにくるまでな。莉緒と行っておいで」
「うん!」
「ふふ、じゃあ行きましょうか」
「わふぅ!」
なんだか楽しそうにコンビニの駐車場から出て行くフォニアを見送っていると、ニルも声を上げてついて行った。イヴァンもそれを眺めていたがふと俺を振り返り。
「……俺も行ってくるわ」
と言ってちょっとだけばつが悪そうに頬を掻きながら付いて行った。
スマホの位置情報を頼りに来ることを考えると、あんまりうろうろできないよなぁ。
「しゃーないか」
出していたテーブルを異空間ボックスに仕舞うと、再びコンビニへと向かう。
コンビニって確か地図とか売ってたような気がするんだよな。他にも雑誌とかあるだろうし、情報収集といきますか。
こうして俺は、スマホの持ち主である楓さんのお爺ちゃんが来るまで時間を潰すのであった。
『楓か!? 無事なのか! 今どこにいる!?』
緑色の受話器アイコンをスライドさせて電話に出た瞬間、低い声をした男の叫び声が響き渡った。思わず受話器を耳から離すとスマホの画面にスピーカーのアイコンが出たので、みんなにも聞こえるようにとぽちっと押す。
気が付かなかったけど確かに圏外ではなくなっているみたいだ。
『もしもし! 楓! 返事をしてくれ!』
「うおっ」
急に大きくなったスマホの音声にイヴァンが反応する。
『誰かいるのか!?』
その声をスマホが拾ったようで、向こうから誰何する声が響いてきた。
『楓……、返事をしてくれ……』
しばらく無言が続いていたが、スマホの向こう側で力なく頽れる音が届いた。
「すみませんが、楓さんはここにはいません」
なんともいたたまれない空気感になり、電話に出たことを多少後悔しつつもはっきりと告げる。楓さんがどこの誰かは知らないけど、少なくともここにいないのは確かだ。
『…………そうか、……そんな予感はしていたよ』
さっきよりもいくらか落ち着いた、というか沈んだ声が返ってきた。
『むしろ楓の……、孫娘のスマホを拾ってくれて感謝する』
「いえ」
『直接会って詳しく話を聞きたいんだが、どうだろうか。スマホを拾ってくれた礼もさせてほしい』
スマホから聞こえてくる声に俺たちは顔を見合わせる。
にしても孫娘とお爺ちゃんか……。行方不明とか、そりゃ心配するよなぁ。
「なぁシュウ、拾ったもの使ったら犯罪なんじゃなかったのか?」
「まぁそうだけど。行方不明になった唯一の手掛かりなんだろうし、いきなり罪に問われることはないと思うけど」
相手に聞こえないように小さい声で囁くイヴァンに、同じく囁き返す。
『ああ、楓のスマホで買い物をしたことについては気にしないでくれたまえ。お礼の一つと思ってもらってかまわない』
が、あんまり意味はなかったようだ。聞こえていたのかどうかはわからないが、どっちにしろ話を聞きたいのは本当なんだろう。
というか買い物したってもうバレてるのか。早いな……。
このスマホは商都のオークションで手に入れたけど、それ以前はどこかの研究室で年単位で研究されてたって話だった気がする。もう何年もスマホに繋がらなかったことを思えば、俺たちという手掛かりは手放したくないはずだ。
「はは……、すみません」
『いやいや、むしろ楓のスマホの行方が判明したのは、使ってくれたおかげだからな。感謝こそすれ責める気などないよ』
「それは助かります」
『それで、どうだろうか』
改めて確認してくる相手に、俺も莉緒へと視線を向けると頷きが返ってきた。
「はい、お話するのはかまいません。ただ、このスマホはオークションで手に入れただけなので、持ち主のことは一切知らないのですが……」
『そうか……、いやそれでもかまわない。他にも聞きたいこともあるのでね』
「であれば、わかりました。時間や場所はどうしましょうか」
地理がさっぱりわからんので、正直ここから移動するのは難しい。せめてスマホが使えれば地図アプリでなんとかなる気もするけどね。
『こちらから出向くつもりだが、今から時間は取れるだろうか』
お、来てくれるらしい。しかも今からか。残念ながら通話中のスマホ画面には日付が表示されていないが、今日は平日ではないんだろうか。いや行方不明のお孫さんの手掛かりともなれば仕事はさぼるか……?
「大丈夫ですよ」
『おお、そうか。それはありがたい。では今から向かうので待っていてほしい。おそらく一時間はかからないはずだ』
「わかりました。ではお待ちしています」
『ああ、ではまた後で』
「はい」
そのまま電話が切れたので、こちらからも赤いボタンをタップして通話を切る。異空間ボックスに仕舞うと圏外になりそうだから、ポケットにでも入れておくことにした。
「って、ここの場所伝えてなかったけど大丈夫なのか?」
「それなら大丈夫じゃないかな。探してたお孫さんのスマホみたいだし、位置情報はわかってるんじゃないかな」
「へぇ……、シュウたちの空間魔法みたいなやつか……。こっちの世界もすげぇな」
変なところで感心しているイヴァンだが、もちろん魔法ではない。わざわざ訂正する気も起きないけど。
「んじゃまぁ、来るまでのんびり待ちますか」
「……探検は?」
一息つこうとしたところでフォニアが上目遣いでお伺いを立ててきた。フォニアからそう言われては断ることも難しい。
「さっきの人が迎えにくるまでな。莉緒と行っておいで」
「うん!」
「ふふ、じゃあ行きましょうか」
「わふぅ!」
なんだか楽しそうにコンビニの駐車場から出て行くフォニアを見送っていると、ニルも声を上げてついて行った。イヴァンもそれを眺めていたがふと俺を振り返り。
「……俺も行ってくるわ」
と言ってちょっとだけばつが悪そうに頬を掻きながら付いて行った。
スマホの位置情報を頼りに来ることを考えると、あんまりうろうろできないよなぁ。
「しゃーないか」
出していたテーブルを異空間ボックスに仕舞うと、再びコンビニへと向かう。
コンビニって確か地図とか売ってたような気がするんだよな。他にも雑誌とかあるだろうし、情報収集といきますか。
こうして俺は、スマホの持ち主である楓さんのお爺ちゃんが来るまで時間を潰すのであった。
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