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第四部
山頂での採掘
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山頂に着いた。
ここしばらく谷底にいたからか、空がすごく広く感じる。山頂から続く尾根は緩やかに広がっていて、ごつごつと岩場の続く高台のようになっている。気配察知を伸ばしてみると、確かに魔力の噴出口がいくつかあるようだ。そのうちのひとつにモールボールと思わしき気配がある。
他にはギルドからも感じたワイバーンやキマイラの気配だろうか。それ以外は小さい気配しか感じないので、いまのところ強敵と呼べそうなのはこの三種類か。
「いるわね」
「わふふーん」
莉緒に続いてニルは上機嫌だ。空が広いところに出て風上になったからか、匂いがしなくなったのだ。
「そういえば調査って言ってたけど、具体的にどう調査したらいいんだろうな?」
イヴァンがもっともな疑問を口にしているが、あの婆さんの口ぶりからすると、噴出口にモールボールが居座っているかどうかがわかればよかったんじゃないかと思う。
「倒してしまってもいいんじゃない?」
「だな。爆発してあの匂いをまき散らされても困るし。ちゃっちゃと済ませて鉱脈探しと試し斬りやろうぜ」
「おー」
莉緒の言葉に賛同すると、フォニアもやる気なのか右手を突き上げている。
そういえば報酬の話は婆さんとしなかったけど別にいいか。前にちゃんと報酬は受け取れと言われたこともあるけど、お金は十分あるからなぁ。あの婆さんと交渉するほうが面倒くさい。
モールボールへと近づくとさすがに臭ってきた。
ニルとフォニアは遠くで待ってるというので、三人でヤツのところに向かっているところだ。
「うえっぷ」
イヴァンも辛そうだな。熊人族って鼻がいいんだろうか? 少なくとも嗅覚強化してない俺たちよりはよさそうだな。
「もうこのあたりでいいんじゃないかしら……」
遠くに見えてきたモールボールまであと500メートルくらいというところで、莉緒がギブアップした。と同時に莉緒から魔力の糸が一瞬にしてモールボールへと伸びていったかと思うと、空間遮断結界で覆ってしまう。次に辺り一帯に漂う臭いをすべて、風で巻き上げて上空へと逃がしていった。
「おぉ、かなりすっきりしたな」
嗅覚強化してもほとんど臭わなくなっている。イヴァンが晴れやかな表情になっていて、逆に結界に囚われたモールボールは暴れまわっている。
形状はボールのように丸いが、直径二メートルほどもあってそこそこ大きい。見える範囲の端から端まで牙が並んだ口がついていて、全体がもじゃもじゃした毛で覆われている。
「十分キモイな……」
暴れるモールボールを見てても面白くないので、莉緒が結界を変形させて内側に鋭利な刃を生み出すとボールを真っ二つにする。そのまま結界ごと異空間ボックスへと仕舞いこんだ。
「これですっきりしたな」
「ほんと、やっとひとごこち着いたね」
「にしても異空間ボックスの中の結界ってどうなるんだ?」
何気にそのまま収納してたけど、結界の維持にも魔力を使うはずだしどうなるのかは興味ある。
「そういえばそうね……。うーん、結界は維持されてると思うけど、魔力を消費してる感じはしないけど」
「時間停止ボックスなら結界なんてあってもなくても一緒だからかな?」
「そうかも?」
なんとなくわかる気はするけど、そういうものと思っておくことにする。取り出せば結界は特に崩れた様子はなかった。臭いをまき散らされても困るので、そのまま結界を維持できるならそれでよしだ。
「じゃあさっそく鉱脈探そうか」
「うん」
「俺は鍛錬でもしますかね」
「わふわふ」
「ボクもこうみゃく探すね!」
臭いがしなくなったことでニルとフォニアも合流し、俺たちの鉱脈探しとイヴァンの鍛錬と、ニルのイヴァンを使った遊びが始まった。
「魔晶石?」
魔力の噴出口から採掘できたのがこれだ。
=====
種類 :道具
名前 :魔晶石
説明 :魔力そのものが結晶化したもの。
魔石よりも魔力の純度が圧倒的に高い。
=====
魔石の上位互換っぽいアイテムだけど、鑑定しただけじゃ使い方はよくわからない。あとでルイゲンツさんに聞いてみることにして採掘を継続することにした。
あれから二日ほど、野営ハウスを出して泊まり込みして、あらかた周囲で採掘できるものを把握した。山頂近くではアダマンタイトはあまり採れなかったが、オリハルコンが手に入ったのでホクホクだ。
昨日はまた例のストーカーがこっそりと現れたので、笑顔で手を振り返してやったらまたすぐに帰ってしまった。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん! ほら見てみて!」
フォニアがオリハルコンを使ってナイフもどきを作るにまで至っていた。しっかり刃が出来上がってないので何も切れないだろうけど、形はしっかりしてきたと思う。
「ちょっ、おまっ、そんな希少金属をなんてことに……!」
イヴァンが青ざめているけど別にいいんじゃないかな。オリハルコンってすげぇ魔力を通しやすいし、練習で使うには一番適してると思う。
「そういう問題じゃねぇよ!?」
ってことを説明すると激しいツッコミが返ってきたんだが、俺は間違ってない。ほら、莉緒だって頷いてるぞ。
「あとでルイゲンツさんにも教えてあげよう」
「いやだからやめろって!」
なぜだ。
でもまぁイヴァンの言うことだし、スルーでいいか。
「というわけで次は刀の試し斬りをしたいと思います」
「んふふふ」
「わふわふ!」
「おおー!」
「へいへい」
俺の宣言に四者四様の言葉が返ってきた。
ここしばらく谷底にいたからか、空がすごく広く感じる。山頂から続く尾根は緩やかに広がっていて、ごつごつと岩場の続く高台のようになっている。気配察知を伸ばしてみると、確かに魔力の噴出口がいくつかあるようだ。そのうちのひとつにモールボールと思わしき気配がある。
他にはギルドからも感じたワイバーンやキマイラの気配だろうか。それ以外は小さい気配しか感じないので、いまのところ強敵と呼べそうなのはこの三種類か。
「いるわね」
「わふふーん」
莉緒に続いてニルは上機嫌だ。空が広いところに出て風上になったからか、匂いがしなくなったのだ。
「そういえば調査って言ってたけど、具体的にどう調査したらいいんだろうな?」
イヴァンがもっともな疑問を口にしているが、あの婆さんの口ぶりからすると、噴出口にモールボールが居座っているかどうかがわかればよかったんじゃないかと思う。
「倒してしまってもいいんじゃない?」
「だな。爆発してあの匂いをまき散らされても困るし。ちゃっちゃと済ませて鉱脈探しと試し斬りやろうぜ」
「おー」
莉緒の言葉に賛同すると、フォニアもやる気なのか右手を突き上げている。
そういえば報酬の話は婆さんとしなかったけど別にいいか。前にちゃんと報酬は受け取れと言われたこともあるけど、お金は十分あるからなぁ。あの婆さんと交渉するほうが面倒くさい。
モールボールへと近づくとさすがに臭ってきた。
ニルとフォニアは遠くで待ってるというので、三人でヤツのところに向かっているところだ。
「うえっぷ」
イヴァンも辛そうだな。熊人族って鼻がいいんだろうか? 少なくとも嗅覚強化してない俺たちよりはよさそうだな。
「もうこのあたりでいいんじゃないかしら……」
遠くに見えてきたモールボールまであと500メートルくらいというところで、莉緒がギブアップした。と同時に莉緒から魔力の糸が一瞬にしてモールボールへと伸びていったかと思うと、空間遮断結界で覆ってしまう。次に辺り一帯に漂う臭いをすべて、風で巻き上げて上空へと逃がしていった。
「おぉ、かなりすっきりしたな」
嗅覚強化してもほとんど臭わなくなっている。イヴァンが晴れやかな表情になっていて、逆に結界に囚われたモールボールは暴れまわっている。
形状はボールのように丸いが、直径二メートルほどもあってそこそこ大きい。見える範囲の端から端まで牙が並んだ口がついていて、全体がもじゃもじゃした毛で覆われている。
「十分キモイな……」
暴れるモールボールを見てても面白くないので、莉緒が結界を変形させて内側に鋭利な刃を生み出すとボールを真っ二つにする。そのまま結界ごと異空間ボックスへと仕舞いこんだ。
「これですっきりしたな」
「ほんと、やっとひとごこち着いたね」
「にしても異空間ボックスの中の結界ってどうなるんだ?」
何気にそのまま収納してたけど、結界の維持にも魔力を使うはずだしどうなるのかは興味ある。
「そういえばそうね……。うーん、結界は維持されてると思うけど、魔力を消費してる感じはしないけど」
「時間停止ボックスなら結界なんてあってもなくても一緒だからかな?」
「そうかも?」
なんとなくわかる気はするけど、そういうものと思っておくことにする。取り出せば結界は特に崩れた様子はなかった。臭いをまき散らされても困るので、そのまま結界を維持できるならそれでよしだ。
「じゃあさっそく鉱脈探そうか」
「うん」
「俺は鍛錬でもしますかね」
「わふわふ」
「ボクもこうみゃく探すね!」
臭いがしなくなったことでニルとフォニアも合流し、俺たちの鉱脈探しとイヴァンの鍛錬と、ニルのイヴァンを使った遊びが始まった。
「魔晶石?」
魔力の噴出口から採掘できたのがこれだ。
=====
種類 :道具
名前 :魔晶石
説明 :魔力そのものが結晶化したもの。
魔石よりも魔力の純度が圧倒的に高い。
=====
魔石の上位互換っぽいアイテムだけど、鑑定しただけじゃ使い方はよくわからない。あとでルイゲンツさんに聞いてみることにして採掘を継続することにした。
あれから二日ほど、野営ハウスを出して泊まり込みして、あらかた周囲で採掘できるものを把握した。山頂近くではアダマンタイトはあまり採れなかったが、オリハルコンが手に入ったのでホクホクだ。
昨日はまた例のストーカーがこっそりと現れたので、笑顔で手を振り返してやったらまたすぐに帰ってしまった。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん! ほら見てみて!」
フォニアがオリハルコンを使ってナイフもどきを作るにまで至っていた。しっかり刃が出来上がってないので何も切れないだろうけど、形はしっかりしてきたと思う。
「ちょっ、おまっ、そんな希少金属をなんてことに……!」
イヴァンが青ざめているけど別にいいんじゃないかな。オリハルコンってすげぇ魔力を通しやすいし、練習で使うには一番適してると思う。
「そういう問題じゃねぇよ!?」
ってことを説明すると激しいツッコミが返ってきたんだが、俺は間違ってない。ほら、莉緒だって頷いてるぞ。
「あとでルイゲンツさんにも教えてあげよう」
「いやだからやめろって!」
なぜだ。
でもまぁイヴァンの言うことだし、スルーでいいか。
「というわけで次は刀の試し斬りをしたいと思います」
「んふふふ」
「わふわふ!」
「おおー!」
「へいへい」
俺の宣言に四者四様の言葉が返ってきた。
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