成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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閑話(第四部)

閑話という名のプロローグ

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「では始めろ」

「はっ」

 号令と共に、額から二本の角を生やした耳の長い魔術士団副団長が前へ進む。

「魔力を注げ」

 団長が声を上げると、床に描かれた魔法陣の周囲に配置された人物が次々と跪いていく。そして四本・・ある手を触れると魔力を注ぎだした。
 端から中央に向かって魔力が充填されていくにつれ、魔法陣がかすかに発光し始める。

「ふふふ……、もうすぐだ……」

 魔力が満たされていく目の前の召喚魔法陣に、思わず笑みがこぼれる。これで地底人どもを一掃してくれる。

「召喚者の条件設定に抜かりはないな」

「もちろんです、指示通りに設定を済ませております。近隣世界にいる、争いを好まぬ民族特性を持った、強者になり得る可能性を秘めた成長率著しい人物ですね」

 近くで魔法陣の調整を行っている団長へと声をかけると、想定通りの答えが返ってきた。これを間違えると大変なことになるのだ。自分たちが扱えないような人間を召喚してしまえば、地底人どころかこちらに被害が及びかねない。

「多少であれば気性が荒い者であっても問題ないでしょう。軽くではありますが、隷属の術式も魔法陣には組み込まれておりますので」

「そうだな。しかし万が一には備えておかねばならん」

「はい。もちろん警戒は怠りません」

「準備が整いました!」

 副団長の言葉に振り返ると、魔法陣全体が光を放つようになっている。

「よし、表面上は友好を装うから、武器を構えてはならんぞ。ただし、何かあればいつでも抜けるようにはしておけ」

「「「はっ」」」

「では最後の仕上げに取り掛かります」

 言葉と共に副団長の口から長い詠唱が紡がれていく。これでも事前に四日間をかけて事前詠唱を済ませているので、あとは最後の節を唱えればこの召喚魔法は完成する。
 しばらく待っていると、ひと際魔法陣が強い光を放ち始めた。

「おおお……っ!」

 あたりには魔力が渦巻き、室内にもかかわらず風が発生し始める。

「――――――っ!」

 副団長が最後の詠唱を唱え終えると、視界が真っ白に塗りつぶされて思わず目を閉じてしまった。その後すぐに訪れる静寂とともに、まぶた越しの視界が真っ黒に塗りつぶされる。
 恐る恐る目を開けると、魔法陣は発光をやめ、静かに佇んでいるのみだ。その中央には召喚された者が――

「……誰も、……いない?」

「なん……、だと?」

「まさか失敗したのか?」

 そこに現れるはずの者がいない魔法陣の中心を見て、魔力を注いでいた周囲の者もざわつき始める。

 まさか……、あれだけ時間と金を掛けて準備してきたものが、失敗だと?

 震える右拳を落ち着かせようと左手で包み込むと、不意に魔法陣から再び光が漏れだしてきた。

「なにっ!?」

 思わず腕で顔を庇うと、魔法陣から風が発生したのか突風が自身の体を突き抜けていき、数歩後ずさってしまう。
 収まったあと両腕を顔の前から退けると――

 大きな槍を背負い頭の上に耳が生えた小柄な・・・男と、黒髪黒目の男女の子ども・・・、そして小さなぬいぐるみを抱えた、同じく頭の上に耳を生やした赤子・・が魔法陣の中央に佇んでいた。
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