239 / 414
第四部
事の真相
しおりを挟む
「そして盗賊ギルドへと依頼した例の件についてですが……。王国の犬がどうも我々のことを嗅ぎまわっていたようで、暗殺を下部組織に投げた形になります」
俺たちにギルドを壊滅させられる原因になった発端を話すのは憚られるのか、微妙に眉を顰めるメサリアさん。
「王国って?」
記憶にある王国にはいい思い出はないが、ここはきちんと聞いておかなければならない。確かこの大陸には王国はいくつかあったはずだ。
「アークライト王国でございます」
「「ならぶっ殺してよし」」
「なんでやねん!?」
今まで石像になってたくせに、こういうところにはツッコむんだな。
しかしそれについては理由は明確だ。
「「アークライト王国が嫌いだから」」
「意味わからん!?」
「最近勢いを無くしていたのですが、偶然何かを掴んだのか諜報員の下っ端がこの街までやってきたのです」
俺たちのやりとりをスルーして、自分の役割を続けるメサリアさん。さすができる女は違いますね。
「ふむ……。それにしてもアークライト王国は暗殺者ギルドをどうしたかったんだろうな」
「それは、どうも我々を自分たちの影響下に置きたかったようでして」
「は? ……暗殺者ギルドなんて得体の知れないものを利用しようなんて、国としてどうかしてるな」
「ほんとサイテーな国よね」
「国のそういう裏の部分っていうのはどこにでもあるもんなんじゃねぇの!?」
「イヴァンうるせぇ」
「確かに声は大きいけどそれはあんたらのせいであって!」
「フォニアちゃんが起きるじゃないの」
「あ、はい。ごめんなさい」
莉緒の一言で即座に黙ると、ソファにゆっくりと座りなおす。
「……」
俺たちのやりとりが終わってしばらくして無言が続く。なんとなく発言しづらいと思っていたところに助けがやってきた。
「……ん? 何かあったのか?」
風呂で体を洗っていたエルヴィリノスが帰ってきた。
「いや別に何もないぞ」
「そうそう。ちょっとアークライト王国サイテーねって話をしてただけ」
「そうか。……あの国は相変わらずだな」
何かエルヴィリノスにも思うところがあるのか、言葉を濁してしかめっ面をしている。そのまま大人しくメサリアさんの隣の床へと腰を下ろした。
「そういえば。エルは暗殺者ギルドの所属というわけではありません。協力者と言う立場で、わたくしどもに命令権はございませんのでご承知おきください」
「ん? あー、ギルドのルールね……」
メサリアさんの言葉に納得いった感じのエルヴィリノスが、じっと俺と莉緒を見つめてくる。
ギルドメンバーは俺たちの決定に従うと言っていたが、エルヴィリノスは含まれないということだろう。話の経緯からなんとなくメンバーじゃなさそうだと思ってたけど、間違ってはいなかったようだ。
「いや、あたしもシュウとリオには従うよ」
だというのに、俺をまっすぐ見据えてそう告げてくる。
「……俺に殺されそうになってたくせにあっさりしてるな」
「でもリオに救われた」
今度は莉緒を見据えている。
隷属の首輪してるし、言わされてる感もあっていまいちしっくりこない。
それにマッチポンプ感が半端ないが、本人がそれでいいならいいのか? 普通殺されそうになった相手は恨むんじゃないかと思うんだけど。
「最初はあんな不意を突いてあたしを隷属させてくれて、はらわたが煮えくり返っていたわよ。だけど本気で真正面からやりあっても、シュウには手も足も出なかった」
なるほど脳筋か。
でもある意味魔力攪乱フィールドって卑怯だよな。魔法使いは何もできなくなるし、そっち寄りのステータスを持つエルヴィリノスはどうあがいても相性が悪い。
「リオのことも冷静に考えれば、あたしの隷属耐性を突き抜けられるほど魔力があるってことなんだよ。治癒魔法にしてもそうだし、二人には敵わないね」
肩をすくめてそう零すエルヴィリノス。
「わたくしどもからお話しする内容とすれば以上でしょうか。他に何か聞きたいことやご要望はございますか?」
俺たち三人を順番に見回しているメサリアさんだが、まだもうちょっと聞きたいことはある。
「とりあえず俺たちは今まで通り過ごしたいんだが、それはどうなんだ? 正直面倒なことはしたくない」
「それでしたら今まで通りで問題ございません。先ほども申しました通り、基本的な宿の運営はわたくしどもで行います。宿やギルドの方針などあればその都度おっしゃってくださってかまいませんので」
「なるほど。それを聞いて安心した」
「では、他になければ一旦この場は解散としたいのですがよろしいでしょうか」
「そうね。いいと思うわよ」
あまり触れなかったが、暗殺者ギルドというものも何とかしたいんだけどもう疲れた。あとにしよう。金を積めば人殺しを請け負うギルドとか嫌すぎる。解体して新しくしようぜ。
「はぁ……、終わったか……。もういろいろありすぎて何が何だか……」
イヴァンは頭を抱えて立ち上がると、ふらふらと風呂場へと歩いて行く。
「ちょっと風呂行ってくるわ」
「あ、お客様! そちらはまだ――」
メサリアさんが引き留めようとするも、空間遮断結界での拘束がまだ解けておらず引き留めきれない。そのまま風呂場へと消えて行ったイヴァンだったが、しばらくすると。
「なんじゃこりゃーーーーー!!」
と叫び声が響いてきた。
俺たちにギルドを壊滅させられる原因になった発端を話すのは憚られるのか、微妙に眉を顰めるメサリアさん。
「王国って?」
記憶にある王国にはいい思い出はないが、ここはきちんと聞いておかなければならない。確かこの大陸には王国はいくつかあったはずだ。
「アークライト王国でございます」
「「ならぶっ殺してよし」」
「なんでやねん!?」
今まで石像になってたくせに、こういうところにはツッコむんだな。
しかしそれについては理由は明確だ。
「「アークライト王国が嫌いだから」」
「意味わからん!?」
「最近勢いを無くしていたのですが、偶然何かを掴んだのか諜報員の下っ端がこの街までやってきたのです」
俺たちのやりとりをスルーして、自分の役割を続けるメサリアさん。さすができる女は違いますね。
「ふむ……。それにしてもアークライト王国は暗殺者ギルドをどうしたかったんだろうな」
「それは、どうも我々を自分たちの影響下に置きたかったようでして」
「は? ……暗殺者ギルドなんて得体の知れないものを利用しようなんて、国としてどうかしてるな」
「ほんとサイテーな国よね」
「国のそういう裏の部分っていうのはどこにでもあるもんなんじゃねぇの!?」
「イヴァンうるせぇ」
「確かに声は大きいけどそれはあんたらのせいであって!」
「フォニアちゃんが起きるじゃないの」
「あ、はい。ごめんなさい」
莉緒の一言で即座に黙ると、ソファにゆっくりと座りなおす。
「……」
俺たちのやりとりが終わってしばらくして無言が続く。なんとなく発言しづらいと思っていたところに助けがやってきた。
「……ん? 何かあったのか?」
風呂で体を洗っていたエルヴィリノスが帰ってきた。
「いや別に何もないぞ」
「そうそう。ちょっとアークライト王国サイテーねって話をしてただけ」
「そうか。……あの国は相変わらずだな」
何かエルヴィリノスにも思うところがあるのか、言葉を濁してしかめっ面をしている。そのまま大人しくメサリアさんの隣の床へと腰を下ろした。
「そういえば。エルは暗殺者ギルドの所属というわけではありません。協力者と言う立場で、わたくしどもに命令権はございませんのでご承知おきください」
「ん? あー、ギルドのルールね……」
メサリアさんの言葉に納得いった感じのエルヴィリノスが、じっと俺と莉緒を見つめてくる。
ギルドメンバーは俺たちの決定に従うと言っていたが、エルヴィリノスは含まれないということだろう。話の経緯からなんとなくメンバーじゃなさそうだと思ってたけど、間違ってはいなかったようだ。
「いや、あたしもシュウとリオには従うよ」
だというのに、俺をまっすぐ見据えてそう告げてくる。
「……俺に殺されそうになってたくせにあっさりしてるな」
「でもリオに救われた」
今度は莉緒を見据えている。
隷属の首輪してるし、言わされてる感もあっていまいちしっくりこない。
それにマッチポンプ感が半端ないが、本人がそれでいいならいいのか? 普通殺されそうになった相手は恨むんじゃないかと思うんだけど。
「最初はあんな不意を突いてあたしを隷属させてくれて、はらわたが煮えくり返っていたわよ。だけど本気で真正面からやりあっても、シュウには手も足も出なかった」
なるほど脳筋か。
でもある意味魔力攪乱フィールドって卑怯だよな。魔法使いは何もできなくなるし、そっち寄りのステータスを持つエルヴィリノスはどうあがいても相性が悪い。
「リオのことも冷静に考えれば、あたしの隷属耐性を突き抜けられるほど魔力があるってことなんだよ。治癒魔法にしてもそうだし、二人には敵わないね」
肩をすくめてそう零すエルヴィリノス。
「わたくしどもからお話しする内容とすれば以上でしょうか。他に何か聞きたいことやご要望はございますか?」
俺たち三人を順番に見回しているメサリアさんだが、まだもうちょっと聞きたいことはある。
「とりあえず俺たちは今まで通り過ごしたいんだが、それはどうなんだ? 正直面倒なことはしたくない」
「それでしたら今まで通りで問題ございません。先ほども申しました通り、基本的な宿の運営はわたくしどもで行います。宿やギルドの方針などあればその都度おっしゃってくださってかまいませんので」
「なるほど。それを聞いて安心した」
「では、他になければ一旦この場は解散としたいのですがよろしいでしょうか」
「そうね。いいと思うわよ」
あまり触れなかったが、暗殺者ギルドというものも何とかしたいんだけどもう疲れた。あとにしよう。金を積めば人殺しを請け負うギルドとか嫌すぎる。解体して新しくしようぜ。
「はぁ……、終わったか……。もういろいろありすぎて何が何だか……」
イヴァンは頭を抱えて立ち上がると、ふらふらと風呂場へと歩いて行く。
「ちょっと風呂行ってくるわ」
「あ、お客様! そちらはまだ――」
メサリアさんが引き留めようとするも、空間遮断結界での拘束がまだ解けておらず引き留めきれない。そのまま風呂場へと消えて行ったイヴァンだったが、しばらくすると。
「なんじゃこりゃーーーーー!!」
と叫び声が響いてきた。
10
お気に入りに追加
423
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。
円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。
魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。
洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。
身動きもとれず、記憶も無い。
ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。
亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。
そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。
※この作品は「小説家になろう」からの転載です。
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる