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第四部
素材の行き先
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翌日はギルドへと素材を売りに行くことにした。一応ギルドマスターからのお願いではあるし、ワイバーンとキマイラを一体ずつ提供して、ついでに解体のコツを教えてもらおうと思っている。魔の森では師匠にいろいろ解体方法を教えてもらったけど、翼竜タイプやキマイラみたいに色んな魔物の特徴を合わせ持ったタイプはいなかったからだ。
さすがに朝から買取カウンターは混んでいないようだ。
「というわけで買い取りをお願いします」
「何がというわけだよ。しかも手ぶらじゃねーか」
丸くてちょっとだけ尖った耳を頭に付けた男が見事なツッコミを入れてきた。あんまり見ない種族だと思ったら、鑑定で栗鼠人族と出た。いろいろいるんだな……。
「昨日ギルドマスターにお願いされたワイバーンとキマイラを売りに来たのよ」
「は? え? ってことは、あんたらがシュウとリオかい」
「はい、そうですけど」
「じゃ、解体場まで来てくれ。ここじゃ狭いだろ」
ギルドマスターと違って話が早いぞ。ここの職員はギルドマスターを反面教師にしてるんだろうか。
買取カウンター横を通り抜けて裏手へ向かうと、そこは解体場だ。朝なのでまだ何の素材も置かれていない空間が広がっている。
「それじゃ出しますね」
無難に普通のワイバーンとキマイラをそれぞれ一体ずつ取り出す。
「ほぅ、こりゃまた綺麗な切り口だな。しかも一撃か……? おーい、仕事だぞ!」
検分しつつもさっそく他の職員を呼んで解体作業が始まる。
「ついでといっちゃなんですけど、解体のコツとか教えてもらってもいいです?」
「うん? そりゃかまわんが、査定額から一割引かせてもらうことになるぞ」
「ええ、それでもかまいません」
「じゃあ問題ない。現物もあるし、存分に手ほどきしてもらうといい」
「ありがとうございます」
「じゃあよろしく頼むぞ」
解体作業員へと念を押すと、栗鼠人族は買取カウンターへと帰っていった。
午前中と午後で一体ずつ解体のやり方を教えてもらった後、夕方前くらいに親方の工房へとやってきた。ちなみにワイバーンとキマイラの査定は夕方には出るとのこと。工房からの帰りにまたギルドに寄ることにしている。
「こんにちわー。親方いますか?」
「あれ? シュウさんじゃないですか。ちょっと待ってくださいね」
工房に入って声を掛けると、さっそく店番をしていたパウラさんが親方を呼びに奥へと入っていった。
「シュウさん、親方が工房の奥へどうぞって」
しばらくして戻ってきたパウラさんに呼ばれて、親方の待つ工房へと案内される。何度か通ったのでもう慣れたものだ。
『おう、今日はどうした』
あらかじめ念話をつなげておけば、親方から声がかかる。
「ちょっと珍しい魔物の素材が手に入ったんで、それで何か作ってもらえないかなと思って」
鍛冶と言えば金属の扱いだが、魔物素材を使った武器防具の作成も仕事の範疇に入る。畑が違うと言って取り扱わない職人もいるにはいるが、親方はどうだろうか。
『ほぅ、ちょっと見せてみろ』
どうやら興味はあるようだ。親方に言われた場所へと切り分けた海皇亀の甲羅を取り出す。甲羅と言えば本来は丸みを帯びているはずだが、あのサイズを小さく切り分ければほぼ平面に等しくなる。とりあえず一辺二メートルで切り分けたが、厚さは一メートルを超えるほどだ。甲羅の一層目だけ剥がしたが、こんなに分厚かったんだな。
『なんだこれは……。今まで見たこともないが……』
「海皇亀の甲羅です」
『「……は?」』
パウラさんの声と親方の念話が重なる。
『いやいや、ちょっと待て。海皇亀といやぁ、伝説にもなってる魔物じゃねぇか?』
「そうですよ。体長数百メートルを超える亀って聞いたことがありますよ」
それなりに有名らしい。であれば話は早いか?
「それで合ってますよ。ちょっと前に帝国の沖に現れたんで討伐したんですよ」
『「…………」』
俺の言葉にしばらく静かになる工房。
「あれはデカかったな。今思えばよく帝国壊滅しなかったよな」
「ボクも見たけどびっくりした」
イヴァンとフォニアから次々と感想が出てくるのを聞いて、親方の表情も真剣なものに変わる。ハンマーを取り出してくると、甲羅をガンガンと叩きだした。
「ちょっ、親方!?」
パウラさんが驚いているが、海皇亀の甲羅はそんなことで傷つくはずもない。
『相当硬いのは確かだな。亀の甲羅と言われれば、確かにそんな質感はある』
「何かこれで造れそうですか?」
『ははっ。まだ刀も完成してないってのに、厄介なものを持ち込んできやがるな』
ニヤリと面白そうに口元を歪める親方。セリフと表情が合ってないが、楽しそうに思ってくれるならそれでいい。
『で、これで何を作るんだ?』
「特に考えてないので、なんでもいいですよ。むしろ親方がこれだと思うものでお願いします」
『がっはっはっは! そりゃいいな』
「依頼の報酬と言ってはなんですが、金属形成の練習用にオリハルコンも持ってきたので活用してください」
『なにっ!?』
「ふぁっ!?」
「魔力の通りがいいので練習するならオリハルコンがいいんじゃないかと思って」
『いやいや、オリハルコンなんぞ、どこから持ってきやがったんだ……』
「はは、渓谷の山頂にいっぱい埋まってましたよ」
軽い口調で告げると、びっくりを通り越して大きいため息が返ってきた。あらかた抽出し尽くしたのでもうないと思うけど。
またこれで刀を作ってもいいかもしれないけど、アダマンタイトの刀で斬れないものが出てきてからでいいか。今のところ満足してるし。
「もうあんまり残ってないと思いますけどね」
肩をすくめると、親方だけでなくパウラさんにも呆れられてしまった。
魔晶石の使い道も聞いてみたけど、基本的には魔石の上位互換ということだった。魔法発動の触媒に使えばとんでもない威力になるし、魔道具の動力として使えばほぼ永久機関になるくらいに持つとか。
海皇亀の加工にも使えればいいと思っていくつか進呈すると変な顔をされた。
さすがに朝から買取カウンターは混んでいないようだ。
「というわけで買い取りをお願いします」
「何がというわけだよ。しかも手ぶらじゃねーか」
丸くてちょっとだけ尖った耳を頭に付けた男が見事なツッコミを入れてきた。あんまり見ない種族だと思ったら、鑑定で栗鼠人族と出た。いろいろいるんだな……。
「昨日ギルドマスターにお願いされたワイバーンとキマイラを売りに来たのよ」
「は? え? ってことは、あんたらがシュウとリオかい」
「はい、そうですけど」
「じゃ、解体場まで来てくれ。ここじゃ狭いだろ」
ギルドマスターと違って話が早いぞ。ここの職員はギルドマスターを反面教師にしてるんだろうか。
買取カウンター横を通り抜けて裏手へ向かうと、そこは解体場だ。朝なのでまだ何の素材も置かれていない空間が広がっている。
「それじゃ出しますね」
無難に普通のワイバーンとキマイラをそれぞれ一体ずつ取り出す。
「ほぅ、こりゃまた綺麗な切り口だな。しかも一撃か……? おーい、仕事だぞ!」
検分しつつもさっそく他の職員を呼んで解体作業が始まる。
「ついでといっちゃなんですけど、解体のコツとか教えてもらってもいいです?」
「うん? そりゃかまわんが、査定額から一割引かせてもらうことになるぞ」
「ええ、それでもかまいません」
「じゃあ問題ない。現物もあるし、存分に手ほどきしてもらうといい」
「ありがとうございます」
「じゃあよろしく頼むぞ」
解体作業員へと念を押すと、栗鼠人族は買取カウンターへと帰っていった。
午前中と午後で一体ずつ解体のやり方を教えてもらった後、夕方前くらいに親方の工房へとやってきた。ちなみにワイバーンとキマイラの査定は夕方には出るとのこと。工房からの帰りにまたギルドに寄ることにしている。
「こんにちわー。親方いますか?」
「あれ? シュウさんじゃないですか。ちょっと待ってくださいね」
工房に入って声を掛けると、さっそく店番をしていたパウラさんが親方を呼びに奥へと入っていった。
「シュウさん、親方が工房の奥へどうぞって」
しばらくして戻ってきたパウラさんに呼ばれて、親方の待つ工房へと案内される。何度か通ったのでもう慣れたものだ。
『おう、今日はどうした』
あらかじめ念話をつなげておけば、親方から声がかかる。
「ちょっと珍しい魔物の素材が手に入ったんで、それで何か作ってもらえないかなと思って」
鍛冶と言えば金属の扱いだが、魔物素材を使った武器防具の作成も仕事の範疇に入る。畑が違うと言って取り扱わない職人もいるにはいるが、親方はどうだろうか。
『ほぅ、ちょっと見せてみろ』
どうやら興味はあるようだ。親方に言われた場所へと切り分けた海皇亀の甲羅を取り出す。甲羅と言えば本来は丸みを帯びているはずだが、あのサイズを小さく切り分ければほぼ平面に等しくなる。とりあえず一辺二メートルで切り分けたが、厚さは一メートルを超えるほどだ。甲羅の一層目だけ剥がしたが、こんなに分厚かったんだな。
『なんだこれは……。今まで見たこともないが……』
「海皇亀の甲羅です」
『「……は?」』
パウラさんの声と親方の念話が重なる。
『いやいや、ちょっと待て。海皇亀といやぁ、伝説にもなってる魔物じゃねぇか?』
「そうですよ。体長数百メートルを超える亀って聞いたことがありますよ」
それなりに有名らしい。であれば話は早いか?
「それで合ってますよ。ちょっと前に帝国の沖に現れたんで討伐したんですよ」
『「…………」』
俺の言葉にしばらく静かになる工房。
「あれはデカかったな。今思えばよく帝国壊滅しなかったよな」
「ボクも見たけどびっくりした」
イヴァンとフォニアから次々と感想が出てくるのを聞いて、親方の表情も真剣なものに変わる。ハンマーを取り出してくると、甲羅をガンガンと叩きだした。
「ちょっ、親方!?」
パウラさんが驚いているが、海皇亀の甲羅はそんなことで傷つくはずもない。
『相当硬いのは確かだな。亀の甲羅と言われれば、確かにそんな質感はある』
「何かこれで造れそうですか?」
『ははっ。まだ刀も完成してないってのに、厄介なものを持ち込んできやがるな』
ニヤリと面白そうに口元を歪める親方。セリフと表情が合ってないが、楽しそうに思ってくれるならそれでいい。
『で、これで何を作るんだ?』
「特に考えてないので、なんでもいいですよ。むしろ親方がこれだと思うものでお願いします」
『がっはっはっは! そりゃいいな』
「依頼の報酬と言ってはなんですが、金属形成の練習用にオリハルコンも持ってきたので活用してください」
『なにっ!?』
「ふぁっ!?」
「魔力の通りがいいので練習するならオリハルコンがいいんじゃないかと思って」
『いやいや、オリハルコンなんぞ、どこから持ってきやがったんだ……』
「はは、渓谷の山頂にいっぱい埋まってましたよ」
軽い口調で告げると、びっくりを通り越して大きいため息が返ってきた。あらかた抽出し尽くしたのでもうないと思うけど。
またこれで刀を作ってもいいかもしれないけど、アダマンタイトの刀で斬れないものが出てきてからでいいか。今のところ満足してるし。
「もうあんまり残ってないと思いますけどね」
肩をすくめると、親方だけでなくパウラさんにも呆れられてしまった。
魔晶石の使い道も聞いてみたけど、基本的には魔石の上位互換ということだった。魔法発動の触媒に使えばとんでもない威力になるし、魔道具の動力として使えばほぼ永久機関になるくらいに持つとか。
海皇亀の加工にも使えればいいと思っていくつか進呈すると変な顔をされた。
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