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第五部
隷属対策
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ようやく四人と一匹になることができた。もちろん監視はされまくりだけど、話に割り込まれることがなくなっただけでも一息つけるというもんだ。
「あー、疲れたー」
声に出しながらソファに飛び乗ると大きく伸びをする。
『本題はこっちで話すからよろしく』
と、イヴァンと莉緒だけに向けて念話で声を掛ける。
「ホント、これから先どうなっちゃうんだろうね」
『了解』
「え? あ、お、おう……」
『って、んな器用なことできるか!?』
『はは、じゃあこっちの会話に集中して黙ってればいいよ。声に出しての会話は俺たちでやっとくから』
俺と莉緒は並列思考スキルを持ってるから、念話との同時会話でも普通にこなせるのだ。フォニアと当たり障りのない会話を続けながら、三人で本題を進めていくことにする。
学校の教室くらいある広い部屋だ。四方は暖色系の壁紙が張られていて、温かみが感じられる。適度に調度品も置かれていてまさに客室って感じだ。中央のテーブルにはポットらしきものがあるけど使えるんだろうか。水差しの中には水が入って、茶葉らしきものもある。
『で、いったい何があったんだ?』
デカいソファに体を沈めたイヴァンが、大きく息を吐きながら呆れるように尋ねてきた。
『ああ、そうだな。いやここまで来るのは長かったがようやくだよ……。鑑定でスキルが見えるようになったんだよな』
『……スキル?』
『そそ、剣術とか槍術とか、どの属性の魔法が使えるとかが見えるようになったんだよ』
『へぇ』
『柊はスキルマニアだからね』
フォニアを抱っこしてなでなでしながら、莉緒がとんでもないことを言い出した。
『うん? 何を言ってるのかな、莉緒さんは。……まぁ師匠みたいにスキルが見えるようになれればいいとは思ってたけどさ』
認めたくはないが今はそのことについて議論している時間はない。
『スキルのことは一旦置いといて、今はイヴァンについてだ』
『…………は? 俺?』
まったく予想していなかったであろう言葉に間が開くが、本人に自覚はないんだろうか。莉緒にも目で促されたので告げることにする。
『驚きすぎないで聞いてくれよ? この部屋監視されてるからな』
『お、おう……』
ゴクリと唾をのむイヴァンに念を押すと。
『鑑定したら隷属って出たんだが、自覚はあるか?』
『……え? 俺?』
『へぇ』
頷いてやると、フォニアをなでなでする莉緒も声を上げる。
『召喚されたときに何か仕込まれてたのかしらね?』
『たぶんそうだろうな。にしても俺たちに効果がなかったのはちゃんと耐性がついてたからだとは思うけど』
『そうねぇ……』
何やら考え込む莉緒だが、イヴァンをこのまま隷属状態で放置しておくこともできない。小突いてみたら治るかとも思ったけど、監視されている中派手にぶっ飛ばすのもなぁ……。
考えながらも手は備え付けのポットでお湯を沸かしてお茶を淹れていく。鑑定したら毒もなかったし、ポットの使い方もわかったので手間取ることもない。鑑定さんマジ便利です。
『イヴァン、ちょっといいかしら?』
声を掛けた莉緒が立ち上がるとイヴァンへと近づく。監視の目を遮るように立ち塞がると、魔法で一瞬だけ視界を隠してイヴァンの首に何かが嵌められた。次の瞬間には取り外されていて、外からは何事もなかったように見えるだろうか。
『これでどうかしら』
『え?』
なるほど。隷属の首輪をつけて隷属状態を上書きできるか試したみたいだ。本人は何をされたかわかってなさそうだけどまぁいいか。ではさっそく鑑定っと。
『お、状態が通常に戻ってる』
スキルもいろいろと見えたけどそれは後回しだ。
『ま、マジか! なんかよくわからんけど助かった!』
被害が出る前にあっさりと解決できてよかった。これで全力で魔人族とやらとやりあうことができる。
イヴァンもホッとしたのか、ソファから腰を浮かせると俺が淹れたお茶を手に取って一息つく。
『しかし何だったんだ、あの白い部屋で会った爺さんは……』
『……もしかしてあのお爺さんって、柊が前に言ってた神様なのかしら?』
『え? 神様? ……ナニソレ?』
『俺もよく知らんけど、神様でいいんじゃないかな。最初に召喚されたときに会って、いろいろスキルをくれたんだよ』
フォニアに淹れたお茶に、魔法で氷を入れながら二人に説明していく。といっても大した内容じゃない。魂のコピー云々の話は省くが、最初に会ったときはホントにスキルをもらっただけだ。
『そういえばこっちの世界でもスキルを使えるようにって言ってたわね』
『ああ、普通に魔法も使えるし、鑑定も使えてるしラッキーってことでいいんじゃないかな?』
『そういうもんか……』
『深く考えてもわからんことは考えないに限る』
『いやまぁそうだが』
『それよりも今後のことよ』
『そうだな。スキルが見えるようになったことだし、対策を練るためにもまずは自分たちに何ができるか再確認といこうじゃないか』
神様も次元を渡る方法がなんたらとか言ってたし、すごく気になります。
というわけで俺はさっそく自分自身へと鑑定を使った。
「あー、疲れたー」
声に出しながらソファに飛び乗ると大きく伸びをする。
『本題はこっちで話すからよろしく』
と、イヴァンと莉緒だけに向けて念話で声を掛ける。
「ホント、これから先どうなっちゃうんだろうね」
『了解』
「え? あ、お、おう……」
『って、んな器用なことできるか!?』
『はは、じゃあこっちの会話に集中して黙ってればいいよ。声に出しての会話は俺たちでやっとくから』
俺と莉緒は並列思考スキルを持ってるから、念話との同時会話でも普通にこなせるのだ。フォニアと当たり障りのない会話を続けながら、三人で本題を進めていくことにする。
学校の教室くらいある広い部屋だ。四方は暖色系の壁紙が張られていて、温かみが感じられる。適度に調度品も置かれていてまさに客室って感じだ。中央のテーブルにはポットらしきものがあるけど使えるんだろうか。水差しの中には水が入って、茶葉らしきものもある。
『で、いったい何があったんだ?』
デカいソファに体を沈めたイヴァンが、大きく息を吐きながら呆れるように尋ねてきた。
『ああ、そうだな。いやここまで来るのは長かったがようやくだよ……。鑑定でスキルが見えるようになったんだよな』
『……スキル?』
『そそ、剣術とか槍術とか、どの属性の魔法が使えるとかが見えるようになったんだよ』
『へぇ』
『柊はスキルマニアだからね』
フォニアを抱っこしてなでなでしながら、莉緒がとんでもないことを言い出した。
『うん? 何を言ってるのかな、莉緒さんは。……まぁ師匠みたいにスキルが見えるようになれればいいとは思ってたけどさ』
認めたくはないが今はそのことについて議論している時間はない。
『スキルのことは一旦置いといて、今はイヴァンについてだ』
『…………は? 俺?』
まったく予想していなかったであろう言葉に間が開くが、本人に自覚はないんだろうか。莉緒にも目で促されたので告げることにする。
『驚きすぎないで聞いてくれよ? この部屋監視されてるからな』
『お、おう……』
ゴクリと唾をのむイヴァンに念を押すと。
『鑑定したら隷属って出たんだが、自覚はあるか?』
『……え? 俺?』
『へぇ』
頷いてやると、フォニアをなでなでする莉緒も声を上げる。
『召喚されたときに何か仕込まれてたのかしらね?』
『たぶんそうだろうな。にしても俺たちに効果がなかったのはちゃんと耐性がついてたからだとは思うけど』
『そうねぇ……』
何やら考え込む莉緒だが、イヴァンをこのまま隷属状態で放置しておくこともできない。小突いてみたら治るかとも思ったけど、監視されている中派手にぶっ飛ばすのもなぁ……。
考えながらも手は備え付けのポットでお湯を沸かしてお茶を淹れていく。鑑定したら毒もなかったし、ポットの使い方もわかったので手間取ることもない。鑑定さんマジ便利です。
『イヴァン、ちょっといいかしら?』
声を掛けた莉緒が立ち上がるとイヴァンへと近づく。監視の目を遮るように立ち塞がると、魔法で一瞬だけ視界を隠してイヴァンの首に何かが嵌められた。次の瞬間には取り外されていて、外からは何事もなかったように見えるだろうか。
『これでどうかしら』
『え?』
なるほど。隷属の首輪をつけて隷属状態を上書きできるか試したみたいだ。本人は何をされたかわかってなさそうだけどまぁいいか。ではさっそく鑑定っと。
『お、状態が通常に戻ってる』
スキルもいろいろと見えたけどそれは後回しだ。
『ま、マジか! なんかよくわからんけど助かった!』
被害が出る前にあっさりと解決できてよかった。これで全力で魔人族とやらとやりあうことができる。
イヴァンもホッとしたのか、ソファから腰を浮かせると俺が淹れたお茶を手に取って一息つく。
『しかし何だったんだ、あの白い部屋で会った爺さんは……』
『……もしかしてあのお爺さんって、柊が前に言ってた神様なのかしら?』
『え? 神様? ……ナニソレ?』
『俺もよく知らんけど、神様でいいんじゃないかな。最初に召喚されたときに会って、いろいろスキルをくれたんだよ』
フォニアに淹れたお茶に、魔法で氷を入れながら二人に説明していく。といっても大した内容じゃない。魂のコピー云々の話は省くが、最初に会ったときはホントにスキルをもらっただけだ。
『そういえばこっちの世界でもスキルを使えるようにって言ってたわね』
『ああ、普通に魔法も使えるし、鑑定も使えてるしラッキーってことでいいんじゃないかな?』
『そういうもんか……』
『深く考えてもわからんことは考えないに限る』
『いやまぁそうだが』
『それよりも今後のことよ』
『そうだな。スキルが見えるようになったことだし、対策を練るためにもまずは自分たちに何ができるか再確認といこうじゃないか』
神様も次元を渡る方法がなんたらとか言ってたし、すごく気になります。
というわけで俺はさっそく自分自身へと鑑定を使った。
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